シンジはアスカを抱き、宙に浮かびながら考えていた。

シンジはこの姿を人前にさらしたくは無かった。
別にこの姿を呪っている訳ではない。

この姿は神龍皇との戦いで授かった物。
いわば神龍皇に勝利したという証。
ある意味では自分の望んだ姿と力。

しかしそれでも人に見せるのは躊躇われた。
なぜならシンジは知っているから・・・。人がどんな生き物なのか。

人は自分の未知なる物、自分の脅威となる物とは必ずある程度の距離を取り、嫌悪する。
それが例えどんな理不尽な理由であろうとも・・・。

この姿を見れば人は必ず自分を恐怖の対象とする。
それは別にかまわない。今までも一人で生きてきたのだから。
だから何時この力、この姿を出してもかまわないと思っていた。

でも今回は違った。力を行使するのを躊躇っていた。
彼女を助けた今ならばわかる。
彼女に侮蔑され、恐怖の視線が送られるのを恐れていたのだと。
だがそれももう遅い。既に見せてしまったのだから・・・。この人達とはもう居られない。

シンジはここを去る決意を固めていた。悲壮なほどに。
それだけ深く考え込んでしまっていた。
だからシンジは気付かなかった。アスカがシンジを恐怖の対象としてみていないことに。

無言なのはシンジの背に生えた巨大な龍の翼に驚いた為。
そしてシンジのその姿と神々しさに見惚れてしまった為であることに。

シンジはそんなアスカに気付かず、ミサト達の元へと飛翔した。

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八翼の堕天使
ー第九話 堕天使の覚醒ー
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バラル:「ハッハッハ!あいつめ、あんなことをいいながらも逃げたに違いない。」

カイン:「見殺しにすることは出来ないが死にたくは無い、か。おろかな感情だ。」

男達は既にシンジが逃げたものだと決め付けていた。
そんな男達にミサト達は反論したかったが、確たる証拠は無い。
それに自分たちはシンジの事をほとんどわかっていない。
もしこの場にアスカが居れば一番最初に喰って掛かっていただろう。
ただその場合、シンジが助けに行ったかが問題になるが。

ミサト達が歯噛みをしている間も、男達はシンジの事を嘲り続ける。
馬鹿というのもおこがましい。やはり死なねば直らないのだろうか。

そんな時、あたりに風が吹き荒ぶ。その風は上から吹き降ろすように吹いていた。
不思議に思ったレイは上を見上げ、絶句した。

そこには翼を生やしたシンジがアスカを抱えて舞い降りてくる姿があった。
その光景にその場にいた人間全てが言葉を失った。

シンジはゆっくりと地面に降り立ち、レイとヒカリの元へ向うとアスカをそっと降ろした。
シンジ:「アスカを・・・頼む。」

シンジはそう言うと自分を見つめていた蒼い瞳に微笑んだ。寂しそうに。
そしてシンジは身を起こすとメンバーをゆっくりと眺める。
彼らの瞳に写っているのは紛れも無く恐怖の光。
シンジはもう一度寂しそうに微笑むとゆっくりと男達の方に振り向く。
振り向いた彼の顔に笑みは無く、その三つの瞳に殺意をたたえていた。

バラル:「ば・・・化け物」

バラルがようやく吐き出した言葉にシンジは苦笑いをする。
シンジはゆっくりと地面から足を離した。そして剣を構え、男達に向って言葉を放つ。

シンジ:「光栄に思えよ、この俺が最強の姿で相手してやるんだからな・・・。
     もし恨むなら自分たちの所業を恨むんだな。
     この姿と力を手にする原因を作ったのは貴様らなのだからな!!」

シンジは殺意と憎悪をさらに増大させ、男達に向って飛翔する。

シンジの中には新たなる怒りが生まれていた。
それは敵を討つことを願う黒い炎とは別の、赤い紅煉の炎。
シンジはそれがなんなのか、そしてどこから生まれてきたのかわからなかった。

それが、この男達の所為でアスカにこの姿を見せるはめになった事、
アスカに嫌悪されるという事に対する思いから生まれている事に。
自分がアスカに惹かれて好意を持っている所為だと言うことに気付かずに。

いや、シンジは彼女に好意を持ち始めていること自体気付いていなかったのだが。
しかしそれも仕方が無いだろう。
自分が愛されている記憶ですら他人に比べれば格段に少ないのだ。
ましてや人との接点を殆んど失い、この姿の為に人に嫌悪されつづけた彼は、
その感情がなんなのかさえ知らなかったのだから。

「ウオオオオオォォォォォー―――――!!!」

シンジは何時しか吼えていた。溢れ出る抑えようの無い怒りに。
その咆哮から放たれる波動は神龍皇そのもの。
咆哮は男たちの恐怖の度合いを高めていた。

バラル:「ち、地中魔獣共ー!!」

バラルは恐怖に引きつった声で命令を放つ。
その命令に反応し、シンジの進行方向の地面が盛り上がり、魔獣が現れた。
モグラのような姿をした魔獣が十体、シンジを取り囲むように地中から飛び出し攻撃する。
魔獣の鋭く光る爪がシンジを襲う。

  ガキッッ!!

シンジに攻撃が当たったと思われた時、鈍い音があたりに響く。
見ればシンジは魔獣の爪をその翼で受け止めていた。
そしてシンジは更なる力を解放する。

シンジ:「・・・黒刃、赤翼、氷河、展開せよ・・・」

シンジの言葉と共に、さらに三対の翼がシンジの背に生える。
そして次の瞬間、魔獣は崩れ落ちていく。
黒焦げの者、切り刻まれた者、灰になった者、氷付けになった者。
その殺され方はさまざまであった。
十体の魔獣が崩れ落ちたとき、そこには四対八枚の翼を広げたシンジが居た。
八翼の堕天使・・・、アスカはその姿を見た時そう感じた。
その背中は孤独の寂しさを背負っているようにも。
静寂の中、シンジは自分の姿を寂しそうに眺めながら言葉を紡ぐ。

シンジ:「どうだ、俺のこの姿は。恐ろしくて声も出ないか。
     この龍翼は神龍皇の硬質な翼と俺の闘気が生み出した物。
     その防御力は如何なる攻撃も弾く神龍皇の外骨格を凌駕する。
     また、この翼は雷と風、すなわち天を司る力を持っている。」

シンジは自らの力を説明していく。そこには自慢や傲慢の響きは無い。
あえて言うならば、何も知らずに死ぬのは不憫だから。
そう、一番最初にバラルがシンジ達に言った言葉と同じである。
これ以上の皮肉は無いかもしれない。

シンジ:「残りの三対の翼は神龍皇の皮膜の翼と俺の殺気、怒気、残酷性から生まれた。
     この黒き翼は黒刃、その名の如く刃となり、全てを切り払う、
     と言ってもさすがに龍翼は切ないがな。
     この赤い翼は赤翼、炎を司り全てを焼き払う。
     青い翼は氷牙。水と冷気を司り、大抵の物は凍てつかせられる。
     そして、この額の瞳は神龍皇の魔眼だ。
     この瞳で見るだけで千里を見通し、焼き払い、
     相手の心理を読み、殺すことさえできる。」

シンジの言葉にその場に居た全ての人間が戦慄した。当然だろう。
自分の考えを隠すこともできず、睨まれただけで殺される。
はっきり言って話にならない。
そんな力を持つ者に誰が勝てるというのか。

シンジ:「安心しろ。この瞳の力を使うつもりは無い。個人的に好まないのだ。
     しかしこの姿になると自然出てしまう。いわばこれは俺の制御装置だ。
     さて、説明はこれでお終い。覚悟してもらおうか。」

そう言うとシンジは剣を再び二本にし、交差させる形で構える。

シンジ:「ルシフェル、サタン。おまえ達は元は一人の天使だった。
     が、その力を二つに別け、さらに押さえ込む為に一つになっていた。
     しかしその二つに別けた姿が本来の姿ではあるまい。
     さあ、真の力を解放せよ。俺はそれを使いこなして見せよう。」

シンジの言葉と共に二本の剣は光を放ち一つになっていく。
光が収まったとき、シンジの手にあったのは、
シンジの身長に匹敵する巨大な刀身を持つ剣だった。
その刀身は実に不思議な光を放っていた。

シンジ:「最強形態、聖魔混沌剣・ルシファー。」

シンジはその剣を軽々と振るう。
そのまま剣を自分の目の前に水平に構えると、眼を閉じて何かに集中する。
そしてその瞳が開いた瞬間、全闘気、全魔力を開放する。
それと同時にシンジを中心に大地にひびが走り地面が隆起する。

ミサト:「そんな!?ただの力の開放だけでこれ程の破壊力が!?」

ミサト達の瞳に再び恐怖が走る。
しかしアスカだけは違った。シンジの今の姿に恐怖など感じない。
むしろ頼もしくさえ感じる。
その存在が自分を包み守っているようで安心すら覚えた。
そしてこの時、彼女は始めて実感した。
自分がこの人ならざる姿をした少年を愛し始めていることを。
いや、人であろうと無かろうと関係なく、シンジという存在を愛してしまったという事を。

男性に限れば信じられなかったのはアスカも同じ事。
仲間である加持やトウジ達を信じたいとも思っていたが、完全には信じきれない。
そんな複雑な思いを感じていた時にアスカはシンジに出会った。
シンジはそんなアスカの思い等構わずに自然体で彼女に接し、
何時しか頑なな彼女の心を内側から溶かしていた。
そしてシンジの存在は何時しか彼女の中でしっかりと腰を落ち着けていた。
アスカはシンジに感謝していた。自分に自然体で接し、自分を守ってくれたことを。
そんな思いを持った彼女がシンジを好きになるのは当然だったのかもしれない。

そんなアスカの思いを知るはずの無いシンジは再び男達に怒りを叩きつける。
いや、その様は男たちに向って吼えているようにすら見える。

シンジ:「この姿を生み出すきっかけを作ったのは貴様らだ。
     この姿を呪いはしない、自分が望んだのだから。
     だが、この姿のおかげで幾度町を救いながらも人に嫌悪されたかわかるか。
     命を救われながらも、恐怖の目で見られ、何度殺されかけたか。
     見返りなど求めていない。だが俺は魔獣と同じに見られて生きてきたのだ。
     それも全て貴様らの所為だァァー――!!!

シンジはその怒りに身を任せ、剣を構えて飛翔する。
その三つの瞳から血の涙を流しながら。

その瞬間、男達の中から一つの影が走り出す。ゴウラだった。
ゴウラはその手に持っていた魔力を帯びた両手大剣(グレートソード)を、
シンジに向って振り下ろす。
シンジはそれを悠然と剣で受け止めた。

ゴウラ:「我が名はゴウラ!貴様のようなリベンジ野郎を殺すのが楽しみでな。
     その顔を絶望で塗りつぶしてくれる!!」

そう言うと、ゴウラはその両手にさらに力を込める。
自分の力に最大の自信を持つ戦士系の全力の攻撃。

ゴウラ:「ウガアアアァァァァー―!!」

それに対して、シンジは受け止めたまま微動だにしない。
暫くそのままだったが、それ以上力が上がらないことを確認すると、
シンジは深く溜息をついた。

シンジ:「ふぅ、まさかその程度なのか?
     今までの様子からだとかなりの手練れだと判断していたんだが。がっかりだ。」
シンジはそう言うと受け止めていた攻撃を片腕で弾き返す。
攻撃を弾き返されたゴウラはそのまま後ろに仰け反る。

シンジ:「死してその罪を償え。」

シンジはそのまま剣を横一文字に振るう。
ゴウラは驚愕の表情のまま両断され、そのまま崩れ落ちていく。

カイン:「ゴウラ!!信じられん。
     あいつは闇の使徒の中でもかなりの豪力を持っているんだぞ。」

確かに常識的に考えれば華奢にしか見えない少年が、
2メートル近い骨に筋肉を纏っているような男に勝てるはずなど無いだろう。
しかしシンジは十メートルを超える魔獣サキエルの一撃すら受け止めたのである。
人のレベルでどうにかできる力ではないだろう。
男達が驚愕している姿をシンジは冷ややかな眼で見つめる。
そして残酷に言い放つ。

シンジ:「次は貴様らの番だ。」

多くの魔獣の返り血を浴び、赤く染まったその姿はまさに紅の修羅。
その姿に男達は恐れおののいた。

カイン:「ガイス!援護しろ!!俺が切り掛かる。」

ガイス:「わかった。ゲイル、おまえも手伝え。」

ゲイル:「言われなくてもそのつもりだ。」

カインはそのまま剣を構えてシンジに向っていく。
その後からガイスの魔術とゲイルの呪いがシンジを狙う。

ガイス:【万能にして全ての魔法の根源たるマナよ、業火を生み我が敵を焼き尽くせ】

ゲイル:【暗黒神よ、我はその力を請う。その力を持って彼の者を石となせ】

シンジはカインの攻撃を剣で受け止める。するとカインはすぐさま後方へと飛び退く。
カインが飛び退いた瞬間、ガイスの炎がシンジを襲う。
シンジはとっさに避けようとするが、ゲイルの石化の呪いの為、足が動かなくなっていた。
炎はシンジに直撃する。

カイン:「やったか!?」

カインは一瞬笑みを浮かべるが、すぐに凍りついた。
そこには青き翼、氷牙を使って炎を相殺し、龍翼でその余波を防ぎ、
その精神力で呪いを跳ね除けた無傷のシンジが立っていた。

シンジ:「小細工は、もう終わりか?」

そう言うと、シンジは四対の翼を大きく広げる。

シンジ:「せっかくだ。俺の翼で殺してやるよ。」

シンジはそう言い放つと、一瞬にしてカインの元へと近づく。
黒い翼をはためかせて。
黒刃はその羽根一枚一枚を全て刃に変えていく。
そして刃に変わった翼をはためかせ、シンジはカインを切り刻んだ。

シンジ:「黒刃・乱舞斬撃」

カインは言葉を発する暇も無くその生涯を終えた。
シンジはそのまま赤翼と氷河を広げ、ガイスとゲイルに向う。

シンジ:「赤翼・羽炎、氷牙・氷雨」

シンジの言葉と共に赤翼はその羽根を炎に変え、氷河は氷の結晶に変える。

そしてそれぞれの羽根をはシンジの元を離れ高速でそれぞれの標的に向う。
羽炎はガイスを、灰と成し、氷雨はゲイルを貫き、その亡骸を氷柱と成した。

シンジ:「残るは・・・一人。」

いつのまにか周囲の魔獣は全て駆逐され、その使命を終えた龍や召喚獣、
精霊は元いた次元へと戻っていた。

シンジはその冷たい瞳をバラルに向ける。その瞳には彼本来の優しい光は無い。
その瞳に射貫かれたバラルは何を思ったか急に笑い始めた。

バラル:「フッフッフッフッ・・・ッハッハッハッハッハ!!」

加持:「余りの恐怖に狂ったか?」

リツコ:「もしそうだとしても、仕方ないかもね。」

ミサト達は怪訝そうに見つめる。が、シンジはバラルを睨んだまま身動き一つしない。
相手の瞳の色で、狂ったわけではないのがわかったからである。

バラル:「この化け物め。こうなったら俺の切り札を使わせてもらうぞ。」

そう言うと、バラルは魔獣の死体に魔力を放ち引き寄せる。
そしてその死体で巨大な人型の魔獣を作り上げその中に潜り込む。
その魔獣は頭に三本の角を持ち、八本の腕を持っていた。

バラル:「見たか!これが魔獣使いの切り札!!超魔獣バーサーカーデビルだ!!」

シンジはそれを無言で見つめていたが、何を思ったか剣を地に突き立てると、
ゴウラの使っていた両手大剣を拾い上げ、バーサーカーデビルの腕に切り付ける。
切り落とすと誰もが思ったが、剣は途中まで食い込むとその抵抗に耐え切れずに折れた。

バラル:「無駄だ無駄だ!この肉体は多くの死体で出来ている。
    どんな攻撃もゴムのように収縮しからめとってしまう。魔法さえ弾き返す。
    無論死体だから俺は痛くも痒くもない。
    外法と呼ばれる技だが俺には関係ないしな。」

バラルは勝ち誇ったかのように自慢気に話す。

ヒカリ:「そんな!?」

トウジ:「そんなもん、どないせえちゅうんじゃ。」

レイ:「魔法すら聞かないというの・・・」

カヲル:「打つ手なしだね。」

ミサト達はバラルの言葉に不安を示す。
しかしそんな状態を叱咤する者がいた。

アスカ:「あんた達馬鹿じゃないの!シンジを少しは信頼しなさいよ!!」

そんなアスカに皆は不思議な顔をする。
アスカはそんな雰囲気を無視してシンジの方を見て誰にも聞こえないような声で呟く。

(誰がなんと言おうと、あたしはシンジを信じてる。)

そのころシンジは折れた両手大剣を見ていたが、
深く息を吸い込むと、それをゆっくりと吐き出した。
そしてゆっくりと言葉を紡ぐ。

シンジ:「自棄になって図体で勝負に来たかと思ったが、そうでもないようだな。
     しかしその程度で本当に勝ったつもりか?甘く見られたものだ。」

シンジはそう言うと再びルシファーを引き抜き構える。
そして低く屈んだかと思うと、そのまま高く飛び上がり飛翔する。
そしてある高さまで飛び上がるとそのままバーサーカーデビルに向って突っ込む。

「竜牙剣術一刀流・龍牙突撃刃」

ルシファーはそのまま深々とバーサーカーデビルに突き刺さる。
しかし次の瞬間バーサーカーデビルの腕がシンジの翼を一枚ずつ掴む。
そして再び勝ち誇っていう。

バラル:「馬鹿め、そんな事をしたって無駄だ。
     その一撃で俺を捉えられれば話は違っただろうがな。なあ、化け物。」

その言葉が放たれた瞬間、シンジの殺気が爆発的に高まった。

シンジ:「俺は、俺は化け物じゃねぇ!俺は、人間だああぁぁぁ!!」

その言葉と共に、龍翼が光を放つ。しかしバーサーカーデビルの腕は離れない

シンジ:「龍翼・雷撃波!風刃大竜巻!!」

それと同時に龍翼から凄まじいまでの雷と風が生じ、剣に吸い込まれていく。

シンジ:「喰らえ!!龍翼から生まれたエネルギー、全て叩き込んでくれるわ。
     竜牙剣術流・龍牙風雷刃・嵐!!」

シンジの言葉と共にバーサーカーデビルの中に凄まじいエネルギーが暴走する。
が、バーサーカーデビルが崩れ落ちる瞬間!

バラル:「くたばれ――!!」

バーサーカーデビルの背後からバラルが短刀を持って襲い掛かった。
剣はバーサーカーデビルに突き立ったまま、翼もまだ開放されていない。
バラルは勝利を確信する。

  ズシャ!!

バラル:「グハッ!」

が、肉の貫かれる音と共に血を吐いたのはバラルだった。
その体には黒い刃が突き刺さっていた。その刃はシンジの頭から伸びている。

シンジ:「一つ、いい忘れていた。俺の髪は自在に伸び、俺の意思で硬質化し、
     刃にすることができる。髪刃と言ってな、俺の隠し技だ。」

それを聞き、バラルは悔しげに顔を歪めたが、次の瞬間には笑い始めた。
そしておかしそうに話し始める。

バラル:「まさかこれほどの男が居るとはな。あの時探し出して殺して置けばよかったぜ。     しかし、もう貴様らに帰る場所は無い。」

その言葉に、シンジではなくミサとが反応する。

ミサト:「どういう意味かしら。」

それに対してバラルは嘲るように話す。

バラル:「簡単なことだ。俺たちの本隊は第3新東京を攻めている筈だからな。
     今頃ネルフ本部を占拠してるだろうぜ。連絡があったからな。
     ネルフ本部は落ちたと。
     俺たちは貴様らのような腕の立つのを引き付けて置くのが仕事だったのさ。
     計画通りだったと言う訳だ。誤算は・・・貴様の存在だったが・・・な。」

バラルは最後にシンジを恨めしそうに見ると息を引き取った。

その場に残った人間達に動揺を残して。

To Be Next Story.
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――後書き

さて、八翼の堕天使第九話、いかがでしたでしょうか。
ようやく題名の由来が書けましたね。いや〜長かった。
今回はシンジのメンタルケアは書けませんでした。
とりあえず蛇神の森偏を終わらせる事を重視してしまった物で。
すいませんです。
そのかわり、アスカの思いをはっきりとさせてみました。
シンジの心の傷を癒すのは今後のアスカ次第と言うことになりますね。
自分にこんな大層な物が書けるのか正直不安です。

作「さて今回のゲストは再びシンジ君です。」
シ「神竜王さん、この作品の僕、異形すぎません?」
作「う〜ん、確かにそうかも知れません。でも強くなってもらわないと。」
シ「だからってやりすぎでは?」
作「でもこの能力が題名の元なんだし、
  元々この話はどんな姿でもアスカはシンジを愛せる!と言うのが大本なので。」
シ「い、いやそれはその・・・嬉しいですけど・・・」
作「さて次回は第3新東京に戻ります。このまま一気に最終話まで突っ走りますよ。」
シ「頑張ってくださいね。でも収拾ついてるんですか?」 
作「グ、努力します。」

P,S
感想、誤字、脱字、ここはこうした方がいいんじゃないか、と言う意見ございましたら送ってください。
悪戯、冷やかしは御免こうむります。


マナ:やっと戦いに勝てたのにぃぃ。

アスカ:あなた、なにもしてないじゃない。

マナ:そんなことよりネルフが大変なことになってるわよっ!

アスカ:これは、シンジと愛の逃避行をするしかないわっ!

マナ:馬鹿なこと言ってないで、なんとかしなくちゃっ!

アスカ:やっぱり、何人か防衛に残るべきだったのかしら。

マナ:そんなことしてたら、やられてるかもしれないわよ?

アスカ:シンジに着いて来て、ひとまず正解?

マナ:あなたは、足手纏いになったけどね。

アスカ:うっさいわねぇっ! 何度も言わないでよっ!

マナ:もう、後はシンジに頼るしかないわねぇ。

アスカ:頼るって、もう手遅れなんじゃないの?

マナ:そうかも・・・。どうしよう。
作者"神竜王"様へのメール/小説の感想はこちら。
ade03540@syd.odn.ne.jp

感想は新たな作品を作り出す原動力です。1行の感想でも結構
ですので、ぜひとも作者の方に感想メールを送って下さい。

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