(作者からのおことわり)

物語の背景について―――

TV第26話以降を物語の舞台としています。

ゼーレの人類補完計画はまだ発動していません。

―――が、以下は本編と大きく異なります。ご注意ください。

レイがゲンドウを追い出して、ネルフ総司令に就任しています。

アスカが、復活しています。

トウジも、元気です。

リツコさん、平気な顔で勤務しています。

いつの間にやら、第三新東京市が復興しています。

それから――下品なゲンドウが、しばしば登場します。

こんなお話でよかったら、しばしお付き合いください。(大汗・・・)

 

 

「綾波。・・・父さん、どこへ行っちゃたんだろう?」

「気になるの?・・・やっぱり、私を恨んでいる?私が、碇司令を追い出してしまったから・・・」

「別に、綾波のことが嫌いなったとか、そんなんじゃないんだ・・・。父さんは、あんな人だったし、みんな

にだって・・・ミサトさんやリツコさんや、副司令にだって愛想を尽かされても仕方がないと思うんだ。僕

だって、小さい頃から父さんに捨てられたのも同然だったし・・・エヴァに乗ることになったのも父さんの

命令一つで。僕の気持ちなんかお構いなしに・・・・・・・・・でも」

「でも?」

「僕が、今こうしていられるのは・・・・・・父さんがいたからかも知れない。」

「・・・・・・。」

「ヘンかな?こういうの・・・」

「いいえ。・・・ヘンではないわ。」

「・・・・・・」

「寂しいのね。」

「・・・・・・」

「ゴメンなさい。」

「・・・・・・生きてるよ。」

「え?」

「母さんの墓の前に、花があったんだ。」

「・・・・・・そう。」

レイ(ゴメンなさい・・・碇君。今は、まだ・・・・・ダメ。)

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 綾波司令   第2話「レイ、出撃。」

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

私は司令。

私はネルフで一番偉い。

みんなが私の言うことを聞いてくれる。

 

たとえば・・・

レイ「碇君。」

シンジ「何?綾波。」

レイ「私を・・・」

シンジ「綾波を?・・・」

レイ「・・・で呼んで・・・(ぽっ)」

シンジ「え?聞こえないよ。何って言ったの?」

レイ「・・・名前で呼んで・・・(ぽぽっ)」

シンジ「ええ?やっぱり聞こえないよ、綾波。」

レイ「・・・・・・。」

シンジ「・・・・・・。」

レイ「・・・・・・・。」

シンジ「・・・・・・。」

すたすたすた。

シンジ「あっ、綾波。どこ行くの?」

 

たとえば・・・

レイ「弐号機パイロット。」

アスカ「何よ!」

レイ「弐号機パイロット。」

アスカ「だから、何よ!!」

レイ「心を開かなければ、エヴァは動かないわ・・・。」

アスカ「とっくに動いてるわよ!アンタ、前回いなかったの?」

レイ「・・・・・・。」

アスカ「司令になっても、オツム真っ白ぶりは変わってないわね!」

レイ「・・・・・・。」

アスカ「何か言ったらどうなの?それと、出世したついでに、セリフが少ないのもどうにかしたら?!」

レイ「・・・・・・。」

アスカ「ほーんと、ファーストみたいなのが、どうして司令なのかしらネ!」

ドスドスドス・・・・。

 

たとえば・・・

ミサト「レイ?ゴメ〜ン、今忙しいの。後にしてくれる!」

 

たとえば・・・

リツコ「あら、レイ。今日は身体チェックの日じゃないわよ?・・・マヤ、3番と7番のコードを接続して!」

伊吹「はい!えっと・・・コレとコレですね!・・・OKです!次は・・・?」

 

たとえば・・・

日向「こっち、こっち!それをここに持ってくるんだ!(どんっ)・・・あれ?何かぶつかったかな?」

青葉「なにやってんだよ?早く運んで!(がつーん)・・・・・・あ、司令?どうしたんですか。床になんか

   寝転んで?」

  ・・・・・・・・・・・・・・・・

    ・・・・・・・・・・

      ・・・・

冬月「どうした?レイ君。将棋に興味があるのかね?」

 

私は、司令・・・。

 

 

日向「新横須賀湾沖に正体不明の物体出現!分析パターン、青!使徒・・・いや、再び碇司令です!!」

ミサト「第1話で倒したハズじゃなかったの?」

日向「どうやら、一体じゃなかったようですね。ついでに、このキャラを作者が気に入ったという情報も・・・」

ミサト「しゃーないわね。・・・・・・アスカ、また頼める?」

アスカ『イヤよ!』

ミサト「そんなこと言わないで・・・」

アスカ『絶対イヤ!』

ミサト(無理もないか・・・前回あんなモノ蹴飛ばした後だものネ・・・)

(注) アスカが何を蹴飛ばしたかは、第1話をお読みください。

ミサト(といって、シンジ君を出すのは、さすがにまだカワイそうね・・・・・・どうしよっかな〜?)

周りを見回したミサトの眼に、長官席にボケ〜〜〜っと座っているレイの姿が入った。

ミサト(そうだ!(ぽん!))

ミサト「新司令!お願いがあります!!」

       『新司令』

       『司令』

        『司令』

         ・・・

レイ「・・・(はっ!)・・・何?」

ミサト「新司令に、あのモノの始末をお願いできないでしょうか?」

発令所のスクリーンには、新横須賀湾から上陸した巨大ゲンドウの姿が映し出されていた。

例によって、・・・・・(自主規制中)・・・・・である。

レイ「・・・・・・。」

ミサト「やっぱり・・・ダメ?」

レイ「・・・いい。仕事だから。」

ミサト「さっすが、新司令!前の誰かさんとは大違いね!!」

     『前の誰かさんとは大違いね!!』

       『前の誰かさんとは大違いね!!』

         『前の誰かさんとは大違いね!!』

          ・・・・・・・・・・・・・

レイ「・・・いい。仕事だから。」

ミサト「そーと決まれば・・・リツコ、作戦会議よ!」

ミサトとリツコは発令所の隅っこで、何やらゴニョゴニョと相談を始めた。

  リツコ「でも、零号機は前にレイが自爆して吹き飛んでしまったわよ・・・」

  ミサト「だからね・・・・・・を・・・して・・・・・・すれば・・・・・・・」

  リツコ「まぁ!面白そうね・・・・・・それじゃあ・・・を・・・・・・したらどうかしら?・・・」

  ミサト「OK!そのアイデアいただき!・・・・・・・」

そんな声に混じって、時折、「ヒヒヒ・・・」とか「ウププッ!・・・」とかいった怪しげな笑いが漏れていた。

5分後・・・。

クルリと振り返った二人の顔は、悪事をたくらむネコそっくりに見えた。

ミサト「アスカ!・・・・・・を持って上がってらっしゃい。」

アスカ『そんなもの、何に使うの?』

ミサト「いいから、持ってきて!」

アスカが来るまでの間に、リツコは自分の部屋に行って、ゴソゴソと探し物を始めた。

リツコ「・・・・・・あった!これだわ!!」

彼女の指先には、一葉の写真が挟まれていた。

やがて、制服に着替えて手に紙袋を持ったアスカがいぶかしそうな顔をして発令所に現れると、さらに

マヤを加えて、女性だけの打ち合わせが始まった。

アスカ「何?」

伊吹「何ですか?」

ミサト「実はね・・・(ごにょごにょ)」

伊吹「え――!そんな事するんですかぁ?!」

アスカ「へ――。面白そうじゃない!やりましょ!!」

 

ミサトがニッコリ微笑んで、長官席のレイに手招きをした。

ミサト「司令、こちらへ・・・」

いつの間にか『新』が取れている。

レイ「・・・何?」

ミサト「ささ、司令!」

レイを連れてミサト、リツコ、アスカ、マヤが別室へ入って行く。

アスカ「見ちゃダメよ!」

顔を出したアスカがそう言うと、バタンッと扉が閉ざされた。

 

日向「いったい何をしているんだろう?」

日向と青葉が聞き耳を立てて別室のドアににじり寄った。

冬月「そうだ。シンジ君も呼んでやれ。」

冬月が年長者らしく(?)妙なところに気を利かせる。

 リツコ「これでいいんじゃない?」

 ミサト「さっすがリツコ!イイ感じ。」

 マヤ「キレイな・・・だったんですね・・・」

 アスカ「ふーん、こんな風になるんだ・・・」

日向「?」

青葉「?」

冬月「?」

シンジ「あれ?みんな何をしてるんですか?」

日向・青葉・冬月「シ――ッ!!」

ちなみに、この間ほったらかしにされた巨大ゲンドウは、戦自による必死の防戦もなんのその、強羅

絶対防衛線を無傷で突破していた。

・・・・・・・・・・

1時間後、ドアが開いて女性陣がぞろぞろと出てきた。レイを隠すようにして横一列に並ぶと、

ミサト「ジャジャ――ン!どう?見て!!」

サッと女性達が左右に分かれた。男たちの目が一斉にレイに注がれる。――が、そこに立っていたのは

シンジ「母・・・さん?」

シンジの母、碇ユイだった。

ただし、シンジの記憶に較べると、十歳ほど若い。白いワンピースを着たその姿は、可憐な一輪の花

を思わせた。その少女の瞳の色が赤であり、少女の着ているワンピースがアスカの私服であることに

シンジや冬月達が気付くまで、軽〜く30秒が経過していた。水色だった髪は栗色に変わり、唇には、

うっすらとマヤのルージュがひかれていた。

ミサトに促されて、ユイ(レイ)がにこっと微笑んだ。

シンジ(かわいいや・・・母さん・・・いや、綾波・・・いや、母さん・・・いや、綾波)

日向(ぼけ―――)

青葉(ぼけ―――)

冬月(こ、これは・・・碇ならずともタマランぞ!)

口を開けてレイに見とれる男どもを満足げに見回したミサトは、

ミサト「では、司令。お願いします!」

深々とレイに向かって一礼した。

レイ「任せて・・・。」

 

冬月「一体、どうするつもりだね。葛城三佐?」

ミサト「あの物体―仮に『使徒G』と呼称します―は、外見から判断して、碇元司令の情報を大量に取り

    込んでいるものと推測できます。」

冬月「うむ。」

ミサト「したがって、コピーされた情報が肉体以外にも及んでいる、という可能性は充分にあると考えら

    れます。」

冬月「なるほど!それで・・・」

ミサト「ハイ。この作戦、きっとうまくいきます!」

 

戦自による防衛線を突破したゲンドウ―使徒G―が、第3新東京市街に侵入してきた。メインストリート

を中心部に向けてゆっくりと歩いてくる。全裸でなければ、右手をズボンのポケットにでも入れてそうな

雰囲気である。

―――と

ゲンドウの進行方向正面にあるビルの屋上に、碇ユイに変身したレイが現れた。丁度、ゲンドウの目

の高さに相当するその兵装ビルの屋上に立って、レイはメインストリート上のゲンドウに、真っ直ぐに

身体を向けた。

すると・・・ゲンドウの動きが止まった。

さきほどまでの余裕のポーズは消え、驚きに目を見開いている。

しばらくして、不機嫌そうに結ばれていた口元が動き、なんと「言葉」が発せられた。

ゲンドウ『ユ・・・イ?』

 

リツコ「しゃべっ・・・た!」

ミサト「よっしゃああ!!」

ミサト(レイ、頼んだわよ!)

 

レイ「アナタ。」

声まで、そっくりである。(^^;)

ゲンドウ『ユイ?』

ゲンドウが、ユイ(レイ)の立つビルに向かって、足を1歩踏み出した。

レイ「・・・アナタ。」

祈るように両手を胸の前で組んだユイ(レイ)が、呼びかける。

ゲンドウ『ユイ!』

さらに1歩踏み出すゲンドウ。

 

ミサト(もう一息だわ・・・)

ミサト「伊吹二尉、準備はいいわね?」

伊吹「OKです!」

 

レイ「ア・ナ・タ。(にこっ)」

クルリンッと背を向けたユイ(レイ)が、今度は後ろ手を組んだまま、ワンピースの肩越しにゲンドウに

流し目を送った。

ゲンドウ『ユイ――!!』

ゲンドウの右足が、11番ルートの射出口に掛かった・・・

 

ミサト「今よ!!」

伊吹「ハイ!・・・・・・アッ!!」

エヴァ射出口の開閉スイッチにかけられたマヤの指が、動く寸前で止まった。

ミサト「!!!・・・・・・レイ!!」

 

素早く伸ばされたゲンドウの右手が、屋上のレイを捕えていた。

レイ「・・・・・・イタイ。」

レイが苦痛に顔をゆがめる。

小鳥のようなレイを握り締めたまま、ゲンドウはもと来た方向に戻り始めた。

 

ミサト「このままでは、レイが・・・。シンジ君!直ちに初号機で発進して!!」

シンジ「ハ・・・・ハイ!!」

 

ゲンドウの行く手の道路が口を開け、初号機が立ち塞がった。

シンジ「父さん!綾波を離すんだ!!」

レイ「(ハッ!)碇君!」

 

じっと初号機を見つめたゲンドウは、手の中のレイを、そっと隣のビルの屋上に降ろすと、初号機の方

に向き直った。

シンジ「今だ!」

初号機がパレットガンを構える。

シンジ(あれは、父さんじゃないんだ!父さんの姿を借りた使徒なんだ・・・)

レイ「待って!!」

シンジ「?・・・綾波。」

レイ「撃つのは待って、碇君・・・。」

 

ミサト(レイ・・・・・)

発令所の人々も、黙ってスクリーンを見守っている。

 

ゲンドウ『シン・・・ジ。』

シンジ「父さん?」

ゲンドウ『シン・・・ジ。母・・さん・・を・・・頼・・ん・だ・・・ぞ。』

レイが、はっとゲンドウの顔を見た。

ゲンドウ『いい・・な。・・・シン・・ジ。』

 

次の瞬間、ゲンドウの身体は、柔らかな粘土状の物体に変化し、第三新東京市の大地に崩れ落ちた。

ゲル状になって広がる元ゲンドウの肉体の上に、茶色のサングラスだけが残されていた・・・。

 

シンジ(今のは、父さんじゃなかったはずだ。なのに、どうしてこんな・・・)

レイ「・・・・・・。」

 

伊吹「使徒G、消滅しました・・・。」

ミサト「・・・作戦、終了ね。」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

リツコ「あら?レイ、もう作戦は終わったのよ?」

ミサト「もう少し、あの恰好でいたいんだって・・・・。お疲れ様!司令!・・・良く似合ってるわヨン!!」

 

アスカ「優等生にしては、よく頑張ったんじゃない?ま、アタシの活躍には遠く及ばないけどネ!」

 

シンジ「あっ・・・綾波。(ぽっ)」

レイ「何?」

シンジ「う、ううん。何でも・・・ないんだ!(ぽぽっ)」

レイ「そう・・・。」

 

私は・・・・

 

ミサト・リツコ「「レイ!」」

シンジ「綾波!」

アスカ「ファースト!」

 

      ・・・・司令。

 

 

『綾波司令』 第2話「レイ、出撃。」 終

 

 

次回予告

変身したレイに、シンジは母の面影を見る。

しかし、そんなシンジに、アスカは内心の苛立ちを隠しきれなかった。

少年と少女、二人の心がすれ違う。

そして、第三新東京市に新たな使徒が出現した。

次回、『綾波司令』 第3話 「アスカ、出撃。」

ヨロシクねン!

 

(ふたたび、おことわり)

「次回予告」と次回のお話とのシンクロ率は、激しく変動します!


マナ:綾波さん。司令になったのに、今迄と同じ扱いなのね。

アスカ:ハン。所詮ファーストなんてそんなもんよ。

マナ:でも最後はしっかり活躍してたわよ?

アスカ:顔がユイさんに似てるってだけよ。ファーストの力じゃないわ。

マナ:声ならわたしもユイさんに似てるんだけどなぁ。

アスカ:ん? そういえばそうね。どうしてかしら?

マナ:さぁ・・・。

アスカ:今回は何事も無く片付いたけど、また”G”来るのかしら?

マナ:対策方法もわかったことだし、綾波さんがいれば大丈夫なんじゃない?

アスカ:問題はシンジよねぇ。

マナ:なんだか不幸が2本足で歩いてるって感じだもんね。なんとかしてあげなくちゃ。

アスカ:しゃーないわねぇ。アタシの愛で包み込んであげようかな。

マナ:『アタシの脂肪』での間違いじゃないのぉ?

アスカ:ちょとっ! アンタっ!(ーー#
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