大陸の中央付近に、砂と岩だけが点在する広大な砂漠がある。
ジオ・フロント内部に居た者全てがこの場所へと来ていた。

シンジはミサト達をこちらへと転送するつもりは無かったのだが、
戦っている者達を特定してこちらに転移させる事が出来ず、止むを得ずこうしたのである。
確かに高速で剣を合わせ続けるルシフェルとサタン、七大天使達を捕らえるのは、かなり至難といえる。
それが証拠に、ミサト達が転移した場所と、破壊神達が戦っている場所はかなり離れている。

ミサト:「何が起きたの!?」

加持:「・・・どうやらシンジ君の魔術らしいな。ここは大陸中央部の砂漠らしい。」

そういった加持の視線の先には、大空を舞う神龍皇の姿と、それに対峙する破壊神の姿があった。

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八翼の堕天使
ー第弐拾五話 鬼神聖臨ー
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破壊:「一体何が起きたのだ。」

神龍皇:「宿主の相空間転移呪文か。これほど多くの者達を同時に転送するとは、凄まじいものだ。
     創造主の言っていた通りだな。」

神龍皇は一人そう納得すると、翼を広げて飛び上がり、天空から破壊神を見下ろす。
そして破壊神に向かって言葉を放つ。

神龍皇:「天空を駆ける事が出来るようになったからには先ほどのようにはいかんぞ、破壊神よ。」

破壊:「創造主の言葉など知らんが、その言葉を後悔に変えてやろうぞ。神龍皇。」

二つの強大な力が再び、今度は闇に覆われた空の下で始まる。
神龍皇は口から吐く炎と、牙と爪。そして強大な魔力を持って。
破壊神は自らの力で作り出したハルバードと強力な破壊の力を持って。
それはまさに天地を揺るがさんばかりであった。

もう一方ではルシフェルとサタンが、かつての部下たる者達、七大天使と激戦を繰り広げていた。
傍から見ると、黒と白の光が螺旋状に絡まりあいながら飛行し、
それを囲むように七つの光が旋風を巻くように迫るという物だった。

ルシフェルとサタンは常に互いの背後を守るように戦う。
対して七大天使達はミカエルを筆頭に波状攻撃を仕掛けてくる。
その魂は既に死に、破壊神に操られているとは言え、肉体が記憶した連携は生前のままである。
その攻撃法はルシファーだった頃の自分が教え込んだ物だけに、厄介極まりなかった。

ルシファーだった頃の力量であれば、如何に七大天使といえどもそう梃子摺る筈が無かった。
肉体を別けた当初に比べれば随分力量もあがってはいる。
しかし、ルシファーとして存在していた頃に比べれば格段に下がっている。
今は二つに分けたこの力が少し恨めしかった。

戦局は明らかに破壊神へと向いている。
戦局の優劣を見ていたシンジは血を吐き出しながらも剣を杖とし、立ち上がる。
それを見たバルディエルは、無駄と知りつつもシンジを止めようとした。

バル:「主、やめよ。本当に、死ぬ。」

その言葉に、シンジは笑みを見せ、口元の血を拭いながら答える。

シンジ:「聖魔の魂を砕いたからにはもう長くは持たないさ。
     それに、この十年間、戦って、戦って、戦い続けてきた。
     自分が死ぬ時、死ぬ場所を求めて。だが後悔はしていない。
     今更この命に未練も無い。この命燃え尽きる最後の一瞬まで戦い続けるさ。」

その言葉に、バルディエルはシンジを止めるすべが無い事を悟った。
そして、自分もまた最後までシンジに仕えようと。
そんなバルディエルに気付く事無く、シンジは破壊神に攻撃を仕掛ける為の準備を始めていた。

シンジ:「あれほどの巨体だ。この剣だけでは大して効果はあるまい。禁鞭!!」

シンジは腕輪から赤き鞭、禁鞭を取り出す。
禁鞭は半径数キロにわたって攻撃する事が可能な武器である。
破壊神に攻撃を仕掛けるには絶好の武器とシンジは判断したのである。

しかし腕輪から取り出された禁鞭はシンジの言うことを聞く事無く暴れる。
それは何かに反応しているようだった。

シンジ:「い、一体どうしたのだ禁鞭よ!?」

シンジの言葉に反応するように、禁鞭はその動きを止める。
が、次の瞬間、禁鞭はシンジの右手に握られていたドラゴン・バスターに引寄せられるように絡み付く。
そしてそのまま光を発して同化して行く。
光が収まった時、シンジの手に握られていたのは、右手を覆うような形になった柄から、
魔力と闘気で構成された刀身の生えた剣だった。

シンジ:「一体何が・・・?そうか、禁鞭は元々魔力と生命力を吸収して攻撃力に変える武器。
     対してドラゴン・バスターは魔力を金属物質として精製した物を鍛えた剣。
     その魔力と特性に禁鞭がひかれ、融合したのか。」

シンジは一人納得すると、剣に力を篭めて見る。
すると剣はシンジの思うままにその刀身の大きさや形状を変化させた。
元が魔力の集合体なため、シンジの強大な魔力を受けて変幻自在の武器に変化したのだ。

シンジ:「これならばいけるかもしれない。破壊神よ、今いくぞ。待っているが良い。」

【轟炎突進術・超龍火炎牙】

シンジは大地を蹴り、全身に炎を纏い、炎の龍となる。
そしてそのまま破壊神へと突撃していった。
バルディエルは自分の中にある不可解な引っ掛かりを破壊神に感じながら、その後を追った。

炎の龍となったシンジは、神龍弾の影響で生じた爆煙を突っ切って、破壊神に突進する。
上空の神龍皇に注意を払っていた破壊神は意表を疲れた形となり、成すすべなくその突進を受ける。

破壊:「ちっ!必ずこういった邪魔が入るな。今度は一体何者だ!!」

破壊神は炎の龍を握り潰そうと手を伸ばすが、それをかわすように龍は天に駆け登る。
そして破壊神を眼下に見下ろすほどの場所にくると、炎が掻き消え、
闘気と魔力で構成された剣を持ったシンジが現れる。

シンジはそのまま剣を上段に構える。
すると天空からシンジの刀に雷が降り注ぎ、そのまま吸収されていく。

シンジ:【魔法剣術・雷撃冥皇斬】

シンジは雷を纏わせた剣を、落下しながら破壊神に向かって振り下ろす。
破壊神は多寡を括ってただそれを見つめるだけである。
しかし次の瞬間にはそのことを後悔した。

シンジの繰り出した一撃は破壊神の肩口に強烈な一撃として叩き込まれた。
破壊神はそのあまりの威力に自分の右肩を無意識のうちに抑える。
その瞬間を狙っていた神龍皇は、間髪入れずに破壊神に神龍砲を打ち放つ。
注意も払っていない状態でそれを受けた破壊神はもんどりうって倒れる。
破壊神が倒れこむ地響きが辺りに響き渡った。

倒れこむ破壊神に視線を送っていたシンジは、自分の喉を逆流してくる熱い物を感じた。
シンジは剣を地面に突き立てて寄りかかると、そのまま血を吐き出す。
吐き出された血の量を見て、シンジは自分の命がいつ掻き消えてもおかしくない事を感じ取っていた。

暫しの間地面に広がった赤い液体に視線を送っていたが、すぐに顔を上げて破壊神を視覚に捕らえる。
その瞳からは死に行く者とは思えぬほど力強い光が放たれていた。

突然の奇襲と即席とは思えぬ連携を受けた破壊神は、
自分に攻撃してきた目の前の人間を睨み付けながら起き上がった。
その目からは恐ろしいまでの殺気が放たれていた。

破壊:「多寡が人間の分際で・・・。貴様、何者か!?」

破壊神はシンジに向かって怒鳴りつける。
シンジはそんな破壊神に答える事無く、冷たい視線で見つめるだけ。
その瞳の奥に、湧き上がる怒りの熱き焔と、絶対零度をも凌駕しそうな殺意を秘めて。
そしてその二つの感情が何から来る物なのか、シンジは漸く理解しだしていた。

破壊:「我が問い掛けに答えよ、人間!!」

答えぬシンジにいらだった破壊神が再び声を荒げる。
しかし次の瞬間、自分の二の腕に走った痛みと、微かに聞こえた声がその怒りの熱を冷ました。

バル:「主、罵倒する。俺、許さない。」

破壊神は自分の背後から駆け抜けるように自分の腕を傷つけた存在を確認し、
信じられないような視線で見つめた。

破壊:「バカな。我の生み出したはずの魔獣の眷属が我には向かうとは・・・?
    しかも我に傷をつけただと?」

破壊神はそう言ってバルディエルの方に視線を向ける。
その手足の長い獣と蜘蛛を足したような姿は、自分が直接生み出した純血種ではない事はわかった。
しかし、純血種でもないものが自分を傷つけるほどの力を有しているわけが無かった。
最も、純血種が自分に歯向かう事等無いのも事実だが。

数瞬の後、バルディエルの漆黒の肉体に、破壊神の脳裏にある存在が浮かび上がった。
封印されたあの時よりも更に以前、唯一単身で自分に攻撃を仕掛けて来た堕天使の姿が。
自分を始めて傷つけた、あの忌まわしい存在が。

破壊:「貴様は・・・あの時の・・・。」

破壊神がバルディエルの招待に気付いた時、完全に無防備な瞬間が生まれた。
その瞬間をわざわざ見逃してやれるような相手ではない。
神龍皇はその瞬間を見逃す事無く炎を吐いて浴びせる。
その間に神龍砲に魔力を集中し、準備でき次第撃ち放った。

バルディエルに注意を向けていた破壊神だったが、炎を受けた時点で注意を再び神龍皇に向けていた。
そして次にくるであろう一撃に炎の中で構えていたため、
神龍砲を受けても先程のように倒れる事は無かった。
だが、その後の攻撃は破壊神の予想をはるかに超えていた。

シンジ:「鞭となれ。」

闘気と魔力で構成されていたドラゴン・バスターの刀身が伸び、撓る。
シンジの力によって変化したドラゴン・バスターはシンジの思うままにその姿を変える。
今は長大な鞭の姿。その威力は禁鞭をも凌駕する勢いだった。

鞭によって繰り出される連撃に、破壊神は一瞬だがたじろぐ。
その瞬間、シンジはさらに武器を変化させる。

シンジ:「龍牙大鎌術・風龍嵐舞昇!」

シンジの言葉と共に、その柄は長く伸び、刀身の出現方向、形状も変わる。
シンジは武器を大鎌に変えると、それを持って回転しながら切り上げ、破壊神の体を駆け登る。
これだけ体の大きさに差があると、逆に攻撃は防ぎ辛い。
しかも刀身だけは十分過ぎる大きさなのである。

シンジ:「龍牙薙刀術・天地断絶牙!」

破壊神の体を駆け登り、そのまま破壊神の頭上に飛び上がると、シンジは再び武器を変化させる。
今度は刀身の出現方向だけが戻り、反りが逆になり、刃の向きも片方に絞られる。
シンジはそのまま破壊神に交差法気味に唐竹割に切り下ろす。
破壊神は大鎌で切り上げられた時に防御していた腕も跳ね除けられた為に、
それを無防備で受けてしまう。

シンジ:「龍牙槍術・破哮龍連牙!!」

着地と同時に振り返りながら武器を繰り出す。
その刃先の形状は変化し、鋭く尖り、槍の形状になっていた。
凄まじい速度で連続的に繰り出される槍撃が、無防備になった破壊神の背後を襲う。

元々シンジは武芸百般、使いこなせない武器など無い。
ただ彼の力に耐えられる武器がルシファーと禁鞭。
セーブしても巨大刀だけしかなかっただけの話。
自分の全開の力に耐え得る事の出来る武器を手にした今、
状況によって武器の形状を変えて使いこなす事等、シンジにとっては造作も無い事だった。

それよりも、シンジにとって重大なのは後どれだけ自分が動けるかであった。
こうして攻撃している間も、確実にシンジの命は磨り減っていっている。
それが証拠に、シンジの口からは度々喀血が見られた。
自分の命続く限り、シンジは破壊神に攻撃を仕掛け続けるつもりだった。

己の命を削る攻撃。
それは破壊神にとって最もダメージになる攻撃法である。
シンジの攻撃は、確実に破壊神を傷つけていた。

しかしそれも、破壊神の巨体から考えればさほど大きな物ではない。
何より破壊神は魔獣達を生み出した存在だ。
生命力と自己治癒力。その能力は魔獣よりも遥かに早い。
創造主と戦っていた時は、ロンギヌスの槍で受けた傷の治癒が不可能だったからこそ追い込まれた。
今、そのロンギヌスの槍の脅威は無い。
シンジとバルディエルの参戦も、破壊神の優勢を覆すほどの物ではなかった。

破壊:「たいしたものだな、人間。しかしその勢いでは後いくらも持つまい。
    所詮無駄な足掻きだ。諦めよ。」

破壊神がシンジに向かってそう告げた直後、槍撃を繰り出していたのとは逆の左手から、
シンジは魔術を放った。

【万能にして全ての魔法の根源たるマナよ、我が右手に雷を生じさせ、全てを滅ぼす轟雷となせ。
  天雷!!!!】

それはかつてサキエルを消滅させた雷の収束呪文。
しかし今放った一撃は、八十万の魔獣を一瞬で葬った天魔降雷撃に匹敵していた。
聖魔の魂を砕いて得た魔力は、それほどの力を秘めていたのだ。

雷の奔流は容赦なく破壊神を飲み込む。
それにあわせるように、神龍皇も神龍砲を放った。
双方の魔力の直撃を受ける破壊神。

立ち込める爆煙と砂煙。
しかし破壊神は顔の前で両腕を交差させるように防御した態勢で姿をあらわした。
破壊神は交差させていた腕で爆煙を払いながら腕を伸ばし、シンジと神龍皇に衝撃波を放つ。

それを受け、神龍皇とシンジはそれぞれに吹き飛ぶ。
神龍皇は岩山を崩壊させるように倒れこみ、シンジは砂丘に突っ込み埋もれる。
破壊神はその隙を逃す事無く神龍皇にハルバードを振り下ろす。

破壊:「終りだ、神龍皇!!」

神龍皇:「なめるな破壊神!!」

神龍皇はその強力な顎でハルバードの刃を捕らえる。
ハルバードを咥えたまま、神龍皇は破棄神を引き込むと、尾の一撃を上から打ち付ける。
そして態勢が崩れた所に首を横薙ぎに叩き込み、間合いを再び離した。

神龍皇:「まだまだ勝負はこれからぞ。」

神龍皇は態勢を崩したままにらみつけてくる破壊神との戦いの態勢を整えた。
一方、バルディエルは砂丘の中からシンジを引きずり出していた。
シンジは先程の攻撃と、磨り減っていく命の影響で今まで以上に血を吐き出していた。

バル:「主・・・、まだ、戦うか?」

大丈夫かとは聞けない。見ればわかることなのだから。
だからこそ、バルディエルはシンジをこれ以上戦わせたくは無かった。だから止めたかった。
それが無駄な行為だったとしても。
そんなバルディエルに、シンジは微笑みながら答えた。

シンジ:「いったろう?命なんて惜しくは無いと。
     それにな、神龍皇の話だと、僕はあいつと戦うことが出来る選ばれし者なんだってさ。
     そんな自覚は無いし、義務感も無いけど、自分自身、アスカを傷つけたあいつが許せない。
     もうこれ以上、傷つく人を、しに良く人を黙ってみて痛くは無い。」

シンジはそこまで言うと、破壊神と神龍皇の戦いに目を向ける。
両者は各々の翼を広げ、空中戦を展開していた。
その様子を見ていたバルディエルは最後の抵抗を試みることにした。

バル:「主、もう、翼、無い。ここからでは、もう、魔術、攻撃しか、出来ない。これ以上、どうする?」

バルディエルの言葉は確かに的を得ていた。
シンジは現在、神龍皇を開放したために八翼を展開することは出来ない。
戦場を半陸戦、半空中戦の形を取る破壊神に、どうしても行動範囲で上回れてしまう。
魔術で叩き落しても、それで確実にダメージを与えられるとは限らない。
また、叩き落せるかどうかも怪しい。
これを打開するためにはシンジ自身も飛翔能力を手に入れるしかなかった。

しかしこれが最難関である。
他の龍を召還して竜騎士になったとすると、
シンジの中の八つの属性の魔力のバランスが崩れる可能性があったためだ。

シンジ自身、自分の中に強大な力が溢れ出していることはわかっていた。
自分の属性である雷以上に、失ったはずの無の属性の力が溢れてくる事を。
そしてそれが自分が選ばれし者である証の一つなのだということを。

シンジは自分の中の力を冷静に見つめるうちに、まだ他にも眠っているものがある事に気がついた。
それに気がついたとき、シンジはそれに向かって必死に精神の手を伸ばす。
その力を解放するために。

(もしも僕が本当に選ばれた者だと言うのなら、本当に破壊神に抗し得る力があると言うのなら、
 目覚めよ、我が力よ。破壊神を倒す事の出来る力を、解放せよ!!)

シンジの精神の腕が、未だ開放されぬ力に届いた時、シンジの中で何かが爆発的に変わった。
かなり引きちぎれていた黒衣を押し上げるように、シンジの背中が盛り上がる。
それは八翼を展開しようとしている姿に酷似していた。

そして黒衣が盛り上がる何かに耐え切れずに引きちぎれた時、バルディエルの視界は真っ白に染まった。
シンジの背中に、金色の光を放つ六対十二枚の白き翼が広がためだ。

“我が主は八つの力と金色の翼を持つ者。八つ目の力は隠れ、残りの力で最も強き物が表に現れる”

それはかつて、創造主がロンギヌスの槍より告げられた選ばれし者の力。
八つの力は八つの属性の力を。無以外で最も強い力は雷を。
そして金色の翼とは、今開放されたシンジの真の翼。

この翼の前兆は遥か昔、シンジが出生した時に既に現れていた。
シンジは生まれたとき、その背中から金色の光を放っていたのだから。

八翼も然りである。
如何に神龍皇の力を得たからと言って、翼がその身に宿る事は無いだろう。
いわばシンジが本来の魂に翼を持っていたからこそ生じたものだったのだ。

そう、これはシンジの魂の翼。
八枚の翼はそれぞれシンジの力の影響を受けていた。
龍翼は闘志を。黒刃は殺意を。赤翼は怒りを。氷牙は残酷性を。
しかしそれはシンジが闇の使徒に対して抱いたものである。
シンジが本来持っていた優しさ等から生まれた物ではない。
そしてシンジが本来から持っていた優しさや温もり、そういったものを象徴した翼。
それがこの金色に輝く白き翼だった。

シンジ:「僕に・・・こんな物が・・・?ますます人間からかけ離れていくな。
     ま、死に行く者には大した事ではないか・・・。」

シンジは己の背中から新たに生まれた白き翼に手を伸ばすと、その羽を一枚抜き取り、見つける。

シンジ:「本当に破壊神に対抗する為の存在なんだな、僕は・・・。しかし、これで戦える。」

自分の今の姿を暫し見つめなおした後、寂しげに微笑む。
だが次の瞬間にはその瞳には力強くも儚い、誓いの光が灯っていた。
シンジは十二枚の翼全てを広げると、破壊神と神龍皇の戦う場へと飛び立った。

舞い散る白き羽を見つめながら、バルディエルは自分の中にある、遥か昔の記憶が蘇るのを感じていた。
それはまだ自分がこの姿でこの世界に生じる以前の記憶。
創造主に使え、魔獣の姿としての姿も確立していない闇を払っていた時の記憶。
自分が天使であり、堕天使となって破壊神に単独で挑み、葬られた記憶。
そして、破壊神の呪いと、創造主の加護を受けたこの姿となるに至る経緯を。

バル:「俺が・・・天使?」

バルディエルは自分の中に生まれた記憶に戸惑いを覚えた。
しかしそれが決して間違いではなく、確かに自分の記憶であることにも気付いていた。
バルディエルは気付いているのだろうか?自分の話し方が戻っている事を。

空中で対峙していた破壊神と神龍皇だったが、何か強力な力の接近に気付いた神龍皇が視線をそらした。
それに吊られるように、破壊神もそちらに目を向けた。
その直後、破壊神は強力な一撃を受けて仰け反った。

破壊:「グォッ!な、なんだ!?」

無理やり態勢を整えた破壊神は、自分を仰け反らせたのが何者なのかを判断しようと、上を見上げた。
そこには翼で全身を包んでいた状態から、翼を広げきった姿へと戻った直後のシンジが浮かんでいた。
その周囲には舞い散る羽が浮かび、神秘的な光を放ち、シンジは神々しくさえ見えた。

破壊:「貴様は一体・・・何者なのだ、人間!!」

怒りを多分に含んだ声で破壊神は怒号を放つ。
それに対して、シンジはただ睥睨するように破壊神を見つめるだけであった。
破壊神の問い掛けに答える言葉は、シンジとは別のところから放たれた。

神龍皇:「槍に選ばれし真の主となり得る者。汝と対峙する運命を持った者だ。
     創造主が最後に散る間際にそう言い残していた。」

その言葉を聞き、破壊神は神龍皇に向けていた視線を再びシンジに向けた。
それから暫くして、破壊神は急に笑い出した。

破壊:「くっくっく・・・はっはっはっはっはっはっ!!すると何か?
    こいつはその運命に流されるままに俺と戦っていると?滑稽な話だ。
    創造主も残酷だな。この人間にそんな運命を押し付けたのだから。」

シンジ:「・・・関係ない。」

破壊神は神龍皇に告げられた言葉を嘲笑った。
その言葉に、シンジが反応を示す。
それに気付いた破壊神と神龍皇の視線がシンジへと向けられる。

シンジ:「創造主など・・・関係ない。貴様はアスカを傷つけた。僕が貴様と戦う理由はそれだけだ。」

破壊:「その程度のことで命を削ってまで俺と対峙するとは、貴様正気・・・!?」

破壊神は最後まで言葉を紡ぐ事が出来なかった。
シンジの強大な一撃が破壊神を吹き飛ばした為だ。

シンジ:「その程度だと!!アスカを傷つけたのがその程度だというのか!?
     この僕に、再び温もりと感情を思い出させてくれた人を傷つけたのが、
     その程度だというのか!!?」

シンジの瞳は真紅に染まっていた。
その思考も全て怒りの感情に変わっていた。
アスカを傷つけられた事が、その事を軽い出来事のように言い放った破壊神に対し、
言い知れぬ怒りを覚えていた。

シンジ:「僕の命など関係ない。この俺が貴様を叩き殺す。」

シンジは再び殺意を全身に満たしていた。
闇の使途に対して復讐を誓った時のように。いやそれ以上の殺意を。
シンジは剣を構え、破壊神へと切り込んでいった。
このとき、シンジは気づいていなかった。
シンジ達の戦いを肉眼で確認できる程度の場所まで近付いていたアスカ達の存在に。

魔:「おい、ルシフェル・・・。この気配は・・・!?」

聖:「ええ、シンジ様の魔力が凄まじいほどの勢いで膨れ上がりました。
   それに反して、生命力が極端に削られた。
   ミカエル達には悪いですが、何時までもこうしていられませんね。行きますよ。」

魔:「応!!」

互いの背中を守りあうように戦っていた二人が離れ、今まで波状攻撃を仕掛けていた七大天使に、
各個攻撃を仕掛ける。
かつて教えた戦法・・・、それだけにどこをつけばその攻撃が止まるかはわかってはいた。
しかし彼らはその弱点となる場所を常に移動させながら戦っていた。
その為、その場所を見つけるのに手間取ってしまったのだ。
しかしその全ての攻撃パターンを解析し、今行動に移したのだ。

サタンは見返るの攻撃を受け流してその真後ろにいたメタトロンを、
ルシフェルは六番目の攻撃を担おうとしていたレミエルを攻撃した。
その途端に、統制の取れていた筈の波状攻撃の波の動きが止まってしまった。

ルシフェルはそのままミカエル、レミエル、ガブリエルを。
攻撃力に長けたサタンはメタトロン、ラファエル、サリエル、ウリエルを相手にする。

同時に繰り出される四本の剣の攻撃を、サタンは己が剣の刀身だけでなく、柄まで使って防ぎ、反撃する。
ルシフェルは攻撃を全て受け流し、流れるように攻撃を仕掛ける。

力付くで捻じ伏せる剛の剣を使うサタンと、舞を舞うように攻撃を避ける柔の剣を使うルシフェル。
対照的なこの二人の行動。
これが本当に元は同じ一つの天使だったのかと疑いたくなってくる。

しかしそれは当然の事である。
かつてのルシファーは、剛と柔の両方の剣を巧みに使いこなす、剣聖の異称を誇っていたのだから。
それでも簡単に叩き伏せられるほど七大天使は甘くは無い。
ルシフェルとサタンは、もうしばらく七大天使と戦わねばならないようだ。


アスカ:「シンジ・・・、シンジ。」

アスカはレイに肩を貸してもらい、シンジ達を肉眼で確認できる所までは近付いてきていた。
最も、それ以上近づくつもりは無い。
これ以上近づけばこちらが危険だし、何よりシンジの邪魔になると判断したからだ。

その為シンジが白き翼を広げた姿を、その場の全員が見ていた。
しかし、以前八枚の翼を広げたシンジを見て、それを認めてしまった彼らは、
その白き翼を見てもさほどの驚きを抱かなかった。
むしろ以前の八枚の翼よりもシンジには似合うと、妙に納得してしまっていた。

シンジが死ぬつもりである事に気付いたアスカは、気が気ではなかった。
ここまで近づいたのも、シンジの元に行って止めるのだと、
強攻に主張したアスカを納得させるためであった。

そしてここにきた時点でアスカはシンジの元へと向かうのを諦めた。
戦場が空中に移動したのもあったが、それ以上にシンジを止めるすべが無いのを悟ったからである。
アスカはそこで力が抜けたように座り込むと、ただ一心にシンジの無事を祈った。
他のメンバーは、その姿をただ見つめることしか出来なかった。


シンジ:【万能にして全ての魔法の根源たるマナよ、その偉大なる力を持って重力を捻じ曲げ、
     その力を我が剣に宿し、我が敵を押しつぶせ。無属性魔法剣術・超重皇剣】

呪文の完成と共に、シンジは破壊神に魔力を込めた剣を振り下ろす。
超重皇剣は、打ち込まれた対象の質量が大きければ大きい程その威力は強大になる。
ましてや、以前魔獣を叩き潰した時とはその魔力の絶対量が格段に違う。
魔獣を叩き潰した時が十倍とすれば、現在かかっている重力は万倍以上である。
それで言えば、破壊神は凄まじい攻撃を受けた事になる。

破壊:「ぬ、ぐぁああ!お、重い!!何なのだ、こやつのこの魔力の強さは!!」

破壊神はその強大な力に抗う事が出来ずに、大地に叩きつけられた。
立ち込める土煙に姿が見えなくなった破壊神に向かって、シンジは更に呪文を唱える。

シンジ:【万能にして全ての魔法の根源たるマナよ、その偉大なる力を示せ。
     大地よ、我が意を受け、その脅威なる牙を剥きて我が敵を貫け。大地尖獣牙爪戟!!】

シンジの呪文と同時に、大地から無数の槍のような岩石が伸び、
その全てが意思を持っているかのように破壊神に襲い掛かる。
大地に叩きつけられた破壊神は態勢を整えようとしていた最中だったので、それを無抵抗に受けた。

破壊:「グァアッ!」

大地から槍に貫かれ、起き上がろうとしていた破壊神の動きが止まる。
その隙をシンジが見逃す筈が無かった。

シンジ:「神龍皇、追い討ちをかけよ!!」

神龍皇:「承知した。無属性広範囲魔術・神龍弾。」

神龍皇の放った魔力の弾丸が、大地に縫い付けられた形となった破壊神に降り注ぐ。
破壊神が爆煙に包まれたのを見たシンジは、力尽きたように落下しそうになる。
そんなシンジを、黒く長い腕が落下を防ぐ。

落下を引き止められた衝撃で意識を取り戻したシンジは、
自分の腕を掴んでいる者を確認しようと顔を上げた。
その視線の先にいたのは・・・。

シンジ:「バルディエル?おまえ・・・その翼は、一体!?」

シンジが見上げた先にいたのは、漆黒の翼を広げたバルディエルだった。
バルディエルはシンジが翼を広げて自分の力で飛翔するのを確認すると、ゆっくりと手を離す。
そして自分な体に起こった事を説明した。

バル:「先程主が翼を広げた時、自分の中である記憶が蘇りました。
    そしてその記憶が事実であり、それが自分本来の姿だった事を認めた時この翼が現れたのです。
    魂が肉体に変化を齎したのでしょう。」

バルディエルの説明を聞いていたシンジは違和感を覚えた。
そしてその答えはすぐに見つかった。

シンジ:「バルディエル、おまえ言葉遣いが普通と同じ状態に・・・。」

それを聞いたバルディエルは驚きのあまり固まった。
どうやらシンジに指摘されるまで気付かなかったらしい。
そんなバルディエルの様子に、シンジは微笑みながら声をかけた。

シンジ:「ま、言葉遣いなんてどうでもいいさ。その記憶ってのは後で話してくれよ?
     それよりも気を緩めるな。まだあいつは死んでいない。」

シンジは新たに込み上げて来た血を吐き出して口元を拭うと、眼下に立ち込める爆煙に視線を落とす。
爆煙の間からは四枚の光を放つ翼が見え隠れする。
その直後、破壊神は怒声と共に爆煙を切り払うと、衝撃波を打ち放つ。

態勢を整えていたシンジ達はそれを余裕を持ってかわす。
しかし衝撃波が通り過ぎる前に破壊神は接近してきてその腕を振るう。
その攻撃を神龍皇が受け止めると、シンジとバルディエルはそのまま破壊神を攻撃する。
そして事態はそのまま乱戦の様相を呈していく。

神龍皇はその強大な魔力で。シンジはその剣撃と魔術で。バルディエルはその牙と爪を持って。
破壊神に波状攻撃を仕掛ける。

破壊神はそれをただひたすらに防御し続ける。
まるで何かを待っているかのように。
そして、破壊神が待っていた時が来た。

シンジ:「ッッッグフォッッ!!」

シンジが大量の血を吐き出したのだ。
左手で抑えようとしたが、抑えきれずに指の間から血が噴出した。
そして肉体を酷使した影響か、それと同時に動きが止まりふら付く。
飛翔し続けるのも覚束無い。

それこそ破壊神が待ち望んでいた瞬間だった。
破壊神はその瞬間を逃さず、攻撃を仕掛けようとしていた神龍皇に衝撃波を放つと、
そのまま両腕を上に掲げて力をためていく。

破壊:「受けよ人間!!破壊極技・破天滅砕衝!!」

破壊神は今までとは比べ物にならないほど強大な衝撃波をシンジに向かって放つ。
シンジはふら付いていた態勢の為に回避行動が一瞬遅れた。
その一瞬の遅れがシンジの命取りとなった。
どう考えても防御も回避も出来ない態勢。
ましてや今向かい来るのは破壊神の極技。
如何にシンジといえどもただではすまないことは確実である。
向かい来る破壊の力を秘めた奔流を、シンジはただ見つめるだけだった。
しかしそれをそのままでは良しとしない者がこの場にいた。

バル:「主!!」

バルディエルは凄まじい速度で体当たりするようにシンジを突き飛ばす。
そしてその勢いを殺さず、そのまま衝撃波の攻撃範囲から逃れようとする。
しかし、元のタイミングが遅過ぎた為、シンジはどうにか範囲外に突き飛ばせたが、
バルディエルは衝撃波を避け切れず、右半身に受けてしまった。

バル:「グァァアアッッッ!!」

右半身と片翼を吹き飛ばされたバルディエルは、そのまま錐揉みしながら落下していった。
シンジは態勢を立て直すと、バルディエルを追って地上に向かって急降下する。
それに対して、破壊神は追い討ちをかけようとするが、それを神龍皇が阻止する。
破壊神と神龍皇は再び乱戦を始めた。


シンジ:「バルディエル、しっかりしろ!!」

何とか落下途中で追いついたシンジは、バルディエルを抱え上げると、
そのままゆっくりと大地に降り立った。
そしてバルディエルに向かって言葉をかける。

バルディエルの体は悲惨な状態になっていた。
右腕と右足、右翼は完全に消滅し、血は止まる事無く流れ、
バルディエルの漆黒の体を朱に染め上げている。
また息をするのも絶え絶えで、生きているのが不思議なぐらいだ。
シンジは全身がバルディエルの血に染まるのも気にせず、バルディエルに言葉を懸けつづける。
それに反応したのか、バルディエルはうっすらと目を開け、シンジを見上げて声を搾り出す。

バル:「ある・・・じ・・・。御無事・・・でした・・・か?」

シンジ:「ああ、無事だ!しっかりしろ。今治してやるからな。」

シンジの言葉に対し、バルディエルはゆっくりと首を横に振った。
それに対して、シンジは怒声を放つ。

シンジ:「何故だ!?おまえの命の光球は僕が持ってる。
     それが砕かれぬ限り、おまえが死ぬ事は無いのだろう?」

そう言って、シンジは腕輪の中から赤き光を放つ球状の物体を取り出す。
しかしそれを見た時、シンジは驚愕のあまり呆然とした。
ひびがはいっていたのだ。バルディエルの命の核に。
バルディエルはそれを感じ取っていたからこそ、シンジの言葉を拒否したのだ。

バル:「これで・・・御分かりに・・・なった・・・でしょう?
    破壊神の・・・一撃は・・・体を通して・・・俺の核をも・・・砕いたのです。」

シンジは血を吐き出しながら話し掛けるバルディエルを、ただ見つめることしか出来なかった。
再び自分の目の前で、何もしてやることも出来ないまま消え行く命。
シンジは血の涙を流しながら、バルディエルの死を見届けようとしていた。

そんなシンジにバルディエルは自分が先程思い出した過去の事を語りだした。
自分が天使だった時の事。堕天使となって破壊神と戦った事。
そして、この姿になるまでの事。獣王と呼ばれるようになってからの事。

バル:「主に・・・出会ってから二年余り。
    その間・・・天使だった時以上の・・・輝きが・・・ありました。」

そこまで言うと、バルディエルはシンジの目を見て微笑んだ後、真剣な眼差しで語りだした。

“破に抗するは荒ぶる戦いの神。其は鬼神也。鬼神は赤き槍に見入られ、金色の翼を負う者を扉とし、
 天にも魔にも属さぬ者を鍵と成してこの世界に聖臨す。”

バル:「これは、創造主が私に・・・残した言葉です。その意味は・・・理解・・・成されたでしょう?
    ですが・・・出来ればしないで・・・ください・・・。頼みます・・・」

今にも事切れそうになりながら、バルディエルは懇願するように言葉をつむいだ。
その願いは多分聞き届けられないだろうと考えながら。

バル:「最後に・・・。主にあえて・・・良かった。ありが・・・と・・う。」

その言葉を最後に、バルディエルはこの世を去った。
その亡骸を掻き抱き、シンジは無言のまま血の涙を流した。
共に戦ってきた大切な友を失った。
シンジの胸の中には、悲しみと怒りの焔が燃え盛っていた。


破壊神と神龍皇の戦いは少しずつだが破壊神に傾きだしていた。
破壊神は神龍皇を衝撃波で吹き飛ばし、一時的に距離をかなり離した。
その時である。バルディエルの命が散ったのは。

破壊:「・・・今一つの命が消えた。恐らく先程邪魔をした黒い魔獣の物。
    しかし一人では寂しかろう。もう一つの命にも終焉を齎してくれる。」

そう言うと、破壊神は台地に向かって極大の衝撃波を放つ。
それを受けた大地は隆起し、地割れを起こし鳴動する。
地割れはシンジのすぐ傍を走り、シンジとバルディエルの亡骸を飲み込んだ。
破壊神は己の力を使ってあいていた地割れを再び閉じる。

破壊:「二人まとめて、土葬してやったわ。」

そう言うと、破壊神は高笑いを上げた。
それは、己の勝利を確信したものだった。


崩落する落石と共に、シンジの乗った足場となっている岩盤は落下しつづける。
そんな中、シンジはバルディエルの核を飲み込み、バルディエルの亡骸に牙を剥く。

シンジ:「この命、そして肉体に未練など無い。
     おまえの敵も取れず、アスカ達を守る事も出来ない肉体に、何の意味がある。
     何も出来ず、消え行く命を見守ることしか出来ない存在に・・・。」

シンジは血の涙を流しながら、バルディエルの亡骸に更に牙を剥く。
己という扉を、バルディエルという名の鍵で開くために。

暫くすると、徐々にシンジの肉体に変化が起きる。
シンジの全身が膨張し、膨れ上がり、巨大になっていく。
牙と爪は伸び、その瞳からは輝きが一時的に失せ、次の瞬間には緑、そして紅に染まる。
シンジの体の中から、そして大地を通して流れ込んできた雷がシンジの全身を覆っていく。

グワゥルルルルル・・・・

深遠なる闇の中で、神でも獣でも、天使でも魔獣でもない者が、唸り声を上げる。
漆黒の闇の中に、紅の光が不気味に輝いた。


シンジが地割れに飲み込まれるのを見ていたアスカは、絶望の二文字に覆われる。
その他のメンバーも、世界の終わりが近づいている事を感じ取り、言葉を発することも出来ない。
しかし次の瞬間、巨大な地鳴りに意識を戻される。
何が起きたのか?全員の視線が再び戦場に向いた。


神龍皇は凄まじいまでの何かの威圧感を感じていた。
その威圧感は少しずつ、だが確実に周囲に影響を及ぼし始めていた。
そして次の瞬間、その何かが弾けたように強大になった。

闇の中で五本の光が走る。
その光は閉じられた大地を切り裂き、その進行を妨げるもの全てを切り払って突き進んだ。

神龍皇はその本能ともいえる感覚で、その場を離れる。
その行動をいぶかしんだ破壊神だが、その隙を付いて攻撃を仕掛けようとした。
が、次の瞬間、破壊神は凄まじい衝撃を受けて吹き飛んだ。

岩山を崩壊させながら倒れこんだ破壊神は、
自分に衝撃を与えたものが何なのか確認しようとした破壊神は、己の目を疑った。
自分の胸部に五本の切り裂かれた傷が走っていた為だ。
そして呆然とした面持ちでその衝撃が来たであろう場所に目を向ける。
そこは先程自分の邪魔をしていた人間を沈めた筈の場所。

大地が唸り声を上げて隆起し、地割れを起こす。
天は何かに怯えるように雷雲を呼び、風を逆巻かせる。

雷が天空を駆け、大地は鳴動し、大海は渦を巻く。
天地海、森羅万象全てが何かに怯えていた。

一瞬だけ、全ての世界から音が消える。
必然的に訪れる沈黙。

その沈黙も、轟音と共に打ち破られる。
そして大地が吹き飛び、その何かが姿を現した。

グルォォォオオオオォォォオオオオオオンッッッ!!

大地を吹き飛ばして現れたのは、紫電の光に包まれた鬼神だった。
鬼神は雄叫びを上げる。
全てを震撼させるその雄叫びは、一体何を指し示すのか?

To Be Next Story.
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
後書き

書き終わった。漸く書き終わった・・・。
長かったよう。この作品。
思いついていた事を全て描写する為に、流れを繋ぐ為にどれだけ苦労したか。
しかし何だね〜。アスカ達完全な脇役だよ。
まあ仕方ないんだけどさ〜。
多分これがLASだっての忘れられてんじゃないかな〜?
戦闘シーンばっかだもんね〜。
さぁて、ようやくシンジを初号機化できたし、次回もがんばろう。

魔:ふざけてんじゃねー――!!
作:ぎゃ―――!け、袈裟懸けに斬られた。
魔:てめえこら作者!バルディエルが死んじまったじゃねえか。どう言う訳だこら!!
作:いえ、ですからこの作品では誰も死なない訳ではないと以前から・・・。
聖:じゃあ最初から決まっていたのですか?
作:ええ、そうです。シンジが最終的に初号機と同じ姿になる事も、
  それがバルディエルの死に関連していることも、当初から決まっていました。
  そして次回、漸くシンジの新の最強形態の御目見えとなる訳です。
聖:・・・まあ今更文句をつけても仕方ありませんね。所で私達の扱い、なんだか御座なりでは?
作:いや〜、ついシンジの方に力が入っちゃうんですよね。次回は大丈夫だと思うんですけど。
魔:何故だ?
作:次回が正真正銘の最終戦。破壊神との戦いに決着がつくからです。
聖:と、言うとこの作品も・・・。
作:まあ後二話前後ってとこでしょうな。
魔:そうか、漸く終わるのか。しかしすぐに次の作品もあるし外伝もあるんだろ?
作:ま、そうなんですけどね。でもそんなに大変じゃないですよ。ストーリの流れは出来てるんだし。
聖:それはともかく!この作品の扱いが御座なりにならないようにしなさい!!
作:はい、最後まで精一杯頑張らせていただきます。
  読んでくださっている方々、後暫くの間ですがお見捨てなきように。

*報告事項*
以前に感想を下さって、返事がこないという方、いらっしゃらないでしょうか?
自分は感想を頂いたら必ず返信しております。
ただ一時期+最近OEの調子が悪く、送信がうまく出来ません。受信は問題ないんですが・・・。
もし来ていないという方は御一報ください。
探してみて、無ければない也に、あればあった也に対処いたします。
御迷惑をかけてすいません。(ホントならこの部分も前回乗せるべきだったのに。)

P,S
感想、誤字、脱字、ここはこうした方がいいんじゃないか、と言う意見ございましたら送ってください。
悪戯、冷やかしは御免こうむります。


アスカ:シンジが死んじゃうーーーっ!

マナ:大丈夫っ! 強力な力が出てきたみたいだし、勝つことを信じようよ。

アスカ:心の問題よっ!

マナ:精神力?

アスカ:違うわよ。心よ。なんか死に急いでるみたいなとこがあるじゃないっ。

マナ:でも、わたし達がシンジを信じてあげなくちゃっ。でしょ?

アスカ:そうだけど・・・。

マナ:ところで、根本的なところで気になることがあるんだけど?

アスカ:なによ。

マナ:後書きよ・・・LASじゃなくて、LMSの間違いよね?

アスカ:なわけないでしょうがっ!!(ーー#(ドガッ! グシャッ! バキッ!)

マナ:いやーーーっ! 破壊神より恐いーーーっ。(TOT)
作者"神竜王"様へのメール/小説の感想はこちら。
ade03540@syd.odn.ne.jp

感想は新たな作品を作り出す原動力です。1行の感想でも結構
ですので、ぜひとも作者の方に感想メールを送って下さい。

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