剣神暦100年

バルディエルが破壊神に単身で挑んでから100年の時が流れた。

バルディエルがこの天界を去って破壊神に挑み、その命を散らした時、創造主は悔やみ、涙した。
天使達はそれぞれに個性があるが、その性格は少なからず生み出した創造主の影響を受けている。
限られた時間の中で、様々な可能性を見つけて成長する人間と違って、
天使の性格は殆んどが生まれ持った物である。

バルディエルはその中で、創造主の理想への思いが強く影響してしまったのだろう。
そう考えると彼がその命を散らした原因は自分にあるのでは。
創造主はそう考えていた。

しかし嘆いている訳には行かない。
もうすぐ多くの天使達の命を散らすであろう大戦が近づいている事を、
創造主は感じ取っていたからである。

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八翼の堕天使
ー外伝の四 創造と破壊・神々の大戦ー
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聖魔:「創造主よ。彼の者の動き、益々活発なものとなっております。
    来る時に至るのも、もはや時間の問題かと。」

創造:「そうですか・・・。わかりました。」

天使達を統括する、唯一創造主の意志とは別に生まれた六対十二枚の翼を持つ天使・ルシファーは、
玉座に座る白い布に金の縁取りをした衣を纏う自分の主、創造主に向って報告書の内容を告げる。
その報告を聞き、創造主は天を仰いで溜息をつく。

天界では階級制度が行使されているが、上下関係については余りうるさくない。
階級に関係なく、殆んどの者達が友人として接している。
上下関係が厳しく問われるのは、戦闘や職務についた時だけである。
ある意味理想的な状態である。

ルシファーからの報告。それは創造主にも予想がついていた。
しかしそれでも彼は肩を落として溜息をついた。

彼にとって、最大にして最も難解な事に関する事だからである。
一歩間違えればこの世界の滅亡へと繋がるその事柄に、失敗は許されない。
例えこの身を滅ぼそうとも。

それ程の事である為、時機を逸するわけには行かない。
しかし元来創造するという立場にある彼にとって、それは余りにも虚しく、そして悲しい事であった。
そしてこの事態を招く原因は間違いなく自分にあるのだ。

その所為で多くの天使達を不幸に曝す事になる。
そう、あのバルディエルのように。
それを考えると、溜息をつかずに入られなかった。

その気持ちを察してか、傍に控えるルシファーは黙ってその様子を見つめる。
するとその沈黙を破るかのように大広間に当たるこの部屋の扉が叩かれる。

聖魔:「誰だ?」

創造主に変わってルシファーが声を放つ。
瞑目していた創造主もそれに反応して扉の方に目を向ける。

ミカエル:「失礼致します。」

高さ300メートルはあるであろう巨大な扉押し開けられ、一人の天使が入ってきた。
三対六翼を持つ第一階級・熾天使に属する、七大天使の筆頭・ミカエルである。

聖魔:「ミカエルか。何のようだ?何か起きたか?」

ルシファーは入室して来た者が誰なのか確認すると、創造主に変わって用件を聞く。
それに対してミカエルは軽く会釈をすると、用件を伝える。

ミカエル:「創造主様にお客様が見えたのですが、いかがいたしましょう。」

それを聞いた創造主の表情が、先程の憂いをおびた物から、少しだけ笑顔に戻る。
そしてミカエルに向って少しだけ嬉しそうに言葉をかける。
創造主にとって、友と呼べる者は殆んどいない。
それだけに、その訪問は嬉しい物である。

創造:「私に客と言うと一人しかいませんね。こちらにお通ししてください。」

ミカエル:「承知しました。暫しお待ちください。」

そう言ってミカエルがその場を去って暫くすると、客といわれた者が地響きをたてて入ってきた。
創造主が世界を創生する前から生き続ける唯一の存在、神龍皇である。
その巨体は300メートルはある扉ですらも小さく感じさせるほどであった。
神龍皇はその巨大な翼を閉じてようやく部屋に入ってきた。

天界で最も身長が大きいのは創造主であるが、その創造主ですら200メートル前後である。
対して神龍皇は頭から尾の先までの全長は約500メートル。
地上から頭までの高さは200メートル。
その巨体を浮かせることのできる翼の翼長は、最長部分でその巨体を超える600メートルである。
片翼で約250メートル。しかもそれが八枚である。
そしてその体は外骨格や鱗で完全に覆い尽くされている。
神龍皇の桁外れの巨大さが伺える。

窮屈そうに室内に入ってきた神龍皇に対し、創造主は笑顔で出迎える。

創造:「神龍皇、久しぶりですね。良く来てくれました。
    あなたには狭いかもしれませんが、ゆっくりしていってください。」

神龍皇:「うむ、約五百年ぶりだな。普段は眠っているのでな。
     中々来る事ができなくてすまなく思っている。心遣い感謝するぞ、創造主。」

創造:「いえいえ、あなたは私の唯一とも言える友人です。気になさらないで下さい。
    今酒の準備でもさせますので。」

神龍皇:「いや、今回は遠慮させてもらおう。なにやら忙しい様子だしな。
     ・・・やはり戦うのか。破壊神と。」

神龍皇の問い掛け、というよりも確認の言葉に、創造主は静かに頷き答えた。

創造:「遅かれ早かれ、私と破壊神はぶつかり合う運命にあります。
    これは普通の運命と違って宿命とも言える物ですから。」

神龍皇:「破壊神をおまえが生んだのと同じだからか?それとも自分と同じと言える存在だからか?」

創造:「両方・・・でしょうね。もしかしたら他にも理由はあるのかもしれませんが。」

神龍皇:「しかし汝が破壊神と戦っても、勝つ見込みは少ないぞ。相手を倒すと言う事は破壊の行為だ。
     創造を司る汝が破壊を司る彼の者に勝つのは至難の事だぞ。」

創造:「それについては考えてあります。いざとなったらあの神器を使うつもりですしね。」

神龍皇:「神器・・・だと?まさかあれを使うのか!?
     おまえや我以外に世界が創生される前からこの世界で、己の主となるべき者を待ち続ける、
     あの神器を。」

神龍皇は驚いた様子で創造主に聞き返す。
創造主は黙って頷き返した。

それを見た神龍皇は天に向って大きく溜息をつくと、悲しげな瞳で創造主を見つめた後、
おもむろに声を放った。

神龍皇:「そうか・・・それ程の覚悟か。・・・・・・戦いは何時頃になる?」

創造主:「まだはっきりとはしておりません。ですが報告を聞いた所ではもう時間の問題だそうです。」

神龍皇:「・・・・・・そうか。」

神龍皇は再び大きく溜息をつくと、その首を廻らして扉の方に向き直る。
そして数歩扉に向って歩いた後、今度は首だけ廻らして創造主の方を向き、言葉をかける。

神龍皇:「今日は邪魔をしたな。ここらで帰るとしよう。・・・また会おう。」

創造:「もう帰るんですか?もっとゆっくりしていったらどうです?」

神龍皇:「いや、来た当初から余り長居はしないつもりだった。
     これ以上部下の天使達の邪魔をしては悪いしな。」

それだけ言うと、神龍皇は扉を出て行った。
最後にルシファーの方に視線を走らせながら。
それを感じ取ったルシファーは、創造主の後ろで気付かれぬように、ゆっくりと頭を下げた。

そしてこの日から丁度一ヵ月後、破壊を司る神が表舞台に現れる。
その目的はただ一つ、世界の消滅である。

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剣神暦150年

破壊神が本格的に世界の淘汰を始め、数多くの魔獣が天界に攻撃を仕掛けた。
創造主の配下である天使がこれに対抗し、全面的な戦いが始まった。

その戦いは既に五十年にわたって続いている。
にも関わらず、どちらが攻勢なのかもはっきりとはせず、まさに一進一退の様を呈してきている。

その理由はただ一つ。
双方の軍団を統べる者、即ち創造主と破壊神の直接的な戦いが、未だに一度も無いからである。
いや、それぞれの神は未だに一度たりとて戦場にでて来ていないのだ。

創造主の方はわからなくも無いが、破壊神の方は天使達にとって以外と言えた。
破壊を司る神と言うからには、先陣を切って現れると考えていたからである。

しかしその行動は予想を反して慎重な物だった。
たった一度、天界にに宣戦布告をする際に、幻影を使って映し出した時だけで、
それ以後は姿を決して見せてはいない。
天界には、ただ魔獣が襲撃してくるだけである。
それがもう五十年近くも続いていた。

ミカエル:「この戦い・・・一体何時まで続くのか・・・。」

先程、新たに襲撃してきた魔獣の群れを討滅して戻ってきた部隊を率いていたミカエルは、
その体についた返り血を落とす事もせず、一人呟いた。

魔獣の戦闘能力は確かに高いが、第四階級以上の天使ならば決して劣ることは無い。
ただ、魔獣はその巨体と生命力で天使を凌駕する為、戦闘が長引いてしまい、
思わぬ不覚を取りそうになる事もあった。
力で劣る天使達にとって、長期戦は不利だったのだ。

物思いに耽るように考え込んでいたミカエルに声をかけたものがいた。
ミカエルと同じ第一階級 熾天使に属する七大天使の一人、ガブリエルである。

ガブリエル:「さっきの戦いはご苦労さん。どうした?こんな所で考え込んで。」

ミカエル:「ああ、あなたでしたか。いえ、この不毛な戦いは何時まで続くのかと思いまして。」

ガブリエル:「ああ、それなら先程ルシファー殿から伝言が伝えられてきた。破壊神が動いたらしい。
       真っ直ぐにここに向っているそうだ。到着予想時刻は三日後。
       各人準備を怠るな、だそうだ。」

ミカエル:「では、創造主も?」

ガブリエル:「先程ルシファー殿をつれて奥の間に行かれた。多分神器を取りにいかれたのだろう。
       ラファエル、ウリエル、サリエル、レミエル、メタトロンも準備を始めている。」

ミカエル:「そうですか・・・。じゃ、遅れをとらないように私も準備を始めますか。」

天界の状況を簡潔に伝えられたミカエルは溜息を一つついた後、できるだけ明るく言い放った。
それを見つめていたガブリエルは、寂しげな表情で声をかけた。

ガブリエル:「全員、無事に生き残れると良いな・・・。」

ミカエル:「・・・そうですね。」

ガブリエルの言葉に、ミカエルも寂しげに答えた。
二人ともわかっているからだ。
創造主と破壊神。この二神がぶつかり合う戦いの中で、生き残れる確立など殆んど無い事が。

そして、これから三日後。二人の想像を遥かに超えた、史上最大の戦いの幕が上がる。


天界に破壊神が直接襲撃してきた途端に、戦況は一変した。
今までは一進一退、僅かながら天使達が押していた状況が、破壊神の為に崩れたのだ。

破壊神の快進撃は凄まじく、通り過ぎた場所には生命の存在していた面影が消えさっていた。
その様子はまさに破壊の神の名前通りであった。

破壊神はその背中に四枚の翼をはためかせて突き進んでいた。
周囲の事など気にかけてはいない。

進行を喰い止めようとする天使はもちろん、
自分の配下である魔獣ですらも吹き飛ばしながら突き進んでいた。
その外見ははっきりとはせず、全身から光を放っていた。

これにより、天界にいた天使の大半が死を迎えていた。
残っているのは、第一階級 熾天使に属する天使達の筆頭であるルシファーと、
その直属の七大天使達ぐらいのものである。
それ以外の天使は全て死亡、もしくは戦闘不能の重症である。

天界には癒しの法はあっても医療技術というものは存在しえない。
その為、癒しの法を使える者まで戦闘によって重傷を負ってしまったり死亡してしまった現段階では、
事実上傷の回復は不可能である。
重傷を負った天使達の中には、どうせ散る命とその体に鞭打って魔獣と刺し違える者達もいた。

そんな中、七大天使は己の命を削って破壊神に攻撃を仕掛けていた。
ルシファーの命令で、創造主が赴くまでは手を出すなと言われていたが、
少しでも創造主の負担を減らそうと、その命令を無視したのだ。

しかしいかに命を削って戦おうとも、所詮は神によって生み出された者達である。
相手は自分達を生み出した者に匹敵、もしくはそれを凌駕する存在である。
その攻撃は殆んど効果を示していなかった。
進行を一時的に止めているだけでも驚愕に値すると言っても良い。

しかしミカエル達は既に疲労の極値、何時倒れてもおかしくない状況である。
事実、その動きは徐々にだが鈍くなりつつある。
精神力を振り絞ってカバーしていた疲労が、隠しきれなくなってきたのだ。

それを見て取った破壊神は、為すがままにしていた状況から反撃に転じようと、その腕を振り上げた。
そしてそれを、ほんの少しだけふらついたサリエルに向って振り下ろした。

レミエル:「サリエル、危ない!?」

それに対してサリエルの反対側にいたレミエルは堪らずに声をあげた。
その声に反応して顔を上げたサリエルは、迫り来る破壊神の一撃に覚悟を決めた。
しかし覚悟を決めた自分の前に、ミカエルが現れた時、あまりの行動にサリエルは硬直した。

どう考えても避け様の無い一撃。
これを一撃でも受ければ、天使の体では耐え切れずに崩壊するだろう。
それを承知の上で自分の前に現れたミカエルに、サリエルは言葉を失っていた。
そんなサリエルの思いを知ってか知らずか、ミカエルは静かにこう呟いた。

ミカエル:「一人では死なせませんよ。」

そう言って、ミカエルは振り下ろされる破壊神の一撃をじっと見つめる。

しかしその一撃がミカエルとサリエルを襲う事は無かった。
破壊神の一撃が二人を飲み込まんとした時、閃光らしき物が破壊神を襲ったのだ。
その一撃により、破壊神は初めてその身にダメージを受けた。

そのことがプライドの触ったのであろう。
破壊神はその意識を七大天使から自分に攻撃を加えた者へと向ける。
その視線の先には、黒と白の六対十二枚の翼を広げた天使がいた。

聖魔:「まったく、おまえ達は。我はおまえ達に死ねなどと言う命令を出した覚えはないぞ。」

ルシファーはミカエルとサリエルを見つめて呆れたように言い放つ。
しかしその青い瞳には、二人の無事に安堵している優しさが感じられた。

破壊神:「貴様、何者だ?この我を一瞬とは言えふらつかせるとは、只者ではあるまい。」

聖魔:「我は天使族最強の称号を賜っている聖魔混沌を司る天使。名はルシファーと言う。
    冥府の土産に覚えておくと良いぞ。破壊の神よ。」

破壊:「・・・どうやらこの周りの蚊蜻蛉どもよりも先に死にたいらしいな。」

そう言うと破壊神はその殺意をルシファーに向けて放つ。
ルシファーはそのさっきに対しても悠然と構えて受け流すと、
破壊神から視線を反らし頭を下げて後退する。

聖魔:「控えるが良い。創造主の御見えである。」

ルシファーがそういった直後、眩い光が辺りを照らす。
暫くして光が収まると、そこには金とも鉄とも言えない不思議な輝きを放つ金属で出来た鎧と、
白き衣を身に纏い、その右手に血のように赤い二股の槍を持った創造主が立っていた。
風になびく金色の長き髪と、光の加減で銀色に見える瞳が全てを見透かすように輝いていた。

創造主が現れた事で、足手纏いになってはならないと七大天使はその場から少し離れる。
そして破壊神は嬉しそうに目を細めて言葉を投げかけた。

破壊:「ようやく来たか、創造主。」

創造:「破壊神・・・。何故汝はこの世界を滅ぼそうとする。何故全てを滅しようとする。
    この世界は既に神の手を離れている。この世界の良く末を決めるのは神ではなく、
    そこに住む者達の筈だ。

破壊:「違うな。この世界は創造の神によって生み出された世界。
    神の手によって生まれし世界は、神の手によって滅びるべきなのだ。
    そして、その滅びへと導くのがこの破壊神なのだ。」

そう言うと、破壊神はその力を集約してハルバードを作り出し、構える。
それに応えるかのように、創造主はその手に持つ槍を構える。

破壊:「血迷ったか?創造の神が、この破壊の神を倒すとでも言うのか?」

創造:「やってみなければわかりませんよ。」

そういった瞬間に、創造主は破壊神に攻撃を仕掛ける。
それを迎え撃つように破壊神もハルバードを振るうが、その攻撃を創造主は槍を持って弾くと、
槍を使って攻撃する。

破壊神はそれをある程度余裕を持ってかわし、創造主から少し離れる。
しかし右の二の腕に痛みを覚えて視線を向けると、そこには傷がついていた。
余裕を持って避けたはずの攻撃が、空間を切り裂いて破壊神を傷つけていたのだ。
自分の体を傷つけた槍を、破壊神は暫しの間呆然として見つめていた。

破壊:「貴様・・・何をした?貴様にこんな力がある筈が無い。・・・その槍の力か。」

創造:「この槍は私が生じると同時にこの世界に現れた物。
    神を傷つける事のできる唯一の神器、神を殺す為の槍。名はロンギヌス。
    いまだ真の主を定めぬ槍。」

破壊:「・・・主として認められていない槍を何故貴様が。
    貴様・・・その命を代償にしているのか。」

創造:「あなたと戦うのです。ましてや今までに多くの天使達を巻き添えにしています。
    私だけが無傷でいるという訳には、行かないのですよ。」

破壊神の言葉に、創造主は苦笑いをして答えると、ロンギヌスの槍を構えて再び攻撃を仕掛けた。
破壊神もまたそれに応じる。

その槍の力を知った破壊神は確実のその攻撃を避け、創造主に攻撃を仕掛ける。
防戦一方になり始める創造主。

元来創造主は戦闘というものに馴れていない。
対して破壊神は戦闘の為に存在しているような物である。
如何にロンギヌスの槍の力を使おうとも、創造主が不利である事に変わりはないのである。
しかしこの場にいるのは創造主と破壊神だけではない。

聖魔:「・・・我の事を忘れてもらっては困るぞ。」

その呟きの直後、破壊神は側面から攻撃を受けて一瞬ふらつく。
その隙をついて創造主は破壊神を吹き飛ばすと、距離を取る。

創造:「すいませんでした、ルシファー。」

聖魔:「礼は必要ありません。主を守るという当然の事をしただけです。」

ルシファーに対して創造主は礼を述べたる。
それに対してルシファーはその視線は破壊神を捕らえたままで言葉を返す。
その対応に、創造主は少しだけ微笑んだ。
感情を表に出す事を苦手とするこの天使が、少しだけ照れている事がわかったからである。
そんな二人に対し、低く怒りに満ちた言葉が放たれる。

破壊:「そこの者・・・貴様も何者だ。神であるこの俺を揺るがせるとは、ただの天使とは思えん。」

破壊神の静かなる問い掛けは、その奥に秘められた怒りを現していた。
二度にわたって自分をふらつかせ、揺るがした者。
破壊の化身たる彼の怒りの逆鱗に触れる行為だったようである。

創造:「彼は私が生み出した天使ではありません。この世にあった光と闇、
    そして私の力の余波とあなたの力の余波がぶつかり合って生じた混沌の中から生まれた天使。
    その身に光と闇の力を宿した、私を超える可能性を持つ天使です。」

破壊神の問い掛けに、ルシファーに変わって創造主が答える。
それを聞いた破壊神は何かに納得したように言葉を放つ。

破壊:「なるほど・・・いわば虚無と混沌から生まれた天使か。
    ・・・ならばこの俺が再び無に帰してやろう。」

その言葉と共に、破壊神の殺意に満ちた闘気が爆発的に高まる。
その勢いは限界を知らないかのように高まり続け、終には天界全体を揺るがし始めた。

それに対して創造主は構えに入るが、ルシファーは傍観するのみだった。
その態度を怪訝に思った創造主はルシファーに問い掛ける。

創造:「どうしました?ルシファー。」

聖魔:「・・・そろそろ来ると思いますので?」

創造:「?・・・何がですか?」

聖魔:「申し訳ありません創造主。初めてあなたの命を無視した事、後で如何様にも罰を受けます。」

創造主の問い掛けに、ルシファーは答える事無く、逆に謝罪の意を示した。
創造主はルシファーが何を言っているのかわからなかったが、次の瞬間、その言葉の意味を知った。

「最強無属性魔術・神龍砲!!」

破壊:「な、なんだ!?グアアアァァァァ――――!!」

強大な魔力の奔流が破壊神を飲み込み、そのまま吹き飛ばす。
破壊神はその力に抵抗しきれず、かなりの距離を吹き飛ばされてしまった。

創造主はその強大な魔力を放った者へと視線を向ける。
予想はついていたので、それを確認する為の行動だった。
これほど強大な魔力を放つ事ができる者は、一人しかいなかったから。

創造主の視線の先には、予想通りの者がいた。
八枚の翼を広げ、破壊深夜創造主をはるかに凌駕する巨躯を宙に浮かべ、
知性の輝きを持ったその八つの瞳は吹き飛ばされた破壊神をしっかりと捕らえていた。

創造:「神龍皇・・・やはりあなたでしたか。」

創造主は自分の横に舞い降りた神龍皇に対して声をかけた。
それに対して、神龍皇は軽くルシファーの方に目を向けながら言葉を返した。

神龍皇:「友が命を賭けている時に、それを黙って傍観していられるような性格ではなくてな。
     それに、そこの天使との約束もあったしな。」

それを聞いた創造主は驚いたような顔をしてルシファーを暫しの間見つめた後、
嬉しそうに微笑んで、二人に礼を言った。

創造:「・・・ありがとうございます、ルシファー。神龍皇。」

創造主、ルシファー、神龍皇はお互いを見て頷きあうと、戦闘体勢を整える。
それを待っていたかのように破壊神は起き上がると、今度は有無を言わせずに衝撃波を放ってきた。

その衝撃波を、ルシファーは飛翔して避け、神龍皇は当たるに任せて前へと足を踏み出す。
外骨格に無数の細かい傷がつくが、神龍皇はそれを気にした様子も無い。
最後に創造主は迫ってきた衝撃波をロンギヌスの槍で切り裂くと、破壊神へと仕掛ける。

創造:「破壊神よ、いざ尋常に勝負!!」

これ以降、神龍皇とルシファーを巻き込んだ創造主と破壊神の戦いは、五百年にわたって繰広げられる。


剣神暦650年

創造の神と破壊の神が世界の存亡を賭けて戦い出だしてから、五百年。
戦いの場となった天界は、力の衝突の影響によって目も当てられない状態となっていた。
その戦いを起こした者達の状況は、まさに凄まじいの一言であった。

最も防御力の劣っていたルシファーは、十二枚の翼のうち五枚ほどが動かす事ができなくなっていた。
その体も満身創痍となり、全身が血で赤く染まっていた。

ルシファーとは逆に、最も防御力の高かった神龍皇はどうかと言うと、こちらも凄まじい状態であった。
危機的な状況では創造主の盾として攻撃に身をさらしていた神龍皇は、最も多くの攻撃を受けていた。
結果、四人の中では最も傷が多く、既に飛翔することはできなくなっていた。
それでも名をその四肢を持って立ち上がり、その牙や爪、尾や炎のブレス、
魔法の類を駆使して破壊神と近接戦闘を繰広げているのだから、信じられない生命力である。

創造主はかなりの深手を負ったのか、ロンギヌスの槍を杖のようについて体を支えていた。
ロンギヌスの槍を振るう度に生命力を吸収されているのも、かなり効いているのだろう。
創造主は自分の原価が間近に迫っているのを感じていた。

これほどの戦闘の中、破壊神は最も傷の数は少なかった。
破壊神を傷つける事ができたのは、創造主の持ったロンギヌスの槍だけだったためだ。
昔バルディエルが破壊神を傷つける事ができたのは、
その生命力全てを一撃に賭けた為なのかも知れない。

今は神龍皇がその驚異的な生命力を武器に接近戦を繰広げているが、
現状で最も有利なのは破壊神であることは間違いない。

破壊:「神龍皇よ、いい加減諦めたらどうだ。貴様は俺より強いかもしれん。
    だが、貴様では俺は倒せん。神を殺す事ができるのは、特定の力だけなのだ。」

神龍皇:「ならばこれならばどうだ。同時攻撃、無属性魔術・神龍弾、神龍砲!!」

神龍皇の放った同時無属性魔術を超至近距離で受けた破壊神は、抗うすべなく吹き飛ばされる。
しかし破壊神は自分のダメージになるはずは無いと、何事も無かったかのように立ち上がろうとする。
が、立ち上がった直後、破壊神は吐血しながら膝をついた。

破壊神:「グハッ!な、何故だ。神殺しの槍でもないのに、何故貴様の攻撃が俺にダメージとなる。」

神龍皇:「汝の力は負の、創造主の力は正の力を帯びている。対極なのだから当然と言えば当然だがな。
     だが我の力を司る無の属性はそのどちらでもない。
     だからこそ、我やルシファーの攻撃が汝に効くのだ。」

破壊:「しかし今まではたいして俺に攻撃は効かなかった筈。何故急に効果が現れだしたのだ!?」

神龍皇:「今までは我の魔力だけだった。
     しかしそれが効かぬのであれば、汝を傷つけた天使を見習うしかあるまい。
     我が生命力を上乗せしたのだ。」

そう言って神龍皇は再び破壊神に攻撃を仕掛ける。
破壊神もそれを迎え撃つ為に立ち上がり、攻撃を受け止めたが先程までの余裕は消え去っていた。
思い出したからだ。たった一人で自分に立ち向かい、掠り傷ほどとは言え、自分を傷つけた天使の存在を。


創造:「ルシファー、願があります。聞いてくれますか?」

聖魔:「我はあなたに使えるもの。如何なる命令でも遂行しよう。」

再び接戦を繰広げ始めた神龍皇と破壊神を見つめていた創造主は、ルシファーにそっと声をかける。
それに対してルシファーは無表情で言葉を返した。

創造:「ありがとうございます。今破壊神は神龍皇に注意を向けていますが、致命的な隙がありません。
    神龍皇も決め手が無いので、このままでは不利です。
    そこで、あなたに破壊神の動きをほんの一瞬、止めていただきたいのです。」

聖魔:「破壊神の・・・動きを・・・ですか!?」

創造主の言葉に、ルシファーは信じられないとばかりに視線を向ける。
しかし創造主の目を見た途端に、返そうとした言葉を打ち消し決意を固める。

破壊神の動きを止めるとなると、命懸けとなることは確実である。
しかしそれでもやり遂げねばならないと決意を固める。
創造主の瞳に、覚悟の光を見てしまったから。

ルシファーは破壊神の資格にそっと降り立つと、手にしていた剣を地面に突き立て、呪文を唱え始める。
魔力と生命力をかけて破壊神を囲むように陣を敷く。
気付かれないようにその陣の上に幻惑の呪文をかけながら。

同質の魔力を持っていた神龍皇は、ルシファーが始めた行為に気付き、
破壊神の意志がそちらに向かないように、今まで以上に猛攻を加える。
そしてその一方でルシファーに自分の魔力を送り、手助けをしていた。

暫しの時間を置いて、ルシファーの作り出していた陣が完成する。
それを感じ取った神龍皇は炎を吐き出して破壊神の足止めをしながら陣の外に出る。
ルシファーは神龍皇が陣の外に出た瞬間に呪文を発動させた。

聖魔:「超巨大最強結界魔術・聖魔混沌結界陣!!」

ルシファーの言葉と共に、幻惑の術で隠れていた魔法陣が光り輝き、破壊神を捕らえる。
陣の中から伸びた白と黒の光が破壊神を絡めとり、障壁はそこから出ることを封じる。
最も、元の力の差があるため、余り長い時間は封じておく事はできないだろう。

が、一時的にとは言え破壊神の動きが止まった事に変わりはない。
その一瞬の隙を付いて、創造主は破壊神に攻撃を仕掛けた。

破壊:「馬鹿め、この程度で俺の攻撃が止まるものか!」

破壊神はそれ嘲笑うかのように、結界を突き破るほどの衝撃波を放つ。
ルシファーの結界を貫くような攻撃を放つとは考えていなかった創造主は一瞬対応が遅れる。

「禁術・七星結界防御壁!!」

しかしその衝撃波が創造主に直撃する事は無かった。
今まで次元の違う戦いに手を出す事ができなかった七大天使は、各々の力を高め手待機をしていたのだ。
ミカエルを中心として、六人の天使が六芒星の形に布陣し、衝撃波と創造主の間に割って入ったのだ。

六芒星は本来闇を象徴する形である。
そのためにミカエル達の光の力と反発しあい、一時的に強大な力を得たので衝撃波を防げたのだ。
しかし本来光の存在である天使が闇の力を行使する事は自殺行為である。
だからこそ禁術とされているのだ。

創造:「これで最後です。破壊の神よ!!」

創造主はミカエル達の思いを無駄にしないために、敢えて省みる事無く破壊神に攻撃をする。
創造主の繰り出したロンギヌスの槍の一撃は、違える事無く破壊神の胸を突き貫く。

ロンギヌスの槍に貫かれた破壊神は、何かを掴もうとするかのように虚空に手を伸ばしたが、
数瞬の間をおいて力尽きたのか、腕がだらしなく垂れ下がる。
それを見た創造主は、大きなアンドとともに肩に入っていた力を抜く。

が、その次の瞬間、輝きを失っていた破壊神の瞳が強く輝くと、左手をロンギヌスの槍に、
右手を創造主の胸倉へと伸ばし、掴んだ。
破壊神はそのままロンギヌスの槍を握りつぶそうとするかのように強く掴み、
右手は創造主を吊るし上げるかのように持ち上げる。

破壊:「ま、まだ・・・だ。まだ死なぬ。俺は破壊の神だ。この程度で死ぬわけにはいかぬ。」

その様子を見て、神龍皇とルシファーが駆け寄ろうとするが、その行動を創造主は目で制する。
それに気付いた神龍皇とルシファーはその場で動きを止めて、じっと様子を見守る。
二人が駆け寄るのを確認した創造主は、決意のこもった瞳で破壊神に視線を戻す。

創造:「まさかこのロンギヌスの槍ですら死なないとは。どうやら私ではあなたを倒せないようですね。
    しかしこんな私でも、あなたを封印する事はできますよ!!」

破壊:「なん・・・だと?」

創造主は破壊神に答える事無く呪文を紡ぎだす。
その呪文に応じるように、大地に創造主と破壊神を囲むように陣が描かれていく。
先程、ルシファーが作り出した物と違い、創造主の作り出したそれは、中心に漆黒の闇があり、
まるで何かが口を開けて待ち構えているようだった。

創造:「遥かなる次元にて、永久の時間、眠りなさい破壊神よ。
    我が力を持って汝を闇へと封印せん。秘術・天封殺」

その言葉と共に、破壊神が闇の中へと飲み込まれていく。
創造主を掴んでいた右手が離れると、破壊神は両手でロンギヌスの槍を握り締める。

破壊:「覚えておくが良い創造主!俺は必ず復活してみせる。
    その時こそ、この世界に終焉の幕を降ろしてくれる。必ずやこの世界を破壊してみせる。
    今は封印されてやろう。だが、この世界ある限り、俺は必ず復活して見せるぞ。
    この槍は封印の駄賃代わりに破壊させてもらう。」

そう言うと、破壊神はロンギヌスの槍を強く握り締めると、そのまま衝撃波を放つ。
それを受けたロンギヌスの槍は粉々に砕けて宙を舞う。
砕けたロンギヌスの槍の破片は、創造主と破壊神、二人に細かい傷を無数に着けた後、消え去った。
破壊神はそれを満足そうに見た後、高笑いを上げながら闇の中へと消え去った。


破壊神が闇のそこへと消え去った事を確認すると、
創造主は神龍皇とルシファーをゆっくりと振り返り、微笑んだ。
その笑みを見て、二人はようやく全てが終わった事を理解した。

が、次の瞬間には二人の表情が凍りついた。

微笑んでいた創造主が力無く、崩れ落ちるようにその場に倒れたのである。
二人は一瞬何が起きたのかわからなかったが、創造主が倒れたのだと理解すると、すぐさま駆け寄った。

二人が駆け寄った時、創造主は全身が赤く染まっていた。
その身に纏った白き衣は赤く染まり、金色に輝く鎧は乾いた血で黒くなっていた。
創造主は口からも吐血していた。
ロンギヌスの槍の力を生命力を代償にして引き出した結果である。

創造主はゆっくりとその銀色の瞳を開くと、自分を見つめる二人に再び微笑む。
そして、蚊の鳴くような小さな声で二人に語りかける。

創造:「二人とも、最後まで有り難う御座いました。破壊神は封印されとりあえず全ては終わりました。
    しかし彼が最後に言い残したように、必ず復活する時が来るでしょう。
    ですが、私の命は今まさに消え去ろうとしています。」

その言葉に偽りがない事は言うまでもないことだった。
神龍皇とルシファーは互いに顔を見合わせた後、強く頷くと、創造主に言葉を掛けた。

神龍皇:「創造主よ、何か言い残す事はないか?我らでよければ聞こう。」

創造:「あなた方でなければ頼めませんよ。・・・もうすぐ天界は崩壊します。
    破壊神との戦いの影響もありますが、私がいなくなることで、維持する力が消えるためです。
    最も、既にここに住まう者はあなたしかいないですが。ねえ、ルシファー。」

創造主の言葉は七大天使の死を確信しての事だった。
事実、ミカエル達は禁術と破壊神の技の衝突の力に耐え切れずにその命を散らしている。
ただ不思議な事にその亡骸はどこにも存在していなかった。

如何に禁術を使ったとは言え、肉体が消し飛ぶ事などないはずである。
しかしどこを探しても結局彼らの肉体を探し出す事はできなかった。
この事が、後にルシファーにつらい事実として襲い掛かるのだが、それを知る術は今はなかった。

創造:「破壊神がいなくなった事、そして天界がなくなることで光と闇のバランスが崩れます。
    その影響で、地上に魔獣の眷族が異様に増えるでしょう。
    ただ人間の心配はする事はありません。私の死と共に、新たなる二人の神が現れます。
    私に比べればはるかに弱き力の神ですがね。
    そして異界との交信が可能となり、魔術に目覚めるでしょう。人が魔法を行使するのです。
    魔法と剣。そして人間の可能性。これは決して魔獣の劣るものではなく、むしろ凌駕する物です。
    だから、心配する必要はありませんよ。」

そこまで言うと、創造主は新たに血を吐き出す。
既に、何時その命の灯火が消えてもおかしくないのかもしれない。

創造:「・・・破壊神の復活が近づいた時、一人の人間が現れます。
    その人間は破壊神に抗し得る絶大な力を持った者です。
    もしかしたら私よりも強い力を持っているかもしれません。」

その言葉を聞き、ルシファーと神龍皇は驚きを隠せなかった。
如何に創造主が戦闘を苦手としていたとは言え、それ程強大な力が存在するとは考えられなかったのだ。
いや、例え持っていたとしても、人間の体がそれに耐えられるとは思えなかった。
それに疑問も有る。

聖魔:「創造主様。何故そんな事がわかるのです?」

創造:「ロンギヌスの槍が語っていたのです。ロンギヌスは砕けたのではありません。
    槍と言う形を捨てて、自分の新の主となり得る者を探しに言ったのです。

 “我が主は八つの力と金色の翼を持つ者。八つ目の力は隠れ、残りの力で最も強き物が表に現れる”

    ロンギヌスの槍が最後に私に言った言葉です。その主となった者が選ばれた者なのでしょう。
    その者は辛き人生を送る事になるでしょう。・・・全ては破壊神を倒せなかった私の罪です。」

そこまで言って言葉を区切った創造主に、何事かを考え込んでいたルシファーが問い掛ける。

聖魔:「創造主よ。我はどうすれば良い?」

創造:「あなた方は自分の思うようになさい。道を示す者はありません。
    自分の道は自分で見つけ、切り開く物です。」

聖魔:「では質問を変えます。どうすればその選ばれし者に会えますか?」

ルシファーの言葉に、創造主は唖然としてしまった。
そのような形の質問をするとは考えていなかったらしい。
しかし、その質問が何を意味するのかがわかった時、創造主は悲しげな笑みを浮かべた。
ルシファーは戦うつもりなのだ。いつか復活する破壊神と。

創造:「・・・意志は固いようですね。あなたは今のままでは強すぎます。
    その身を二つに分け、剣に姿を変えなさい。後は運命があなたを導くでしょう。
    あなたの強大なその力を震えるもの、それが選ばれし者です。」

聖魔:「承知しました。何千年であろうとも、剣となりて待つといたしましょう。」

その覚悟の言葉を聞いたとき、創造主は悲しみと同時に、安堵を覚えた。
それは生き残った者の居ない、天界最後の天使が生きる意志を持ってくれた事にたいしての物だった。
ただ、破壊神との戦いで選ばれし者が少しは楽になると言う意味も、少しはあったのかもしれない。
その事が頭に浮かんだ時、創造主は自己嫌悪を感じた。
そんな事を考えていた時、それを止めるように神龍皇が話し掛けて来た。

神龍皇:「さて、では我は自分の住処に帰るとしよう。
     それ程に強き者ならば、何れ我が元へと挑みに来るだろう。
     それまで、地上最強の名を維持させなければな。」

創造:「大丈夫ですよ、神龍皇。あなたは天界も含めて最強ですから。
    あの破壊神をロンギヌスの槍も使わずに追い詰められるのは、あなただけでしょうから。」

そこまで言うと、創造主は軽く息を吐いて言葉を区切った。
そしてゆっくりと虚空を見つめると小さく呟いた。

創造:「多くの天使達の命を散らしてしまいました。・・・もうすぐ、私も同じ存在となります。
    私達は不滅と言える存在。その死は完全なる消滅。他から力が加われば別ですが。
    ・・・最後に、ルシファー。そして神龍皇。有り難う御座いました。
    せめて魂だけの存在となっても、この世界を見守って行きたい・・・です・・・ね。」

その言葉を最後に、創造主はその息を引き取った。
その亡骸は光となって消えていった。
最後に、消え行くその体から黒と白の光が何処かへと飛び去った。
この二つの光が後の聖王神・暗黒神となるのである。

創造主の最後を見取ったルシファーはその場でその身を二つに分け、
魔天使サタン・聖天使ルシフェルへと姿を変え、更に剣へとその身を変えた。
そこから更に剣となったその身を再び一つにし、強すぎるその力を押さえ込んだ。
そしてそのまま崩れ行く天界から地上へと降りていった。

神龍皇はルシファーを見送った後、天界が崩れ去るのを見届けてから、
自分の住処である魔竜山へと帰った。

その後、人間界では五十年の時を掛けて魔法の研究がされ、本格的に人々の間に広まっていった。
この時から、魔導暦と呼ばれるようになる。

そしてそれから更に三百年後、魔法、剣、そして科学の三つの力によって成り立つ世界が人間界で始まる。
その年、一人の盗掘者が神龍皇の逆鱗に触れてその怒りをかった。
神龍皇のこの怒りを忘れぬと言う意味も受けて、竜神暦と呼ばれるようになる。

そしてこの年から二千年後、カオスの街にてその選ばれし者は生まれた。
その身に金色の翼と、八つの属性の力を秘め、血塗られた赤き槍に魅入られて。

そしてそれから十年後、少年は最強の存在に対峙する。
その手に白き天使と黒き天使を携えて。

The END
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後書き

ようやく・・・ようやく完成した。
と言うよりも、前回の反動か台詞が多い!
嫌、それ以上に長い!!
外伝にも関わらず今までで最長の作品となってしまった。
まあ、外伝だからという意見もありますが。
まあこれでようやく本編に戻る事ができる。
いや〜、長かった、長かった。

レ:・・・本当ね。おかげで私の出番、また減ったわ。・・・ただでさえ少ないのに。
作:そんな事いいますがね、綾波。しょうがないんですよ。
  第一、本編に戻ってもあなたの出番はほとんどないですよ。
  これから先はシンジの独壇場ですから。
レ:・・・酷い。あなた・・・嫌い。
作:な!?あなたそんな事言いますけどね、外伝の一つでは主役なんですよ。
  何が不満なんですか?
レ:・・・冗談。
作:つ・・・疲れる。(−−;;
レ:・・・早く次回も書きなさい。あの3人がここいいないのは今回までよ。
作:はい・・・頑張ります(T_T)
レ:じゃ・・・さよなら。

P,S
感想、誤字、脱字、ここはこうした方がいいんじゃないか、と言う意見ございましたら送ってください。
悪戯、冷やかしは御免こうむります。


マナ:シンジの剣って、やっぱり凄い剣なのね。

アスカ:片方だけでも、アタシにくれないかしら?

マナ:両方あってこその剣なのよ。

アスカ:だからよっ! 2人が1つになって、強力な力になるのよっ! あぁ、愛だわぁ。

マナ:そんなことの為に、剣になったんじゃないわ。

アスカ:ばっかねぇ。この世に愛以上に尊いものはないのよっ!

マナ:あなたのは、純粋さが感じられないのよっ。

アスカ:この目を見てっ! お星様のように煌いてるでしょ。ほら、純粋。(★.★)

マナ:(じーーーーーー)黒いわ。(ーー)

アスカ:あれーーー? まぁいいわっ! 1つ件がほしーーーーーっ!

マナ:それに、あなたがいなくちゃ、シンジが戦えなくなるじゃない。

アスカ:キスしてくれたら、貸してあげるの。(*^^*)

マナ:やっぱり、純粋さが感じられないわ・・・。
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感想は新たな作品を作り出す原動力です。1行の感想でも結構
ですので、ぜひとも作者の方に感想メールを送って下さい。

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