君は他の奴とは違った。

君は他の奴のように本能に従って生きていない。
他の奴と違ってあいつは優しさを持っている。

一種一体しかいない君。

最初は何故君のことが気になったのかわからなかった。

でも少し考えれば簡単なことだったんだ。

似てるんだ・・・僕自身に。

あれ以来、君は僕のそばにいる。
僕に忠誠を誓ってくれている。

あいつは僕を信じてくれている。
だから僕もあいつを信じる。

何故なら君は命の核を僕に預けることまでしてくれたから。
こんな僕をここまで信じてくれたことが嬉しかった。

だからといって自分の部下だとは思っていない。

僕にとって、君は唯一の相棒。
僕が初めて、そして唯一心を許せた存在。

でも、・・・今は少し違うのかな?

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八翼の堕天使
ー第壱拾壱話 黒い魔獣ー
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黄金竜は既にかなりの距離を走破していた。
目的の第3新東京市まで後百五十キロほどの距離。
そこまで来て、先程から続いていた沈黙をシンジが破った。

シンジ:「黄金竜、一度止まってくれ。」

「?承知しました。」

黄金竜は疑問を持ちながらもシンジの命令通りその足を止めた。

アスカ:「どうかしたの、シンジ?」

アスカもこの行動の意味が読み取れず、シンジに問い掛ける。
その疑問に対してシンジはアスカを振り返って逆に質問する。

シンジ:「アスカ、第3新東京の警戒網はどのくらい広いの?」

シンジのその問いに対し、アスカ一瞬呆気に取られたが、すぐにその質問の真意を理解する。
すなわち、シンジは闇の使徒に気取られぬように警戒しているのだ。

アスカ:「ちょっと待ってて。今専門家に聞いてくるから。」

シンジ:「専門家?」

シンジの疑問を気にせず、アスカは黄金竜の首を背中に向って降りていく。
アスカの言う専門家とは無論リツコのことである。
リツコは第3新東京の設計に深く関わっていた。
当然セキュリティーに関する部分も彼女の管轄である。
リツコよりも第3新東京及びネルフに詳しい人物はいない。

アスカ:「リツコ、ちょっと聞きたいことがあるんだけど。」

アスカの言葉に、何故止まったのか首を傾げていたメンバーの視線が集まる。
そんな中、リツコは冷静にアスカに対処する。

リツコ:「何、アスカ。聞きたいことって。」

アスカ:「第3新東京のセキュリティー範囲ってどのくらいなの?」

リツコ:「ああ、なるほど。そういうことね。」

アスカの疑問に対してリツコは納得したように説明する。

リツコ:「そうね、第3新東京を中心として大体三十キロぐらいよ。
     ただこれほどの巨体と力を持っていると五十キロくらいでも反応する恐れがあるわ。」

アスカ:「ふ〜ん、わかったわ。」

アスカはリツコの説明に納得すると再びシンジの基へと歩いていった。
そんなアスカを見送った後、ミサトはまだ状況が掴めないらしく、リツコに詰め寄る。

ミサト:「ねえ、リツコ。今の会話と現在の状況、どう関係してるわけ?」

リツコ:「ミサト、あんたそれマジで聞いてるの?」

リツコの反応は呆れ気味である。
それに対してミサトは拗ねたようにいう。

ミサト:「何よ、わかるわけ無いじゃないよ。」

リツコ:「でも加持君はわかったみたいよ。」

その言葉にミサトが加持の方を振り向くと先程までの難しい顔はどこへやら。
納得したような顔をしながら笑顔を称えて目を瞑っていた。

ミサト:「ふんだ。どうせあたしは理解力が無いですよ!」

リツコ:「まあまあ、拗ねてないで。ちゃんと説明してあげるから。」

リツコの言葉にミサトはすぐに顔を向ける。その顔はなぜか笑顔である。
リツコは深く溜息を吐いた後説明を始めた。

リツコ:「まあ少し考えればわかることよ。多分シンジ君は相手の行動を考えたのね。
     直接乗り込んで相手が罠をはっている所へ飛び込む真似はしないって訳よ。
     だから警戒区域の範囲には簡単に入らないように、
     あらかじめ確認しようと思って黄金竜を止めたのよ。」

リツコの説明はいたって簡潔明瞭。
というよりもそれ以上難しく言えなかっただけだが。

その説明に納得したのかミサトはアスカとシンジの居る方に視線を向ける。
それと同時にリツコと加持も視線を向けるが、二人の瞳は険しかった。
まだどこかでシンジに警戒している思いがあるのだろう。

アスカから警戒範囲を聞いたシンジは再び黄金竜を走らせた。
が、今度は第3新東京まで約七十キロの辺りで止めた。
近くには岩山などが多くある場所である。
シンジは風の精霊王・イルクの力でメンバーをおろすと、黄金竜を元の次元へと戻した。

アスカ:「シンジ、これからどうするの?」

シンジ:「それを考えるのは君達だよ。」

アスカ:「どういうこと?」

アスカはシンジの言葉に首をかしげる。
シンジの言葉の意味は半分はわかる。
これだけの人数で行くのだからそれなりに作戦は必要だろう。
しかし今の言葉だとシンジはそこに介入はしないような言い方に取れる。
アスカにはそこが理解できなかった。

シンジ:「僕はあの街やネルフ本部について殆んどわからない。
     だから取り戻す手段や段取りは君達で考えた方が良い。
     僕はそれに対して情報を与えるだけだよ。」

アスカ:「情報?どうやって?」

シンジ:「僕はこの間、君達が蛇神の森幾準備のために控え室を出て行った時、あることをした。
     あそこの壁にある魔法陣を書いてきたんだ。最も普段は見えないけどね。
     時空転移魔術のなんだけどね。これからそこにある者を送る。
     そしてそいつに情報を収集してきてもらうつもりだよ。」

アスカ:「そんな物を書いてきたわけ?まさか今回のことを予想してたの?」

シンジ:「まさか。ただ帰りが楽になるようにしていただけだよ。
     第一、敵が来るとわかっていたならあんな所へ行きはしないよ。」

シンジのその言葉に、アスカは改めてシンジの復讐心の強さを感じた。
そんなアスカの思いをよそに、シンジは魔法陣を描いていく。
これが入り口になる物なのだろう。

【万能にして全ての魔法の根源たるマナよ、その力を持って次元をつなぎ、我が身を運べ。】

シンジの言葉と共に魔法陣が光を放ち完成する。
あちら側は既に完成しているので光を放つ心配は無い。
その光景をアスカは黙って見つめている。
そしてそんな二人をミサト達は少し離れた所から見つめていた。

シンジ:「さて、ここで僕が行ってもいいんだけど、そうなるとどうなるかわからないからね。
     あまり気は進まないけどやっぱりこいつに行ってもらうか。」

そう言うとシンジは黒衣の下から一枚の札を出した。
その札の表面には呪文がびっしりと書かれている。
シンジは札を地面に置くと呪文を唱える。

【我と共に在りし、人ならざる者よ、我が前に現れ我が願いを聞け】

その呪文と共に札は黒い光を放ち輝く。
アスカ達はその光に一瞬眼をそむける。

次に目を開いたとき、アスカの前には漆黒の魔獣が立っていた。
その魔獣の手足は長く、全体的に前屈み気味な人型の姿。
その体は二メートル五十位か?魔獣にしては小柄なほうである。
その視線はシンジに固定されていた。

「・・・・・・・・」

魔獣は一瞬アスカの方に視線を向けたが、再びシンジに視線を向けるとその場で片膝をつき頭を下げる。
シンジはその行動に苦笑いをしながら魔獣に語りかける。

シンジ:「バルディエル、そんな行動を取るなと言ってるだろう。
     君は僕にとって心許せる者なのだから。」

しかしバルディエルと呼ばれた魔獣は静かに首を横に振りその言葉を否定する。

シンジ:「相変わらずだな。ま、君らしいけどね。」

シンジはそう言って軽く微笑んだ。
その微笑にはやはりどこか陰りがあったが、その陰は今までよりもどこか薄らいでいた。

シンジ:「ところで、今回は少々厄介な頼みなんだけど、聞いてくれるかい?」

シンジの言葉にバルディエルは静かに頷く。

シンジ:「頼みというのはこの魔法陣を通り、ネルフ内部に侵入。
     その後捕まっている人達の居場所と、敵勢力の配置の確認。
     可能なら外部の敵勢力のほうも頼みたい。」

その言葉にバルディエルは下げていた頭を上げる。
そしておもむろにその口を開く。

バル:「主君、少し、変わった。そこの人間の所為か?」

アスカ:「!?」

バルディエルが喋ってことに対し、アスカは驚きを隠せなかった。
それは他のメンバーも同じであったが。
そのことに気付きながらも、シンジはバルディエルとの会話を続ける。

シンジ:「何故そう思う?」

バル:「今の主君、あなたに会った時の俺、似てる。
    俺、受け入れてくれる存在、出会ったときの俺に。
    何より、人前で俺、呼んだの、初めてだ。」

シンジはその言葉に苦笑いを浮かべる。

シンジ:「否定はしない。いや、君の言う通りなのかもしれない。
     ただ生憎と僕もこの感情を持て余していてね。よくわかっていないんだ。」

バルディエルはその言葉を聞くと一瞬目を細めた後静かに立ち上がる。
それ以上意見するつもりは無いらしく、ゆっくりと魔法陣に近づいていく。

シンジ:「アッ!ちょっと待て、バルディエル。」

バルディエルはシンジの静止の言葉に動きを止め、怪訝そうに振り返る。

シンジ:「リツコさん。すいませんがネルフ内部の見取り図みたいな物、ありませんか?」

その言葉をシンジが発した時、その場の空気が変わった。
それはシンジがあの姿を見せてから、初めてアスカ以外に向けて発した言葉だったから。
シンジはそれを意図的に行った。
これから敵地に赴くのだ。今のままぎこちない状態を続けるのは確かに得策ではない。
だからシンジははっきりさせようとしたのだ。例えそれで自分が傷ついても。

そのことに瞬間的に気がついたアスカは、固唾を飲んでリツコを見つめる。
他のメンバーも同様。
息苦しい雰囲気が続く中で、リツコが動く。

リツコ:「ええ、あるわよ。ちょっと待ってね。」

そういってリツコは自分の荷物の中を漁り始める。
余りに軽い反応に一同は呆然とする。
ただシンジはどんな反応も予測していなかったので別段変化は無い。
また、加持もこの展開を予想していたのか口元に笑みを浮かべている。
リツコは周囲の事などお構いなしに見取り図を取り出してシンジに渡す。

リツコ:「ハイ、これよ。」

シンジ:「どうも、すいません。バルディエル、これ持っていけ。」

シンジは受け取った見取り図をそのままバルディエルに渡す。
バルディエルはそれを受け取ると、魔法陣の中に身を沈めた。
バルディエルが魔法陣の中に消えた後、アスカはずっと考えていた疑問を口にする。

アスカ:「ねえシンジ。あの魔獣と何故あんなに親しげなの?」

シンジ:「ん?バルディエルの事?」

その言葉にアスカは頷く。
確かに当然の疑問といえる。
魔獣使いでもないのに魔獣を従えているのは不思議だし、人を襲おうとしないのは尚おかしい。
シンジは一瞬考えたが、今更隠す意味も無いと思い、話し始めた。
バルディエルとの出会いを。

*********************************************

それは神龍皇との戦いから半年ほど経った時。
シンジは神龍皇から受け継いだ力を使いこなす為、再び修行の日々へと戻っていた。

その時シンジはある渓谷を移動していた。
闇の使徒の情報を求めながら。
情報を得るためによった町からは何の情報も得られなかった。
ただ、この先には狂暴な魔獣がいるという話だけは頻繁に聞いた。
その魔獣は何度か殺そうと試みているが、狂暴で手がつけられないらしい。
つい先日も狩り出そうとしたが、失敗したということだ。
シンジはその魔獣を相手に修行をしようと思っていた。

天候は夕方から凄まじいまでの豪雨。
地盤の緩い地面の様子から見て、何時崖崩れが起きても不思議ではなかった。
シンジは地滑りが起きないか警戒しながら進んでいった。

暫く歩くと、自分が歩いている場所から少し下に走る道を、三人の男達が歩いているのに気付いた。
見た目から判断して狩人のようだ。
先ほどよった町に帰る途中なのだろう。
シンジは別段気にすることも無く、再び意識を周囲に向けた。

が、数歩ほど進んだ時、シンジは大地に変化が起きた事を感じた。
咄嗟に先程の男達に注意を促そうと振り返った。
しかしその時にはもう手遅れだった。
轟音と共に男達の方に向かって崖崩れが起き、流れていった。

シンジは走り出していた。
間に合う可能性はほとんど無い
力を完全に使いこなしていれば話は別だが、
その時のシンジは急激に上がりすぎた力を制御出来ていなかった。

それでもシンジは走っていた。
彼の優しさゆえに。

しかし、既にわかっていたことである。
シンジの目の前で男達は崖崩れに飲み込まれそうになっていた。

が、次の瞬間、シンジは自分の目を疑った。
崖崩れに飲み込まれそうになっていた男たちを、
崖下から現れた黒い影が掴み上げ、そのまま跳躍し救ったのである。

男達を救った影はシンジの目の前に降り立った。
その影の主、漆黒に彩られた魔獣を、シンジは険しい瞳で、男達は呆然とした面持ちで見上げていた。
その黒い魔獣は、ゆっくりとした動作で男達を降ろす。
それと同時に、今まで呆然としていた男達は急に我を取り戻し、魔獣を見て悲鳴をあげた。

「ま、魔獣だ〜。」

「漆黒の獣王だ!食い殺されるぞ。」

男達は我先に逃げていった。
その姿をシンジは少し憤慨した面持ちで、魔獣はどこか寂しげなその瞳を細めて見送った。
シンジはそんな魔獣に何かわからない思いを抱いていた。

その直後、魔獣は突然倒れこんだ。
見れば体中に傷を負っている。
町で聞いた狩り出しの時に負った傷だろう。
シンジはそのままにしておけず、魔獣を担ぎ上げると人目に着かない所へと運んだ。

とりあえず全身に合った傷は完治させたが、魔獣はまだ目を覚ましていない。
何時しか雨は止んでいたが、既に日は落ち、辺りは闇に支配されていた。

シンジは目の前の魔獣に対して疑問を感じていた。

町の人間の話では、狂暴な魔獣だと聞いていたが、ならば何故誰も教われていないのか?
ましてや人を助けたあの行為から見れば、むしろ友好的だとすら考えられる。

シンジは二つの推論を立てた。
一つ、魔獣が人を襲ったのは、自分の住処を守る為だったのではないか。
二つ、魔獣というだけでおきた偏見から生じたいつわりの凶暴性。
多分この両方が理由なのだろうとシンジは結論付けた。
後にシンジはこの推論が正しかった事をバルディエル本人から明かされる。

シンジは目を覚まさぬ魔獣をそのままに、少し離れた木の下でそのまま眠りについた。

翌朝、目を覚ましたシンジの目の前には、昨日助けた魔獣がシンジを見つめていた。
それは敵意を放つ物ではない。
疑問を感じ、今の現状を理解しかねている。そんな感じである。

シンジ:「怪我の具合はどうだ。一応完治させたはずだが。」

その言葉に、魔獣は口を開く。

バル:「どうやってあれほどの傷、治した。また、何故、助けた。」

魔獣が喋ったということに素直に驚いたが、シンジはそれを表に出さずに質問に答える。

シンジ:「ただ怪我をしている君を放って置けなかっただけだよ。
     治したのは法術という魔法の一種を使ったんだ。」

バル:「貴様、何故恐れない。俺、魔獣だぞ」

シンジ:「確かに喋った時には驚いたけど、よく考えたら別にたいした事じゃないよね。
     僕達人間は遥かに良く喋るんだし。それに君は優しいから。」

シンジの言葉に、魔獣は驚愕する。

バル:「俺が、優しい?」

シンジ:「君は自分を襲ったであろう人達を助けた。それは君の優しさだと僕は思うよ。」

そういって、シンジは微笑む。
それは自分でも自覚していなかったが、『あの日』以来表情に出ることの無かった心からの笑みだった。
最も、これ以降その笑みを浮かべることは無かったが。

暫くすると、魔獣は自分のことを話し始めた。
自分が他の魔獣と根本的に違う思考をしていること。
魔獣の世界でも人の世界でも生きていくことが出来ず、一人で生きてきたことなどを。
その話を聞き終えて、シンジは口を開いた。

シンジ:「君のことが何故気になったのかわかったよ。」

そういったシンジを、魔獣は再び驚いたように見つめる。
シンジは上着を脱ぎ、翼を展開し、第三眼を開いてみせる。
魔獣はそれを見つめたまま呆然としていた。

シンジ:「君と僕は似ているんだ。同じ人外のものというてんでね。」

そういって寂しそうに笑うシンジを、魔獣は数瞬見つめた後、おもむろに頭を下げ、こう言った。

バル:「命、助けてもらった。恩、返したい。
    以後、あなた、主君と崇め、あなたに遣える事、許して、いただきたい。」

シンジはその言葉を聞いて困惑する。

シンジ:「僕はそんながらじゃないよ。友人として接してくれないか?」

シンジの言葉を聞き、魔獣は涙を流してその提案を受け入れた。
最も、魔獣の対応は変わることはなかったが。

シンジ:「そういえば自己紹介がまだ待ったね。僕の名前は碇シンジ。君に名前はあるのかな?」

バル:「獣王・バルディエル。」

*********************************************

シンジ:「これがあいつとの出会いだよ。それ以来ずっと一緒に旅をしてきた。
     人里が近い場合はさっきみたいに札の中に封印してね。
     この案を提案したのはバルディエルなんだけどね。」

シンジの説明を受け、アスカ達はようやく納得した。
それと同時に、ミサトや律子はシンジとアスカの共通点を見つけていた。

それは他者に対する優しさ。他者を受け止めることのできる心の強さと大きさ。
二人のことを見習うべき点が多くあることを認めざる終えなかった。

シンジ:「さて、バルディエルが調査を終えて帰ってくるまで結構時間が掛かるでしょう。
     今晩はここで休み、明日に備えた方がいいと思いますが。」

ミサト:「・・・そうね、シンジ君の言う通りだわ。
     あの岩場に丁度いい洞穴が二つあるから、そこで休みましょう。」

ミサトの提案により二つある洞穴にそれぞれ男女に分かれて入って行く。
しかしその中にシンジの姿は無い。
シンジは魔法陣から少し離れた場所にある岩に背を預けるように座ると眼を閉じた。

数時間後、アスカはふっと目を覚ました。
隣ではレイが静かに寝息を立てている。
自分の意識の覚醒具合から、余り深い眠りについていなかったことがわかる。

(昼間の事とかで気が昂ぶってるのかな?それともやっぱり・・・)

何を考えたのかその頬をほんのりと赤く染めたが、何かに気が着き耳を澄ます。

(あれ、この音・・・シンジ、だよね。)

アスカは他の者の目を覚まさないように静かに外に出た。
その時アスカは気付かなかった。
アスカのいなくなったとき、静かに赤い瞳が開いたことに。

辺りは完全な闇に支配されていた。
その闇の中で、シンジのいる場所の焚き火だけが赤く輝いていた。
シンジは相変わらず一人でそこに座り一人静かにチェロを奏でていた。
その姿をアスカは静かに見つめていた。
その姿は寂しさを感じさせていた。

昼間の戦闘で精霊王のレベルアップに使ったが、あれはあくまで戦闘の為でしかない。
元来シンジは一人で奏でるのを好んでいた。

しかし、ただ一度だけチェロを奏でていて満たされた気持ちを感じた事があった。
それが数日前のアスカに聞かせていた時だった。
戦闘の時に奏でていた時もなぜかそのことが頭をよぎった。
それが何故なのか、それが何から来る物なのか、シンジはわからなかった。

そんな事を考えていた時、ふっと背後に気配を感じて振り返った。

アスカ:「・・・シンジ」

シンジ:「アスカ、どうしたんだい?」

アスカ:「ちょっと寝付けなくてね。またチェロ弾いてたんだ。」

そういってアスカは焚き火を挟んでシンジの前に座った。

シンジ:「・・・ありがとう。」

アスカ:「え・・・な、何が!?」

シンジ:「あの姿をみて僕の事を受け入れてくれたのは、
     バルディエルを除けばアスカが初めてだったんだ。
     凄く嬉しかった。だから・・・ありがとう。」

シンジは恥ずかしげに頭を下げた。
その姿をアスカは優しい瞳で見つめてた。

アスカ:「ねえ、また曲を弾いてよ。今度は寝ないから。」

そういって微笑むアスカに対し、シンジは優しく微笑む。
その微笑みは天使を思わせるシンジの心からの笑み。
この十年間の中でただ一度しかなかった笑みであった。
その笑みを正面から見たアスカは、その顔を真っ赤に染めてしまった。

(!?これがシンジの本当の笑顔なんだ。すっごい綺麗。でも・・・確かにシンジらしいよね。)

そんなアスカの変化に気づかず、シンジは静かにチェロを奏でる。
アスカはそんなシンジをじっと見つめる。

二人は気付かなかった。

二人の姿を優しく見つめていた赤い瞳を。
そして、シンジの奏でる曲に耳を澄ます者達の事に。

To Be Next Story.
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後書き

どうも、長らくお待たせしました。
八翼の堕天使 第壱拾壱話、いかがでしたでしょうか?
しかしこれだけ期間開けときながらこんな支離滅裂な作品・・・いいのか?
最後のシーンなんて思いつくままに書いてたら伍話とあんまり変わらないし。
イベントとイベントの繋ぎが考えつかない。
駄目ですね〜。戦闘シーンならいくらでも思いつくんですが。
前回の後、っていうのが一番考えさせられたましたが。
メンタルケアになってないしな〜。
前回に続いて反省作品ですね。

魔「いつまで愚痴をいっている。」
作「お、今回のゲストのサタン。」
魔「そうだ。作品内だと俺とルシフェルは剣で意思を持っているってことが忘れられそうなんでな。
  ここでしっかりと思い出しておいてもらわないとな。」
作「そうですね。最終戦では結構重要なキャラですし。」
魔「そうなのか?まあ今回はそれは置いといて、少し聞きたいんだが。」
作「ハイ?なんでしょう。」
魔「バルディエルなんだが、何で獣王なんだ。」
作「それは自分のつけた異称でして、他に初号機・弐号機・零号機・アラエルにもついてます。」
魔「どんな?」
作「初号機は大抵の人がつけてますけど鬼神。弐号機は魔神、零号機は巨人、アラエルは鳥王です。」
魔「何故?」
作「趣味です。ちなみにこの作品ではあんまり意味は無いですけど。(多分)」
魔「はぁ、こんな作者の作品ですがこれからも宜しく頼みます。」
作「そこまで言わなくってもいいじゃないか。」

P,S
感想、誤字、脱字、ここはこうした方がいいんじゃないか、と言う意見ございましたら送ってください。
悪戯、冷やかしは御免こうむります。


マナ:少しづつ、シンジに対するみんなの緊張も解けてきたって感じかな?

アスカ:リツコが友好的だったのは意外ねぇ。

マナ:あなたが好戦的じゃないよりは、意外じゃないかも。

アスカ:アンタねぇっ! なんか最近、口悪くなってきてんじゃないのぉっ!?

マナ:あっらぁ、そんなことないわよ?(^^)

アスカ:あの魔法陣ってさぁ、書いておけばどこからでもワープできるのかしらね?

マナ:なんか、どこで○ドアみたい。(^^v

アスカ:もっと、いろんなところに書いといたら便利よねぇ。

マナ:よーし、わたしは主要な町に書いといて、敵が何処に現れても対応できるようにしようかな。

アスカ:アタシは、自分のおふとんの中ぁ。

マナ:すぐ寝に行けるからでしょ? ねぼすけだもんねぇ。

アスカ:フッフッフ。入り口をシンジの布団に書いとくの。

マナ:入り口を? シンジ?

アスカ:シンジが寝たら、アタシのベッドにおっこちてくるのよーっ!

マナ:・・・・・・の○太くん以下の発想だわ。(ーー;
作者"神竜王"様へのメール/小説の感想はこちら。
ade03540@syd.odn.ne.jp

感想は新たな作品を作り出す原動力です。1行の感想でも結構
ですので、ぜひとも作者の方に感想メールを送って下さい。

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