紅煉に跨り、右手にルシファーを、左手に巨大刀を振るい、シンジは思う。 どの程度の力で戦えばいいのかを。 元々、シンジが本気を出せば現在この街にいる魔獣の大半を吹き飛ばすことができる。 しかし、今回の自分はアスカ達に注意が行かないようにする為の囮である。 それにこの街を守るのが目的である。 それを考慮すると竜を召喚することは出来ない。 また広範囲に及ぶ魔術を使用することも出来ない。 本気に近い力を出しながら、抑圧しなければならない状態。 特定の制限の元での戦い。 しかも敵は魔獣だけではない。 元は進行してくる魔獣や盗賊に使用する物であろう筈の無数の魔導兵器も、 システムに従って攻撃してくる。 しかもその猛攻は自分の近くにいる魔獣の事など気にも留めない。 まさにシンジを倒す為だけに起動しているのである。 現状を考えればまったくの不利。 その現状を冷静に判断し、的確に対処しながらシンジは呟く。 シンジ:「これは・・・結構つらいかな?」 しかしその顔は言っている言葉とはまったく違い、少しだけ笑みを浮かべていた。 シンジはその状態を自分の力を試す場として、少しだけ楽しんでいた。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 八翼の堕天使 ー第壱拾参話 侵入・奪還ー ――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 斬り込んでから小一時間。シンジ自信、かなりの数の魔獣を倒した記憶がある。 しかし魔獣は一向に数を減らした様子を見せない。 まるでその数に限りが無いように。 魔獣は執拗にシンジに攻撃を仕掛ける。 それに追い討ちをかけるように、魔導兵器の攻撃が降り注ぐ。 シンジ:「これは、少しだけやばいかな?」 シンジ自身、魔獣の攻撃だろうが魔導兵器の攻撃だろうがたいしたことは無い。 シンジの体は常にシンジの放つ闘気、剣気、魔力によって覆われている為である。 そのためこの程度の攻撃では傷一つつくことはない。 しかしシンジを乗せている紅煉の方はそうもいかない。 紅煉は龍馬である。 確かに竜に近い眷族だけあって高い防御力を有している。 が、それでも本当の竜族に比べれば格段に低い。 紅煉はこの攻撃の嵐に少しずつ、だが確実に傷を増やしていた。 シンジ:「やばいな。紅煉、おまえは元の次元に帰ってくれ。こんなことで傷つけたくないからね。」 シンジの言葉に、紅煉は一瞬躊躇うが素直に従う。 紅煉は攻撃を避けられるような遮蔽物の後ろにシンジを降ろすと、元居た次元に帰っていった。 シンジ:「さて、既にあの姿の事は相手に伝わっているんだろう。もう隠す理由も無い。 またそのつもりも無い。ここからが真の戦いの始まり。八翼、展開!第三眼、開眼!!」 シンジは巨大刀を腕輪にしまい四対八枚の翼を広げ、飛び上がる。 その額に第三の瞳を光らせて。 【万能にして全ての魔法の根源たるマナよ、その偉大なる力を持って重力を捻じ曲げ、 その力を我が剣に宿し、我が敵を押しつぶせ。】 シンジの呪文と共に、シンジの持つ剣、ルシファーに強大な力が集まっていく。 その強大な力によってルシファーの周囲がゆがんで見える。 【無属性魔法剣術・超重皇剣】 呪文の完成と共に、シンジは魔獣の群れに剣を振り下ろす。 轟音と共に地面に日々が入り所々で地面が隆起する。 振り下ろされた剣の真下にいた魔獣達はその原型を留めぬほどにひしゃげ、潰れてしまった。 シンジ:「少しやりすぎたかな?後でミサトさんに怒鳴られたりして。」 潰れた魔獣の中に動く者がいないのを確認したシンジは、次の魔獣の群れへと飛翔し、斬り込んで行く。 まだ完全に力を解放せぬままに。 シンジ:「どけ魔獣共!僕が倒すべき相手は貴様等ではないのだ!!」 ********************************************* 外部で轟音が響いたとき、ミサトを先頭とした人質解放のためのメンバーは、 自分達の入ってきた魔法陣のあった部屋から最も近い監禁場所に向っていた。 カヲル:「葛城さん、対人魔導兵器もあるんですから気をつけてください。」 ミサト:「わかってるわよ。大体の場所はリツコに聞いてるから大丈夫よ。」 そう言って振り向きながらミサトはウィンクする。 そこにトウジがよせば良いのに爆弾を投下した。 トウジ:「じゃあ迷わんといてください。」 ミサト:「(ピクッ)大丈夫よ、鈴原君。バルディエルがいるから。」 そう言って苦笑いをするミサト。心なしかその笑みは引き攣って見える。 そこに更に追い討ちをかける。 ケンスケ:「じゃあ安心だな。さっきからそればっかり気にしてたから。」 マユミ:「そうですね。私たちはみんながどこに捕まっているのかわかりませんし。」 ヒカリ:「みんな・・・本当の事とは言えそんな事言うと。」 フォローと同時にさりげなく爆弾の投下をするヒカリ。 そこに地獄のそこから響いてきたような声が掛かる。 ミサト:「あなた達・・・覚悟はいいわね。」 ミサトは刀を抜き放ち構えている。その顔は完全に引き攣り、その眼はマジである。 メンバーは本気で命を失うことと覚悟した。 しかし、そこに絶妙なタイミングで助け舟の声が掛かる。 バル:「そこ、曲がる。見張り、居る。俺、兵器、破壊、する。人間、任せる。」 そう言うと天井に張り巡らされた配管等の間を軽々と飛んでいく。 その言葉と行動に毒気を抜かれたミサトは気を引き締めると ミサト:「確かにこんな事をしている時じゃないわね。みんな、行くわよ。」 その言葉と共に、曲がり角を曲がり、ミサト、トウジ、ケンスケは一気に突っ込んでいく。 その後方ではカヲルが相手の人数を確認し、自分の魔術が必要かどうか確認する。 カヲル:「敵は五人。全員接近戦タイプみたいだね。」 この程度の人数ならば必要無いと判断し、組んでいた印を解く。 そのカヲルの様子を見て、ヒカリとマユミも方に入っていた力を抜く。 状況判断に関してはカヲルが最も冷静に決断できるからだ。 前方が平気だと判断すると、三人は自分たちの来た方向の通路に注意を向ける。 そうする事で挟み撃ちと言う最も危険な状態を回避する為である。 さて、斬り込んだミサト達はと言うと・・・五対三と言う状況にもかかわらず押していた。 ミサトは敵の剣士二人を同時に相手にしている。 ミサト:「こんのっ!魔影一刀流・破魔剛刃斬!!」 ミサトは気合の一閃とともに、正面に居た男に斬りかかる。 男はそれを剣の刃で受け止めようとするが、 ミサトはその刀の切れ味と技を持ってそのまま剣ごと押し切る。 ?:「な!?斬鉄をするだと!!」 男は最後にそう言い残し、驚愕の表情のまま絶命する。 ミサト:「さあ、今度はあなたの番よ。」 ミサトは刀の血糊を振り払いながらもう一人の男ににじり寄って行った。 トウジとケンスケは残りの三人を相手にしていた。 トウジは突っ込むと同時に戦士風の男に殴りかかったが、 隣の剣士の男の振るった一撃を手甲で受け止めた為、行き足が止まり、倒すことが出来なかった。 一方ケンスケはその直後を狙ってそのまま三人目の男に槍を突いたが、 予想されていたらしく避けられてしまう。 しかしそれを逆手に取り、勢いを殺さずにその場を走り抜け、 トウジと二人で三人の男を挟撃する形を取った。 ケンスケの武器である槍は本来突く事よりも殴ることの方に多く使われる。 事実、槍の扱いに慣れていない者は槍で突く事よりも振り回すことの主旨をおく。 そうする事で相手の牽制もできるからである。 しかしそれは屋外だからこそ可能なのであって屋内では難しい。 また、同じ槍を使っても、扱いなれている者は突くことに主眼を置く。 それは突きを繰り出すことのほうが動きが小さく、隙が少なくなるからである。 そしてケンスケはこの扱いなれた者、つまり上級者なのである。 ケンスケは突きを相手に当てるのは無く、動きを止めるように繰り出している。 トウジもそれにあわせて拳闘士特有の間合いの取り方と動きで相手を翻弄する。 トウジ:「くらえや!魔闘流・天地連撃!!」 トウジの凄まじい勢いで繰り出された二連撃により、戦士風の男が倒される。 倒された男はそのままの勢いで吹き飛び、ケンスケと退治していた剣士にぶつかる。 その所為で剣士は体制を崩してしまう。 ケンスケ:「隙あり!相田流槍術・獣牙猛襲戟。」 ケンスケはその瞬間を見逃さずに連続に槍で突く。 剣士はその体に無数の突きを入れられ絶命する。 残るは戦士一人。こちらは二人。すでに勝負は見えていた。 その頃、カヲル達の方も慌しくなっていた。 マユミ:「え・・・、何ですって。それ、本当ですか?」 マユミが何かを一人で喋っている。その表情は蒼白になりつつある。 その様子は彼女が精霊使いだと知らないとかなり危険な映像と思えるが。 マユミは風の精霊シルフと更新して周囲の情報を集めていたのである。 マユミの異変に気付いたヒカリが心配になって声をかける。 ヒカリ:「どうしたのマユミ?顔色がおかしいわよ。」 その問い掛けにマユミは慌てて答える。 マユミ:「大変です。三人くらいの男達が異変を感じ取ってこちらに向っているそうです。」 その言葉に今度はカヲルが質問する。 カヲル:「どちらの方からだい?そしてそのおおよそのタイプは?」 マユミ:「ハイ、拳闘士風の男が二人、魔術師系の男が一人、右の通路からです。」 その言葉にカヲルは即座に対応する。 カヲル:「山岸さんはその男達がこの通路に入ってくるタイミングを計って洞木さんに教えて。 洞木さんは閃光を発してその男達の視界を遮ってくれるかい。 僕が魔術で仕留めるから。」 そういった後、カヲルはそのまま魔術を使用する為に眼を閉じて集中する。 カヲル:【万能にして全ての魔法の根源たるマナよ、雷を生じさせ、我が眼前の敵を打ちのめせ。】 マユミとヒカリもそれにあわせて行動を始める。 マユミ:【シルフ、風を司る美しき乙女よ。私にその力を貸してください。】 ヒカリ:【光と聖を司る神・聖王神よ。私はあなたの力を請う。 その力を持って閃光となし、彼の者達の視界を遮りたまえ。】 マユミは耳を済ませてシルフの声を聞き取り、男達の来る瞬間を待つ。 光は法術を使う為に呪文の詠唱を開始しいている。 そこに駆けつけてきた男達が通路を曲がり切ろうとしていた。 マユミ:「ヒカリさん、今です!!」 ヒカリ:【聖なる閃光(ホーリーライトニング)!!】 ?:「グア、まぶしい!!」 ヒカリの放った法術と共にあたりは眩い光に包まれる。 男たちはその唐突なヒカリに思わず目を覆ってしまう。 その瞬間を眼を閉じて待っていたカヲルが呪文を完成させて魔術を放つ。 カオル:【雷属性魔術・サンダークラッシャー】 カヲルの呪文と共に光に包まれた通路を強力な雷が走る。 それと同時に何かが倒れこむ音がする。 光が収まったとき、そこには倒れた三人の男の姿があった。 カヲル:「ふう、一安心かな?」 カヲルはその状況を見てその体から力を抜いた。 しかしそこに油断が生じてしまった。 ?:「おのれ小童どもめが!殺してくれるわ!!」 魔術師の男が立ち上がったのである。 この男は咄嗟に自分の魔力を体外に放出して身を守っていたのである。 またカヲルと同じ雷の属性だったこともあった。 立ち上がった男はそのまま呪文の詠唱を開始する。 カヲル達も対応しようとするが、呪文を唱えようにもあちらの方が早く完成するのはわかりきっていた。 しかし、その場に居たのは彼らだけではなかった。 男の呪文が完成する寸前に、男の頭上から黒い影が降り立った。 その影に気付き男が振り返ろうとしたとき、男の命は消えていた。 そこには左手に破壊した魔導兵器を大量に持ち、 右手の爪を男の血で赤く染めたバルディエルが立っていた。 バル:「おまえら、大丈夫か。」 その言葉を聞いた時、三人の緊張は一瞬にして解け、ヒカリとマユミは座り込んでしまった。 それと同時に、通路の方で二つの断末魔の声があがる。 どうやらミサト達の方も終わったらしい。 三人とバルディエルはそちらに向かって歩き始めた。 ミサトに歩み寄ったカヲルはこれからの事を問い掛ける。 カヲル:「葛城さん、みんなを解放した後はどうするんですか?」 ミサト:「とりあえず武器庫の武器を渡した後はここに居てもらうわ。 むやみに出歩かれたらたまらないもの。」 その言葉と共に、バルディエルはその場から離れようとする。ミサトは不信に思い声をかける。 ミサト:「バルディエル?どこに行くの?」 バル:「俺、ここに居る。中の人間、警戒する。だから、この先、待つ。」 そういった後、バルディエルはその場から跳躍して離れていく。 その背中は哀愁をただよわせていた。 ミサトはバルディエルの行動を止め様とも思ったが、言われた事を否定できず、ただ見送るだけだった。 彼女は仕方なく、人質を解放する為に扉のロックをはずし、中に入っていった。 ********************************************* 加持:「凄まじい轟音だ。これは外は凄いことになっていそうだな。」 シンジの起こした轟音を聞きながら、加持達は目的の場所に向って走っていた。 アスカ:「ところでリツコ。どこに向っているの?司令制御室はこっちじゃないでしょ?」 リツコ:「ええそうよ。今向っているのは司令制御室じゃないわ。」 レイ:「・・・じゃあどこに向ってるんですか。」 リツコ:「闇の使徒がMAGIを完全に操れているはずがないわ。扱えるのはアタシだけだもの。」 当然のように言い切る彼女の言葉は、自分の能力に対する絶対の自信から放たれている。 しかしこの言葉はアスカやレイの質問の回答になっていない。 それに気付いたマヤが慌ててフォローする。 マヤ:「今私たちが向っているのは研究室です。」 マナ:「研究室?そこの部屋になんかあったっけ?」 その場所を思い出そうとマナが記憶をさかのぼるが一向に覚えが無い。 加持はそれを見て苦笑いをしながら答える。 加持:「知らないのも無理はない。リッちゃんやマヤちゃん以外は滅多に行かない所だからな。」 リツコ:「研究室にはMAGIに接続できる装置があるわ。 そこから司令系統を取り戻した後、司令制御室に突入するのよ。」 その言葉にその場に居た全員が納得する。 加持:「あそこを曲がれば目的の研究室だ。様子を見るために一端止まろう。」 加持の言葉に全員が走っていた足を止めて警戒しながら進む。 ムサシ:「加持さん。あそこの部屋ですか?」 加持:「そうだ。あの突き当たりの部屋だ。見張りは・・・さすがに多いな。」 ムサシ:「ええ、十人くらい居ますね。」 加持:「リッちゃん。この通路に魔導兵器は?」 リツコ:「確か十種類くらいつけたかしら?」 加持:「そんなにか?さて・・・どうするかな。」 加持は腕を組んで考え込んでしまう。 そこでアスカが意見を出す。 アスカ:「見張りの連中が居るんだから魔導兵器は撃ってこないんじゃない?」 レイ:「確かにそうね。いくらなんでも仲間を撃つような真似はしないと思うわ。」 マナ:「だとしても気付かれずに行くのは不可能よ?」 アスカ:「そりゃ〜一本道なんだからしょうがないわよ。」 レイ:「どうせばれるなら最初から姿を見せて斬り込むしかないわ。」 ムサシ:「綾波・・・簡単にいうが突っ込むのは俺や加持さんや惣流なんだぜ。」 加持:「ま、確かにそれしか手はないんだよな。リッちゃん、マヤちゃん、綾波君。援護宜しく頼む。 ムサシ、アスカ。いくぞ!!」 加持はそう言うとそのまま斬り込む。アスカとムサシもその後に続く。 リツコ:「まったく、そういう事はこっちの準備がすんだらにしてほしいわね。マヤ、魔導銃を。」 マヤ:「ハイ先輩。ライトニングアロー・発射!!」 マヤの魔導銃から放たれた光の矢は、三人の間を抜けて一人の男に命中した。 男が光の矢を受けて絶命し崩れ落ち始めた時、アスカを先頭に加持とムサシも斬り込んだ。 それと同時にリツコ、マナ、レイ、の三人が呪文の詠唱を始める。 アスカ:「あんたなんかに構っている暇は無いのよ!!」 足の速さではこの中で最も早いアスカが一番最初に剣士と斬りあう。 数回火花を散らしながら刀を合わせたが、 男はアスカの刀の振りの早さに翻弄され剣をかち上げられてしまう。 アスカ:「魔影一刀流炎属性・炎刃斬!!」 アスカの炎を纏った刀が剣士の鎧を両断する。 アスカが一人目を倒した所で、ムサシと加持の二人も戦士の男と切結んでいた。 ムサシ:「うおおおぉぉぉおおお!!」 ムサシは同じ戦士タイプの男と力の押し合いになっていた。 ムサシは両手に持ったバトルアックスを交差させて、相手はウォーハンマを両腕で持った状態だ。 こうなってしまうと単純な力対力の構造になってしまう。 ムサシ:「この程度で・・・負けるかよ―――!!」 しかしムサシも伊達にネルフで戦士をやっていない。力だけならばメンバーの中で最強である。 ムサシは力ずくで相手を完全に押し切ってしまう。 ムサシ:「喰らえ!ストラバーグ流戦斧術・砕破両断斧!!」 ムサシは組み合ったまま片方の斧だけを相手に振り下ろす。 相手の男は驚愕の表情のまま絶命する。 加持もまた戦士タイプと戦っていたがこちらは完全に圧倒していた。 相手の男は加持の連撃を受け止めるだけで精一杯だったのである。 加持:「これで終わりだ。我流・雷光斬!!」 加持は雷を纏った剣で相手を両断してしまう。 これで残りは六人となったわけである。 さてその六人であるが、中間達がやられた時点でかなり弱腰になっていた。 しかし彼らは本来盗賊である。汚い手段も平然と使う。 加持が一人倒したとき、一人の侍が背後から襲いかかろうとしていた。 ムサシ:「加持さん!後!!」 しかしその刀が加持に振り下ろされることは無かった。 振り下ろされた刀を突然横から現れた剣が受け止めたのである。 受け止めていたのは生きた甲冑・デュラハンであった。 マナ:「何とか間に合ったみたいね。アタシの取って置きの召喚獣よ。」 どうやらマナが呼び出した召喚獣らしく、マナは自慢げに言い放つ。 デュラハンは感情を感じさせない動きで相手の侍を盾で殴り飛ばすと、剣を振り下ろして止めを刺した。 そして相手を倒したのを確認するとそのまま元の次元へと帰っていく。 それを見ていた闇の使徒のメンバーはアスカ達に切り掛かろうとしたが、何故か動けなかった。 その足は自分の影に飲み込まれてしまっている。 リツコ:【万能にして全ての魔法の根源たるマナよ、その力を持って闇を操り、 我が敵の動きを封じよ。闇属性魔術・ダークネスホールド】 どうやらリツコの魔術の影響のようだ。 しかし男達の中の魔術師も黙ってやられるわけには行かない。 ?:「おのれ、この程度の魔術で勝てると思うなよ。」 【万能にして全ての魔法の根源たるマナよ、その力を持って障壁となせ。】 男が呪文を唱えだしたのに反応して、アスカ達は構えるが、それに対してレイが叫ぶ。 レイ:「みんな、こっちに下がって!!」 その言葉に三人は慌ててレイの後方に下がる。 レイ:【万能にして全ての魔法の根源たるマナよ、その力を持って水流を激流と成し、 我が敵を押し潰せ。水属性魔術・スプレッドストーム】 ?:【炎属性魔術、フレイムウォール】 レイの魔術と男の魔術はほぼ同時に完成する。 レイの放った水の激流が、男の作り出した炎の壁に衝突する。 互いに反属性の魔術のぶつかり合い。この凌ぎあいを決するのは術者の精神力である。 暫しの激突の後、双方の魔術は相殺しあう。 結果だけ見れば男が堪えきったような形である。 しかし、事実は違ったらしい。 ?:「ぐぅ・・・、馬鹿な・・・私が・・・こんな小娘に。」 男はその相貌を見開いたまま崩れ落ちる。どうやら精神力を使い切ったらしい。 レイ:「・・・ふぅ、少し疲れたわ。」 レイは肩で息をしているが、その瞳は力強く輝いている。 アスカはそれを心配そうに見ていたがレイの反応を見て安心していた。 レイ:「気をつけて。さっきの魔術のおかげで他の連中は生きているわ。」 レイの言葉に視線を前方に向けると、確かに残り四人の男達がまだこちらを睨んでいる。 先程のレイの魔術の為か、無傷とは行かなかったらしく、数箇所に傷を負っている。 しかしその瞳から戦意は消えておらず、追い詰められた鼠になりそうである。 レイ:「・・・これ以上時間をかけるのは危険ではありませんか?」 リツコ:「ええそうね。確かにここで戦っていては助っ人が来るかも知れないわ。」 アスカ:「ねえリツコ。シンジにもらった札を使ってみない?」 そのアスカの言葉にリツコは驚愕の表情になる。 しかしアスカは更に言葉をつなげる。 アスカ:「四枚もらったけど威力がわからなくてはどう使えば良いかわからないわ。 一枚だけ使ってどうゆう状況で使うか決めて置いた方がいいと思う。」 レイ:「確かにアスカの言う事にも一理あるわ。リツコさん、使ってみましょう。」 リツコ:「・・・いいわ。でもみんな投げたらすぐに下がるのよ。なにしろシンジ君特製だからね。」 そう言うとリツコは青龍と書かれた札を取り出す。 アスカ達はそれを確認するともと来た通路近辺まで後退する。 リツコは書かれた名前を叫びながら札を男達に投げつけた。 投げられた札は男達に飛んでいく途中で青く輝く。そしてその輝きの中から青い龍が現れる。 【青龍・氷雪嵐舞】 青龍がそう唱えながら男達に突っ込んだとき、凄まじい吹雪が巻き起こる。 アスカ達はその勢いの為に通路に非難する。 吹雪が止み、アスカ達が確認すると、男たちは完全に凍りつき、粉雪のように砕けていた。 加持:「これは・・・できれば使わないでくれと言うのがよくわかるな・・・。」 加持はもう笑うしかない、という感じで言い放つ。 リツコが研究室の扉に近寄るが、先ほどの吹雪で完全に凍り付いてしまって開かない。 リツコ:「はぁ、マヤ。魔導銃で氷溶かしてくれる?」 マヤ:「あ、ハイわかりました。魔導銃・ファイヤーボール・発射!!」 マヤの魔導銃の放った火球によって凍りついた扉を開ける。 開いた扉から全員その部屋の中に入り鍵をかける。 リツコとマヤは部屋の中に入るとすぐに近くの装置の前に座り作業を始める。 二人の指先が驚異的なスピードで装置のボタンを押していく。 マヤ:「・・・何、これは?先輩!この反応はなんでしょうか」 暫しの作業の後マヤが愕然とした声を上げる。 不審に思った加持が映し出された映像を覗き見ると、 カスパーと書かれた部分の大半が赤く染まっている。 このリツコの誇る魔導装置MAGIは三つの部分から成り立っている。 即ちカスパー、メルキオール、バルタザールの三系等である。 そのうちの一つが、侵食されたことを示す赤色に染まっているのである。 リツコ:「これは多分こういった魔導兵器付近で進化してきた魔獣なんだわ。 しかもこちらがMAGIに接触した事で向こうの動きも活性化した・・・。 マヤ!これはこの魔獣と私たちの勝負よ!!死ぬ気でやりなさい!!」 マヤ:「!?は、ハイ!!了解しました!!」 リツコの言葉に気圧されながらも、マヤは再び作業を開始する。 そのリツコは先程とは比べ物にならないスピードでボタンを押している。 このスピードはすでに神業の領域である。 加持:「それでリッちゃん。どうするんだい?」 リツコ:「この魔獣よりも先にMAGIの司令系統を奪還して魔獣に高圧の電撃を打ち込むわ。 安心して。私がこんな魔獣ごときに負ける訳がないわ。」 リツコは目を血走らせて作業を続ける。その光景ははっきり言って怖い。 加持達はその光景をただ黙って見つめる。 ピ―――――― 十分後、この電子音と共に、リツコとマヤの動きが止まった。 その表情は疲労に彩られながらも安堵が見て取れる。どうやら無事に作業が終了したらしい。 加持:「どうだい?状況は?」 リツコ:「無事に司令系統は奪還できたわ。魔導兵器はもう起動しない。でも連中には気づかれたわね。 すぐに何らかの動きを示すと思う。イエ、もう動いているかも。」 リツコは考え込むように答える。 加持:「じゃあとりあえず移動しよう。目的地は司令制御室だ。」 アスカ:「じゃ、行きましょう。」 そう言うと、アスカはリツコや加持に視線を送りながら鍵を開けて扉を開く。 それにレイも続こうとするが、アスカの前を見て叫ぶ。 レイ:「!?アスカ!危ない!!」 振り返ったアスカの前方には五人の魔術師が呪文を完成させ放とうとしていた。 【水属性大魔術・ジェットストリームキャノン】 魔術師達の放った強大な津波は、アスカとレイに向って凄まじい気負いで突っ込んでいく。 通路にアスカとレイの叫ぶ声が響き渡った。 To Be Next Story. ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 後書き ・・・まとまらない。と言うか予定していた所まで終わらなかった。 最近影の薄い連中を活躍するように書いていたらまあ伸びること伸びること。 よっぽど今までの扱いに不満だったんでしょうね〜。<しみじみ 他の連中が影が薄い。と言う感想、結構あったもんな〜。 今回は一部自分の趣味丸出しで書いてたし・・・。 しかも前回の設定の所為で書かなけりゃならない事自分で増やしてしまったからな〜。 まあ自業自得なんですけどね。 しかしこの引き・・・早く続きをかけ〜!と言う感想が殺到しそうな感じ。 魔「しかしこの連載でこんなにシンジが出ないのは第壱話以来じゃないか?」 聖「そうですね。今まで散々暴れてましたから。まぁあのレベルじゃしょうがないですが。」 作「何だ!?今回はサタンとルシフェル、二人で私を虐めるつもりか!」 聖「それはあなた次第です。しかしこんな形で引きますか普通。」 作「いや、たまにはいいかなって。」 魔「まぁこの作品はメインキャラは死なないらしいから平気だろ。」 作「誰がそんなこと言いました?」 聖「だってあなた、ハッピーエンド目指してるんでしょう?」 魔「誰か死ぬのか?」 作「最終話の会話してるおまえらなら知っていると思っていたが、知らないのか? まあ死ぬと言えば死ぬし死なないと言えば死なないんですけどね。」 聖魔「「教えろ(なさい)!!」」 作「ハイ原稿」<実際はまだ出来てないって! 聖魔「「・・・納得」」 作「では次回またお会いしましょう。これからもよろしくお願いします。」 P,S 感想、誤字、脱字、ここはこうした方がいいんじゃないか、と言う意見ございましたら送ってください。 悪戯、冷やかしは御免こうむります。
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