私は呆然として、ただ見つめていた。
目の前にいる少年を。
その少年の黒い瞳を。
その黒い瞳を見つめていると、まるで吸い込まれるのではないかと錯覚してくる。
ふと周りを見ると、レイやミサト、加持さんまで呆然としている。
このままでは埒があかないと思い、声をかけようとした時、
少年は自分の名を告げる。
天使を思わせる屈託の無い笑顔を浮かべて。

シンジ:「シンジ・・・碇シンジです。」

その微笑みを見て、私たちは再度呆然とする。
まったく、なんて笑顔で人に微笑みかけるのよ、こいつは。
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八翼の堕天使
ー第参話 少年の歩んだ道ー
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シンジの笑顔を見て暫くの間呆然としていた一同だったが、
一番年長者の加持が最初に自分を取り戻す。

加持:「碇シンジ君か。ん、待てよ。碇・・・?
    もしかして君は、碇ゲンドウ、碇ユイの息子さんかい?」

シンジ:「・・・そうです。僕の父は最強を誇った刀剣術使の碇ゲンドウ。
     母は大魔導士の異名を取った碇ユイです。父さんや母さんを知ってるんですか?」

少し警戒しながらも、驚いたようにシンジは加持に聞き返す。

加持:「あの二人を知らない人間はいないさ。まあ、個人的に面識もあるがね。」

シンジ:「どういうことですか?」

加持:「今から十年ぐらい昔に腕試しにゲンドウさんに挑戦したんだ。
   結果見事に惨敗したがね。」

ミサト:「あっきれた。身の程知らずもいいところね。」

リツコ:「無様ね。」 

加持:「二人ともきついな。ま、その通りだからなんとも言えないがね。」

そんな会話をしている中、シンジは考え込んでいた。

レイ:「どうかしたの?碇君。」

レイに声をかけられても気付かず暫くしてから、何かに納得したように喋りだす。

シンジ:「思い出しました。僕が3歳の時、確かに来ましたね。倒れた人の介抱が僕の仕事でしたから。」

加持:「そうか、君が介抱してくれたのか。気を失ってたからよく覚えていないが・・・。
   その後、お二人はご健勝かね。」 

加持がそういったとたん、シンジの顔に暗い影が降りていた。

シンジ:「・・・まだ世間にはあまり知られていないんですね。
    まあ、隠れ里みたいな町だったから仕方ないですけど。」

ミサト:「どういうことなの?シンジ君。」

シンジ:「父さんも母さんも、もうこの世にはいません。いえ、カオスの町自体もう存在しません。
     そうだった場所に、廃墟ならありますけどね。」

加持:「何だって!ど、どういうことなんだ、シンジ君。」

シンジ:「殺されたんですよ。町の住人一人残らず。生き残ったのは僕一人です。」

加持:「そ、そんな!?殺された?最強と呼ばれたあの二人が?」

ミサト:「とてもじゃないけど信じられないわね。」

余りのことに、全員混乱を起こす。
それもそうっだろう。世界中知らぬ者の無いほどの強さを誇った二人を殺せる者など、
とてもではないが信じられない。
一番最初に冷静さを取り戻したのはリツコだった。

リツコ:「つらいだろうけど、もしよければ詳しく教えてくれないかしら、シンジ君。」

それに対して、本当につらそうな顔をしながらもシンジは答えた。

シンジ:「ええ、構いませんよ。」

そう言って、彼は語り始めた。
あの惨劇を。
彼にとっては昨日のことのような物。
その端正な顔を、苦悶にゆがめながら。

闇の使途がやって来た事。
人質をとられ、何も出来ぬままに殺された両親のこと。
殺されていく町の住民のこと。
それに対して、自分は何もすることができなかったということ。
そのときの全てを、シンジは吐き出すように語った。
その場に居合わせた者達は、息をのんで聞いていた。

シンジ:「だから僕は復讐を、みんなの敵を打つことを誓った。
     そしてあれから9年、僕は両親を超えるためにひたすら修行を積んだ。
     みんなの敵を討つ。それだけを思って。」

シンジの独白が終わった時、辺りには彼の凄まじいまでの殺気が漂っていた。
又、語りながら思い出したのか赤い一筋の涙が彼の頬をぬらしていた。

その姿を見て、皆は彼の憎しみの強さを感じ、言葉を模索した。
それから暫くの間、重い空気と沈黙が辺りを支配していた。
その静寂を破ったのは、以外にもアスカだった。

アスカ:「アンタも随分苦労したんだ・・・。ところでさあ、修行てどんなことしたの。
     あれだけ強いんだから並じゃないんだろうけど。良かったら教えてよ。」

同情とはとられない、相手を思いやりながらも明るめな言葉。
このおかげでシンジを含めて、皆この緊張した空間から脱することが出来た。

レイ:「そうよね。これからの訓練の参考になるかもしれないしね。」

トウジ:「わいもぜひ聞かせてもらいたいわ。」

ムサシ:「俺も聞きたい。まだまだ強くなりたいからな。」

そういって子供達はアスカに同調してくる。
こういったときは、やはり大人よりも同年代のほうが馴染みやすい物だ。

シンジ:「別に構わないけれど、たぶん参考にはならないと思うよ。」

シンジは涙を拭い、こう断った後話し始めた。
10年の間、自分の行ってきた修行を。

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シンジの口から語られた修行の内容は凄まじいの一言だった。

剣術は父さんが生前基礎的な物を教えていた程度だったので、ほとんど独学と同じだった。
『天地魔闘の書』を見ながらただひたすら鍛錬をした。
幸か不幸か鍛錬の相手にだけは困らなかった。
自ら進んで魔獣の住まう地に赴き、実戦の中で鍛えた。まさに命がけで。
実戦の中で命がけで戦う。強くなる為の最短の方法だった。

元々基礎的な訓練があったのと、父さんから譲り受けた天賦のためか、
はじめてから2,3年でそれなりに強くなれた。
月日が流れるにつれ、子供から大人、そして男、いや漢たる雰囲気を持ち出した。

しかし魔法についてはそう簡単ではなかった。
『天地魔闘の書』にはその全てが書かれていたが、簡単には解読できないように書かれていた。
このことをあらかじめ知っていなければ自分は理解できなかっただろう。
しかしこの後が問題だった。
元々魔法に関して知識は無いに等しかったのだから、当然と言えば当然だった。

魔術はただひたすら体内の魔力を高めて、自分の属性に関係なく鍛えた。

法術は聖王神、暗黒神を自分の肉体に降臨させ自らの魔力と精神力で屈服させた。
余談だが、神を降臨させた肉体はその力に耐えられず消滅する確率が高いらしいが、
死んだら自分は所詮その程度だっだたのだと思い、余り悩まず降臨させた。
ちなみに母さんは、聖王神のみを降臨させたと聞いていたが、
母さんより強くならねばと言う考えから二神を降臨させた。

召喚術は『天地魔闘の書』に書かれていた魔法陣を片っ端から描き、
全ての魔神や召喚獣を呼び出し、屈服させた。
二神を屈服させたのに比べれば幾分楽だったのは否めない。

精霊魔法は、その属性の精霊力が強い場所えと赴き、精霊界と交信し、
自分という存在を示し、その属性の精霊王と直接盟約を交わした。

そして、あの日から五年後。
魔境と呼ばれた地『常闇の森』で暮らし、修行していたことまでを僕は皆に話した。

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シンジ:「大体こんなところだよ。」

そう言って話を終えた僕をみんなは唖然としてみていた。

アスカ:「あんた本当にそんな修行してきたの?とんでもないわ。」

マナ:「本当に参考に出来ない内容だわ。命がいくつあってもたりないもの。」

カオル:「どうだいムサシ君?同じことをすれば確実に強くなれるけど。実行するかい?」

ムサシ:「いや、遠慮させてもらおう。」

トウジ:「そりゃそうやろ。ワイなんか呆れてなにも言いとうないわい。」

それぞれが勝手な感想を述べている中で、先程から首をかしげていた綾波が声をかけた。

レイ:「碇君。ちょっと聞いてもいい?」

シンジ:「えっと・・・、綾波だったよね。何?」

レイ:「碇君の属性って何?」

それを聞いてアスカと、興味津々な目つきのリツコも聞いてくる。

アスカ:「そういえばタイプもまだ聞いてないわね。」

リツコ:「あれだけ色々な魔術や精霊魔法が使えるのには興味があるわ。是非教えて!」

リツコは若干目が危ない光を放っている。

シンジ:「タイプを聞かれてもどう答えればいいのか。剣も魔法も使えるし・・・。」

トウジ:「それもそうやな。」

ヒカリ:「じゃあ属性だけでも教えてくれない?」

リツコ:「そうね。別属性の魔術や精霊魔法を、何の脈絡も無く使えるのは疑問だわ。」

ミサト:「確かにそうよね。魔術は雷、精霊魔法は炎と風、召喚術は闇。
    普通、自分の属性意外はそんなに強くなれないのに、どれもかなりの高レベルだもんね。」

それに対して、シンジは少し言い難そうに話す。

シンジ:「僕の属性は元来雷でした。でも三年前、ある事を切っ掛けに別属性に変化しました。」

レイ:「属性が変わった?」

シンジの言葉を聞いて、一同は怪訝な顔をする。

カオル:「どういうことだい、シンジ君。」

シンジは躊躇いながらも答えた。

シンジ:「二年前のそのある出来事以来、僕の属性は『無』です。」

それを聞いた一同は暫くの間言葉を失う。
一番最初に沈黙を破ったのは、やはり加持だった。

加持:「シンジ君。一体どういうことだい?
    無の属性は確かに存在するが、神龍皇以外持つことの出来ない属性のはずだ。」

そのことに対して、諦めたのか全てを話すつもりになったシンジは簡単に答える。

シンジ:「確かに無の属性は神龍皇しか持つことは出来ません。しかし間違いなく僕は無の属性です。
     神龍皇を倒し、受け継いだ力ですから。」

ミサト:「い、今なんていったの?シンジ君!」

シンジ:「言葉どおりですよ。僕は二年前、活動期に入った神龍皇に勝負を挑み、結果勝利したんです。」

余りのことに一同は呆気に取られる。
それも当然だろう。
何故なら神龍皇は数千年を生き、数多の歴戦のマリュウドが挑みその命を散らした存在である。
しかもそれを休眠期ではなく活動期に倒したと言うのだから、信じられなくて当然である。

カオル:「なぜ君は神龍皇に挑戦したんだい?僕にはその理由がわからないんだが。」

シンジ:「簡単なことだよ。知っての通り、竜の眷属は数年の休眠期と一年ほどの活動期で行動する。
     無論休眠期のほうが動きは鈍くなり活動期は活発になる。
     だから大抵の場合竜族と戦うのは休眠期になる。神龍皇が相手ならなおさらだろう。
     事実、僕の父さんや母さんが挑戦したのは休眠期だった。それでも敗れたんだけどね。
     僕は父さんたちの敵を討つと決めた。
     その為には父さんと母さんのレベルを超える必要があった。
     だから僕は二人が勝てなかった存在に挑戦し、自分の力が知りたかったんだ。」

ムサシ:「その相手が神龍皇の活動期だったということか。」 

その言葉に対して、シンジは黙って首を縦に振る。
大人達はシンジの決意の強さを感じていた。が、それと同時に危ぶんでもいた。
復讐は負の力。それだけに自分を滅ぼす両刃の剣となりかねない。
しかも彼はそれをすでに承知で行っている節がある。
そのことに対して、加持は戦慄すら覚えていた。

マナ:「ねえ、碇君。そのときの様子、詳しく教えてよ。」

マヤ:「私も是非聞きたいです。神竜王がどんな攻撃をしたのか興味もありますし。」

マユミ:「確かにそうですね。神竜王の強さは話に聞いただけでよくわかりませんから。」

ケンスケ:「でもマユミちゃん。この場合もシンジから聞くんだから話に聞いただけというのは変わら      なくないかい。」

マナ:「馬鹿ね〜。実体験を元に聞くんだから、今までの話なんかと比較にならないわよ。」

ムサシ:「マナ。いくらなんでも馬鹿は言い過ぎだぞ。」

ヒカリ:「そうよ、そんなに言いたい放題いってるとムサシに嫌われるわよ。」

マナ:「えっ!?」

ムサシ:「オイ、洞木。なんてこと・・・。」

トウジ:「ヒカリの一本勝ちやな。」

レイ:「あら、鈴原君。いつからヒカリの事名前で呼ぶようになったの?」

ヒカリ・トウジ:「「・・・・・」」<真っ赤

ミサト:「ほら,あんた達。いいかげんにしときなさいよ。」(後で聞き出してエビチュの肴にしよ〜)

リツコ:「そうよ。シンジ君が話せないじゃない。」(ミサト、あんた何考えてるか顔にでてるわよ。)

カオル:「やはり君達は好意に値するよ。好きってことさ。」

アスカ:「あんた何訳わかんないこといってんのよ。いいかげんにしなさいよ。
     んっ?レイ、何顔を赤くしてんのよ。」

いつまでも続く言い合い。シンジはそれを嬉しそうに眺めていた。少し、どこか寂しげな瞳で。
加持だけがそのことに気付いていた。
いや、正確にはアスカもそのことに気付いていた。が、気にしないようにしていた。
何となくだが理由がわかっていたから・・・。


それから暫くして、ようやく一同が落ち着いたので、改めて加持がシンジに問い掛ける。

加持:「それじゃあ改めて、シンジ君。少し言い難そうだがもし良ければ教えてくれないか?」

シンジ:「ええ、構いませんよ。今から三年前のことです。・・・・」

そしてシンジは語り始めた。
人の想像をはるかに越えた戦いの全貌を。
人の限界を超えた物と、史上最強の存在。
この二つの超越された、他の介入を許さない、力と力の激突を。
半年に渡る驚異的な戦いを。

To Be Next Story.

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後書き?

いやあーようやく終わりましたよ。
八翼の堕天使ー第参話 少年の歩んだ道ーいかがだったでしょうか?
なにぶん書き始めてまだ間もないので、キャラの会話になると止まらない止まらない。
読みにくい点などもあるでしょうが、どうぞご容赦を。

マナ「ちょっと、作者。」
神:オヤ、マナ?おかしいな。今回のゲストは綾波の筈だったんだが。
マナ「何いってんのよ。次回作とホントは一つでそれが終わってからって予定だったのに、二つに分けた   から、急遽私を呼んだんじゃない。」
神:ああ、そういえばそうでしたね。ってアスカを呼んだはずですが。招待状、盗みましたね。
マナ「そんなことはどうでもいいのよ。なんで私とシンジがくっつかないのよ!」
神:私がLASが好きだからですけど、何か問題でもありますか?
マナ「大有りよ。ムサシとくっついてるのは不満じゃないけど。シンジのこと碇って呼んでるし。」
神:オッ、気付きましたね。そうです。この作品はパートナー以外の異性のことをファーストネームでは  呼びません。だから、大人以外でシンジのことをシンジと呼ぶ女性はアスカだけです。
マナ「なんでよ!せっかくアスカ以外で私だけの特権だったのに!!」
神:だからです。むしろ感謝していただきたい。最初はケンスケとくっつける予定だったんですから。
マナ「ガ――ン!!」
神:あら、真っ白になって燃え尽きちゃったよ。まあ、ほおって置こう。
  アスカ、ゲストに呼べずに申し訳ありません。呼ぶのは暫く先送りになってしまいました。
  シンジとしっかりくっつけますのでお許しください。では、後のことはよろしくお願いします。

*(感想など、できれば送ってくださいね)*


マナ:あんな修行したら、強くなる前に死んじゃいそうだわ。

アスカ:強くなれても、とても実行する気になれないわね。

マナ:わたし達はいいんじゃない?

アスカ:なにが?

マナ:危険なことしなくても、シンジに訓練して貰ったらさ。

アスカ:そうねぇ。シンジにコーチしてもらったら、強くなれるでしょうねぇ。

マナ:じゃ、アスカは剣術から習ったら?

アスカ:そうしようかしら。

マナ:わたしは、寝技から習おうかな。(*^^*)

アスカ:なんで寝技よっ!(ーー#
作者"神竜王"様へのメール/小説の感想はこちら。
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