僕はただひたすら歩いていた。
ある場所を目指して。

普段使っている巨大刀を背に担ぎ、
右手に刃こぼれをし、魔獣の血にまみれた薙刀を持って。

父さんや母さんでも勝つことのできなかった者に挑むために。
活動期迎えた神龍皇に挑むために。
自分の力を試すために。
より強き力を求めて。

神龍皇の住まう山。

魔境、『魔竜山』に・・・

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八翼の堕天使
ー第四話 選ばれた少年ー
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竜神暦2012年

『魔竜山』

この世で最も名高い秘境にして魔境の名称である。

この地には、東に全ての川の水源となる巨大な湖と大湿原からなる『静寂なる水源』

南に広大な密林、魔境『常闇の森』

西にはどこまでも続く広大な草原、『魔の平原』

そして北には岩と砂のみの荒涼とした大地、『死を呼ぶ荒野』

又、魔竜山の周囲には氷山が囲んでおり、魔竜山に人が近づくのを拒んでいる。

どの地も魔境としてその名を知らしめている場所である。

史上最大最強の名を誇る神龍皇は、この魔竜山の火口に住んでいる。
その為か、この地には四方の地も含めて数多くの竜の眷属が生息している。
それ故、この辺りのことを総称して、竜の聖域と呼んでいる者がいるほどである。

天地魔闘の書には、竜族に付いて大体このように書かれている。

竜は魔獣とは根本的に違う生き物である。
魔獣は人間を襲う、ということを本能にして生きているような物だが、
竜はこちらから手を出さない限り、向こうから襲ってくることはまず無い。(たまに例外もいるが)
又、高い知識を有しており、人語や精霊語も理解し、使用することができる。
そこらのにいる偽賢者よりもはるかに頭もいい。(ただし極竜王クラス以上に限られる)
そして何よりの違いは、契約さえ結ぶことができれば召喚にも応じるようになることである。
その為竜族を魔獣と区別するため、幻獣や霊獣と呼ぶ者もいる。

そしてこれは人が竜に対して認知している物である。
その竜の中でも、最強である神龍皇は、全ての竜の眷属を統率する竜族の王である。
その凄まじいまでの力と、その姿の雄々しさから、人々は神龍皇をこう評している。

『雄々しき四肢をもって大地に立ち、背に生えし力強くも優雅なる、四対八枚の翼で天を駆け、
 八つの魔眼で地を睨み、その咆哮は大地を砕き、強大なる魔力は全てを消滅させる。』

これは数百年前、神龍皇が活動期に激怒し、破壊の限りを尽くしたときに生まれた伝承である。
これにより、神龍皇の名は知らぬ者のいない最強の竜として人々の脳裏に刻まれた。
その為力試しや名を上げようとして、何人ものマリュウドが神龍皇に戦いを挑んだらしい。
僕の父さんと母さんも、自分達の力を試そうとして僕の生まれる数年前にここに来たらしい。
もっとも、敗れそうになり母さんの帰還呪文で帰ってきたらしいけど。
その父さんたちが勝てなかった者に僕は挑もうとしている。

この魔竜山の四方にある魔境。
僕はその地に、半年間ずつ暮らして修行をした。
そして、神龍皇が活動期に入るのを待っていた。
父さんたちの敵を討つためには、父さんと母さんを超える必要があった。
それを確認するには、二人の勝つことの出来なかった神龍皇に勝負を挑むのが一番だった。
しかし、この魔竜山についてから一週間。普段であれば見かけるであろう筈の竜が一頭もいない。
僕は不思議な違和感を感じていた。
それから三日、結局ただの一度も竜を見かけることが無かった。
もっとも、魔獣に襲われることはかなり多かったが。

今、僕の前には神龍皇の住まう火口に繋がる洞窟がある。
僕はその洞窟に入り、ゆっくりと進み始めた。

暫く歩いていくと、前方に赤い光が見え始めた。
僕は持っていた薙刀を腕輪に収納し、巨大刀をその場に突き立てて、
父さんの形見、『聖魔剣・ルシファー』を腰に携えて、その光へと向かった。

洞窟を抜けると都市が一つ入るのではないかと思えるほど広い空間が円形に広がっていた。
火口から入ってくる光が壁にあたり、全体的に赤く光って見え、ひどく神秘的に見えた。
その光景に呆然としていると、くぐもった、轟くような声が聞こえた。

「非力で弱く、定命の運命にある小さき者よ。我は汝に問う。汝、何用で我が元へと参った。」

それにより、自分を取り戻した僕は声のした方を見た。
声のした方には、神龍皇がその四肢を持って立ち上がり、四対八枚の翼を広げ、
長き首を天に向かって伸ばし、その八つの魔眼でこちらを見つめていた。

(普通の竜は鱗か、外骨格でその体を覆っている。
 鱗は外骨格ほどの頑強さは無いが、全身をくまなく覆っている。
 それに対して外骨格はかなりの頑強さを誇るが、外骨格の間に隙間が出来てしまう。
 余談だが、全ての竜は体内にも骨格を持っているが、防御のために外骨格を持っている。
 しかし、神龍皇は外骨格と、その隙間に鱗を持って驚異的な防御力を誇っている。)

神龍皇の姿は伝えられていた通りだった。

頑強な鎧を思わせる外骨格と鱗で全身を多い、太く強大な四肢の生えた胴に、長大な首と尻尾。
その背中には強固な外骨格と同じ灰色の翼が一対と、淡い光を放つ皮膜の翼を三対生やし、
その頭部には七本の銀色の角が生えている。
そしてその瞳には高い知性の光をたたえている。

そこから感じる物は、恐怖すら感じるほどの神々しさ。
その姿を見つめているうちに神龍皇は二回目の問いかけをしてきた。

「我は今一度問う。何用で我が元へ参った。答えよ、人間。」
(この者の魂の輝き・・・、まさかな・・・、ありえん。)

この問い掛けに、僕は正面から答えた。

シンジ:「神龍皇よ。あなたにお聞きしたいことがあって参りました。」

「我に聞きたいこと・・・、だと?」

シンジ:「はい。」

さも意外そうに聞き返す神龍皇に、シンジは臆することなく返事をする。

「申してみよ。その問いによっては答えてやろう。」

その言葉に対し、シンジは一礼した後に問い掛ける。

シンジ:「あなたは今まで戦ってきた者の中で、あるレベル以上の者のことを記憶している、
     と聞いていますが本当でしょうか。」

「いかにも覚えている。が、それがどうかしたのか?」

シンジ:「では、碇ゲンドウ、碇ユイという人物を覚えていますか?」

「碇・・・、あの剣士と魔法使いか。良く覚えている。今から十数年前だったか?
 ここ百年ほどの間では間違いなく最強だったな。いや今までの中で、といったほうが良いか。」

シンジ:「そうですか・・・。神龍皇。もう一つ、これはお願いなのですが。」

「何だ。」

シンジ:「僕と戦っていただきたい。」

そう言って僕はルシファーを鞘から抜き、構える。

「それは構わぬ。元々汝が来た理由はそれについてだと思っていたからな。
 しかし先程の会話は何の関係がある。そしてなぜあえて我の活動期に挑みに来た?
 我がこの地に生じてから数千年が経つが、いまだかつて、我の活動期に挑みに来た者はいないぞ。」

シンジ:「碇ゲンドウ、碇ユイは僕の両親です。二人はある者達に殺された。
     僕は両親の、そして同時に殺された故郷のみんなの敵を討つと誓った。
     その為には二人を遥かに凌駕する力が必要です。でも僕は二人の本当の力を知らない。
     ならば・・・。」

「ならば二人の実力を知り、尚且つその二人の勝てなかった我に挑もうと思ったか。」

シンジ:「その通りです。そしてどうせ戦うならば正々堂々正面から挑もう。そう思っただけです。」

暫しの間、訪れる沈黙。それを先に破ったのは神龍皇だった。

「フッフッフッフッフ・・・・・」

突然、神龍皇は笑い出した。

「っハッハッハッハッハッハ・・・。面白い奴。どこまでも正直で生真面目な奴だ。気に入った。
 来るがいい、人間。この神龍皇が相手をしてやろう。」
(それに・・・この者がそうなのか見極めねばなるまい。)

シンジ:「ありがとうございます。では・・・参ります。」

こうして碇シンジと神龍皇の、壮絶な戦いの火蓋は切って落とされた。

戦いはシンジの剣撃から始まった。

シンジ:「竜牙剣術一刀流・斬滅剣!」

シンジの気合の一閃と共に強力な衝撃波が剣から放たれ神龍皇へと向かう。

「グッ!なかなかの威力だ。しかし父親とは違う剣術を使うのだな。」

シンジ:「父さんから直接学んだわけではないし、独自の技もいくつか取り入れましたから。
     基本はあくまで剣竜拳武術ですが、今ではほとんど別物です。だから名称も変えたんです。」

「そうか、まあ良い。今度はこちらから行くぞ。」

グオオォォォォォ―――――――――!!

神龍皇の咆哮が轟き、周囲の氷山で雪崩が起きた音が聞こえる。

古来より、竜の咆哮は生命全てがもつ、始原の恐怖を呼び覚ますといわれている。
ましてや竜族の王たる神龍皇の咆哮なら尚のこと。凄まじいまでの恐怖感がシンジを襲う。
しかしシンジはそれに打ち勝った。皆の敵を討つという強固な決意ゆえに。

「ほう、耐え切って見せたか。大したものだ。ではこれならどうだ。」

そう言うと神龍皇は天を仰ぎ空気を大量に吸い込む。その喉が大きく膨らんでいく。
そして神龍皇の口が開く。それと共に剥き出しになる白い牙。
次の瞬間、強大な灼熱の炎が放たれる。

それに対してシンジは、剣を上段に構え、呪文を紡ぎながら微動だにしない。

シンジ:【氷の精霊王、魔狼フェンリルよ。汝、我が名に於いて命ずる。我との契約に応じ、我が前に現れ、     我が剣に宿りて力を貸せ。】

するとシンジの周りに一瞬吹雪が巻き起こり、
その中から現れた巨大な狼がルシファーの中へと消えていく。

シンジ:「精霊魔法剣術・魔狼氷牙斬」

シンジが剣を振るうと同時に、強力な吹雪が生じ、神龍皇の炎へと一直線に向かう。
吹雪と炎は互いに相殺しあい、強大な水蒸気爆発を起こした。

「まさか上位精霊を呼び出し、さらに剣に付与して威力を上げるとはな。とんでもない奴だ。」

シンジ:「今度はこちらの番です。」

そう言うとシンジは剣を地に突き立て、両手を広げる。

【万能にして全ての魔法の根源たるマナよ、我が右手に雷を生じさせ、全てを滅ぼす轟雷となせ】
【万能にして全ての魔法の根源たるマナよ、我が左手に高熱を宿し、全てを焼き払う業火となせ】

シンジ:「いきます。複合合成魔術・天雷業火炎撃砲!!」

雷と炎は絡まりあいながら強大な破壊力を伴って神龍皇へと向かう。

「まさか二つの違う属性の魔術合成するとはな、水属性魔術・氷結界壁」

炎と雷が神龍皇にあたる瞬間、神龍皇の前に強固な氷の壁が現れ、これを相殺する。

(まさかこれほどの物とは思わなかった。やはりこの者がこの地に来たとき警戒を発してよかった。)

シンジがここに来るまでに竜族に合わなかったのはこの為である。
神龍皇はシンジがこの地に来たとき、その力がかなりの物だと知り、
自分の眷属に警戒するように命じていたのだ。

「たいしたものだな、人間よ。汝の強さは我が戦ってきた中で間違いなく最強だぞ。断言しても構わない。
 汝は強い。その強さに敬意を評して、我が独自の技を見せてやろう。」

そういった神龍皇はその首と背を反らし、胸部を前面に突き出すような体勢をとる。

「受けられる物なら受けてみよ。無属性広範囲魔術・神龍弾。」

それと共に胸部の外骨格が前面に開かれる。そしてそこから無数の魔力の弾丸が射出される。
シンジは剣で弾くなどして、必死に防御し、回避をした。

多くの魔弾は岩壁に当たり土煙を起こしてシンジや神龍皇の視界をさえぎる。
すると神龍皇は攻撃を止め、胸部を元に戻す。

「あの程度では死んでおらぬだろう。何を仕掛けてくるか見てみるか。魔眼力・千里透視眼」

神龍皇は魔眼の力を使い、土煙の中を透視する。
土煙の中シンジは全身に雷を纏い、剣を水平に、突きを繰り出す形で構えていた。

【雷撃突進術・超龍雷光牙】

シンジが地を蹴ると同時に、全身が眩く輝き、雷の龍となって神龍皇に突進していく。
魔眼の力でそれを見ていた神龍皇は慌てることなく避ける。
避けられたシンジはそのまま岩壁に進み、壁を蹴って神龍皇の真上へと飛び上がった。
さらに空中で剣を上段に構え、全身を覆っていた雷を剣に集中させる。

シンジ:【魔法剣術・雷撃冥皇斬】

シンジは雷の剣を振りかぶり、神龍皇へと切り掛かる。
それに対して神龍皇はその頭部に生えた角で受け止める。

ガチッ!!!

剣と角の衝突で青白い魔力火花が散る。
このとき、聖魔剣ルシファーに小さな傷が走っていたが、シンジは気付かなかった。
シンジは衝突した時に生まれた力を使い、神龍皇から離れ、再び対峙する。

「(まさかこれほどの物とは。しかし今だにはっきりとはわからんな。確かめるにはこれしか無いか。)
 良くぞ受けきった。しかもそこから反撃までしてくるとは。褒美に見せてやろう。我が究極の技を!」

そう言うと、神龍皇は炎を吐くときと同様、首を天に向けて伸ばした。
そして意識を集中する。すると、頭部が青白い魔力の光に覆われていく。
その光は徐々に下へ降りていく。頭部から首へ、首から胴体へと。
光は背中にある砲台のような器官の所で止まった。
そして四肢を踏ん張り、首を地面近くまで振り下ろした。

「受けるが良い。これが我の誇る地上最強の技。無属性魔術・神龍砲!!。」

それと同時に強大な魔力の反流が巻き起こり、背中の砲台から凝縮された魔力が発射された。

シンジは覚悟を決めていた。威力、スピード双方から考えて絶対に避けられないとわかったからだ。
だからシンジは敢えて前に出た。神龍皇の最強技を正面から受け止めに出たのだ。

シンジ:「竜牙剣術一刀流最強究極技・天地陰陽・対消滅両断剣!!!」

シンジの全闘気を込めた一撃と神龍砲が衝突し、その場にスパークが起きる。
力は拮抗していた。が、徐々にシンジが押されだした。

シンジ:「ぐおおぉぉぉ―――――!」

シンジは足で下の岩盤をえぐりながら、少しずつ後退していた。
そしてルシファーは少しずつ、先程出来た傷を大きくしていた。まるで持ち主の負担を減らすように。

  ドンッ!!

シンジ:「なっ!?チクショー―。」

ついにシンジは壁際に追い詰めらた。

「これまでだな。いかに手加減したとはいえこれほど耐えるとは。正直驚いたぞ。だがもう後はない。」

シンジ:「負けられない!まだ父さんたちの敵を討っていない!まだ終われない!
     こんなところで終わってたまるものか!!。」

シンジは自分の全魔力も剣に集中した。

シンジ:「ウオオォォアアア―――!!」

シンジの叫びと共に巨大な爆発が巻き起こる。

「グ、一体何がどうなったのだ。」

しばらくすると、少しずつ爆煙が晴れてくる。
そして晴れた爆煙の先には、所々破れた服を着たシンジが壁によりかかりながら立っていた。

シンジ:「危なかった。ルシファーが無ければとてもじゃないけど持ち堪えられなかった。
     ありがとう、ルシファー。」

しかしその言葉と同時に、ルシファーに縦に亀裂が入り、次の瞬間真っ二つに折れ、地面に突き刺さった。

一方そのころ、神龍王は驚愕していた。当然だろう。
いかに手加減していたとはいえ、休眠期に放っていた物の三倍近い威力があったのだから。

「(やはりこの者が選ばれし者なのか?ならばここで殺す訳にはいかん。)
 人間よ、勝負はついた。剣が折れ、魔力が尽きてはもう戦えまい。汝はまだまだ強くなる。
 ここで殺すのは惜しい。今は去り、出直してくるが良い。」

折れたルシファーを呆然と眺めていたシンジだったが、その言葉に反応を示した。
そして、おもむろに剣を抜き取ると両手に構えた。

「何のつもりだ。」

シンジ:「ここで退いたらもう二度とこの場に立てない気がする。まだ僕は戦える。
     ルシファーも戦えといっている。何より僕自身があなたと戦いたがっている。」

その言葉にルシファーが反応を示した。
右手に持っていたほうは白い光を。
左手に持っていたほうは黒い光を放ち始めた。
そしてシンジの頭の中に、何か声が響いてくる。

『汝を我らの主と認めよう。我らの力を見事使いこなしてみよ。』

シンジ:「声をかけてきたのは誰だ?」

『我は聖剣ルシフェル』

右側から声が聞こえる。

『俺は魔剣サタン』

今度は左から声が聞こえてきた。

『我らはもともと創造主に使えていた直属の天使だった。』

シンジ:「創造主?」

『この世に住まう全ての生命、この世界を生み出した御方だ。』

『あるとき俺は創造主に呼び出された。そしてある使命を受けた。』

『その使命ゆえに我らは光と闇に分かれ、その姿を剣に変えた』

『二度と元の姿に戻れないことを承知の上でな。』

『しかし我らは強すぎた。その為一つになり力を押さえていたのだ。』

『そしてようやく俺達の本来の力を使える人物に出会えた。それがおまえだ。』

『我らを見事使いこなし、真の力を引き出して見せよ。』
 
 ・
 ・
気がづいたとき、シンジの手には右手に白い刀身の剣、左手に黒い刀身の剣が握られていた。

シンジ:「これが・・・、聖剣ルシフェル。魔剣サタン。体力が回復している。まだ戦える。」

そのころ神龍皇はシンジの手に握られた剣を凝視していた。

「(あの剣は!?やはりこの者が選ばれし者か。あの二人が選んだのだ。間違いあるまい。)
 人間よ、まだ続けるのか。」

シンジ:「ええ。もちろんです。」

「そうか・・・。そういえば、まだ名を聞いていなかったな。汝、名は何と言う。」

シンジは剣を構え直しながら答えた。

シンジ:「シンジ・・・、碇シンジです。」

「シンジか・・・。良かろう、シンジよ。本気で相手をしてやろう。
 もし我に勝つことが出来たら、我の力の全てをくれてやる。命を懸けて掛かって来い。」
 ・
 ・
これより半年間、天地を震わせる戦いは、昼夜を問わず続けられた。
 ・
 ・
半年後・・・、シンジの前には傷だらけに成り、倒れている神龍皇の姿があった。
無論シンジも無傷ではない。
満身創痍、まさにこの形容がぴったりと当てはまる姿だった。

神龍皇は最後の一撃を受ける瞬間、シンジの背中が輝いて見えた気がした。
後に、これがシンジの真の力の片鱗だったことを神龍皇は感じ取ることになる。

「見事だシンジよ。約束通り我が力をくれてやろう。受け取るがいい。
 又、我が力を手に入れたということは全て竜族を統べる権利を持ったということだ。
 すべての竜族は汝に従うだろう。特徴や能力は我が力を受け入れればわかるようになる。
 使いこなして見せるがいい。我が力と共に。」

こうしてシンジは最強の力、無の属性の力を手に入れた。
そして、すべての竜族を従えたのである。

それから数日後、シンジはこの地を立った。
闇の使徒を追うために。

****************************************

シンジ:「これがその時の全てです。僕がなぜ無の属性なのか納得してもらえましたか?」

そう言ってシンジは全員を見回す。

ミサト:「えっ、ええ、納得できたわ。ありがとう。」

ようやくミサトはそれだけ搾り出した。他の人間はまだ固まっている。
シンジの話した真相は、それほどまでに衝撃が大きかったのだ。
結局、全員が再起動したのはそれから10分後のことだった。

加持:「それでシンジ君。これから君はどうするんだい?」

シンジ:「どうすると聞かれても・・・、また闇の使徒を探す旅を続けるだけです。」

ミサと:「じゃあさ、ここのネルフに入らない。」

シンジ:「えっ!?」

ミサトからの突然の申し出に驚くシンジ。

マナ:「アッ、それ賛成。」

トウジ:「せやな。こないに強い奴が追ったら何かと楽やろうし。」

ヒカリ:「トウジ!なんてこといってんのよ。」

マユミ:「まあまあ、ヒカリさん。落ち着いてください。」

ムサシ:「まあ、俺も賛成だな。稽古もつけて貰えるだろうし。」

ケンスケ:「色々と貴重な話も聞けるだろうしな。」

カオル:「それにシンジ君。何か当てはあるのかい?」

シンジ:「いや・・・、特に無いけど。」

レイ:「だったら尚更だわ。当ても無く探しても無駄になりかねないし。」

ミサト:「そうよ。ここなら闇の使徒に関する情報も入って来やすいし。」

リツコ:「もちろんよ。何しろ私が作った魔導ネットワーク制御装置『MAGI』があるんだから。」

マヤ:「そうですよ。見つかるまでの暫くの間でも、ここに滞在してはどうです。」

アスカ:「そうよ。そうしなさいよ。」

加持:「と、言うわけなんだがシンジ君、どうかな?」

シンジは少し戸惑っていたが、一人で探すのには限界があるのも事実だった。
暫く考えてみたが、結果はわかっていた。

シンジ:「ふぅ、わかりました。それでは暫くの間お世話になります。」

ミサト:「よーし!じゃあ今日は祝勝会、さらにシンジ君の歓迎会ね。
     プワーーと派手にやるわよ。」

アスカ:「ちょっとミサト、それ本気でいってるの!?」

ミサト:「もちろん本気よ♪」

それを聞いたシンジ以外のメンバーが肩を落とす。
ミサトの暴走振りを想像したせいだろう。

一人浮かれるミサトと、それを見て肩を落とす他の面々。
シンジはその光景を不思議そうに見ながら、何か温かみを感じていた。
それは彼が五歳のときに失った物だった。

そして、シンジは神龍皇が最後に言っていた言葉を思い出していた。

****************************************
「シンジよ、汝は選ばれたのだ。この世を破滅から救う者としてな。」

シンジ:「破滅から救う?」

「そうだ。その剣、サタンとルシフェルから聞いたと思うが、かって創造主という方がいた。
 その方は争いのない世界を作ろうとした。
 しかし、光があれば闇があるようにその世界は作れなかった。魔獣が生まれたのはそのせいだ。
 創造主はそれに負けぬように、人間に力を与えた。しかし人間からも闇は生まれてしまった。
 そうやって肥大化した闇は、最終的に創造主に匹敵する力を持ってしまった。
 我らはそれを破壊神と呼んでいる。」
 
シンジ:「破壊神・・・。」

「破壊神はこの世界を滅亡させようとする存在だ。
 創造主とルシファー、そして我は協力して破壊神を封印した。
 しかしそのときに創造主もこの世を去った。その時に創造主はこう言い残した。
 破壊神が復活しようとした時、選ばれし者が現れる。おまえ達はその者に力を貸せと。
 良いかシンジ、だからといって気にすることは無い。
 我は最強の称号に未練は無い。しかし汝と戦っていたときは正真正銘全力を尽くした。
 汝は我に勝ったのだ。それを忘れず、自分を見失わず、汝は汝の道を歩め。
 その先に何があろうと迷うことは無い。それが汝の選んだ道なのだから。
 運命とは決まっていない。自らの力で切り開く物なのだから。
 汝が死ぬか、我を開放せんとした時、我はまた蘇る。
 それまで我が力、存分に使うが良い。必要とあれば助言くらいはしよう。」

****************************************

神龍皇。僕はまだあなたの言ったことの意味が良くわかっていないかもしれない。
けれど、後悔はしないように生きていこう。
あなたとルシフェル、サタンの意志に答えるために。
父さんたちの敵を討つために。

暫くそうしていると、他の人はもうかなり前方に言っていた。

アスカ:「ちょっと、早く来なさいよ。」

シンジ:「うん。今行くよ、惣流さん。」

僕がそう返事をすると彼女は少し寂しげな顔をした後、僕にこう言ってきた。

アスカ:「私のことはアスカと呼びなさい。光栄に思いなさいよ。
     私がファーストネームで男に名前を呼ばせるなんて、そうそう無いことよ!
     そのかわり、私もシンジって呼ぶからね!」

シンジ:「わかったよ。アスカ。」

そう答えて僕とアスカは他の面々に遅れまいと駆け出した。


このときシンジは、アスカに対して不思議な思いが生まれてきたことに気付かなかった。
そして、あれが今のアスカができる、精一杯の行動だったことを。

また、アスカも気付いていなかった。なぜシンジに惣流と呼ばれて寂しかったのかを・・・。

To Be Next Story.

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後書き?

何なんでしょう、これ?
書き終わって最初に思ったことがこれでした。(いいのか、そんなもの投稿して)
自分文才が無いなー。
しかも当初より大幅に削ったし。何しろNOカットだと50KB超えたからな。
それでも今までで最長です。この作品。反省点ばっかですけど。
イヤー咆哮とか雄叫びは難しい。変ですかね、やっぱり。

しかし三歳で家事とか、半年間戦いっ放しはさすがに無理があるかな?
まあ笑って許してください。

レイ「・・・作者。」
神:!?びっくりした。はい、何でしょうか、綾波さん。アッ、その前に前回はすいませんでした。
  鋼鉄娘なんかが乱入したせいでお呼び出来なくて。
レイ「問題ないわ。それより次回はどうなるの。」
神:ええ。ちょっとシリアスが続きましたので、次回は宴会にして一息入れようと思っていますが。
レイ「そして私に対する読者のイメージを壊すのね。」
神:いいえそんなことはしませんよ。ここに原稿あるから見ますか?
レイ「貸して。・・・・問題ないわ。」
神:それはどうもありがとうございます。
レイ「それより、私の出番が少ない。
   関西弁や洞木さん、鋼鉄娘やメガネ×2やその他(アスカ、シンジ以外)はいいとして、
   なぜ私に出番が少ないの?」
神:それは常々反省しております。そのかわり、綾波は外伝を考えているんですが。第三に着く前の話を。
レイ「すぐに書きなさい。」
神:無理です。構想が全然まとまってないし、何より、もし書くとしてもこれが完結してからです。
レイ「そう、わかったわ。じゃあ早く次回作を書くのよ。」(スタスタスタ・・・)

あら帰っちゃったよ。まあ、何はともあれ読んで頂いてありがとうございます。
神龍皇やシンジ君が異様に強いということが少しは伝わったでしょうか?
もし少しでも伝わっていたなら幸いです。

そうそう、突っ込まれる前にネタをばらしておきましょう。
剣の設定はある悪魔と天使の出てくる漫画の設定を基本に、
某アクションロープレを組み合わせた物です。

次回はLASなシーンを入れたいと思っています。
いい加減そういったシーンを書かないと苦情きそうですから。

次回もよろしくお願いします。
ではアスカさん後はよろしくお願いします。


アスカ:まさか、神龍皇に勝っちゃうなんてねぇ。

マナ:ってことはさぁ、龍は全部シンジの言うこときくってわけ?

アスカ:龍の親玉が従ったんだから、そうなんじゃない?

マナ:龍ってもの凄く強いんでしょ?

アスカ:そりゃそうよ。

マナ:じゃ、シンジ自身が敵と戦わなくてもさ、龍にやって貰ったらいいんじゃない?

アスカ:龍の大群かぁ。それもまた壮絶ねぇ。

マナ:なーんだ。わたし達がなんにもしなくても、全部龍がやってくれるんだぁ。小人さんみたーい。

アスカ:誰がアンタの手伝いするって言ったのよ。

マナ:だって、シンジが・・・。

アスカ:シンジはアタシの為に頑張ればいいのっ。

マナ:あーっ。シンジ独占禁止ぃっ!
作者"神竜王"様へのメール/小説の感想はこちら。
ade03540@syd.odn.ne.jp

感想は新たな作品を作り出す原動力です。1行の感想でも結構
ですので、ぜひとも作者の方に感想メールを送って下さい。

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