紫色の雷の鎧を纏い、創造と破壊の神を超えた者が佇んでいる。 天は雷の叫びを上げ、大地は鳴動の唸り声を上げる。 大気は吹きすさんでその場を離れようとし、大海は渦を巻いて怯えた。 闇はその何かを飲み込まんとし、光はその姿を映し出す事を避けたがった。 その存在を、全てを焼き尽くす大火ですらも恐れた。 天地万物全てが怯え、そして崇め称える者。 森羅万象全ての力を宿した化身。 そして、その全てを統べる存在。 後年、人々はその存在とその凄まじいまでの力から、こう呼称する。 荒ぶる闘いの神・・・紫電の闘鬼神と。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 八翼の堕天使 ー第弐拾六話 神狩りの衝撃ー ――――――――――――――――――――――――――――――――――――― グルォォォオオオオォォォオオオオオオンッッッ!! 紫色の鬼神が再び雄叫びを上げる。 受けた傷を治癒し、態勢を整えて立ち上がった破壊神はその雄叫びを聞き、無意識の内に一歩下がった。 そしてその事に気が付いた時、破壊神の中に言い様の無い怒りが生まれた。 破壊:「今のは?まさかこの俺が奴に恐怖を感じたとでも言うのか!? すべてを滅ぼす力を持つこの俺が!!」 破壊神は凄まじいまでの殺意のこもった瞳で自分の前に立つ鬼神を睨み付ける。 自分という絶対的な存在に恐怖等と言う物を感じさせた事に対する憎悪を込めて。 元来、天使や神と言った存在は高い知性と理性を持ち、何物にも動揺する事無く、 氷のように冷静だと信じられているが、実際の所、その思考や感情的な部分は人間とさほど変わらない。 ある程度以上の知性を持つと、必ず感情と、それを抑えようとする理性が生じる。 それは大半の生物に言える事である。 子供を失えばどんな動物でも悲しむ感情は起こるし、危険が迫れば恐怖も感じる。 逆にどんなに空腹が起きても、最後まで自分と同じ仲間には手を出そうとはしない。 よほど追い詰められれば話は違ってくるだろうが・・・。 兎にも角にも、理性と感情を有しているのは事実である。 そしてそれは知性が高くなればなるほど様々な表現や形を持つ。 楽しければ笑い、悲しければ涙を流す。 これは人間が持つ、他の生物には無い特権とも言える物だ。 しかし人間以上の知性を持つ神や天使はどうだろう。 創造主はバルディエルが破壊神の前に散った時嘆き悲しんだし、 ルシフェルとサタンはかつての部下を手に懸けるのをどこか拒んでいる。 そして今また破壊神は怒りと殺意、憎悪を抱き、その直前には恐怖も感じている。 また、多くの神話には嫉妬に狂った女神の話も数多く伝えられている。 これのどこに人間との違いがあろうか。 ある領域を越えた時、人は全てを達観したような状態になる。 しかしそれはある意味で人間としての特権を全て捨てたような物。 それが正しいかどうかは誰にもわからない。 しかし神や天使がそういった感情を捨てない理由は何故なのだろうか? 神とは、人々の成しえる事の出来ない力を持っているだけで、 人間が思っているほどの違いは無いのかも知れない。 閑話休題 破壊神は手元から離れていたハルバードを呼び寄せると、臨戦態勢を整え、改めて鬼神を観察する。 鬼神は全体的に細身で、そのフォルムはバルディエルに酷似した個所を多々見つける事が出来る。 違いは胸部と肩。雷の属性を示す紫色の装甲とも言える体。 そして何よりも、その頭部であろう。 頭部の全体的フォルムはバルディエルに兜を被せたような印象を受ける。 その額には鬼神という言葉を印象付ける一本の角。 そしてその紅の殺意を放つ瞳は、バルディエルの比ではない。 グルル・・・ まるで獣を思わせるように唸り声を上げる鬼神。 鬼神はゆっくりと体を屈めたかと思うと、そのまま跳躍して破壊神に突進する。 破壊神は態勢を整えていたので平然と避けた。 避けたのだ。確かに・・・。 しかし次の瞬間には破壊神は全身を痙攣させた後、右の脇腹を抑えてその場に片膝をついた。 その光景を、破壊神から離れた場所で、駆け抜けた速度を押し殺して動きを止めた鬼神が見つめていた。 破壊:「鎌鼬と同じ現象か・・・。」 そう言って、破壊神は左手で抑えていた右わき腹に視線を向ける。 破壊神の右わき腹には五本の切り傷が走っていた。 見事なまでに切られた傷に対して、その出血の量は少ない。 真空の刃、鎌鼬特有の傷跡である。 そう、鬼神は破壊神の横を駆け抜ける間際に、 その速度を更に超える速度で右腕を横薙ぎに振るっていたのである。 破壊:「貴様・・・まさか先程の人間か?」 破壊神はいぶかしみながらも思いついた事を口にしてみる。 人間がいかなる力を行使しようともこのような姿に、 ましてや自分を圧倒しかねない戦闘能力を有する筈が無いのである。 しかしこの鬼神が現れたのは先程人間を地のそこに叩き込んだ場所。 そしてその姿は先程葬った魔獣に酷似している。 グルワァァァアアアァァァァ!! 鬼神は破壊神の言葉に答える事無く、雄叫びを上げた後に突進してくる。 破壊:「人語を解する事が出来ないのか、それとも答える必要が無いのか。 まあ大した問題でもないな。貴様を滅すれば同じ事。死ぬが良い!!」 破壊神は突進してくる鬼神の前方に衝撃波を放ち、ハルバードを構える。 衝撃波の巻き起こした爆風によって、鬼神に自分の攻撃の瞬間を悟らせない為だ。 鬼神は気にとめる事無く爆煙を突っ切る。 破壊:「滅せよ!我に歯向かいし愚かなる者よ!破断滅砕刃!!」 タイミングをはかっていた破壊神は、鬼神が出てくる瞬間を狙ってハルバードを振り下ろす。 その刃は爆煙を払って現れた鬼神の頭部へと、狙いを違える事無く振り下ろされる。 鬼神はそれに対して左腕を前方に突き出し、盾の代わりとする。 ハルバードの刃が左腕を切り落とす瞬間に抵抗によって起きる時間を使って、 鬼神はその身を横にずらして頭部への直撃を避ける。 左腕は切り落とされて宙を舞い、ハルバードはそのまま大地へと向かって振り下ろされた。 ハルバードを振り下ろしたために出来た硬直を狙って、 鬼神は一瞬たりとてその動きを止める事無く、破壊神に踊りかかる。 鬼神はその牙を剥き、破壊神の右肩口に喰らいつくと、右手で破壊神の体を押し退け、 そのままの勢いで破壊神の右腕全体を食いちぎる。 鬼神は空中で体をひねらせ、破壊神の右腕を加えたまま着地する。 破壊:「抜かった!まさか左腕を盾にして攻撃を防ぎ、俺の腕を食いちぎるとは・・・。 許せぬ!!だが、俺が魔獣を生み出した神だと言う事を忘れるなよ。」 破壊神は食いちぎられた右肩を抑えて、鬼神に向き直る。 そしてその傷に意識を集中する。 破壊:「ヌウウゥゥゥゥ・・・・アアァァァァア!!」 破壊神がうめいたかと思った直後、その右腕が再生する。 そのまま暫しの間、右腕の調子を確かめるように、手を握ったり閉じたりという行動を繰り返した後、 破壊神は取り落としていたハルバードを拾い上げ、鬼神に向かって言い放つ。 破壊:「貴様は隻腕となり、俺は万全の態勢へと戻った。所詮俺の障害とは成り得んのだ。」 神龍皇:「好い加減にするが良いぞ。破壊の神よ。」 突然かけられた声に、破壊神は振り向こうとする。 しかしその直後に繰り出された一撃により、破壊神は声の主を確認する間も無く吹き飛ばされる。 神龍皇:「宿主と戦うのは良いが、我が存在を何時までも忘れているとは、 随分余裕があるではないか。」 そこには長大な尾を振り下ろした神龍皇が佇んでいた。 神龍皇は破壊神を一瞥した後、切り落とされた右腕を加え上げて鬼神の傍へと近寄る。 鬼神はまだ加えたままだった破壊神の右腕を吐き飛ばすと、神龍皇へと視線を向ける。 吐き飛ばされた右腕はそのまま爆発を起こして四散してしまった。 神龍皇:「宿主よ、大丈夫か。」 神龍皇は加えてきた左腕を鬼神に渡すと、心配そうに様子を見守る。 鬼神は受け取った左腕を切断された部分につけると、そのまま意識を集中する。 *神龍皇が宿主という呼称を使ったので、以降から台詞前の名前、及び呼称をシンジに統一します* シンジ:「クオオオォォォ・・・・・・カアア!!」 破壊神と同じ様に、鬼神も切り落とされた左腕を接合・再生させる。 完全に左腕がついた事を確認した鬼神は、神龍皇に向き直って答える。 シンジ:「心配・・・無用だ。」 そうくぐもったような声で言って、シンジは完全に接合された左腕を神龍皇に見せる。 神龍皇はそれを見た後、再び質問する。 神龍皇:「体の方はどうですか?先程までよりも余裕が見えるようですが。」 シンジ:「バルディエルとの融合で鬼神化した為に、一時的には回復しているようだ。 だがこの姿を維持するのにも魔力や生命力を膨大に消費しているから時間の問題だな。」 神龍皇:「では、一気に畳み掛けねばなりませぬな。」 シンジ:「ああ、ここからは時間との戦いとも言える。特に俺はな。」 シンジ達が会話を終え、吹き飛ばされた破壊神の方へと目を向けると、 破壊神は起き上がり態勢を整えていた所だった。 破壊:「腕を接合・再生までするとは・・・。こうなれば、完全に消滅させてくれるわ!」 破壊神はそう言い放つと、ハルバードを振り上げる。 シンジはそれを確認すると、呟くように言葉をつむいだ。 シンジ:「得物がないというのは少し辛いな・・・。 と言ってこの姿では見合う武器など存在し得ないし。」 シンジの使っていたドラゴン・バスターは、 シンジが大地を吹き飛ばしたひょうしにアスカ達のいる方向へと吹き飛んでいた。 最も、例えあったとしても200m近い巨体へと変わってしまった今となっては、使えよう筈もない。 シンジがどう戦おうかを考えていると、体の中で何かが疼くように、自分の物とは別の鼓動音がした。 それは全身を駆け巡り、シンジに何かを訴えかけようとしているようだった。 シンジはそれを感じた時、まだ自分の中にある物に、その強大な力に気がついた。 シンジ:「そうか・・・竜騎士とは関係なくあったこの力が、俺が槍に魅入られた証拠なのか・・・。」 シンジはそう呟くと、ゆっくりと右腕を掲げ上げる。 神龍皇はシンジの突然の行動に怪訝そうな視線を向ける。 その視線を気にする事無く、シンジは腕を振り下ろし自分の鳩尾にあたる場所を突き刺す。 神龍皇:「宿主!?い、一体何を。」 シンジ:「っ!!黙って・・・見ていろ。」 シンジは激痛に耐えながら突き刺した右手を引き抜き始める。 するとどうだろう。 その手には赤く輝く細い棒のようなものが握られている。 シンジは徐々にそれを引き抜いていく。 シンジの体から引き抜かれ出した物は、徐々にその全貌を露わにしていく。 それはかなり長大なものらしく、シンジは両手でそれを引き出す。 シンジ:「グ・・・アアアアアァァァァァ!!」 赤き輝きを放つそれは、シンジの雄叫びと共にその全貌をあらわにした。 それは二股に分かれた血塗られし槍。 それを見た破壊神は震えを隠せぬ声で呟いた。 破壊:「バカな。それは・・・ロンギヌスの槍。あの時消滅させた筈・・・何故だ・・・?」 かつて破壊神が封印される間際に消滅させた筈の物。 神を殺すことの出来る力を秘めた槍。その名はロンギヌス。 ロンギヌスの槍は砕け散った後、光の粒子となって自分の真の主の出現を待っていたのだ。 そしてその存在の出生と共にその体の中、正確には血液の中へと溶け込んでいたのだ。 シンジの血液が凝固して刃となるのは、これの副作用的なものだったのだ。 シンジはロンギヌスの槍を軽く奮って具合を確かめると、その切っ先を破壊神に向けて言い放つ。 シンジ:「さぁいくぜ、破壊神よ。最終戦・・・開始だ。」 シンジは背中に六対十二枚の翼を広げ、槍を構えると、破壊神に向かって切り込んで行った。 七大天使と斬り合っていたルシフェルとサタンも、シンジに起こった変化に気がついていた。 しかしそれと同時に、自分達に訪れた変化の為にそれどころではなくなっていた。 魔:「な、何なんだ・・・?自分の存在感が薄くなっているような。 そしてそれとは逆に力があふれ出てくる。」 聖:「確かに・・・。しかしこの力には記憶があります。そう遥か昔に於いて来てしまった力。」 自分達の中から溢れ出す力に身を任せ、ルシフェルは白い閃光に、サタンは黒い閃光へと姿が変化する。 二つの閃光角柱で絡まりあいながら徐々に一つになっていく。 それに対して七大天使達は、攻撃の機会と判断したのか、絡まりあう光に攻撃を仕掛ける。 しかし次の瞬間、絡まりあっていた光は凝縮し、爆発を起こす。 その爆発によって、ミカエルとラファエル以外の五人の天使は吹き飛ばされて距離を離すが、 吹き飛ばされなかった二人は爆発の中心のに向かって剣を振り下ろす。 しかし、爆煙の中から伸ばされた二本の剣によって、二人の攻撃は受け止められる。 しかも受け止めただけではなく、そのまま剣を絡めるように振るうと、 二人を他の五人の元へと弾き飛ばした。 七大天使たちが態勢を整えたとき、爆煙を払って現れたのは、 右に六枚の白き翼を、左に黒き六枚の翼を持ち、流れるような銀色の髪。 そして金色の光を放つ瞳を持った、聖魔混沌を司る最強の天使・ルシファーだった。 ルシファーは未だに別れていたままだった剣を重ね合わせると、 持ち主と同じ名を持つ、シンジが使っていた最強の剣へと変化させる。 聖魔:「シンジ様の力の影響を受け、ルシファーここに完全復活を遂げん。 七大天使達よ、こうなっては手加減はせん。せめて我が手で安らかな眠りへとつけ。」 そう言うと、ルシファーは剣を構えて切り込む。 最強の姿に戻った今となっては、如何に七大天使であろうとルシファーの敵ではない。 はっきりと言ってしまえば格が完全に違う。 聖魔:「天魔秘伝剣技・混沌衝破斬。」 七大天使達はルシファーが通り抜けた後を風が吹いた程度にしか感じなかったろう。 しかし次の瞬間には、七大天使達は光となって消えていった。 破壊神の呪縛によってこの地に縛り付けられていた肉体が浄化されたのだろう。 ルシファーは七大天使達の最後を見届けると、そのままシンジ達の元へと向かおうとした。 が、ドラゴン・バスターの柄を胸に書き抱き、泣きじゃくるアスカと、 混乱状態にあるミサト達を見かけると、放って置く訳にもいかず、取り敢えず考え込む。 (放って置いても良いのだが、それではあまりに気の毒だな。 シンジ様の方はまだ暫くの間なら大丈夫そうではあるし・・・。 彼の方が命を繋ぐ為にも、あの者には絶望してもらっては困るしな。) ルシファーは一人そう考えると、アスカ達のいる場所へと急降下を始めた。 アスカ:「シンジぃ・・・そんなのって、死んだなんて嘘よね・・・。 嘘って言ってよ・・・ひっく、ねぇ・・・グスッ・・・。」 アスカはシンジが大地の裂け目に飲み込まれた時に放心したように言葉をなくし、 その後の爆音と共にここまで飛んできたドラゴン・バスターの柄を見た時、 それに縋り付くように掻き抱いた後、大声で泣き始めてしまった。 その時レイとヒカリ、マナとマユミはアスカを落ち着かせようとする事に、 ミサトを始めとした他のメンバーは、爆音と共に姿を現した鬼神に茫然自失の状態となり、 ある意味で凄まじい混乱の最中にあった。 そして今はアスカが漸く、ある程度ではあるが落ち着きを取り戻し始めた状態であった。 ルシファーが舞い降りた時の状況はそんな感じである。 聖魔:「何を泣いているのだ、娘よ?」 その声を聞き、涙を流して俯いていたアスカはルシファーを見上げる。 突然現れた天使の姿に、我を失っていたメンバーも漸く現実に復帰し、ルシファーへと目を向ける。 アスカの視線がこちらを向いたことで、ルシファーは再び問い掛ける。 聖魔:「答えるが良い、娘よ。何故に泣いている?」 ルシファーの問い掛けの意味を理解したアスカは、 所々つっかえながらではあったが、何とか答えを返す。 アスカ:「シンジ・・・シンジが・・・裂け目・・・落ち・・・ひっく、 その後・・・爆発・・・これ飛んで来て・・・グスッ・・・。」 そこまで言うとアスカは新たに涙を流しながら自分の胸に抱いていた物を見せる。 まるで昔のバルディエルのような状態である。 しかし要点はちゃんとつかめる内容なのは流石と言うべきだろう。 それを理解したルシファーは、確認を取る為に問い掛ける。 聖魔:「要約すると何時はシンジ様が心配なのか?」 その言葉に、アスカは小さく頷く。 他のメンバーはシンジの事を様付けで読んでいることに気付き、警戒を解いた。 最も、もし敵だったとしても勝てる見込みは皆無だったのだが。 ルシファーはアスカの反応を見て、少しだけ、本当に少しだけ微笑んだ。 この少女がいれば大丈夫だと言う安堵の思いと共に。 そしてルシファーは破壊神と戦う鬼神・シンジを指し示して言い放つ。 聖魔:「何を心配する必要があろうか。シンジ様はあそこで戦っているではないか。」 その言葉に、アスカはルシファーの指し示すものを見る。 そしてそこには、赤き槍を振るって破壊神を追い込める、紫電の鬼神の姿。 暫しの間半信半疑だったアスカだが、その戦い方を見ている内に、 その姿が間違いなくシンジだと言うことに気付いた。 あってまだ一週間も経っていないが、ずっとアスカは見てきたのだ。 たった一人で故郷の者達全ての悔恨と言う名の十字架を背負い戦うシンジの背中を。 己が傷つく事に一切の躊躇が無く、それとは逆に他人が傷つくのを極端に嫌う彼の姿を。 そんなアスカだからこそ、あの鬼神がシンジなのだと言う事に気付く事が出来たのだ。 アスカ:「シンジ・・・無事だったんだ。良かった・・・良かったよう・・・。」 アスカは再び涙を流す。 しかし今度のは不安に苛まれる涙ではなく、安堵の涙。 そんなアスカの様子にルシファーは、今度ははっきりとわかるほどに微笑んだ後、 真剣な眼差しでアスカに語り掛ける。 聖魔:「確かに無事ではあるが、あまり安心できる状態な訳ではない。 あの姿を維持するのだけでも膨大な魔力と生命力を費やしている。 振るっているロンギヌスの槍も、多少とは言え、生命力を吸っている可能性もある。」 その言葉に、過敏ともいえる反応を示すアスカ。 その様子に、ルシファーは覗き込むような姿勢でアスカに問い掛ける。 聖魔:「シンジ様に無事に帰ってきてほしいか?」 その言葉に、アスカは頷く。それに対して、ルシファーは更に問う。 聖魔:「あのような姿になったとしてもか!?」 先程よりも強い調子のその言葉にアスカは再び、今度は先程よりも力強く頷く。ルシファーは更に問う。 聖魔:「なれば!あなたは、シンジ様を愛し、支えてさし上げられますか?」 ルシファーは最初こそ先程と同じ口調であったが、 後半は今までの印象からは考えられないほど優しげな口調だった。 話し掛けたルシファーですら驚いていたのだから。 しかしルシファーはそれを表に出す事無く尚も話し掛ける。 聖魔:「シンジ様全てを失ったと思っておられる。無論共に戦ってきた我らの事は忘れてはいません。 しかし我らは縦の形でしかあの方と接する事が出来ません。 今、あの方に必要なのは、あの方の帰るべき場所となり、 あの方に再び愛情と言う温もりを与えられる方なのです。 今一度問います。あなたはシンジ様を愛する事が出来ますか?」 ルシファーの問い掛けに、アスカは暫しの間恥ずかしげに俯いていた後、 顔を赤く染めながら顔を上げながらも、はっきりと頷いて見せた。 それを見て、ルシファーは頷くとはっきりと言い切る。 聖魔:「合格!」 アスカはその言葉の意味がわからず、目を見開いた状態で固まってしまう。 他のメンバーも展開の速さに着いて行けず、何も言う事が出来ない。 ルシファーはそんな事を気にも止めず、アスカに諭すように言葉を続ける。 聖魔:「あの方は、シンジ様は死への道を突き進んでいます。あなたを傷つけた破壊神が許せずに。 あの方は優しすぎます。自分で全てを背負い込もうとします。 信じた物の為ならば死をも厭いません。それは素晴らしい事かも知れません。 しかし、如何にシンジ様でも限界があります。それをあなたが支えてあげなさい。 少なくとも、休ませて上げる事は出来る筈です。今は信じ、そして祈りなさい。 シンジ様が無事に帰って来る事を。それが今のあなたに、あなたにしか出来無い事です。」 そう言い終わると、ルシファーはシンジの元へ向かう為に舞い上がる。 最後にアスカの耳元でこう囁いて。 (なぜならあなたは、シンジ様が唯一心を本当に許した人。そして、初めて愛した人なのですから。 最も、シンジ様ははっきりとは自覚しておられませんけどね。) この言葉に、アスカは暫しの間機能を完全に止めてしまった。 他のメンバーも最後まで呆気に取られていて反応する事も出来なかった。 結局、一番最初に再起動に成功したレイがアスカを初めとする全員の意識を戻させたのだった。 シンジと神龍皇。そして破壊神の戦いはある意味で一方的なものだった。 接近戦を不利と考えた破壊神が間合いを離せば、神龍皇の神龍砲と神龍弾が破壊神の動きを止め、 その隙にシンジが一気に間合いをつめて再び接近戦を行うと言った形だ。 破壊神としては槍の一撃を受けただけでも大ダメージとなるので、先程までの余裕は無い。 しかも創造主と違ってシンジは完全に槍を使いこなしているので、 破壊神から見れば過去の大戦よりも圧倒的に不利な状況だった。 だが、破壊神は必ず起きるであろう事を予見し、その瞬間を待っていた。 シンジ:「グフォッッ!!」 破壊:「詰めを誤ったな、人間!」 シンジが再び喀血を始めた瞬間を見逃す事無く、破壊神はハルバードを振るう。 そう、破壊神はシンジの体の負荷が限界近くになるまで待っていたのだ。 如何に鬼神になったとは言え、命が擦り減って行く事に変わりは無い。 ならばもう一度血を吐き出して隙を作る時が来ると考えたのだ。 神龍皇は先程からの魔術の連射で消耗し、すぐさま放つ事は出来ない状態にある。 しかし、今度の破壊神の思惑はそう上手くはいかなかった。 シンジ:「・・・二度も同じ手にかかって、堪るかよっ!!」 シンジは繰り出されたハルバードの一撃を、矛先全体で受け流して、 二股に分かれた槍の根元の部分で受け止め、そのまま勢いをつけて大地に縫い付ける。 懇親の一撃として振るった攻撃を強引に引き戻されて、破壊神はバランスを崩した。 シンジはそこに拳打を叩き込もうと拳を振るうが、先程以上の吐血に襲われ、 崩れ落ちそうになるのを、何とか保つので精一杯だった。 その瞬間を破壊神が見逃す筈が無く、衝撃波を放とうとシンジに手を向ける。 が、そこにアスカとの会話を終えたルシファーが飛来した。 聖魔:「天魔秘伝剣技・混沌衝斬波。」 ルシファーは斬撃を衝撃波の形で破壊神に打ち放つ。 急の事態に破壊神はシンジに放とうとしていた衝撃波をそちらに向けて相殺する。 その隙に態勢を立て直したシンジは槍を引き抜いて破壊神との距離をあける。 破壊神との距離をあけたシンジの元に、神龍皇とルシファーが集まる。 シンジはルシファーの存在に気付き、声をかける。 シンジ:「すまん、ルシファー。迷惑をかけた。」 聖魔:「気に召されるな。当然の事です・・・って、シンジ様。何故私の事がわかるのです?」 こんな事態になんだが、ルシファーの疑問も当然である。 この姿になった時の自分をシンジが知る筈が無いのだから。 そんな疑問をぶつけてきたルシファーに、シンジはさも当然と言った風に答える。 シンジ:「ずっと共に戦ってきたのだ。それぐらい気配でわかる。」 聖魔:「・・・そうでしたな。愚問でした。忘れてください。」 シンジ:「忘れていられる時間があったらな。」 ルシファーに答えた後、シンジはさらに血を吐き出す。 今まで鬼神化によって抑えられていた分が一気に効いて来たのだろう。 その様子を見ていたルシファーと神龍皇は、互いの顔を見合うと、そろって頷き合う。 神龍皇:「宿主よ。我らが力を再びあなたにお預けしよう。」 シンジ:「・・・どういう意味だ?」 神龍皇:「我とルシファーはあなたと再び一つとなります。 ルシファーは聖魔混沌の力で生命力と魔力の回復を行い、 我は竜騎士の力を再びあなたに戻します。」 聖魔:「シンジ様でなくては破壊神は倒せぬものと判断しました。 ならば我らが力と命をシンジ様に預け、あなたの勝利の支柱となります。 これは我らが意思です。どうかお聞き届け下さい。」 シンジはこの言葉に数瞬戸惑った。 自分はもう聖魔の魂も砕き、人としての生も捨てている状態にある。 どのような処置をしても自分の命を永らえる方法は有り得ないだろう。 それだけならば別に構うほどの事は無い。 自分の命が尽きる前に離脱してもらえばいいのだし、死んだとしても彼らは無事な筈だから。 シンジが戸惑う理由はこれから仕掛けようとしている攻撃の手段にあった。 先程までの破壊神との戦いから考えて出した結論からすれば、破壊神を倒す方法は一つしかない。 そしてそれを行えば、確実に自分の体はこの世界から跡形も無く消し飛ぶ。 もしこの願いを受け入れれば、彼らを道連れにするのは確実である。 しかし、神龍皇とルシファーの瞳はその事を覚悟した上でシンジに進言している。 しかも、自分達の意思だとまでいわれてはシンジは拒否する事は出来なかった。 ただ、それと同時に自分自身の不甲斐無さに意識を向けている辺り、シンジの性格が見て取れる。 シンジ:「・・・すまない。」 聖魔:「御気に為さらないで下さい、シンジ様。これは我らの願いであり、望みなのですから。」 神龍皇:「では、参ります。」 神龍皇の言葉を合図に、神龍皇とルシファーは閃光となって天空に駆け登る。 数瞬の後に、無属性を表す灰色の雷となってシンジの肉体に落ちる。 そしてシンジは、再び神龍皇の竜騎士の鎧を纏った。 鎧の大凡の姿形は人間だった時の物と殆ど同じである。 違うのは兜の額の部分に角が一本増えた事と、神龍砲となる筒状の物が両肩にある事。 そしてその翼が四対から六対に増えている事であろう。 ちなみに、鬼神形態の時の肩にあった板状の装甲は砕け散っている。 強大過ぎるまで戦闘能力を有する鬼神が、神龍皇の竜騎士の鎧をまとう。 それはまさに、戦う事にかけては比類する者無き、最強の戦闘神の姿だった。 纏っている闘気の威圧感からして既に威武強大。 あまりの強さに、破壊神が一歩後方へ下がったほどであった。 無論その事に対し、破壊神は怒りを覚え攻撃の態勢を取る。 しかし、行動を起こしたのはシンジの方が早かった。 シンジ:「無属性広範囲魔術・神龍弾」 その言葉と共に、両肩の装甲が蠢き今までと同じく神龍弾の発射口が現れる。 神龍皇の時を遥かに凌ぐ威力と数の魔力の弾丸が破壊神に襲い掛かる。 破壊神はそれを顔の前で腕を交差させるような態勢で防御する。 当然のように、辺りは爆煙で覆われ、破壊神の姿は朧気にしか見えなくなる。 破壊神はその爆煙を隠れ蓑にして、攻撃に転じようとする。 しかし、破壊神が動く前にシンジの攻撃が来た。 シンジは左の第一対目の翼を神龍剣にして、破壊神に投げつける。 それを感じ取った破壊神は無理やり態勢を変えて避ける。 しかしその為に態勢が酷く悪い状態になってしまった。 その瞬間を逃す事無く、今度は右肩の神龍剣を抜いて、シンジは破壊神に斬りかかる。 破壊神に向かって、シンジは横薙ぎに剣を振るう。 その攻撃を、破壊神は背中から倒れこむ事で何とかかわす事に成功する。 しかしシンジは攻撃の手を緩める事無く、左手に抱えていたロンギヌスの槍を振り下ろす。 破壊神はシンジとは逆方面に転がる事で何とか避ける事が出来たが、右の翼を切り裂かれてしまった。 再び距離を取って対峙する破壊神とシンジ。 シンジは投げつけた神龍剣を呼び寄せると、両方とも翼の形に形状を戻す。 その後、先程の行動から、体の具合を確認して呟く。 シンジ:「急激に変化したので加減が聞かんな。する必要の無い相手だというのが幸いか。」 そう呟いた後、自分の中にいるルシファーの声で、 アスカ達が近くに来ている事を知ったシンジは、徐に飛び上がる。 それを見た破壊神は怒声を放つ。 破壊:「貴様、どこに行く!!俺を飛べなくした事で逃げるつもりか!?」 シンジ:「・・・貴様を放って置けるものか。 ただ、貴様と気兼ねなく戦う為の準備をしに行くだけだ。」 そう言うと、シンジはそのまま破壊神を残してそこから離れる。 その間に、破壊神は何とか翼を再生させようと試み始めた。 シンジはアスカ達がいる場所へとやってきた。 異形の姿となった自分を目に涙を湛えて見上げるアスカ。 他のメンバーも、皆複雑そうに見上げている。 シンジはそれを一瞬だけ寂しそうに見つめると、自分の掌を軽く斬る。 薄っすらと出来た傷から流れ出た血を、アスカ達を囲うような形で流す。 それが終わると、呪文を唱える。 シンジ:【万能にして全ての魔法の根源たるマナよ、我が血を媒介としてその偉大なる力を示せ。 我より流れ出でし血は、天と地の力を吸収し、強固なる紅の障壁を生じさせん。 無属性結界秘術・血流超障壁。】 呪文の完成と共に、シンジの血の流れた場所が紅の光を激しく発する。 光はそのままアスカ達を覆うように広がり、包み込んでいく。 シンジ:「その中にいれば、如何なる事があろうともあなた達が影響を受ける事はありません。 何があろうとも、決して出ないで下さいね。」 そう言うと、シンジは再び破壊神のいる場所へと向かおうとする。 そんなシンジの様子に、何かを感じたアスカは喉に無理を言わせて叫び、呼び止める。 アスカ:「シンジ!!」 アスカの叫びに、シンジはその動きを止めて振り返る。 そこには今にも泣出しそうなほどに涙を湛えて見上げるアスカの姿があった。 その姿を見た時、シンジは完全に動きを止める。 動きを止めたシンジに向かって、アスカは必死に声を絞り出す。 アスカ:「無茶・・・しないでよ。もうやめてよ・・・。本当に死んじゃうよ。 あたし・・・シンジが好きだから・・・死んで欲しく・・・ないよぅ。」 アスカの必死の告白。 それはシンジにとって、何物にも勝る衝撃だった。 このような姿になってしまった自分を、人を捨てた自分を好きだと言ってくれる。 そのことがシンジには信じられなかった。 しかしアスカのその言葉に、その涙に、嘘だと感じる要素など無い。 シンジは嬉しかった。ただ嬉しかった。 そしてそれと同時に気付いた。 自分がアスカに抱いていた想い。それはアスカを好きだと言う感情なのだと。 正直、好きになるという感情が、今でもシンジにははっきりとはわかっていない。 しかし、アスカを守りたいと言う想いが、一緒に居たいと願う気持ちが人を好きになると言う事ならば、 それは間違いなくシンジの中にある想い。 シンジはアスカの想いに答えたかった。 自分もアスカの事が好きなのだと。 しかし今のシンジは聖魔の魂を砕き、既に人としての生命力は尽き果て、鬼神化の影響力と、 神龍皇とルシファーの生命力や魔力を活性化させて生きているだけでしかない。 つまり、いつシンジの命が燃え尽きてもおかしくないのである。 死ぬ事がわかっているならば、答えて辛い思いをさせないほうが良いと判断してしまったのだ。 実際は答えない方が辛いかもしれないと考えながらも。 そんな事を考えているとは思いもつかないアスカは、言葉を続ける。 アスカ:「あたし、無茶も無理もしてないよ。シンジとの約束守ってるよ。 まだ、助けてもらった借りも返してないよ。だから・・・だから死なないで!!」 アスカが言っているのは、第三進東京に戻ってくる前に交わした約束。 その約束の条件を出したのは他ならぬシンジ本人。 シンジはこれから言う言葉を思い、罪悪感に苛まれながらも、アスカから視線をそらして告げる。 シンジ:「ごめん、アスカ。僕は・・・嘘吐きだ。」 それだけ言うと、シンジは再び飛び上がり、振り返ることも無く破壊神の元へと戻っていく。 その後姿を、アスカは堰を切った様に、大粒の涙を流してただ見つめるしかなかった。 シンジが破壊神の元へと戻った時、破壊神はその力の大半を治癒に向ける事によって、 何とか翼を再生させた所だった。 シンジ:「待たせたな・・・破壊神よ。」 破壊:「ふ、おかげで翼を修復できた。この事を後悔させてやろう。」 シンジ:「出来るのなら・・・やって見せてもらおうか。」 対峙する破壊の髪と、限界を超え、極限まで極めた闘いの神。 その二神が、今まさに最後の戦いを始めんと対峙した。 シンジの生命力は既に限界を超えている。 長引けば確実に自分が不利になり、場合によっては先に生命力が完全に燃え尽きてしまう。 シンジは切り札を使うために、賭けに出ることにした。 シンジ:「参るぞ、破壊神!」 シンジは言葉と共に、天空に向かってロンギヌスの槍を投擲する。 その行動が何を意味するのかわからなかった破壊神は、とっさに槍の動きを追ってしまう。 それと同時に、シンジは両腕を神龍砲で包み込むと、限界まで魔力を込める。 槍を追っていた視線を戻した破壊神は、シンジが神龍砲を放つ前に仕留め様と、攻撃を仕掛ける。 破壊神の行動にあわせ、信じは交差法の形で神龍砲を放った。 シンジ:「受けよ破壊神!無属性極大魔術・双門神龍砲!!」 有り得る筈の無い神龍砲の二門同時攻撃を正面から受け、破壊神は成す統べなく吹き飛ばされる。 破壊神が吹き飛ばされた直後、巻き起こった爆煙の中からシンジは天空に向かって飛び上がった。 先程投げたロンギヌスの槍を追って。 かなりの距離を吹き飛ばされた破壊神であったが、何とか持ち堪えていた。 だが流石にそのダメージは大きいらしく、立ち上がるだけでもかなり大変そうである。 何とか立ち上がった破壊神であったが、シンジと渡り合うほどに回復するには、 もう暫く時間が掛かりそうであった。 その時間を稼ぐべく、破壊神はシンジがいるであろう爆煙の方に注意を向ける。 が、シンジの行動は破壊神の予想を超えていた。 シンジ:「破壊神よ、これでも受けるが良い!!」 破壊:「なっ!?空中からだと!!」 そう、シンジはと天空に投擲したロンギヌスの槍を回収すると、 そこからロンギヌスの槍を構えて一気に急降下を開始したのだ。 金色の翼の光によって、それはあたかも一条の流れ星のようにも見えた。 破壊:「グッ、ガアアアァァァァ!!」 シンジは狙いを違える事無く、破壊神の体の中心をロンギヌスの槍で貫く。 ロンギヌスの槍で貫かれた破壊神は、貫かれた個所から大量の血を流しながら声を上げる。 槍の矛先は大地にまで届き、完全に破壊神を縫い付けている。 それはかつて、破壊神と創造主の最後の激突を果たした後のような光景だった。 破壊:「お、おのれ・・・げほっ!!ハァ、ハァ。良くもやってくれたもの・・・。 だが、この程度で死ぬ訳には・・・いかぬ!!」 破壊神は口から血を吐き出しながら何とか声を絞り出すと、力なく垂れ下がっていた腕に力を入れ、 槍に手を伸ばし、引き抜こうとする。 しかしシンジはそれをさせないように、槍を持つ手に力を込めながら破壊神に語り掛ける。 シンジ:「これぐらいで死なないのは予想済みだ。 貴様を滅ぼすにはどうやら完全に消し飛ばす必要があるみたいだな。 かつて創造主は貴様を滅ぼす事無く封印した。 それは創造主に、滅ぼす系統の力が殆ど無かった事に起因する。 だが、俺にはそれがある。それが何を意味するか、わかるか破壊神。」 シンジの言葉に、破壊神は鈍くしか働かなくなった思考を無理やり働かせて理解しようとする。 しかしその言葉の意味を理解した時、破壊神は恐怖と言う感情を真に理解する事になった。 シンジ:「創造主が行ったのは最大最強の封印呪文。 そして俺がこれから行うのは、正真正銘の最大最強の消滅・破壊の秘呪文。 破壊神よ、最後に問うておく。神を越えた者は、なんと呼ばれるのだ?」 シンジの問い掛けに答える事無く、破壊神は必死に止めさせようとする。 破壊:「待て!それを行えば貴様だとて唯では済むまい。いや、確実に消し飛ぶぞ!! それに、あの人間達も巻き込まれる。それでも良いのか!?」 シンジ:「心配は無用。アスカ達の方には既に手を打ってある。 それにどうせすぐに消える命。未練など微塵も無い。」 破壊神の言葉に、シンジは自分の意思をはっきりと告げると、呪文の詠唱を開始する。 その時誰も、シンジ自身すらも気付いていなかった。 シンジの中に、アスカと共に居たいと言う未練があった事を。 シンジ:【万能にして全ての魔法の根源たるマナよ、我が生命を媒介としてその偉大なる力を示せ。 燃え盛る炎・流れ行く水・吹き荒ぶ風・震撼する大地・聖なる光・漆黒の闇・天駆ける雷。 七つの力は混沌を生み出し、混沌なる力は全てを無に帰さん。 全ては無より生じて無に還る者也。 塵は塵に、灰は灰に。死せし肉体は大地に還り、魂は大気に還る。 全てを無に帰す力よ、話が意を受け、全てを滅ぼし打ち破る衝撃となれ。 炎・水・風・土・光・闇・雷・無。八属性混合究極破砕魔術・ゴッド・インパクト!!】 呪文の完成と共に、全ての力が集約する。 一瞬、世界中の全てから音が消える。 そして・・・轟音と共に・・・世界は光に包まれた。 To Be Next Story. ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 後書き 八翼の堕天使第弐拾六話。漸く完成!! まあ完成したにはしたけど、ちょっと詰め込みすぎましたかね? 何が何でもこの話で戦いを終わらせようとしていた所がありますからな〜。 今までの二話でさほど活躍しなかったルシファーを目立たせてみたり、 LASを忘れられない為にアスカの告白入れてみたり<他のキャラには台詞が無いけど ルシファー・神龍皇・シンジの融合させたり、初号機の竜騎士形態やって見せたり、 最後には本編再構成物に繋げる為にファースト・インパクトやらかしたりと、 ちょっとイベントを詰め込みすぎですね、やっぱり。 思いついたのを端から端まで全て入れた記憶あるもんな〜。 おかげで話をつなげるのに苦労したけど。 バル:愚痴をグダグダ叩くな!! 作:爪で引っ掻きなさんなって、バルディエル?何でここにいるかね君は。 バル:御二人が向こうで忙しいから、代役頼むってよ。どうせ死んじまったからもう出番は無いしな。 作:そう言われると耳が痛いですね。 バル:所でこの最後・・・主は無事なのだろうな? 作:えっと、その・・・詳しくは次回を見てください。 バル:今!教えろ。 作:そんな・・・次回読んで頂く意味が無いじゃないですか。 バル:問答無用だ!! 作:コリャいかんわ。逃げねば。あ、次回の八翼の堕天使は最終話です。宜しくお願いします。 バル:後一話ですが、どうか見捨てないで下さい・・・って、逃げるなこら!!<追撃 P,S 感想、誤字、脱字、ここはこうした方がいいんじゃないか、と言う意見ございましたら送ってください。 悪戯、冷やかしは御免こうむります。
感想は新たな作品を作り出す原動力です。1行の感想でも結構 ですので、ぜひとも作者の方に感想メールを送って下さい。 |