血と屍に埋もれた通路。そこを二つの影が歩いていく。 一つは長き腕に鋭き牙と爪、そして漆黒の体を持つ魔獣。 名は、獣王・バルディエル。 もう一つは八枚の翼、強大な力、最強の剣、第三の瞳を持つもの。 史上最強の存在と呼ぶのに何の抵抗も無い者、碇シンジである。 その進攻はまさに鎧袖一触。来る者全てを薙ぎ倒して行く。 暫く進んだ後、通路の先に一つの扉が見えてくる。 そして、その扉の前でシンジとバルディエルはその歩みを止めた。 シンジ:「ここが司令室か?」 バル:「記憶、正しければ、ここの、筈。」 バルディエルの言葉に、シンジは扉に手を伸ばしゆっくりと目を閉じ、暫し瞑目する。 暫くすると再び目を開き扉から手を離す。 シンジ:「中に気配は無いな。あくまで生きている者の・・・だが。」 シンジの言葉に、バルディエルは理解しきれずに首を傾げる。 シンジはその様子を見てバルディエルに声をかける。 シンジ:「考えたり、説明するより見たほうが早い。行くぞ。」 バル:「御意。」 シンジは戸惑うことなく司令室の扉を蹴破った。 バル:「主。これ、何だ?」 扉を蹴破って中に入ると、そこには百を越える骸骨兵が群れていた。 骸骨兵を初めて目にするバルディエルは、骨が自分の意志で動く、と言う事が不思議でならないらしい。 それに対して、シンジは苦笑いをしながら答える。 シンジ:「獣牙兵と言ってな、死霊術者の操る不死生物の上級種だ。魔獣の牙に魔力をかけて生み出す。 戦闘レベル的にはかなり高い。その分一体あたりに掛かる魔力も相当なはずだが・・・。」 そこまで言ってシンジは気付いた。獣牙兵から感じる魔力に覚えがあることに。 そこから放たれる気を、シンジは決して忘れない。忘れるはずが無いのである。 シンジにとって、その気を放つ者こそが最も復讐したい相手だからである。 シンジは知らず知らずの内に拳を握り締めていた。その掌から血が流れるほどに。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 八翼の堕天使 ー第壱拾七話 激戦ー ――――――――――――――――――――――――――――――――――――― バルディエルは急に話すのを止めてしまったシンジを不審に思ったが、 獣牙兵が迫ってきた為にそれどころではなかった。 無論の事だが獣牙兵はシンジの方にも向う。しかしシンジは未だ何の反応も示さない。 それを見ていたバルディエルは慌てるが、 獣牙兵がしつこく攻めて来るのでシンジの元へと向えなかった。 バルディエルから見れば獣牙兵など無論たいした相手ではない。 しかし中途半端に強く、完全に砕けないと動きを止めない為に無視する事も出来なかったのだ。 曲刀を振りかざし、シンジに迫る獣牙兵。しかしシンジは未だに反応を示さない。 シンジがこの程度で倒されるとは思えないが、今のシンジはどう考えてもおかしい。 不安になったバルディエルは叫ぼうとしたが、 バル:「っっっ!!?」 声がでなかった。いや、正確には声を出す事が出来なかったのだ。 その場を支配している雰囲気に気付いた為に。 そう、例えるならば津波が来る直前の砂浜に立っているような雰囲気に。 しかし感情の無い獣牙兵はその雰囲気になど意にも介さず、シンジに向って曲刀を振り下ろす。 今まさにシンジに刃が振り下ろされた時、 グシャッ!! シンジの周りの空気がはじけ、その衝撃で獣牙兵は壁まで吹き飛ばされ粉砕される。 バルディエルは一瞬獣牙兵の軌道を辿っていたが、再びシンジに視線を戻した時戦慄した。 バル:「ある・・・じ?」 そこにはバルディエルの知るシンジはいなかった。 いたのはバルディエルですら見た事もないほどに、強大な殺気に身を包んだ鬼神だった。 その身から放たれる殺気、怒気、闘気、魔力は凄まじく、そのあまりの強さに空気中に影響を与え、 周りには陽炎が見え、スパークすら起きている。 シンジ:「ウオオォォォォオオォン!!」 自らも抑え切れないほどの力を開放する為か?自らを落ち着ける為か?シンジは咆哮を挙げた。 その時に放たれた殺気の影響で、感情が無く、恐怖を知らぬはずの獣牙兵がたじろぎ、 その凄まじさにバルディエルですら一瞬身構えたほどであった。 シンジ:「ついに・・・ついに見つけた。俺が最も殺したい男・・・。 俺の父さんと母さんを手にかけた男。あいつだけは忘れない。忘れられる物か! あの氷のような冷徹で残酷な醜い笑みを。あの殺気を。あの紫色の瞳を!!」 そこまで言い切った時、更に殺気が膨れ上がる。 シンジ:「あいつだけは許さない。この俺が必ず地獄へと送ってやる。この手でな!!」 怒りと憎悪に、そして敵を見つける事の出来た狂喜にその身を震わせるシンジ。 そこに一体の獣牙兵が自らの成すべき事を思い出したかのように曲刀を振り下ろした。 しかし今度のシンジは無抵抗ではなかった。とった行動は驚愕に値したが。 なんとシンジは素手で曲刀を鷲掴みにしたのである。 そしてそのまま曲刀の刃を握りつぶす。 高音を発して粉々に砕け散る曲刀。 柄だけになった曲刀を持ったまま、どうすべきなのかわからずにただ後ろに後退する獣牙兵。 他の獣牙兵もそれに吊られるように後退する。 シンジ:「バルディエル、下がっていろ。巻き添えを喰うぞ。」 その言葉に、我を失っていたバルディエルはようやく反応し、シンジの言うままに後退する。 シンジ:【再生を司る青き炎の精霊王・フェニックスよ。汝我との契約に応じ、我が前に出でよ。 そして我が剣に宿り、その聖なる力を持ってこの者達を浄化せよ。知られざる炎の王よ。】 その呪文と共に、シンジを包み込むように青き炎が立ち上る。 その炎は巨大な鳥の姿になった後、甲高く一声鳴くと、ルシファーの中へと吸い込まれるように消える。 青白い炎を立ち上らせたルシファーをシンジは一閃する。 シンジ:「精霊魔法剣術・鳳凰炎浄剣」 シンジがルシファーを一閃するのと共に、剣の先から青白い炎が出現する。 その青白い炎は行く筋にも分かれ、その一つ一つが鳥の形になる。 無数の炎の鳥達は全ての獣牙兵に飛び掛かり、焼き尽くしていく。 青白い炎が消えた後、その場には白い灰のみが残っていた。 シンジ:「・・・さて、バルディエル。他にやつらの居そうなのはどこだ?」 その言葉を聞き、バルディエルは答えようとするが、シンジを見た時言葉を放てなかった。 普段のシンジであればどんなに気が昂ぶっていても、 目の前の敵を殲滅すればとりあえず平静を取り戻す。 それはたとえ闇の使徒が相手でも今までは同じだったはずだ。 しかし今のシンジは先程以上に気が昂ぶり、闘気を増している。 その今まで見た事の無かったシンジの状態に、バルディエルは言葉を失ったのである。 シンジ:「?どうした、バルディエル?」 どうやらシンジは自分の放っている力の強大さに気が付いていないらしい。 バル:「え、あ、多分、司令制御室、居る、思う。」 シンジの言葉で我を取り戻したバルディエルは、多少うろたえながらもシンジの問い掛けに答える。 シンジはバルディエルの反応に疑問を持ちながらも、その答えに瞳を険しくする。 シンジ:「司令制御室か。というと今ミサトさん達のいるであろう場所か。急がないといけないな。」 シンジはそう言うと通路に出るために扉へと向う。 それを見ていたバルディエルはシンジを呼び止める。 バル:「主、制御室、行く。もっと、早く行く、方法、ある。」 シンジはその言葉に振り返り、怪訝な顔をする。 それには反応を示さず、バルディエルは部屋の奥へと向う。 そして一番奥の辺りについた時、バルディエルは床に腕を突き刺し、 その場にある鉄の床板を引き剥がす。 シンジがその場を覗き見ると、そこには下に向って縦穴があいていた。 シンジ:「これは?」 バル:「制御室、直接、移動する。そのための、通路。」 シンジ:「なるほどね。」 バルディエルの説明に納得したのか、シンジは暫し瞑目して考え込んだ後、 バルディエルに何事かを告げ、何かを渡す。 バルディエルはその言葉に頷いた後、部屋を飛び出していく。 シンジはそれを見送ると、静かに縦穴の中へと舞い降りていった。 ********************************************* 司令制御室 ここでは五つに別れ、それぞれにかなりの激戦を繰り返していた。 その中でも最も広範囲的に戦っていたのはミサト達の場所だった。 フォルケン:「さすがは名高い御二人の剣捌き。これほどの物とは正直思っていなかった。 やはり勝負とはこうでなくては。」 ミサト:「あなたも私達相手によくやるじゃない。」 加持:「これほどの使い手がいるとは思っていなかったぞ。」 軽口を叩きあいながらも、双方共に肩で息をしている。 ミサトと加持は、既に数十合切結んでいる。 にもかかわらず、フォルケンはそれを的確に返し、未だに互角の戦いを繰り広げている。 ミサトと加持にしてみれば、これほどの強さを持っていたのは意外だった。 フォルケン:「お褒めに預かり光栄だ、と言いたい所だが、 それはこれを見てもらってからにしてもらおう。」 そう言うと、両手に持っている刀に向って何事かを呟く。 すると刀の柄が刀身を包む部分を薄く残して、外周部が外れ落ちる。 フォルケンはそれを確認すると、未だ腰に挿したままにしておいた刀の柄に当てる。 すると、何かがはまる音がする。 その音がした後、フォルケンは両腕を刀ごと上に挙げる。 すると、納刀されていた刀はそれに繋がって鞘から抜かれていく。 そう、フォルケンの刀は双身刀だったのだ。 フォルケン:「俺の流派は元々双身二刀流なのでね。さ、ここからが本番だぜ。」 そう言うと、フォルケンは加持の方に向って速攻をかける。 双身刀の刀と比べた時の利点は重量しかない、と言っても過言ではない。 二つの刀身がある分、振るう型にも制限があるためである。 刀身が二つあるという事で攻撃幅が広がるようにも考えがちだが、実際はそうでもない。 柄が二つの刀身の中間にあるため、間合いは通常の刀とほとんど同じなのである。 また、連続で攻撃できるという点でも熟練者であれば普通の刀で十分上を行く事ができる。 結論的に言ってしまえば、重量と攻撃力は上がるが、スピードは落ちがちになってしまうため、 使いこなす為にはかなり熟練した腕が必要なのである。 加持もそのように考え、その攻撃速度は鈍くなると予想していた。 しかしその一撃は落ちるどころか、更に加速していた。 フォルケンは全身を使って攻撃をする事で、遠心力を利用したのである。 自分の予想が外れた事に加持は一瞬慌てるが、すぐに冷静さを取り戻して攻撃を避ける。 しかしその後はまったく予想していなかった。 フォルケンは左手の攻撃と共に、一撃目の刀の持ち手を逆にして切り上げてきたのだ。 左手の予想はしていたが、そのまま切り上げてくるとは思わなかった加持は、 その攻撃に対処が遅れてしまう。 加持に攻撃が直撃すると思われた次の瞬間、二人に出来た隙間に向ってミサトが刀を振るっていた。 ミサトはそのまま刀を上から振り抜く形をとり、切り上げてきていた刀を払い落とす。 加持はそれに合わせるようにフォルケンの左手から繰り出された一撃を受け止める。 一瞬加持とフォルケンの鍔迫り合いになりそうになるが、 ミサトは刀を払い落としたときの反動を利用して、フォルケンに向って切り上げる。 フォルケンは加持の剣と自分の刀を一瞬離すと再びぶつけ、 その反動を利用して後ろに飛び退き、ミサトの一撃を避ける。 まさに全てが紙一重な攻防である。 再び間合いをあけて対峙する両者。 が、その時フォルケンの頬から血が一滴流れた。 ミサトの一撃がかすっていたようである。 フォルケンはその血を手の甲で拭うと、その顔に笑みを浮かべる。 その表情は実に楽しそうである。 フォルケン:「先程の攻防は御二人の勝ちのようですな。これだから強者との勝負はやめられぬ。 あの時も、総統の命令さえなければ、碇ゲンドウとも戦えたのにな。」 この男、どうやら命の遣り取りをなんとも思わず、心底楽しむ性格の様である。 フォルケンの言葉にミサトは失笑を禁じえなかった。 ミサト:「それはこちらとしても願ったりだわ。 そうなっていれば今こんなに苦労しなかったんだからね。」 加持:「まったくだな。(そして、彼のような少年は生まれずにすみ、 おまえ達も彼を相手にする事も無かったのだから。)」 二人の言葉に対して、フォルケンは鼻で笑って見せる。 フォルケン:「ハッ!俺があんな男に負けたとでも言うのか?冗談じゃないぜ。」 フォルケンの言葉に、二人の目は険しくなる。 自分と相手の力量差を正確に測れていない音に気が付いた為である。 このような男に負ける訳には行かないと二人は気持ちを新たにする。 フォルケン:「さ、第2ラウンド。いくぜ!!」 両者の攻防はまだまだ続きそうである。 ミサトや加持と違い、リツコ、カヲル、レイの戦いは静かな物である。 しかしその場を支配する雰囲気はミサト達を凌駕する物であった。 戦っている最中にわかった事だが、意外にもカーディは光の属性だった。 結果的にリツコの闇とは反属性となったため、二人ともむやみに手を出す事が出来ず、 双方共に自分の魔力を高めあう形となっている。 その為、対立する二つの魔力の為に近寄りがたい状態になってしまっていた。 カヲルとレイはそれに合わせて自分達の魔力を高めて一瞬の隙を狙う。 しかしリツコは勿論の事、言い張るだけありカーディも隙らしい隙を見せない。 リツコ:「言うだけあって中々やるじゃない。少し見直したわ。」 カーディ:「フンッ!余裕のつもりかい?アタシはまだまだこんなもんじゃないよ。」 二人はそれぞれ余裕がある如く言い張る。 が、実際の所、二人は既に自分の肉体の限界レベル近くまで上げていた。 その為、この戦いの趨勢を決めるのは当事者達ではない、第三者の力次第といっても過言ではなかった。 しかしその第三勢力となり得る筈の二人も、半ば限界に近づいていた。 カヲル:「レイ・・・まだ、いけるかい?」 レイ:「・・・問題・・・無いわ。」 カヲル:「素直じゃないね。でも無理はいけないよ。まだ僕達は未熟なんだから。 リツコさん達のレベルまで上げるのはいくらなんでもまだ無理だからね。 事実、僕はそろそろ限界みたいだ。」 そう言いながらもカヲルは軽く笑みを見せる。しかしそれは無理をしている証でもあった。 レイ:「頑張って、カヲル。同調させればまだ上げられる筈よ。」 カヲル:「そうだね。まだ倒れるわけにはいかないね。」 カヲルが再び笑みを見せたのに対して、レイもそっと微笑む。 そして互いに頷きあうと、魔力を同調させてより強き魔力にする。 この力の拮抗状態が崩れるのはもうまもなくだろう。 ヒカリとマヤの二人はある意味で更に近寄りがたい状況となっている。 ファラリスの呪いの奇跡と、ヒカリとマヤの浄化の奇跡が衝突し、鬩ぎ合っているのだ。 その為ヒカリとマヤは聖なる白い光に、ファラリスは暗黒の黒い光に包まれている。 法術師同士の対決。それはまさしく神への信仰心が命運を分ける。 あまり公にされていないが、法術師は行える奇跡の強さによってランク分けされている。 下位のランクから順に神官、司祭、高司祭、大司祭と呼称されている。 この形で分けると、マヤは神官、ヒカリは司祭級である。 対するファラリスは高司祭級の力を持っている。 このため、ヒカリとマヤは祈りを唱和させ、高めあう事で対抗していた。 ヒカリ・マヤ:【光と聖を司る神・聖王神よ。私はあなたの力を請う。 その聖なる力、聖なる教えを持って我らを導き、正義を示したまえ。】 ファラリス:【暗黒神よ、我はその力を請う。その闇の化身たる力を持ちて彼の者に混乱を与えよ。 希望を絶望に変えよ。その夢を血の色に染めよ。】 双方共に神の奇跡をより強く行使する為に、祈りの言葉を紡ぎつづけている。 しかし元のランクが違う所為か、ヒカリとマヤは確実押され始めていた。 そんな中でヒカリとマヤは一瞬だけ目を合わせて何かを伝え合う。 それが何を示すのか、二人にしかわからない。 ムサシ:「ケンスケ!あぶねえ!!」 瞬間的にムサシはケンスケの首元を掴むとトウジの方に放り投げ、自分もその場から飛び退く。 その直後、二人のいた場所に巨大な鉄球が振り下ろされる。 暫しの間響き渡る轟音。 その轟音を作り出した鉄球を持ち上げ、通常通りに戦斧を上にして構える異形の大男・オベリスク。 それに対してムサシはハルバードを構えて牽制する。 ケンスケ:「フ〜、危ない所だった。サンキューな、トウジ。」 トウジ:「礼ならムサシに言えや。さて交代や、ケンスケは少し休んどき。」 放り投げられたケンスケを受け止めたトウジは、ケンスケを降ろすとムサシの方へ向う。 ケンスケはトウジの言葉に従い、少し離れた場所で様子を伺う。 無論、いつでも二人の助勢に向えるようにしながらである。 トウジ、ケンスケ、ムサシの三人と、オベリスクの戦いは戦闘範囲こそ狭いが、 その凄まじさでは群を抜いている。 当初は三人同時に攻撃していたのだが、オベリスクの持久力を考えて長期戦を考慮し、 二人が戦っている間に一人が休憩をし、交代しながら戦うという方法をとっている。 戦っていて幾つか気づいたことがあった。 両肩のミノタウロスも背のサイクロプスもまだその視覚は生きているらしい事と、 その視覚が捕らえた映像はオベリスクも感じ取っている事である。 その為、オベリスクには死角が無かった。 その為それぞれに反対側から攻める等の多くの戦い方を試しているが、有効打は未だ打てていなかった。 またトウジのタイプの相性があまり良くない事もあった。 相手の獲物は例えるなら巨大ハルバードである。その攻撃範囲はかなり広い。 対してムサシは通常サイズのハルバード。ケンスケは槍である。 双方ともに攻撃範囲は、オベリスクほどで無くとも広い事は間違いない。 しかしトウジは無手で戦う拳闘士である。 その攻撃範囲は拳や蹴りの届く範囲、即ちトウジの腕や足の長さ分だけである。 しかもその攻撃を確実なダメージとして与える為には、ある程度懐に踏み込まなければならない。 結果的にその攻撃範囲は更に狭まる。 そのためトウジが攻撃するためには相手に空振りをさせ、その瞬間に攻撃するしかなかった。 オベリスクの攻撃は武器の重量を無視してかなり早い。 その為空振りの瞬間を狙うのも難しいのである。 オベリスク:「どうした。おまえ達の実力はそんな物か? それでよくマリュウドとしてやっていけるな。」 オベリスクは自分が優位に立っている事を誇示するかのように言い放つ。 そしてオベリスクが優位なのは事実である。 それが一層気に入らない。 トウジ:「この大男が舐めよってからに。」 トウジは悔しさのあまり悪態をつく。 そこへケンスケが槍を構えて前へ出て来る。 ムサシ:「ケンスケ、まだ交代するほど経っていないぞ。」 ムサシの言葉にケンスケは首を振って言い返す。 ケンスケ:「ここまで言われて下がってられるか。長期戦なんか考えずに戦ってやる。」 トウジ:「よっしゃー!その息や。」 ケンスケの言葉にトウジは同調する。 ムサシは軽く溜息を吐いた後、張るバードを構えなおす。 燃え上がったからには決して止まらない事が長年の付き合いでわかっている為だろう。 ムサシ:「仕方ねえな。やるとするか。」 三人は三方から一気に攻撃を開始する。 それを迎え撃つオベリスク。 ここの戦いはまだまだ続きそうな感じである。 メンバーの中で最も苦戦を強いられている者達。 それがアスカ、マナ、マユミの三人だった。 その理由は実に簡単である。 三人とも相手のルブルムのタイプと相性が悪すぎたのである。 まずアスカだが、女性の上にまだ子供である。 言うまでも無くその力はまだ幼く弱い。 普段はそれはその身軽さ、その多彩な技を持ってそれを補っている。 しかし現在相手にしているのは不死の生物。 命を持たぬその相手を倒す為には完全に打ち砕くしかない。 刀を持って戦う侍にはただでさえ苦手な相手である。 ましてや力の弱いアスカはいったい倒すのにも幾度も切り込まなければならない。 結果的に倒すのに時間が掛かってしまう。 アスカの属性が不死生物の苦手な炎なのがせめてもの救いだろう。 不死生物はその派生の為にもとが何であろうと必ず闇の属性となる。 その為苦手な属性は光の属性なのだが、その体の構成上炎の属性にも極端に弱くなっている。 次にマユミだが、確認するまでも無いが彼女のタイプは精霊使いであり、属性は風である。 上位精霊を呼び出す事のできる者は現在、世界中を捜しても数えるほどしかいない。 無論彼女に上位精霊が呼び出せるはずも無い。 結果的に扱えるのは風の下位精霊・シルフだけである。 風の乙女であるシルフは、元来攻撃には向いてはいない。 その為普段であれば後方支援か、情報収集が彼女の主な役目である。 無論シルフを用いて攻撃をする事も可能ではある。 しかしそれは風の刃を生み出すという方法で、現在のアスカの状況とあまり変わらない。 例えるだけ無駄かもしれないが、もしも彼女が炎の属性であれば、 現在の状況は最も活躍できる状態なのである。 炎の下位精霊は馬ほどの大きさを持つ、オオトカゲの姿をしたサラマンダ―である。 サラマンダ―は不死生物が最も苦手とする存在なのだが、無論マユミが呼び出せるはずも無い。 結果的に、シルフの風の刃を幾度も放つしかないのである。 最後にマナだが、彼女はデュラハン、ベスビオス、グレイシアなどの生きた鎧達を呼び出している。 三体の召喚獣達はその盾と剣を持って獣牙兵と戦っているが、 装備が似ているために自然攻撃方法も似てくる。 無論連携して戦っている訳でもないので、その戦闘状況は一進一退。 あまり思わしいとは言えない。 マナにはまだ切り札の召喚獣達がいるが、今までの戦闘でかなり魔力を消耗してしまった為、 呼び出せるかどうかかなり不安がある。 しかも相手はまだ獣牙兵を生み出せる可能性もある。 今ここで全魔力を消費してしまう訳にもいかないので慎重になってしまう。 アスカ:「これで、ラスト!!」 しかし以下に激戦だったとはいえ、三人が獣牙兵に遅れをとるわけもなく、 何とかその場にいた獣牙兵を倒しきる。 アスカ:「さあ、アンタ自慢の獣牙兵は全部倒しきったわよ。」 マナ:「今度はあなたの番だからね。」 マユミ:「覚悟してください。」 そう言ってアスカは刀を構えなおし、マユミはシルフを呼び出す為に構え、 マナは召喚獣に合図を送ろうとする。 彼女達の言葉を黙って聞いていたルブルムだが、その顔に下卑た笑みを浮かべる。 それを見たマナが叫ぶ。 マナ:「何が可笑しいのよ。」 マナの怒りの叫びに対して、ルブルムはその笑みを崩すことなく言い放つ。 ルブルム:「いやたいしたものだ。ガキと思って少し油断していたかな。 だが、何時までその元気は続くかな?」 そう言って男は懐から再び白い欠片を取り出す。 それを見たマユミの表情から見る間に血の気が引いていく。 ルブルムはそれを可笑しそうに見ながら呪文を唱える。 アスカ達の前には再び二十対の獣牙兵が立ち塞がった。 それを見たアスカ達は無意識の内に一歩下がる。 マユミ:「マナさん。アスカさん。どうしましょうか?」 マナ:「アタシに聞かないでくれるかなマユミ。どうにもならないと思うから。」 少し諦めの入り始めた二人にアスカは自分の持っている物をそっと見せる。 アスカ:「ねえマナ。これ、何だと思う?」 そういったアスカの手元を、マナは見た瞬間に驚愕した。 マナ:「ちょっ!?アスカそれ、シンジの札の一枚。」 そう、アスカが持っていたのはシンジに渡され、リツコが持ってい筈の朱雀とかかれた札。 アスカ:「そっ。戦いの始まる前にリツコに渡されたの。ストラバーグも一枚持ってるよ。」 そう言ってアスカはムサシの方を指差す。 それを見て、マナは唖然とした。 アスカが朱雀を持っているということは、ムサシが持っているのは、 シンジが使わない方がいいといっていた玄武だからである。 マナ:「赤木博士・・・いったい何考えてるのよ。」 アスカ:「あいつは戦士だから使おうとしないと考えたからでしょ。」 マナ:「そういう問題じゃ・・・」 マユミ:「あの、ちょっと私には話が見えないんですけど・・・。」 アスカに言い返そうとするマナの言葉を遮って、グループの違ったマユミが遠慮がちに質問する。 それに対してアスカがその顔に笑みを浮かべて答える。 アスカ:「これで逆転できるって事よ。マナ!口論は後。投げるわよ。マユミもすぐに飛び退きなさい。」 まだ意味がよくわかってはいないがマユミはその場を少しずつ交代する。 マナもアスカに文句を言ってもしょうがないと判断したのか、マユミと同じく交代する。 アスカ:「行くわよ!朱雀!!」 それを確認したアスカはその手に持った札を獣牙兵とルブルムのいる方向に飛ばす。 その札より、紅の巨鳥が現れ、獣牙兵たちを炎で包み込んだ。 To Be Next Story. ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 後書き 終わらない・・・。 今回で戦闘を終わらせるつもりだったのに・・・何故だ―――!! シンジはぶちきれて話が伸びるわ、ミサト達は頑張って出番を増やすわ、もう収拾がつかん! と言う訳で最終話までの話数は本当に見当がつかなくなってきました。 どうも申し訳ありません。 龍:まったく・・・我の登場はいったい何時になるのやら。 作:す、すいません。本当は今回でミサトなんかの戦闘は終わらすつもりだったんですけど、 書いてたら勝手に動き出しちゃって、あれよあれよという間にこんな具合でして。 龍:それで、話は伸びて上のような謝罪か?リツコではないが無様だな。 作:う〜〜〜、返す言葉もないです。 龍:まったく・・・。第一この作品の後番外編と新連載考えてるんだろ?終わるのか? 作:アー―!!新連載の方はまだ言っては駄目だって。 龍:少し追い詰めてやらないとな。 作:あう〜。神龍皇が虐める。 龍:ええい、そんな事言わずに早く次の作品を書け!そして我の登場シーンまで書き尽くせ。 作:無茶言うなって。 P,S 感想、誤字、脱字、ここはこうした方がいいんじゃないか、と言う意見ございましたら送ってください。 悪戯、冷やかしは御免こうむります。
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