アスカの投げた札は、一直線に獣牙兵の群れに向う。 上の司令席から下で繰り広げられている死闘を楽しげに見ていたオシリスだが、 それを見て急に立ち上がり、大声で叫ぶ。 オシリス:「ルブルム!後方に全力で跳び下がれ!!」 その言葉に、ルブルムは頭が理解する前に行動を開始する。 そしてルブルムが後方に向って跳んだ直後、札が赤く光り輝く。 【朱雀・灼熱火炎獄】 紅の巨鳥が辺りを一瞬で炎に包まれる。 その炎は巨大な火柱となって獣牙兵を焼き尽くしていく。 その光景を見て、ルブルムは息を呑んで絶句していた。 後一瞬遅ければ。 そうなった場合の自分の運命を予想したためであった。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 八翼の堕天使 ー第壱拾八話 赤き竜騎士ー ――――――――――――――――――――――――――――――――――――― アスカは放った朱雀の起こした炎の渦から、ルブルムが逃げ延びた事がわかっていた。 その為、マナとマユミに注意を促す。 アスカ:「マナ、マユミ。まだあいつは死んでいないわ。気をつけて。」 マナ:「そんな!?あの札については知らなかったはずよ。」 マユミ:「・・・アスカさんの言う通り、あの死霊術師は無事です。 でもあれが碇さんの渡した札の威力なんですか・・・。凄すぎますね。」 アスカの言葉に半ば混乱気味のマナと、現状を無視した感想を述べるマユミに、 少々呆れながらもアスカは二人に返事を返す。 アスカ:「上にふんぞり返っている奴が叫んで教えたのよ。それとマユミ。 他の二つもあれに負けず劣らず凄かったわよ。ほら、さっさと構えてなさい。」 そう言って二人を促す。 ちなみに、札の威力の事を離す時、少し自慢げだったのは、 想い人の事だからという、乙女心という者だろう。 そうこうしている内に、朱雀の起こした炎の勢いは弱まり、消えてしまう。 炎のはれた先には、大鎌を構えたルブルムが立っていた。 ルブルム:「とんでもない隠し球を持っていたものだ。危うく死にかけたぞ。」 アスカ:「死んでくれて結構よ。そのつもりでやったんだしね。」 ルブルム:「冗談ではない。貴様らを切り裂く楽しみがまだ残ってるんだ。まだ死ねんさ。」 そう言ってルブルムは大鎌の刃をゆっくりと舐める。 それを見たアスカ達は生理的嫌悪から肌を泡立てる。 マナ:「ああ、気色悪い。今度こそ息の根を止めてやるわ。」 マユミ:「マナさん、その表現はあまり正しくありませんよ。正確には呼び出した召喚獣でしょう。」 マナ:「こんな時までマイペース保ってないでよ。さっさと構えなさいよ。」 この二人、本当にやる気があるのか怪しくなってくるが、実際はただ強がっているだけである。 その証拠に二人ともかなり呼吸が荒くなってきている。 二人とも召喚獣や精霊の召喚でもうほとんど精神力が残っていない。 マナは後一体召喚獣を呼び出せるか怪しいし、 マユミに至ってははもうシルフの声も聞くのもできるかどうかという状態である。 アスカは元々侍な為、精神力の具体的な減少はない。 精神を集中をして斬り合う時に少しずつ擦り減らす事はあるが、 訓練で一時的な休息で回復する事ができる。 結果、現在の状況で戦う事ができるのはアスカだけという事になる。 それを見て取ったのか、ルブルムは再びその顔に笑みを浮かべる。 ルブルム:「さて、如何に俺でもさすがにこれ以上獣牙兵を呼び出すのは無理だな。 この大鎌で仕留めてやる。」 そう言ってルブルムは大鎌を頭上で回転させながら進んでくる。 それを見てアスカはこれを受ける事にした。 二人に接近戦は無理だし、何よりこれ以上無理はさせられなかった。 アスカ:「二人とも、下がってみてなさい。足手纏いになるわ。」 そのアスカの言い方にマナが怒りの声をあげる。 マナ:「なんですって!」 マユミ:「落ち着いてください、マナさん。事実です。」 二人を振り返る事無くルブルムに向っていくアスカを見て、 そしてマユミの言葉を聞いて、マナは俯いてしまう。 マナ:「わかってるわよ。今のアタシ達に戦う力がないことも、 アスカがあたし達の事を想ってああいったのも。 でも、でも悔しいじゃない。何も出来ずにただ見ているだけなんて。 アスカを援護してあげることも出来ないなんて。」 マナはそこまで言うと、自分の不甲斐なさとアスカへの申し訳なさで、俯いた後に涙をこぼした。 マユミは何も言わずにその肩を優しく抱くと、アスカの方へ目を向けてただ見つめていた。 マナの言う通り、今の彼女にはそれしか出来ないから。 ある程度接近した状態で対峙する二人。 ルブルム:「一人でこのルブルムに挑みにくるとは、良い度胸だな娘。」 アスカ:「精霊使いと召喚術師なら、いてもしょうがないでしょ。 第一、獣牙兵の影に隠れていたような奴、アタシ一人で十分よ。」 ルブルム:「・・・その言葉、忘れるな。ただでは殺さん。 たっぷりと甚振った後にジワジワと殺してやる。今の言葉を死ぬほど後悔させてやる。 俺は、今みたいな侮辱が、一番、むかつくんだよ!!」 そこまで叫ぶと、ルブルムは激昂したまま切り掛かってくる。 その大鎌の間合いはアスカの刀の間合いよりもはるかに広い。 振り下ろされてくる刃をアスカは後ろに跳び退って避ける。 その瞬間にわかったことだが、その鎌は通常の物と違い、外側にも刃がついた両刃だった。 しかも外側の刃は遠目にはわからないように細工してある。 アスカはルブルムの攻撃をかわすのに精一杯で、切り込めずにいた。 自分の間合いに持ち込む為に踏み込もうとしても、それを阻止する為に刃の反り返りが襲ってくるのだ。 さらに誤算もあった。 ルブルムの攻撃はアスカが予想していたのよりもはるかに早かったのだ。 ルブルムはその重さとリーチ、そして全身のばねを使って遠心力を使って振るっている。 そのおかげで超重武器である筈の大鎌をアスカの刀よりも早く振るえるのだ。 無論、超重武器の為にその破壊力は凄まじい物だろう。 暫くの間ルブルムのペースで追いかけっこのような攻防が続く。 そうしている内に、大鎌の遠心力に負けたのかルブルムが一瞬体勢を崩した。 アスカはその瞬間を待っていたかのように斬りかかる。 が、それは罠だった。 ルブルムは右から振るった大鎌を、その勢いのまま自分の左脇を通し、 右脇の方から刃が出るように回転させる。 そのまま左手で刃のすぐしたの柄を掴むと、 外側の刃を使って切り掛かってきたアスカの刀を弾き上げる。 アスカは刀を弾き飛ばされなかった物の、その体勢を崩してしまう。 そこにルブルムは持ち直した大鎌をアスカに向って振り下ろす。 体勢が悪く、避ける事が出来なかったアスカは刀を一文字に構えて刃を受け止めた。 そのあまりの威力に、アスカは一瞬腕が痺れたのを感じる。 「「アスカ(さん)!!」」 それを見たマナとマユミが叫び声を上げる。 しかしアスカは大鎌の刃を受け止めておくのに精一杯である。 それをルブルムは勝ち誇った笑みで見下す。 ルブルム:「他愛無いな。先程の勢いはどおした? 先程言った通り、たっぷりと時間をかけて殺してやる。」 アスカ:「くっ!!」 アスカは必死になって刃を受け止めている。 しかしその刃は徐々にだがアスカに近づいている。 アスカは危機感に苛まれていた。 (このままじゃ・・・。力が足りない。こんな奴なんかに、負けたくはない。) そう考えていたアスカの視界に、自分の胸当てに埋め込まれた赤い意志が入る。 それを見たアスカは気付く。自分でも制御できるかどうかわからない力がある事に。 アスカは覚悟を決める。 (赤眼竜、燃え盛る炎の化身、紅の竜よ。その力を貸して!!) その瞬間、赤眼石が光り輝く。 と同時にアスカを中心に火柱が立ち上る。 当然アスカに超接近していたルブルムも巻き込まれる。 ルブルム:「グワアアアァァァァアア!!」 ルブルムは自分の体についた炎を転げまわる事で何とか消し去る。 一方アスカの方はまだ炎が吹き上がりつづけている。 ルブルム:「まさか自分の力を暴走させた自爆か?少し違うようだが。」 荒く息をつきながら言うルブルム。 その言葉に、立ち上る火柱を呆然と見ていたマナとマユミが蒼白になる。 そしてすぐに立ち上がって駆け寄ろうとした瞬間、炎が掻き消え、その中からアスカが現れる。 その姿はその場にいた者達を驚愕させるのに十分だった。 その装備は今までとは一変していたのだ。 赤眼竜の外骨格で出来た真紅の鎧は、同程度の防御力を誇るラバーのような物と共に、 アスカの全身をくまなく覆っている。 鎧で覆われていないのは頭部だけである。 またその武器も、今までの刀よりも一回り長い刀身を持ち、その刀身を炎で包んでいる。 何よりの違いはその背中に赤い竜の翼があった事である。 これが赤眼竜がアスカに与えた力、竜騎士の姿である。 その力にアスカ自身も驚いていた。 (凄い・・・。これが竜騎士の力なの?これだけの重装備なのに重さを一切感じない。 動く先を既に知っているみたいに邪魔にならない。何より・・・力が溢れてくる。) アスカは竜騎士の力に驚きを隠せず、呆然としてしまっていた。 アスカが自分を取り戻したのは、ようやく呼吸を整え終えたルブルムの声を聞いてからだった。 ルブルム:「まだそんな隠し球があったのか。小賢しいわ!!」 そう言って呪文を唱える。するとルブルムの周囲に青白く光る物体が現れる。 良く見るとそれには人間の物と思われる苦悶の表情が広がっていた。 不死生物のなかっで最も下位に属する、ゴーストである。 宙に浮いているアスカを地面に降ろす為に呼び出したのだろう。 獣牙兵で消耗してしまったルブルムが呼び出せるのは、これぐらいだったのだろう。 ルブルムはゴーストをアスカへと差し向ける。 だが、ゴーストはアスカに触れる直前に、アスカの纏う赤眼竜の鎧から放たれる気で燃え尽きてしまう。 それを唖然とした面持ちで見つめるルブルムを見ながら、アスカはゆっくりと舞い降りる。 そして手に持つ刀、赤眼刀を突き出すように構えると、頭の中に浮かび上がる技を繰り出す。 アスカ:「赤眼竜の竜騎士・秘術・衝波炎竜斬!」 それは呪文と剣術を組み合わせた高等技術のはずである。 しかし竜騎士となった今、アスカはそれを行える事が当然のように技を繰り出す。 アスカのその全身が炎に包まれる。そしてその炎は赤眼竜の形をしていた。 迫り来る炎の竜を見て我を取り戻したルブルムは、自らの最強の奥義で迎え撃つ。 ルブルム:「小癪な真似を。我流奥義・デスサイクロン!!」 ルブルムは大鎌を持って回転し、魔力を放ちながら突き進む。 その様はまさに台風のようであった。 ルブルム:「死ねええぇぇぇ!小娘ぇぇぇぇ!!」 アスカ:「・・・・・・」 しかし、ルブルムの放った最強の技も、竜騎士となったアスカの技の前ではまさに蟷螂の斧。 赤き炎の竜は、渦巻く大鎌の台風を飲み込み、灰も残さずに焼き尽くしてしまった。 その後、ゆっくりと地面に降り立つアスカ。 赤眼竜の鎧の周囲ではまだ炎が燻っており、近付き難い状態となっている。 しかし次の瞬間、まるで蝋燭の炎が吹き消されるように、鎧は掻き消えてしまった。 そしてゆっくりと崩れ落ちるように倒れ、片膝をつくアスカ。 それを見たマナとマユミが急いで駆け寄って来る。 マナ:「大丈夫?アスカ。」 マユミ:「アスカさん。しっかりしてください。」 心配しながらアスカに声をかける二人。 その声に反応するようにアスカは振り返ると、力無く笑いかける。 そして答えを返す。 アスカ:「大丈夫よ二人とも。ただ暫く動けないわ。精神力消耗しすぎ。 竜騎士の力がこれほどだとは、正直思わなかったわ。」 それだけ言うとアスカは二人の方へ倒れこむ。 しかしその瞳からは生命の輝きを強く感じる事ができる。 二人はアスカが強がりではなく、本当に大丈夫なのだと確認すると、胸をなでおろした。 しかしアスカはわかっていた。 技を繰り出した後に一瞬だが力に飲み込まれたこと。 その事を思い出して、心の中で呟く。 (シンジはあれ以上の力を完全に押さえ込んでるの?凄すぎるわね。あれは人が使える力じゃない。 もうシンジはアタシにとって、尊敬の対象を越えちゃったわね。あ、それは元からか。) そこまで考えてアスカは再び笑みをもらした。 それを見て、不思議がりながらもマナとマユミはアスカが無事なのを喜んでいた。 その光景を、上の司令席にいるオシリスは厳しい目で見つめていた。 ムサシはアスカ達の方の決着がついたのを見て、自分達も勝負に出る覚悟を決める。 トウジ、ムサシ、ケンスケの三人は、オベリスクを相手にかなり疲労していた。 相手を攪乱しようとしてその周囲を動き回る三人に対して、 オベリスクはその身に融合した魔獣の視覚を駆使して、その場をほとんど動かずに対応している。 結果的に三対一にもかかわらず、疲労度は三人の方が大きくなっていた。 無論これは大人と子供という最大許容量の差も多分にあるのだろう。 ましてやオベリスクはその身に三体の魔獣を融合させているのである。 その持久力はとんでもない物だろうという予想がつく。 それを考えれば、今は互角に戦えていてもどこで痛手を受けるかわかったものではない。 できるだけ早く相手を倒す。これしか勝つ方法は残っていないといって良い状態だった。 そして現在、ムサシは一瞬で勝負を決める事の出来る物を持っている。 そう、シンジが使わない方がいいとまで言ったものが。 ムサシはオベリスクから離れた所で残りの二人の肩を掴んで小声で話し掛ける。 ムサシ:「トウジ、ケンスケ。頼みがある。」 トウジ:「おう、なんや。」 ケンスケ:「事態が事態だけに簡潔に頼むぜ。」 軽く返事を返してきた二人に対し、ムサシは真剣な眼差しをして二人を見る。 それを見た二人もただ事ではない事に気付き、ムサシを省みる。 その様子を確認してからムサシは言葉を続ける。 ムサシ:「一瞬で良い。俺が奴に触れるぐらい接近する隙を作ってくれ。」 ケンスケ:「そんな事をしてどうするんだ。あの体じゃそう簡単には倒れないぞ。」 ケンスケが当然の疑問を返してくる。 それに対してムサシはゆっくりと首を振って否定をする。 ムサシ:「いや、俺の予想が正しければそれで奴を倒せるはずだ。」 トウジ:「何を根拠にそこまで言い切るのや?」 ムサシのあまりの自信に返って疑問を強くしたトウジが問いただす。 それを聞いたムサシは自分の鎧の間から、玄武の札を取り出して見せる。 ケンスケ:「な、何でおまえがそんな物を持ってるんだよ。」 ムサシ:「離れる瞬間に赤木博士が渡してきたんだ。反射的に取ったんだが、確認したらこれだった。」 トウジ:「何でもっと早う使わなかったんや!?」 ムサシ:「シンジが使わないほうが良いとまで言った物だぞ。恐ろしくて簡単に使えるか。 何より、俺は他の三枚の札の威力を見てるからな。 さっき惣流達が使っていただろう。一番最初の火柱がそれだよ。」 その言葉を聞き、二人は息を呑む。 先ほどの火柱はそれ程に凄まじかったから。 それを見てムサシは一瞬苦笑いをするが、すぐに真剣になって話を続ける。 ムサシ:「しかし今となっては俺達があいつに勝つにはこれを使うしかない。 危険だがやるしかない。二人は隙を作ってくれ。 そして俺が合図したらすぐに後退して伏せるんだ。 そうでないと巻き添えを喰うかもしれないからな。」 その言葉に、二人は黙って頷いた。そして二人は同時にオベリスクに、向って突進する。 それを見てムサシも、一泊置いてから二人に続いた。 今までの攻撃を急に止め、集まって話し合いをはじめた三人を見て、 オベリスクは悠然とその動きを止めた。 既に勝負の結果が見えて来たので、退屈を感じ始めたのである。 そこであのように話し合い始めたので、次の行動に興味を示したのである。 自分をまだ楽しませてくれるかどうか? それが知りたくてオベリスクは敢えて攻撃のチャンスを逃したのである。 しかし勝負とは一瞬の判断が死を招く物である。 勝機が見えた時に攻撃を止め、余裕を見せた事によって敗北した者は数多くいる。 その事をオベリスクは忘れていた。 そしてこの後、オベリスクは後悔に苛まれる事になる。 死を目前にした状態で。 オベリスク:「作戦が決まったようだな。さて、まだ俺を楽しませてくれるのかな?」 そう言って突進してくる二人を見て、その顔に笑みを浮かべる。 トウジ:「くらえやああぁぁぁ!!」 まず先にトウジが攻撃を仕掛ける。 しかも相手の正面からである。 オベリスク:「何かと思えば命をかけた特攻か。くだらぬ。終わりにするとしよう。」 それにあわせて、オベリスクは上段からその巨大ハルバードを凄まじい勢いで振り下ろす。 タイミング的には避けようが無い状況だ。 しかし後ろからきたケンスケがそれよりも早く、その手に持つ槍を真横に振るっていた。 その槍は穂先は自分の方に向いており、柄の方面を振るっている。 そしてその距離はオベリスクには届いていない。 慌てて間違えたのかとも思えるが、ケンスケの狙いは別にあった。 トウジはオベリスクの攻撃にではなく自分の側面に向って意志を向ける。 そしてその両腕を併せて、腕につけた手甲で防御の体勢を作る。 そこに真横に振るわれたケンスケの槍がぶつかる。 その反動を利用してトウジはその場を離れる。 そしてトウジがいなくなった瞬間、紙一重の差で巨大ハルバードが振り下ろされる。 その破壊力は凄まじく、金属で出来ているはずの床を悠然と切り裂き、周囲にひびが走る。 その結果オベリスクは一時的に無防備となる。 そこをトウジは武器を握っていた右腕を。ケンスケはそれとは逆の左足を攻撃する。 トウジ:「魔闘流奥義・魔獣烈震砕!!」 ケンスケ:「相田流槍術奥義・疾風旋回戟。」 それぞれが放った攻撃は狙いを違えず命中する。 オベリスク:「グアッ!!」 その攻撃の為にオベリスクはその右手から武器を取り落とし、左の膝を地面に付く。 しかしそれだけですんでいる辺り、オベリスクの防御力には驚くしかない。 二人が放ったのはそれぞれの流派の奥義である。 通常の魔獣ならば確実に粉砕するか、貫き砕くかのどちらかである。 にもかかわらず、オベリスクは流血こそすれ、その腕も足も未だに形を崩していない。 それはその鎧と魔獣三体分の防御力の凄まじさを物語っている。 一瞬の間を置いて、オベリスクはその行動を開始する。 オベリスクは離れているケンスケより、もう一撃を放とうとしているトウジに攻撃を仕掛ける。 武器を取り上げていては間に合わぬと判断したオベリスクは、傷ついた右腕に無理をいわせて攻撃する。 しかしそれはトウジの誘いだった。 それを十分に予測していたトウジは後ろに下がって、その攻撃を的確に避ける。 その結果、オベリスクはそのまま右腕を大きく振り抜く形となり、左側が完全に無防備になっていた。 そしてその直後、誰もいなかった筈の場所にムサシが現れたのを、 左肩のミノタウロスの視覚がオベリスクの脳に教えた。 ムサシは確実な勝利を得るために、気配を消し、この瞬間を待っていたのである。 気配を完全に消してしまえば、その場にいるとわかっていてもその存在感はかなり薄くなる。 ましてやトウジとケンスケに気を取られていたオベリスクや、 たいした知能を持たない魔獣ではムサシに気付かなくても仕方が無い。 ムサシは左肩のミノタウロスの眉間に札を貼り付けるとすぐさま後退する。 ムサシ:「トウジ!ケンスケ!下がれ!!」 その声を聞き、二人はすぐさま交代する。 それを確認した後、ムサシは大声で札にかかれた神獣・玄武の名を叫んだ。 それと同時に、札が黒い光を放つ。 そしてその光の中に、一瞬だが、蛇と亀が絡まったような姿の玄武が見える。 その玄武が再び黒い光の中にその身を沈めた時札の呪文が発動する。 【玄武・超重破砕撃】 呪文と共に、オベリスクの周囲の空間が歪む。 そしてその空間内の空気は、札の真下の空間に向って渦巻きながら向う。 その力は空間の外にも影響を及ぼし、周囲の空気も吸い込み始める。 何が起き始めたのかわからなかったオベリスクは、とりあえず札を引き剥がそうと右手を札に伸ばした。 その直後、札が再び輝くと、一気に上からの重圧がオベリスクを襲った。 オベリスク:「な、何だ?何が起こった!?体が重い!?。」 その重力は際限なく増していく。 その力は凄まじく、オベリスクは地面に貼り付けられてしまう。 床はその力に耐えられず、歪みを増していく。 そしてついにその場の重力が限界まで上がったのか、その周囲の物を飲み込み始めた。 力場の力が上がりすぎた為にブラックホール現象を起こしたのである。 ムサシ達はその場にしがみついて呑み込まれないように踏ん張る。 オベリスク:「グギャアアアァァァァァ!!」 オベリスクの断末魔の声が上がる。 その声があがってから暫くして、ようやく玄武の力は弱まり消えた。 それを確認した三人は、そのままの体勢で力を抜いて突っ伏してしまった。 オベリスクとの戦いに続き、玄武の札の放った力を見て、疲労がピークに達してしまったらしい。 三人は決着のついたアスカ達の方に行くまで暫くそのまま動く事はなかった。 しかし、玄武はこの場の決着をつけただけでなく、他の者達にも影響を与えていた。 To Be Next Story. ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 後書き 八翼の堕天使、ついに第壱拾八話になってしまいました。 しかも今回は初めてのことをしてしまいました。 読んで貰ってわかるとおり、シンジが出ていません。 自分の作品でシンジが出ない事が外伝意外であるとは思いもしませんでした。 というかこの作品はアスカ、マナ、マユミ、ムサシ、トウジ、ケンスケ意外主要キャラは出ていませんね。 しかもまた話が伸びている・・・。はぁ・・・。 もう際限がなくなっているな。 後何話で終わるんだろう・・・。 聖:何を遠い目をしているんですか―――!! 作:ゲフッ!いきなり出てきて拳で殴るな。 聖:ええい今回は問答無用です。私達を出さないだけで無くあまつさえ主のシンジ様まで、許しません。 魔:その通り。今回ばかりは許さん。俺が冥府に送ってやる。 作:げっ!?サタン。おまえまで。しかも何で魔剣まで持ってんだ。しかも目がマジだぞ。 魔:当たり前だ。本気だからな。おいルシフェル。おまえも抜けよ。 聖:もう抜いてます。(ギラリ) 作:やばい・・・今回は本気でやばい。逃げちゃ駄目だ、じゃ無い逃げなきゃ駄目だ。 聖:貴様、TV版での主の台詞をこんな所で。 魔:万死に値する。 龍:最強無属性魔術・神龍砲、発射―――!! 作:ウギャ――――!! 聖:あ、神龍皇。今の本気で撃ったな。 魔:次回作・・・書けんのか? P,S 感想、誤字、脱字、ここはこうした方がいいんじゃないか、と言う意見ございましたら送ってください。 悪戯、冷やかしは御免こうむります。
感想は新たな作品を作り出す原動力です。1行の感想でも結構 ですので、ぜひとも作者の方に感想メールを送って下さい。 |