この作品は「新薬」「認知」の続編です。まずは、「新薬」「認知」をお試し下さい。









 私は人生最大の勝負に出る。

 シンジに告白するのだ。



 但し、薬の力を借りて……。



 そこんところが、ちょっと情けないんだけど…。でも仕方がない。自分の性格は自分が一番わかっている。大好きな人(もちろん、シンジのことよ!)に「好きよ」なんて、言えるわけないじゃない。何度かそれっぽいことを言ったことがあるんだけど、あの鈍感大王のシンジ(ごめんねシンジ)が気付いてくれるわけない。まあ、こっちも超変化球ばかりだけどさぁ。



 とにかく、薬の力でもいい!

 なんでもいい!



 さあ!

 目標は、キッチンにて晩御飯の準備中。

ロマンティックなシチュエーションにはほど遠いけど、この薬の効果があるうちに攻撃しなきゃ!

大丈夫!

自信を持って!



アンタ以上に、シンジを理解できる娘はいない。

アンタ以上に、シンジを愛せる娘はいない。

アンタ以上に、シンジを幸せにできる娘はいない。



よし!行くわよ!アスカ!







告白〜決戦!コンフォート17〜

Act.1 第1次攻撃計画

 ネルフの誇るマッドサイエンティスト・リツコ。  私は無様にも彼女の人体実験の餌食となってしまった。  あんなに気を付けていたのに…。  しかし、災い転じて福と茄子、だっけ?違うわ!なすは平仮名よ!ホント漢字は嫌いよ! この新式自白剤のおかげで、私は公明正大、天下堂々と、シンジに告白できるの! そうよ、私の意志じゃないんだから。 薬の効果で仕方なく、私はシンジに愛の告白をさせられるのよ! ああ!可哀想な私! リツコのために飲まされた薬のために、無理矢理に! ありがとう!リツコ! 人間、感謝する心は大切なの。面と向かっては言えないけど…。 さあ…、行くのよ! シンジに質問させるの。 『アスカ、聞いて良い?』 『もちろんよ』  薬の効果で疑問系の質問には、何でも素直に答えてしまうのよ! 『アスカは僕のことをどう思っているの?』 『当たり前じゃない!私はシンジのことが大好きなのよ』 『本当なの?』 『そうよ。愛してるの、シンジ!』 『ありがとう、アスカ!僕もアスカのことが大好きなんだ!』 『嬉しい!』 『アスカ!』 『シンジ!』 ……。 ……。 ……。  ぼふっ! 何度、シミュレーションしても、照れるわね。 あ、駄目。この赤い顔、冷まさないと…。 5分後。 駄目、駄目!収まるどころか、妄想がどんどん酷くなるよ。 鏡を見なくてもわかる位、顔が赤いわ! どうしよう…? そうよ、シンジのことを考えなきゃ良いのよ。 何を…。落ち着くようなことを…。駄目、駄目。私の心が落ち着くのは、シンジのことに決まってるじゃない! ぼふっ! 私ってマヌケ。どうしよう…。 そうよ、生理的にイヤなことを想像したら良いんだわ。 さっすが、天才美少女。 えっと…。 司令の笑顔…。確かに薄ら寒くなるけど、想像ができない!う〜ん、さすがのこの私も、想像できないものを想像はできないわ。 次…。ミサトの美味しい料理。駄目。これも想像の範疇を超えている。 え〜、そうよ!これよ、これ! ファーストが私を睨んでいる。 『碇君は私のモノ。アナタみたいな野蛮な人は碇君を幸せにできないわ』  く〜っ!ぼそぼそ喋るんじゃないの!この冷血女!  はん!なにが『私のモノ』よ。負けられないのよ、私は!  よおし!戦闘力が400%になったわ!  さすがはファーストね。凄い効果だったわ。  でもアンタの戯言も、今日この時までよ。  さあ、行くわ!  ジュ〜。  フライパンからいい匂いがリビングにまで漂ってきている。  うん、ハンバーグね、今日は。  今日という日にふさわしい、素晴らしいメニューだわ。  さすがは私の愛するシン…。 ぼふっ! 駄目、駄目、それを考えては駄目。  ファーストの顔。ファーストの顔。ファーストの顔。  よし!復活したわ。 「あれ?どうしたの、アスカ、思い詰めた顔して。何考えてたの?」 「うん、私、ファーストの顔を考えていたの」 「は?」  うへ!とんでもないこと聞かないでよ、バカシンジ! 「どうして綾波の顔を?」  シンジ、止めて! 「うん、ファーストの顔を考えていると、戦闘力が上がるの」 「?」  あ〜!シンジが目を逸らしてしまったわ。きっと、変な女だと思ったのね。関わり合いにならない方がいい、そう思ったのね。悲しいわ、私。  おっと、脇道に逸れちゃ駄目じゃない!シンジにあの質問をさせるように仕向けるのよ!  まず第1次攻撃計画。名付けて「僕のこと見てよ」大作戦。シンジが人の目を気にする性質を利用した、心理的な作戦よ! 「そういえば、シンジ、最近アンタ、クラスで噂になってるわよ」  私に背を向けて、フライパンのハンバーグへ私への愛を注いでいる(今日は何味かしら?)シンジに、私は攻撃の第1手を投げかけた。 「へぇ…、どうせろくでもない噂だよね」  ち。違うでしょ、シンジ。そこは『へぇ、どんな噂なの?』でしょうが。勝手にシナリオから逸脱するんじゃないってば。えぇーい、しからば! 「いいえ、それがそうでもないのよね」  ほらほら、ここで話を切るのがテクニックよ!先を聞きたくなるのが人情だもの。 「……」  こら、シンジ。どうして聞き返さないのよ? 「アスカ、ハンバーグは煮込みで良い?」 「うん、ありがとう。私、煮込みハンバーグが大好き!」  う〜ん、なんて素直な良い返事だろう。自分の口から出たとは信じられないわ。  あれ?振り向いたシンジが固まっている。目がまんまるになって……、  ま、まずいわ。あれよ、あれ、あれが出ちゃったのよ、無意識に。  そう、名付けて『天使の微笑み』。  あの日以来(『認知』参照)、シンジのことを考えると自然に出てくる、あの『天使の微笑み』よぉ!シンジの前では出さないようにしていたのに!こ、これも薬の効果なの?  ヒカリに言わせると、この『天使の微笑み』は殺人的な効果があるらしいわ。あの黒色ジャージマンでさえ『最近の惣流、ごっついええ顔して笑いよんなぁ』とまで言っているらしいわ。その後、アイツはヒカリに制裁を受けたらしいけど。ヒカリも独占欲強いわね。  おっとっと、意識が飛んでいってしまっていたわ。  良かった。シンジはまだ固まったままね。  とにかく、『素直な返事』に『天使の微笑み』が加われば、もう天下無敵よ!  私の勝利よ!はっはっは…。  じゃなくて、シンジを復活させなきゃ…。  でも、どうすればいいんだろう?  たっぷり5分後、シンジは復活した。  私が気を利かせてフライパンの火は止めておいたから、『シンジと私の愛の煮込みハンバーグ』は大丈夫だったわ。  シンジの記憶は欠落していたらしい。 「ごめんね、アスカ。なんか神の国へ行ってたみたい。僕、女神様に会ったんだよ」  ぼふっ!  な、なんてこと言うのよ。う、う、嬉しいじゃない!わ、わかったわ!  『天使の微笑み』は、以後『女神の微笑み』と改称する。決定!  シナリオは大きくはずれてしまったので、第1次攻撃計画。名付けて「僕のこと見てよ」大作戦は、残念ながら撤収する。  続いて第2次攻撃計画に移るわ。名付けて「僕のこと嫌いなの」大作戦。シンジが人に嫌われるのをいやがる性質を利用した、逆説的な高等心理作戦よ!    これなら、成功間違いないわ!


マナ:シンジが、恐怖に固まっちゃったわぁぁっ!

アスカ:Angel Smileに、きゅんってしちゃったのっ!

マナ:天使の微笑み・・・ゼルエルの微笑み・・・。

アスカ:ちがーーーーーうっ!!!

マナ:似てる・・・。(ーー)

アスカ:似ててたまるかっ!!!
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