(作者からのおことわり)

この話は、一応TV版最終話以降の世界を舞台としていますが、

制作の都合上、ある程度の(というより、相当の)修正が加えて

あります。シリアスな展開をお望みの方には、正直言ってお薦

めできないかも・・・。それから、下ネタがお嫌いな方にも・・・。

理由は、スグに分かります↓。(汗)

 

 

「レイ、着てみたいのか・・・?」

「・・・(コクン)。」

いそいそ。いそいそ。

「今日はお前の誕生日だ。何でも言うことを聞いてやろう。」

「・・・司令、交代。」

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 綾波司令   第1話「ゲンドウ襲来」

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ミサト「エヴァンゲリオン弐号機、リフトオフ!」

バキョンッ!!

アスカ「出たわね、変態ヒゲオヤジ!アンタへの恨みの数々、今日こそ思いっきり晴らして

    くれるわ!行っくわよぉー!!」

第17使徒を倒したネルフの前に突如現れた新たな敵。

・・・碇ゲンドウ、元特務機関ネルフ最高司令長官。

エヴァンゲリオンに匹敵するほど巨大化したその男は・・・・・・・・なぜか全裸であった。

 

 

話は1ヶ月前にさかのぼったりする・・・。

 

誕生日を迎えたレイにうっかり言った一言が、この男の運命を変えた。

  『・・・司令、交代。』

    『・・・司令、交代。』

       『・・・司令、交代。』

ゲンドウの長官専用服(上着)を中学の制服の上に着たレイが、ゲンドウを指差していた。

即刻、黒服の集団がやって来て、本部からゲンドウの私物一切を運び去っていった。

1時間後、固く閉ざされたゲートの入口に一人たたずむ元司令長官の姿があった。

彼の手には穴だらけになったセキュリティカードが握られていた。

カシュン(カードを読み取り機に通す音)

ピ――!(赤ランプ点灯)

・・・・・・

カシュン(カードを読み取り機に通す音)

ピ――!(赤ランプ点灯)

・・・・・・

カシュン(カードを読み取り機に通す音)

ピ――!(赤ランプ点灯)

・・・・・・

・・・・・・

・・・・・・

 

ゲンドウがネルフを追放されてから1週間が経った。

その日、特務機関ネルフ副司令長官冬月コウゾウは、本部での勤務を終え、近所のコンビニで

買ったささやかな夕食を持って第三新東京市内にある自分のマンションに帰ってきた。エレベー

ターを降り、自分の部屋の前まで来た時・・・

冬月「碇!」

通路に置かれた観葉植物の植え込みの影にGジャンを着たゲンドウが立っていた。ちなみに下も

Gパンである。上下を青のジーンズで固めたその姿に、冬月はこの男の青春時代を見た気がした。

冬月(長官服以外は持っとらんかったからな。)

ちなみに、今長官服は新司令に就任したレイが身に着けている。ブカブカの長官服を着た彼女の姿は、

『カワイイ!』と本部の男女を問わず好評で、ファンクラブの結成が噂されている。レイ自身このスタイル

を気に入っているのか、一向に直す様子はない。もっとも、ズボンの裾だけは、一度踏んづけて顔面を

強打したことがあったため、少しばかり切って、上に折り上げてある。ちなみに、その一部始終は、ミサト

やリツコをはじめ発令所の全員が目撃していた。シンジが、こんなレイをどう見ているのか・・・・・・言うま

でもない。そんなシンジを、アスカがどう見ているのか・・・・・・・・これも、言うまでもあるまい。

冬月「碇、そんな所に立っとらんで、中に入ったらどうだ?」

ドアのロックを開けながら冬月が声を掛けた。

ゲンドウ「・・・・・・。」

ゲンドウが無言で後をついてきた。

冬月「どうした?なぜ上がらん?」

ドアの内側に立ったまま靴を脱ごうとはしないゲンドウに冬月は言った。

ゲンドウ「・・・・・・。」

冬月「こっちへ来て、飯でも食わんか?腹が減っとるんだろう?オマエとワシの仲だ、遠慮はいらん。」

冬月は冷蔵庫を開け、中のものを次々と卓袱台の上に並べていった。食べ残しの沢庵、二年前から

放置していたカステラ一切れ、食べようと思ってフタを開けたら野良猫が来てオシッコをかけたのでそ

のままにしておいた缶詰の水ヨーカン・・・。驚いたことに、並べられたそれらの品々をゲンドウは猛烈

な勢いで平らげていった。缶詰の中に残った水ヨーカンの汁を最後の一滴まですすり終えると、ゲンド

ウの右手がサッと冬月の夕食を入れたコンビニ袋に伸びた。

冬月「あっ!碇、何をする!」

時すでに遅し。冬月が楽しみにしていた「おでん盛り合わせ」と「ワンカップ新大関」は、瞬く間にゲンド

ウの口の中へ消えていった。

冬月(あんまりだぞ・・・碇。)

腐りモノを食べさそうとした冬月もあまり人のことは言えない。

その後さらに、台所の収納庫に隠してあった純米酒一升をわずか二口で飲み干すと、

ゲンドウ「・・・スマン。」

たったひとこと言い残して、ゲンドウは出ていった。

冬月(碇・・・・・・・・・くたばってしまえ。)

もはや、そこに男の友情はなかった。

 

ここは、ネルフ作戦室。

青葉「最近、第三新東京市民からネルフに苦情の投書や電話が殺到しています。」

伊吹「『深夜、猫と人間が激しく争っているような物音がしたので窓を開けてみたら、サングラスを掛け

    た中年の男と野良猫がゴミ箱の中の魚の骨を巡って取り合いをしていた。あれは、オタクの長

    官ではないか?』」

日向「ここ数日で第三新東京市のセミの鳴き声が半減したのは、碇司令がセミを捕食しているからで

   はないか、という匿名の情報も寄せられています。」

青葉「いや、ていうかさぁ、オレ、この間久しぶりに風呂屋に行ったら、番台にサングラスをした見慣れ

   ないオヤジがでっかいマスクして座っていたんだけど、アレ、碇司令じゃないかな?」

ミサト「・・・もう、いいわ。要するに、碇司令は第三新東京市内をまだウロつき回っている、ということね。」

伊吹「どう・・・しますか?」

ミサト「どーも、こーも、しないわ!あっちはネルフをクビになった一般人。こっちは、人類をサードインパ

   クトから救う使命を帯びた国連直属の特務機関ネルフ!放っておきゃいいのよ!」

伊吹「でも、碇司令の名指しで苦情が・・・」

ミサト「ネルフに『碇』なんて名前の司令はい・な・い。過去にもいなかったし、これからも、存・在・し

    ・な・い・の!いい!?

伊吹「は、ハイ!!(コ、コワ〜〜)」

冬月(終わったな、碇。)

 

ニャ〜ン。

あら?本部から自分のマンションへ帰宅する途中、舗道を歩いていたリツコは、思わず足を止めた。

ニャ〜ン。ニャ〜ン。

空耳ではない。確かに猫の鳴き声がする。リツコは急いであたりを見回した。舗道の上。車道。マンショ

ンのベランダ・・・。

リツコ(おかしいわね。確かに聞こえたと思ったんだけど・・・)

ふと、路地へと続く曲がり角に並べられたゴミ箱の列が、リツコの目に入った。その陰に何やらいる気配

がする。バッグから眼鏡を取り出すと、リツコは、じっとゴミ箱の陰に目を凝らした。すると・・・

リツコ(はっ!碇司令!!)

ズタボロのジーンズを着たゲンドウが、ゴミ箱の陰にうずくまり、リツコに顔を伏せながら猫の鳴きマネを

していた。

ニャ〜。ニャ〜。ニャァ〜ン・・・ゴロゴロゴロ。

誰が見ても露骨に怪しい光景だが、その惨めったらしいコトこの上ない姿が、リツコの母性本能を直撃

した。

リツコ(ああ、碇司令!こんなにまで・・・こんなにまでなっても、私のことを・・・)

後半はとんでもない勘違いなのだが、今の彼女に、普段同様冷静になれ、という方が無理であった。

リツコ「おいで、ネコちゃん・・・」

ゲンドウ「ニャ〜ン。」

赤木リツコ、三十歳、独身。

彼女に春は来るのであろうか?

翌朝・・・。

リツコ「・・・ハッ!」

寝過ごしたリツコが目を覚ました時、ゲンドウの姿はカゲもカタチもなかった。

綺麗に整頓されていたキッチンは、N2爆雷の直撃を受けたかのように無残にも荒らされていた。

食料と言えるものは何一つ残されていなかった。

ニャー!ニャー!ニャー!ニャー!

ゲンドウにエサの缶詰を奪われた猫達が、腹を空かせて鳴いていた。

リツコの肩が、ワナワナと震えた。

彼女の頭の中で、「(リツコ+ゲンドウ)−愛情=食料」という計算式がグルグルと回っていた。

 

「オイ、あれ、碇のオヤジさんと違うか?」

「どれどれ・・・本当だ!・・・・・・でも、何してるんだろう?」

下校途中のトウジとケンスケは、池の周りを徘徊する不審な男を発見した。池の中を覗き込むようにし

ていたその男は、二人に気が付くと、慌てて森の中へと姿を消した。

「一体、何見とったんや?」

二人が池の中を覗き込むと、丸々と太ったアヒルが、尻を空に向けて、水草を突ついていた。

「アヒルなんか見て、どないしようっちゅうんや?」

「・・・・・・いや、待てよ。」

次の日。

「センセェ!センセェも、イロイロと大変やなぁ・・・。」

シンジの肩に、ポンっとトウジが手を置いた。

「ほーんと。同情しちゃうよ、碇!」

妙に優しい声でケンスケも言う。

「えっ?何のこと?」

「『何のこと』って・・・オマエとオレの仲やないか?秘密にするやなんて、水クサイで。」

「そうそう。俺達の友情に隠し事は一切無し!・・・だろ?」

「だから、何・・・(ハッ!ま、まさか)・・・父さんを見たの!!」

「「ピンポーン!大正解!!」」

 

(何、話してんだろ?)

三バカトリオが話をしている様子を、アスカは、掃除用の箒の柄にアゴをのせて眺めていた。

(しっかし・・・)

アスカの目が二人に囲まれて驚いたような顔をしているシンジを追う。

(シンジも、よく学校なんかに来る気になるわね。自分の父親がネルフをクビになって、失踪。その上、

本部周辺をうろつき回っている怪しい男がそれだなんてねぇ・・・。普通なら、家に閉じこもって出てこ

れなくなるトコロよね。ああ見えて、案外、図太いのかしら?・・・・・・いえ、違うわね。シンジは・・・シン

ジは碇司令を自分で捜そうとしているんだわ。)

ちょっと見直したような眼差しをシンジに送る。

(ふーん・・・。なかなか、やるじゃない・・・・・・・・・・・・。それにしても・・・)

今度は、雑巾がけをしているレイに目を向ける。

(ファーストは、なんで司令長官になったりしたのかしら?)

その理由は・・・単に、なってみたかっただけ、だったりする。

 

ネルフを追われて1ヶ月後。

ゲンドウの身体に異変が発生した。

右の手の平が、まるで別の生物のように勝手に鼓動を始めたのだ。

ドクン・・・ドクン・・・ドクン・・・ドクン・・・

次第に鼓動は速くなっていった。

ドクッ、ドクッ、ドクッ、ドクッ、ドクッ、ドクッ・・・

右の手の平から、何者かが生まれようとしていた。

ドッ!ドッ!ドッ!ドッ!ドッ!ドッ!ドッ!

ぐををぉぉぉおおー!!!

 

第三新東京市H3地区住人、洞木ヒカリさん(14才)の証言。

『昨夜、家の近所でものすごい叫び声が上がったんです。最初は人間みたいな声だったんですけど、

だんだん人間ばなれした声になってきて・・・妹達と一緒に布団の中で震えていたんですけど・・・思い

切って窓をほんの少しだけ開けて見たんです。そうしたら・・・そしたら、アノ・・・ここから先は恥ずか

しくて言えません!(イヤン、イヤン)』

 

ネルフ自慢の観測用レーダーが第三新東京市に発生した異常を探知した。日向が素早く分析に入る。

日向「第三新東京市郊外に正体不明の物体出現!パターン青!使徒です!!」

ミサト「なんですって!?」

ミサト(シンジ君が第17番目の使徒を倒した時点で、使徒はすべていなくなったはずじゃなかったの?

    一体、どういうこと?)

青葉「映像、出ます!!」

一斉に皆の目が発令所のスクリーンに向けられた。

特大の画面に映し出されたものの姿を見て、マヤが悲鳴を上げた。

伊吹イヤァァァァ!

日向「あ、あれは・・・」

青葉「う、・・・」

冬月「碇!」

リツコ「無様ね。」

ミサト「は、裸・・・」

青葉「観測データ、出ました。間違いなく、あれは碇司令です!身長、体重ともにエヴァ初号機に匹敵

   するものと思われます。発生理由・目的、ともに不明。顔面には、やはり巨大化したサングラスを

   装着!そして・・・・(ゴクリ)・・・・ぜ、全裸です!!」

ミサト「見りゃ分かるつーの。」

伊吹「イヤイヤ!あんなモノ見たくありません!」

リツコ(マヤ・・・本気で言っているの?)

日向「と、とりあえず、どうしますか?」

ミサト「ん〜〜〜・・・」

ピーピーピー。

青葉「戦自から通信が入っています。映像切り替えます!」

パッ!巨大ゲンドウの映像が消え、いつぞやの戦自参謀三人組が現れた。

参謀1『冬月副司令、一体これはどういうことだ?』

冬月「・・・・・・。」

参謀2『碇君は、何を考えてあんな恰好をしてるのかね?』

参謀3『まったく、ネルフの考えてることは我々には理解できん!』

冬月(ワシもじゃよ・・・。)

参謀1『ヤツは現在、第三新東京市に向かって進行を開始しておる!このまま碇を放置すれば、どれ程

    の被害が出るか分からんぞ!』

参謀2『ネルフはこの責任をどうやって取る気だ?』

ミサト「責任なんて取らないわよ!」

参謀123『ゲッ!!!』

ミサト「あの男は私達と何の関係も無いの!嘘だと思ったら、MAGIの中のデータさらってもイイわよ!」

参謀123(やりやがったな、コノ・・・)

ミサト「へっへっへーん!」

リツコ(ふ〜。やれやれ・・・)

参謀1『それでは、我々があの男に何をしようと、ネルフは一切関知しないということだな?』

ミサト「お好きにどうぞ〜。」

プチン!

青葉「映像、戻します。」

ミサト「さ〜て、お手並み拝見。」

スクリーンには、市街地に侵入するゲンドウとそれを迎え撃つ戦自の空陸部隊の戦闘の模様が映さ

れていた。VTOLが次々とロケット弾を発射し、戦車隊の砲弾がゲンドウに降り注ぐ・・・・・・が、

MUONN!

ゲンドウが腕を一振りすると、ロケット弾が、砲弾が瞬時に爆発した。ゲンドウの身体(全裸。ただしサ

ングラス付き)には、傷一つ付いていない。

ミサト「ATフィールド!」

日向「間違いありません!測定結果は、ATフィールドの発生を示しています!!」

ミサト(一体、何者なの・・・?)

じっとスクリーンを観察していたリツコが、ゲンドウの右手を見て、ハッとして冬月と目を合わせた。

リツコ「副司令、碇司令の右手を・・・!」

冬月「オオ!」

ゲンドウの右の手の平にあるはずのものが、なかった。

冬月(これは・・・碇のヤツ、空腹のあまり、アダムまで食べてしまったのか?)

リツコ(アダムが、碇司令の右手に封印されていたアダムが無くなっている!・・・でも、たしかアノ時は

    あったわよねぇ・・・(ニマッ))

ミサト(副司令とリツコが混乱している!なぜ・・・・・・・ハッ!やはり、アレは碇司令ではない!!)

彼女が気付いたのはアダムの消失ではなかった。ゲンドウの両の手の平に在るべきもの・・・レイを救

う時に受けたやけどの傷跡が無くなっていることに気付いたのだ!

レイ「葛城三佐、エヴァンゲリオン発進準備。」

ミサト「・・・はっ?ハイ!」

ミサト(綾波新司令!相変わらず、突然現れるわね。心臓にワルイわよ、レイ・・・)

ミサト「シンジ君!よく聞いて!たぶん、あれは碇司令ではないわ!」

シンジ『・・・ミサトさん、気休めはいいですよ。』

ミサト「こんな時に、気休めや冗談は言わないわ!詳しく説明しているヒマはないけど、アレはシンジ君

    のお父さんじゃないのよ!」

シンジ『でも・・・』

エントリープラグに入ったシンジの目は、モニターに小さく映し出された父の姿を追い続けていた。

ミサト(・・・仕方ないわね。いくら頭で理解しようとしても、実際に目の前にするとなると・・・)

ミサト「司令!エヴァ弐号機を発進させます!」

レイ「・・・(コクリ)。」

ミサト「アスカ!」

アスカ『分かっているわ、ミサト!任せて頂戴!』

ミサト「サンキュー、アスカ!」

伊吹「エヴァ弐号機、発進位置に固定。」

アスカ『シンジには悪いけど、アタシはアイツに、こんなに、こんなに、こーんなに恨みがたまってるんだ

    から!思いっきりやってやるわよ!』

発令所ではミサトを始めとする一同が、『アナタの言うことは、ごもっとも』と頷いていた。

ミサト「エヴァ弐号機、発進!」

バシュン!!―――ガコンッ!!

ミサト「エヴァ弐号機、リフトオフ!」

バキョン!!

アスカ「さあー行くわよ。この変態ヒゲオヤジ!・・・」

バッシャン!

アスカ「もう一丁!」

バッシャン!

パレットガンを両手に装備した弐号機が一斉に射撃を開始する。

アスカ「コノ!コノ!コノ!コノ!コノ!コノ!コノ!」

もうもうと巻き起こった爆煙が、しばしゲンドウの姿を覆い隠した。それでもなお、アスカの弐号機は爆

煙に向けて残弾を叩き込む。

アスカ「フ――・・・やったわ!なんだかんだ言っても、所詮はタダのオヤジ使徒だったってことネ。」

青葉「爆煙の中にエネルギー反応!」

ミサト「アスカ!まだよ!」

アスカ「はっ!」

煙の中から、悠然とゲンドウが現れた。弐号機の前に立ったゲンドウは、『どうだ』と言わんばかりに両

手を腰に当て、毛の生えた胸を張り、腰を前に突き出すポーズをとった。スネ毛の生えた両足が大きく

ガニ股に開かれている。

アスカ「ギャ――!近寄らないで!!」

弐号機の特殊装甲に覆われた右足が、無防備に開かれたゲンドウの股間を直撃した。

どげしっ!

その音は、第三新東京市全域に響き渡ったという。そして、その様子を目撃した男性は一人の例外も

なく股間を押さえていたという。ここネルフ発令所でも、冬月を始めとして、日向が、青葉が、それにエン

トリープラグの中のシンジまでが、腰を引き、自分の股間を両手で押さえていた・・・。

やがて、特大のスローモーション映像のように、両手を腰に当てたポーズのまま、ゲンドウが盛大な土

煙を上げて仰向けに倒れ込んでいった。倒れた拍子にサングラスがはずれ、白目を剥いた顔が、スク

リーン一杯に映し出された。

しーんと静まり返った発令所に青葉の声が響く。

青葉「目標、完黙しました。」

新たなる使徒、碇ゲンドウ撃破。

シンジ(父さん、どこにいるんだ。早く出てきてよ!でないと、僕、カッコ悪くて、明日から学校へ行けない

     よ!)

もっともである。

 

数日後・・・。

シンジは第三新東京市郊外の集団墓地を訪れていた。彼の手には一つの花束が握られていた。

(母さんに、父さんのこと報告しなくちゃ・・・)

シンプルなデザインの墓標が整然と無数に並ぶその場所に立ったシンジは、ふと母の墓標の前に小さ

な草花が供えられていることに気がついた。それは、ついさっき供えられたような瑞々しさををたたえた、

数本の野草であった。

(まさか・・・父さん?)

シンジは慌てて立ちあがると、周囲を見回した。・・・が、そこに父の姿は無かった。

Bafuuunn!

ネルフ司令長官専用のVTOLがシンジの頭上に降下して来る。

母の墓前から1本、2本と白い草花が吹き飛ばされていった。

レイ「・・・迎えに来たわ、碇君。」

上昇するVTOLの窓から、母の墓標の前に最後まで残った小さな白いものを、シンジはじっと見つめて

いた。

 

 

『綾波司令』 第1話「ゲンドウ襲来」 終

 

 

次回予告

巨大化したゲンドウは、一体ではなかった!

次々と第三新東京市に迫り来る巨大ゲンドウ群を前に、

ミサトは、シンジは、アスカは、そして綾波司令は、

どのような決断を下すのか?

そして、失踪した碇司令の行方は?

次回、『綾波司令』 第2話 「レイ、出撃。」

ヨロシクねン!

 

 

作者からひとこと

あの・・・ここまで読んでいただいた方はお分かりと思いますが、初めにお断りしたように全然シリアス

なお話ではありません。設定も、無茶苦茶イイ加減ですし・・・。なんでアスカが元気なんだ?とか・・・

なんでリツコが独房から出てるんだ?とか・・・ネコは死んだんじゃなかったの?とか・・・他にもイロイ

ロあると思いますが・・・特にレイの誕生日なんか(汗)

この話、一体どこまで続くか分かりませんが、どうか、お気楽に・・・お気楽に読んで下さい・・・ねっ?  

 

アスカ「む、無責任だわ。」

シンジ「仕方ないよ。作者が作者なんだから・・・」

レイ「・・・作者、交代。」

作者(ギクゥッ!!)


アスカ:あの髭おやじ・・・さいってい・・・。(ーー)

マナ:そんなことより、シンジが可哀想過ぎるわ。(;;)

アスカ:なによりも最優先で、抹殺すべきねっ!

マナ:でも、シンジは帰って来て欲しいみたいよ?

アスカ:そうなのよねぇ。そこが問題よね。

マナ:やっぱり、碇司令をまともな道に戻してあげるべきよ。

アスカ:それができりゃ苦労しないわよ。

マナ:カウンセリングすればいいんじゃない?

アスカ:どうやって?

マナ:アスカが24時間付きっきりで、面倒見るのよ。(^^v

アスカ:イヤーーーーーーーーーーーーーーーー!(TOT)
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