HEVEN'S DRIVE

 僕はあの日の出来事を忘れない。

 そう、その出来事は前触れもなく突然やってきた。

「シンジ君、アスカ、ドライブに行くわよ!」

 ミサトさんの突然の発言、僕もアスカも驚いた。

「こんな天気の良い日に家でゴロゴロしているなんて、もったいないわよ!」

「えー、ドライブ!いやよミサトの運転、乱暴だから」

 アスカはミサトさんの運転をしっているので乗りたくないようだ。

「そんなこといわないで、シンジ君は行くよね!」

「ぼっ僕も遠慮しときます」

 僕もしっているので当然断った。

「んー、そんな事言わないで行きましょう。ゴールデンウィークだし外にでないとバチが当たるわよ」

 ゴールデンウィークで浮かれているのかもしれない。外に出たくてウズウズしている。

 いや違う。ドライブに誘うなんて、なにかある。

「いやよ!私は行かないわ。シンジ、アンタいってくれば」

「えー!どうして僕が?」

 アスカは乗りたくないせいか、僕にふった。僕だって乗りたくないのに…、でもミサトさんが。

「シンちゃん、行きましょうよ!おねがい」

「……」

 涙を浮かべて懇願している。どうせ嘘泣きと思うけど。

「シンジ!あんたも男なんだから、さっさと行ってきなさいよ!」

「そっそんな…」

「ほらほら、着替えて。ミサト!シンジがいくから用意してて」

「えー?」

 アスカは僕の首根っこを掴み、僕の部屋に引きずりこんだ。そして無理やり着替えさせられる。

「ほら、早くしなさい!」

「どうして、僕だけが!」

 言いかけるがアスカがそれを塞ぐ。

「私まで再起不能にさせるき?アンタ、私のこと好きなんでしょ!だったら守るのが当然よ」

「すっ好きだなんて…」

「早く着替える!」

 好き・守る・当然、最後の当然がなんか釈然としないけど、アスカを守るためだ覚悟を決めよう。

「わかったよ…」

「よし、それでこそシンジよ!」

「シンジ君用意はいい?」

 恐怖の声が聞こえた。これから僕はどうなるんだろう。着替えて部屋を出るとミサトさんは準備 OK、車のキーを指でまわしてご機嫌だ。僕は不機嫌…。

「ミサト、シンジ、いってらっしゃい!ドライブ楽しんできてね」

 アスカは、さも嬉しそうに僕らを見送った。駐車場につきミサトさんの愛車、ルノー・アルピーヌに乗り込む。1960年後半から1970年の前半でラリーで常にトップを争った名車だ。

 シートベルトをしっかりしめ、足をおもいっきり踏ん張る。

 これからジェットコースターに乗って恐怖を味わう感覚に似ている。

「シンジ君汗かいているけど、暑いの?」

「えっいいえ暑くないですよ…」

「あらそうなの、ではいきましょうか!」

 ミサトさんはキーを差し込みエンジンスタート、アクセルを踏み調子をみる。

 グオオーン!グオオーン!!

 甲高いエンジン音が耳につく、ご機嫌のようだ。

「んー!いいみたいね、さあいきましょう!」

 ギアを入れ発進、タイヤが煙をあげる。タイヤの跡を残しての発進、信じられない。

「やっぱりいいわね。新品のタイヤは!」

「ミサトさん!そんなにとばさないでください」

「新品はならさないといけないのよ」

「…」

 ミサトさんは公道にでると、素早くシフトチェンジをおこなう。一速、二速、三速……。

「ミッミサトさん!」

「なに?シンジ君、どう?このエンジン音、しびれるでしょ!」

「えっ?」

「もう、ちょっちチューンナップしたのよ、しびれるわ!」

 やっぱり…自慢したくて誘ったのだ。

「…そうですね…」

「シンジ君も男なんだから、車に興味をもたないと、運転は楽しいわよ」

「…」 

 僕でも車にも運転にも興味はある。でもミサトさんの運転はイヤだ。

「ほらほら、暗くならない!そうだ、車の楽しさを教えてあげるわ」

「けっ結構です」

「遠慮しないでいいから、いくわよ!」

 グオオオーーーン!グオオオーーーン!!

 さらにアクセルを踏み回転数をあげる。そしてスピードは…。

「ミッミサトさん!スピード出しすぎですよ」

「このくらい、出してるとはいわないのよ」

「でっでも100kmでていますよ」

「ここからが車の醍醐味よ!!」

 グオオオーーーン!グオオオーーーン!!

 さらにスピードが上がっていく、振動が凄い。EVAに乗っていて馴れてはいるけど耐えられない。

「スピード落としてくださいよ」

「ふふふ、シンちゃん、これからよ!」

「!」

 だめだ、目が違う。いつものがさつなミサトさんではなく。スピード狂のミサトさんに変わっている。

「ストレートはまあまあの加速ね。どうシンちゃん?速いでしょ」

「はっはい!」

 キキー!キー

 カーブにさしかかりブレーキング。シフトダウン、ドリフトだ。

「ブレーキの効きはばっちりね。どうシンちゃん?曲がるでしょ」

「はっはい!」

 僕は助手席で踏ん張りながら、返事一つをすることで精一杯だった。もう下ろしてよ。

 ガタン!ガタン!

 少し凹凸がある道路を走った。

「サスペンションが硬かったわね。どうシンちゃん?そう思うでしょ」

「はっはい!」

 お尻が痛くなってきた。誰か助けてよ。

「ミサトさんどこにいくんですか?」

 行き場所を聞く、そうすればそこまで耐えればいい。帰りは別の手段で帰ろうと思った。

「峠に行くわよ」

「えっ?峠!」

「そうよ峠!」

 峠…そうそこは走り屋が集まる場所、どうして…。

「ミサトさんドライブでしょ?どうして峠にいくんですか」

「それはね、峠がドライブの相場と決まっているからよ」

「……」

 僕は言葉を失った。もう降りられない、覚悟を決めた、でもイヤだ、逃げ出したい。

「さあ、峠ドライブ、ゴー」

(生きて帰れるかな…)

 ミサトさんはさらにスピードを上げた。僕は悲鳴を上げた。

 峠につき、スピードを落とした、ホッとしたのもつかの間、エンジンがまた高音を鳴らす。

 グオオオオオオオーンンンン!!!!

「んー誰もいないわ、これならいいタイムがだせそうね」

(ドライブじゃないんですか) 

 心の中で叫んだ!ミサトさんを見る…走り屋の目に変わっている。僕はこれからオバケ屋敷にはいる恐怖を感じた。

レディーゴー

「たっ助けてーー」

 ミサトさんは掛け声とともに急発進!僕は踏ん張り、体にGがかかるのを耐えていた。

 それから、思い出したくもない悪夢が始まった。途中は憶えていない。

「!」

「!…」

「!……」

「シ…シン……シンジ君…大丈夫?」

「はっ?ミサトさん、ここはどこですか」

「よかった!もう帰ってきたのよ。ずっと気絶していてびっくりしたわ」

 ミサトさんの話しによれば、僕は口から泡をはいて気絶していたらしい。でもよかった、やっと帰ってきたんだ。

「すいません、ミサトさん」

「いいの、いいの、気にしない」

 上機嫌だった。車の性能が試せて嬉しいのだろう。

 フラフラになりながら、家のドアを開ける。

「…ただいま」

「おかえりー」

 アスカが珍しく玄関まで来てくれた。その顔は笑っている。

「どうだった?シンジ。天国のドライブは!」

 アスカが嫌味のごとく僕に尋ねてきた。

「……地獄……」

 僕の感想はその2文字だけだった。

 ふらふらになりながら、部屋に戻る。ベットに倒れこみ、安心がこみ上げて来た。

(よかった!生きている)

 生きている素晴らしさを感じているとノックの音がした。

 トントン

「はい!」

「シンジ君!明日もいきましょうね。ド・ラ・イ・ブ」

「!」

もういやだーー!

 僕は返事ができなかった。明日が来るのが怖かった。その夜行かない方法を必死で考えた。

 そう朝から家にいなければいいんだ。僕は朝早くから、逃げ出した。

 おかげで車に乗らずにすんだが、そのかわりアスカが犠牲になっていた。

 僕はあの日を忘れない。

 

終り


 ゴールデンウィーク、皆さんはどういう計画を立てていますか?ドライブなんかはミサトみたいにならない様に注意しましょう。

 題名はもちろん、あの人気グループのタイトルからとりました。

 こんな小説?でも最後まで読んでくれた方々に感謝します。


NEON GENESIS: EVANGELION HEVEN'S DRIVE


マナ:jun16さん、投稿ありがとうございましたぁ。どうだった? アスカぁ? 天国のドライブの感想は?

アスカ:話し掛けないでよ・・・うぇぇぇ・・・。

マナ:あらぁ、楽しかったようねぇ。うらやましい限りだわぁ。

アスカ:アンタバカぁ? どこをどう見たら、楽しそうに見えるわけぇ!? 気分悪がってるのよっ!

マナ:明日もドライブかしらぁ?

アスカ:もう行かないわよっ! 絶対行くもんですかっ!

マナ:でも、シンジは明日も出かけるわよぉ。

アスカ:まったくっ! シンジの奴ぅっ! このアタシ1人残してぇっ!

マナ:そうだ、明日シンジと遊びに行こうっと。

アスカ:なんですってっ! シンジはアタシのことが好きなのよっ!

マナ:甘いわねっ! 今ならどんなことでも、家を抜け出す理由があれが乗ってくるわよぉ!

アスカ:アンタこそ、甘いわねっ!

マナ:なんでよ?

アスカ:シンジを守るって理由で、アタシも抜け出すもんっ!

マナ:しまったーーーーっ!
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