ネルフから・・・メリークリスマス

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ミサト「今年のクリスマスイヴまであと10日!みんな、出し物と相手は決まった?」

 

アスカ「ハーイ、ミサト!バッチリよ!シンジ、いいわね?!」

シンジ「えっ?何が・・・」

アスカ「アンタ、バカァ?話、聞いてなかったの?アンタはアタシと組んでイリュージョンマジックをするのよ!」

シンジ「イリュージョンマジックって・・・あの、車を消したり、人間がコンクリートの壁を抜けたりするやつ?」

アスカ「そう!」

シンジ「へー、アスカ、そんなのできるんだ・・・」

アスカ「アンタがするのよ!!」

シンジ「え・・・えぇっ!そんなの、できるわけないよ!」

アスカ「大丈夫よぉ。タネもシカケもあるんだから、10日もあれば、できるようになるって!」

シンジ「そうかなぁ・・・。それで、アスカは何をするの?」

アスカ「モチロン!マジックの舞台に咲く一輪の花!きらびやかな衣装を身にまとったヒロイン!!

    スポットライトを浴びて皆の視線を独り占めよ!・・・そうと決まったら、早速練習!行くわよ、

    シンジ!!」

シンジ「イタタタ・・・。アスカ、耳引っ張らないでよ!」

 

加持「じゃ、オレは葛城と・・・」

ミサト「ちょっと待って!なんであたしがアナタと組まなくちゃいけないの?リツコと組みなさいよぉ!」

リツコ「遠慮しとくわ。」

加持「オレじゃ、不満か?」

ミサト「・・・・・・・ヘンなコトしないでしょうね?」

加持「何言うんだよ。オレがそんなことするような男に見えるか?」

ミサト「見えるから言ってんの!何かしたら承知しないわヨ!」

加持「そりゃ、誤解だよ。」

ミサト「ゴカイも、6階もないの!・・・イイわ!アナタと組んだげる。でも、ネタはあたしが考えるからね!イイ!?」

加持「はいはい、お姫サマ・・・」

ミサト「『はい』は、1回だけェ!!」

加持(うっ、聞こえてたのか・・・)

 

リツコ「副司令は、何をなさるんですか?」

冬月「うむ。実は・・・こう見えても、昔、芝居に凝ったことがあってな。」

リツコ「あら、初耳ですわ。」

冬月「誰にも言わんかったからな。碇でさえ、知るまい。」

リツコ「ユイさんもですか?」

冬月「こ、これ。年寄りをからかうものじゃないよ。」

リツコ「(クスクス)ゴメンなさい。楽しみにしてますわ。」

冬月「そういう君は、何をするのかね?」

リツコ「ヒミツです。」

冬月「相手は子供なんだから、あまり危険なモノはどうかと思うが・・・」

リツコ「副司令。いったい、私をどのような目で普段見ておられるのですか?」

冬月「ははは、スマン、スマン。つい口が滑ってしまった。」

リツコ「副司令!」

 

冬月「・・・で、碇、お前はやはりアレでいくのか?」

碇「ああ。」

冬月「大丈夫か?前に一度失敗しているだろう?」

碇「問題ない。」

冬月「今回はシンジ君も一緒だ。父親として、恥ずかしい所は見せられんぞ。」

碇「・・・ああ。」

 

青葉「それじゃ、オレ達三人組は、例のヤツでパーっと派手にいこうか?」

日向「オーケー!いつものヤツだな!」

伊吹「楽しみねェ。私、どんな衣装を着ようかしら?」

 

ワイワイ、ガヤガヤ、ゾロゾロ・・・・・・

 

レイ「・・・・・・・・・。」

 

ペンペン「・・・・・・・。」

 

レイ(見下ろし↓)

 

ペンペン(見上げ↑)

 

レイ(じ〜〜〜〜)

 

ペンペン(じ〜〜〜)

 

レイ(コクン)

ペンペン(コクッ)

 

レイ(すたすたすた)

ペンペン(とてとてとて)

 

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特務機関ネルフ主催 子供クリスマスパーティー

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トウジ「さぁー、良い子のみんな!集まっとるか?ワイは、本日司会を仰せつかった鈴原トウジや!」

  子供達「関西弁!」「関西弁!」「へー、あれが関西人?」「関西人がいるぞ!」「ダサ〜イ・・・」

トウジ(うぅ・・・我慢や。我慢!)

ケンスケ「同じく、今日司会をする相田ケンスケです。よろしく。」

  子供達「あー!いつもプラモ屋にいる学生だ!」「えー!あんな大きいのにおもちゃ買ってるの?」「オタクだ!!」

ケンスケ(ぬぬぬ!ボクはマニアだ!マニアと言え!!)

ヒカリ「そして、私が洞木ヒカリです。」

  子供達「あれ?普通だ。」「普通だ。」「普通だ。」「クラス委員長なんかしてるんじゃない?」「きっとそうだ!」

ヒカリ(な、なんかやりにくい・・・)

 

トウジ「ほな、早速1組目の出し物に行ってみよか〜?」

ケンスケ「トップバッターは、ネルフが誇るオペレーター三人組の登場です!」

ヒカリ「いつもネルフを陰で支えているおにいさん・おねえさんが、今日は表舞台に登場します!みんな、拍手ー!!」

 

  パチ、パチ、パチ・・・・・

 

ロンゲの兄ちゃんがエレキを携えて現れた・・・。

 

ズンッ!ジャ―――ンッッ!!

青葉「イヤッホ――!

ズンズン、ジャーンジャ、ズンズンッ!ジャカジャカジャカジャカジャ―――ン!!くゎゎ〜〜んん

青葉「ノってるか―――いっ?

 

  「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

続いて、黒縁眼鏡の兄ちゃんが、ドラムセットを載せた台車をゴロゴロ押しながら現れた・・・。

 

ドンタクッ!ドンタクッ!ドンタクッ!ドンタクッ!ドンタクッ!ドンタクッ!ドンタクッ!ドンタクッ・・・ドドンッッ!!

日向「イェ――イ!

 

  「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

最後に、ショートカットのお姉さんが現れて、舞台中央に立つ・・・。

 

青葉「・・・ワン、トゥ!」

 

ジャン ジャン ジャン ジャン ジャン ジャン ジャン ジャン・・・

チッタク チッタク チッタク チッタク・・・

 

伊吹「走れそりよ〜 丘の上は〜 雪も白く〜 風も白く〜 

 

   ・・・パチ・・・パチ・・・・

 

伊吹「笑い声を〜 雪にまけば〜 明るい光の 花になるよ! 

 

   パチ・・パチ・・・パチ

 

伊吹・日向・青葉「ヘイ!

 

   「・・・・・ハッ!! 

 

伊吹・日向・青葉「ジングルベル ジングルベル 鈴が鳴る〜!

       鈴のリズムに光の輪が舞うジングルベル

     ジングルベル・・・ 

 

   パンッ!パンッ!パンッ!「ジングルベ〜ル!ジングルベ〜ル!・・・

 

伊吹・日向・青葉「イェ〜イ!!

 

  子供達「イェ〜イッ!!!

 

青葉「センキュー!

 

ジャカジャカジャカジャカジャカジャカジャカジャカ、ズンズチャッチャ、ズンズンチャッ、ズンズチャッチャ、ズンズンチャッ・・・

 

伊吹「バイバーイ!(チュッ)

 

タッ、タッ、タッ・・・  テク テク テク・・・  ゴロゴロゴロ・・・

 

  子供達「バイバ――イッ!!」  パチパチパチパチパチ・・・ヤンヤ、ヤンヤ!

 

 

ケンスケ「なんだか、イキナリ盛り上がっちゃったな!」

トウジ「最初はどうなることかと心配したケド、・・・さすがやな!特に、あのマヤさんのミニスカートが・・・」

ケンスケ「そうそう!」

バキツ!ゴキッ!

ヒカリ「子供の前で何を言っているの!・・・さ、みんな!次は、エヴァンゲリオンに乗って、みんなを悪い

    敵から守ってくれている、カッコイイおにいさんとおねえさんが登場するわよ!再び、拍手ー!」

 

  子供達「ワーッ!」 パチパチパチパチパチ!

 

舞台袖から、タキシード姿のシンジと鮮やかなレオタード姿のアスカが現れた。

 

シンジ「あの・・・・・碇シンジです。」

 

  子供達 ドドドドッ!!

 

アスカ「アンタ、バカァ?!イキナリ自己紹介してどうすんのよ!みんな、ズッコケちゃったじゃない!」

 

  子供達「キャハハ・・・」

 

シンジ「ゴメン・・・」

 

  子供達「アハハ」

 

アスカ「バ、バカ!こんな所であやまらないでよ!!まるで、アタシがいつもアンタをイジメてるみたいじゃないの!」

 

シンジ「ゴ・・・ゴメン。」

 

  子供達「ギャハハ」

 

アスカ「だから、あやまらないでって言ったでしょ!みんな、指差して笑ってるじゃなーい!」

 

  子供達「ゲラゲラ・・・」

 

シンジ「う・・・うん。どうしよう、アスカ?」

 

アスカ「こっちが聞きたいわよ!!」

 

  子供達「アハハハハハハハ」

 

シンジ「じゃ、もう一度初めから・・・。あの・・・・・・・・碇、シンジです。」

 

アスカ「おんなじじゃなーいー!その上、さっきより人見知りしてるじゃないのぉ!!」

 

  子供達「アハ、アハ、・・く、苦しい」

 

シンジ「あ、大丈夫?呼吸が苦しそうだけど・・」

 

アスカ「バカァ!!あれはアタシ達を見て、笑い過ぎて苦しんでいるのよ!」

 

シンジ「あ・・・そうか。」

 

  子供達「し、死ぬ・・・。ヒー、ヒー」

 

アスカ「もう!せっかくの準備がメチャクチャじゃない!どうしてくれんのよ!?」

 

シンジ「(・・・ムッ)そんなこと言うけど、アスカは何もしてないじゃないか?!練習したのは、全部僕だよ!」

 

アスカ「(・・・ムッ)そんなことないわよ!アタシだって、ちゃんとシンジの練習手伝ったじゃない!」

 

シンジ「僕の横で、お菓子食べながら、見てただけじゃないか!」

 

アスカ「男のクセに細かいこと言うわね!とにかく、アタシは最後まで練習に付き合ったんだからアリガタイと思い

    なさいよ!」

 

シンジ「座って見てるだけなら、誰だってできるよ!・・・これなら、綾波と組んだ方がマシだったな(ボソッ)。」

 

アスカ「ぬぁんですってぇー!!アタシみたいなウルトラ美少女が、アンタみたいな冴えないネクラ男に付き合って

    あげてるだけでも涙流して感謝されて当然なのに、よりによってあの能面女とこのアタシを較べるなんて・・・

    ア・タ・マくるわねー!!」

 

シンジ「何だよ!いつだってアスカはそうやって自分のことばかり・・?」

 

  とことことこ・・つんつん 子供A「おにいさんとおねえさん、恋人同士なんでしょ?

                     だって、喧嘩するほど仲が良いっていうもの。」

 

シンジ「ち・・」

 

アスカ「違うわよ!」

 

  とことことこ・・ 子供B「おにいさんも、大変ね。こんな子供みたいなおねえさんと付き合っていくの。」

 

シンジ「・・・・やっぱり、そう思う?」

 

アスカ「アンタ、なに子供相手に真剣に返事してんのよ!」

 

  子供A「おねえさんも、もっと素直になりなよ。」(ぽんっ)

 

アスカ「ほっといてよ!子供のクセにー!」

 

 

舞台袖では・・・

ミサト「あちゃー!何やってんの、あの二人?」

リツコ「マジックショーは、どこへいったのかしら?」

冬月「碇・・・」

碇「・・・何も言うな、冬月。」

 

 

アスカ「もう、イヤ!アタシ、帰る!!」

 

シンジ「あ、待ってよ、アスカ!まだ、マジックが・・・」

 

アスカ「一人でやってなさいよ!!」

 

スタスタスタ!・・・・

 

シンジ「そんな・・・(仕方ないなぁ)」

 

ズンチャカ、ズンチャカ、ズンチャカ、ズンチャカ・・・・チャラララララ〜ン・・・

 

シンジ「じゃ、今からこの水槽の中の金魚を消すよ!・・・・・・・ハ――イ!」

 

  子供達「わー!」 パチパチパチ・・・

 

シンジ「そして、もう一度この布を掛けると・・・・・・・・ハイッ!!」

 

  子供達「すごーい!」 パチパチパチパチ・・・

 

シンジ「それじゃ、次に、僕がこの後ろの大きな水槽の中に手錠をしたまま入るから、見事脱出できたら

    盛大な拍手をしてね!」

 

  子供達「はーい!」

 

シンジ「よいしょっと・・・(一人でするの大変だなぁ・・)。じゃ、入るね。(どぷ〜ん!)」

 

  子供達「入っちゃった・・・」「おにいさん、だいじょうぶかなぁ・・・」「カーテンがじゃまで中見えないや・・・」

 

ジャカジャカジャカジャカジャカ・・・・・・・・・・・・・ジャ―――ンッ!!

 

アスカ「―――!!!

 

  子供達「・・・・・・・・・・・・・・」

 

アスカ「拍手はぁ?」

 

  子供達「ワ―――ッ!!」 パチパチパチパチパチパチ・・・・・!

 

シンジ「ガボゴボゴボ・・・・(だ、誰か・・・・!)」

 

 

ヒカリ「セカンドチルドレンとサードチルドレンのお二人でした!」

トウジ「ある意味、恐ろしい出し物やったな・・・」

ケンスケ「大丈夫、碇は不死身さ。」

ヒカリ「では引き続き、これまたネルフが誇る名コンビ、加持リョウジ・葛城ミサトさんの登場です!」

トウジ「ウゥッ、ワイのミサトさんが・・・」

ボクッ!

ケンスケ「カメラ、カメラ・・・」

 

 

テケ、チャンリン、チャンリン・・・・

 

  子供達「あっ!」「なに、アレ?」「ヘンなの〜。」 ざわざわざわ・・・

 

加持「か、葛城ィ〜・・・」

ミサト「(もごもご)文句言わないの。」

 

加持「し、しかし・・・オレ一人さらし者だぞ!」

ミサト「(もごもご)何するか決めるのはあたしだって、最初に言ってたでしょ。」

 

加持「だ、だがな・・・」

ミサト「(もごもご)いまさら文句言わないの!さ・・・始めるわよ。」

 

加持「(こうなりゃ、やぶれかぶれだ!)や、やあ!みんな!」

 

  子供達「アハハ、おかし〜い!顔と手がバラバラ・・・」

 

―――そう、いま二人が演じているのは“二人羽織”である。もちろん、加持が「前」、ミサトが「後ろ」。

    強引にミサトを誘ったまではよかったものの、トンデモない逆襲に逢ってしまったのだった。当然、

    年中エビチュ漬けのミサトが練習などするハズもなく、“ぶっつけ本番”で今日を迎えたのである。

    哀れ、加持リョウジ。このまま舞台の藻屑と消えるのか・・・・

 

加持「な、なんか、今日はアツイなあ〜・・」

ミサト「(ごそごそ・・・?こっちかな・・・あった!)ぎゅっ!」

 

加持「うおう!(ひそひそ)葛城・・・ドコつかんでんだ!」

 

  子供達「アハハハ・・・」

 

ミサト「(ありゃりゃ?脇腹のお肉だったのネ・・・コイツ最近お腹出てきたのかしら?え・・・・・と、あった、あった)

    はいよ。(ぱたぱた)」

 

加持「あ、やっと涼しくなってきたな・・・。(次はコレかよ・・・)おっ!こ、こんな所にミカンがあるぞ!

    た・・・食べようかなぁ〜?」

 

  子供達「キャハハ、声が裏返ってるぅ。」

 

ミサト「(・・ぽいっ)(たしかミカンのお皿は・・・・・あ、あった!・・・・・・・・・・と、届かない)ん〜〜〜!」

 

加持「(ぐいぐい)こ、こら、押すな!(ぐいぐい)危ないよ。押すなったら!!うっ!(ゴキッ!!)」

 

  子供達「アハハ、一人でヘンなこと言ってる!」「あっ、腰が今『グキッ』って・・・」「動かないぞ。」

 

ミサト「(と、届いたぁ〜〜!・・・・ん?)チョット!加持君、何やってんのよ?早く起きなさいよ!」

 

加持 ぐで〜〜〜

 

ミサト「加持君たら!(ゆさゆさ)・・・・しょうがないわね。こうなれば、あたしひとりで・・・」

 

加持 むくっ!

 

  子供達「わっ!お、起き上がった!」「頭がグラグラしているぞ。」「ゾンビだ!」

 

ミサト「そして、ミカンを・・・・・・う、・・・見えないと案外難しいわね。」

 

むきむき

 

  子供達「「あ・・・ミカンむいてる。」「でも、ぐったりしてるよ?」

 

ミサト「む、むけたわ!・・・・そんじゃ、コイツを口の中へ・・・」

 

がぽっ!

 

ミサト「さあ、食え!食いなさい!!(ギュ〜〜!)」

 

  子供達「スゴーイ!」「あんな大きいミカンを丸呑みだぁ!」

 

加持 サア――・・・

 

  子供達「オジさんの顔、どんどん青くなってるよ。」

 

加持「(サアー・・)・・・う!ゲホッ!!ゲホ!ゲホ!・・・何すんだ、葛城!死んじまうじゃないか?」

ミサト「ア・・ラ、気がついたの?じゃ、お次はコレよん!」

 

加持「わ!アチッ!アチチチッ!!な、何だこれは?!」

ミサト「第3新東京市名物『ふかふか蒸したて中華まん』よ!ついさっき、マヤちゃんに蒸し上げてもらったの。

    ほら、ア――ンして・・・」

 

加持「ア――ン・・・ワッ!な、中味だけ押しつけるな!ア、アチ!」

ミサト「男でしょ?これくらい辛抱しなさいよ!次は、コレ。ミサト特製『ふかふか蒸したてカレーまん』よ!!」

 

加持「!!お、オレ・・・帰る。」

ミサト「なにアスカみたいなコト言ってんの!この日のために、あたしがどれほどの手間をこのカレーに注ぎ

    込んだか・・・」

 

加持「わ、悪いな、葛城・・・。ちょっと、今日は腹の具合が・・・(スック)」

ミサト「ア・・・ヤ!チョット、急に立たないでよ!」

 

  子供達「今度は足が四本にふえた・・・」

 

ガッ!

加持「わっ!」

ミサト「やっ!」

 

ぐらぐら・・・・・どっし――ん!

 

  子供達「わ――。女の人がいたんだぁ!」「アハハ!おもしろーい!」 ケラケラ!

 

加持「あたたた・・・」

ミサト「イツツツ・・・」

 

加持「だ、大丈夫か、葛城?」

ミサト「加持君こそ、大丈夫なの?」

 

アスカ「二人とも、カッコワル――イ。」

 

 

ヒカリ「さすがネルフが誇る名コンビ!見事な呼吸でした!!」

トウジ「本気で言うとんのかぁ?」

ケンスケ「ころぶタイミングはバッチリだったけどね。」

ヒカリ「それでは、次に行ってみましょう!」

ケンスケ「次は・・・な、なんと!特務機関ネルフの副司令長官であられる冬月コウゾウ先生のパントマイムです!!

      これは、プレミアものだぁー!」

トウジ「ほな、冬月センセイよろしゅう。」

 

―――舞台に、一人のピエロが現れた。ユーモラスな丸く赤い鼻と、対照的に哀しさをたたえる作り笑

いの目。頬に描かれた水色の大きな涙。派手な色使いの水玉模様に彩られたダブダブの白い衣装を

身にまとったその道化は、子供達に向かって、片手を優雅に振りうやうやしく一礼すると、次々といろい

ろな人物を演じてみせた。舞台の上に座り込んで小さな子供がするように駄々をこねて見せたり、ステ

ッキを突いて散歩する紳士になって見せたり、あるいは公園のベンチで恋人と語らう初々しい乙女を演

じて見せたり・・・。子供達の目は、無言で人々を演じ続けるピエロを夢中で追っていた。そして、最後に

安楽椅子に腰掛けた老人が静かに息を引き取った時、観客席はしんとした空気に包まれ、次いで元気

良く立ち上がったピエロが、にっこりと微笑んで再び優雅に一礼すると、会場は割れんばかりの拍手に

包まれた。

 

冬月「ありがとう、みんな。いつまでも元気でいるんだよ。」

 

 

トウジ「こりゃ、タマゲたなぁ・・・」

ヒカリ「冬月副司令って、スゴイ・・・」

ケンスケ「格が違うってカンジだな。」

 

トウジ「さ、いつまでも感心しとったらアカン!まだまだ後がつかえとるんやで!」

ケンスケ「え・・・と、次は?」

ヒカリ「はい。次は、ネルフが世界に誇る天才科学者!赤木リツコ博士の登場です!」

トウジ「おぉ!続々とレベルの高そうな人が出てくるやないか!」

ケンスケ「さすがは、ネルフ!だな。」

ヒカリ「題して、『リツコの実験室』。」

トウジ・ケンスケ「え゛っ?」

 

コッ、コッ、コッ、コッ・・・・・・・

 

リツコ「特務機関ネルフ技術開発部技術1課の赤木リツコです。今日は、みなさんにネルフが開発した

    新技術の一端を披露しましょう。・・・・・・・・音楽スタート!」

 

ジャンジャーンジャカジャカ、ジャンジャンジャカジャカ、ジャンジャンジャカジャカ・・・・

 

陽気な音楽にのって現れたのは、網タイツにタキシード、シルクハットをあみだに被った綾波レイが1人、

2人、3人、4人、5人、6人・・・・・・・

 

  子供達「ゲゲッ!」

 

舞台の端から端までズラリと並んだダミーレイちゃんズは、うつろな笑いを浮かべながら、一斉に脚を上

げ下げ・・・・・・・・

 

  子供達「な、なんかこわい・・・」

 

そんな子供達の反応にはお構いなしに、肩を組んだダミーレイちゃんズは、一斉に首を右から左へクリッ!

続いて身体の向きを変えると、今度は一斉に首を左から右へクリッ!その間も、リズムに合わせて元気に

脚を上げ下げ、イッチニイ、イッチニイ・・・・・・・・

 

  子供達「うぇーん!」「コワイよー」「わーん」

 

・・・・会場は徐々に恐怖のルツボと化していった。

 

それでも、ダミーレイちゃんズはイッチニ、イッチニ・・・・

 

リツコ「そう!イイ感じよ。(ぱんぱん)脚を上げてぇ、1、2、1、2、そこで正面を見てニッコリ笑う!ハイ!!」

 

ダミーさんたち  ニタ―――・・・・

 

  子供達「ギャー!!」「助けてー!」バタバタバタ・・・!

 

リツコ「アラ、おかしいわね?この素晴らしい科学の勝利が分からないのかしら?・・・・・(ハッ!)いけない!

    もう、こんな時間!早く彼女達をLCLに戻さないと□※△てしまうわ!みんな!帰るわよ!!」

 

ダミーレイちゃんズ 「フフフ・・・」「フフフ・・・」「フフフ・・・」・・・ ゾロゾロゾロ・・・

 

 

ヒカリ「な、何だったの・・・今の?」

トウジ「何も見んかった。ワイらは、何も見んかったんや・・・」

ケンスケ「そういう事にしておいた方が、良さそうだな・・・(でも、ビデオは永久保存版にしておこう!)」

ヒカリ「みんなー!もう大丈夫だから席に着いてー!」

 

  子供達「あーこわかった!」「おばけ屋敷より、こっちの方がずっとこわいよねぇ・・・」 ガチャ、ガチャ・・・。

 

ケンスケ「それでは、気を取り直して、ラストから2番目の出し物に行ってみましょう!」

ヒカリ「今度は、素敵なおねえさんとかわいいペットの登場です!」

トウジ「おっ!・・・と言うことは、いよいよファーストチルドレン綾波の登場やな!」

ケンスケ「待ってました!みんな、カメラを用意して置けよ!」

ヒカリ「それでは、綾波さん、ペンペン、頑張って!」

 

 

すたすたすた・・・  とてとてとて・・・

 

  子供達 ザワ・・・「さっきのお姉さんたちと同じ顔だ・・」「イヤ・・・」 ザワザワザワ・・・

 

ペコリ・・・  ペコッ・・・

 

レイ にっこり

 

  子供達「あ・・・・違う。」「さっきの人たちと違うよ!」「ほんとだ!」「うわーきれい・・・」

 

ペンペン「クヮッ!」

 

  子供達「か〜わい〜!」「こっち見てる!」「オーイ。」 ワイワイワイ・・・

 

レイが、スッとペンペンを持ち上げ、自分の口を隠すようにペンペンを子供達に向けた。

 

ペンペン「ミンナ、コンニチワ!」

 

  子供達「しゃべった!」「ペンギンがしゃべったよ!」「うそ!」

 

ペンペン「ボクト、オハナシシヨウ!」

 

  子供達「『お話しよう』って言ってるよ!」「しよう!しよう!」「ペンギンさんとお話!」

 

ペンペン「ボクノ、ナマエハ、『ペンペン』デス。ミンナノ、オナマエハ?」

 

  子供達「『ペンペン』だって。」「かわいい〜。」「あたし、ミユキ!」「ぼく、コウジだよ!」「あたしは・・・」

 

ペンペン「ウワー、ミンナ、ステキナナマエヲモッテルンダネ!」

 

  子供達「おねえさんは?」「そうだ。後ろのおねえさんの名前は?」「おしえてー。」

 

ペンペン「・・・・・・・・・」

 

  子供達「ねえねえ、おしえてよー。」

 

レイ「わたし・・・・。わたしは・・・・綾波、レイ。」

 

  子供達「かっこいー。」「なんだか、とってもキレイな名前!」「おねえさんに、ピッタリだね!!」

 

レイ「(ぽっ)あ・・・・ありがとう。」

 

・・・・スッ

 

ペンペン「トコロデ、ミンナ。ミンナノ、イチバンスキハヒトハ、ダレ?」

 

  子供達「・・・・・・・・・」

 

ペンペン「ドウシタノ?ミンナノ、イチバンスキハヒトハ、ダ〜レ?」

 

  子供達「・・・・・お母さん。」「あたしは・・・・お父さん。」「お父さん・・・」「あ母さん・・・・・」 グス・・・ヒック・・・

 

ペンペン「・・・・・・・・・」

 

  子供達「おとうさーん。うぅぅ・・」「あかあさーん、どこに行っちゃったのー。」「わーん・・・あかあ・・さん・・」

      「あいたいよー!あかあさーん・・・」「あーん・・・あーん。」・・・・・・・・・・・

 

ペンペン「・・・・・・・・・」

 

レイ「・・・・・・・・・」

 

 

ミサト「頑張って!レイ。」

アスカ「ファースト、しっかり!」

ヒカリ「綾波さん・・・」

碇「(ぐぐっ)レイ!・・・・」

シンジ「(ぐぐっ)綾波!・・・」

 

みんなが、舞台の袖からレイとペンペンを応援していた。

 

 

ペンペン「・・・・ボクト、オンナジダネ。ミンナ。」

 

  子供達「・・・・えっ?」

 

ペンペン「ボクハ、ホントウハ、モウ、シンジャッテルハズナンダ。」

 

  子供達「・・・・・・・」

 

ペンペン「ジッケンヨウニカワレテイタボクニ、トモダチハ、イナカッタ。」

 

ペンペン「オトウサンモ、オカアサンモ、シラナイ。」

 

ペンペン「キョウダイガイタノカモ、ワカラナイ。」

 

  子供達「・・・・・・かわいそう。」「ぼくたちと、いっしょだ・・・」

 

ペンペン「ソシテ、ジッケンノタメニコロサレソウニナッタボクハ、ヤサシイオンナノヒトニ、スクワレタンダ。」

 

 

ミサト「(うぅっ)ペンペン!!・・・(ぐしゅぐしゅ!)」

アスカ(しゃべってんのは、ファーストよ!・・・)

 

 

ペンペン「ダカラ、ホントウナラ、ボクハ、ココニイナイハズナンダ。」

 

ペンペン「・・・ウシロノ、オネエサンモ、イッショサ。」

 

  子供達「えぇっ!」

 

ペンペン「オネエサンモ、ウマレタトキカラ、ズット、ズット、ヒトリボッチダッタンダ。」

 

  子供達「どうして?」

 

ペンペン「オネエサンニハ、ハジメカラ、オトウサンモ、オカアサンモ、イナカッタ。『オトモダチ』ッテイウ

      コトバモ、ドウイウイミカヨクワカラナカッタ。」

 

  子供達「・・・・・・」

 

ペンペン「ジュウヨネンカン、ソンナフウニシテ、オネエサンハイキテキタ・・・。タッタヒトリノ、“オトウサン”

      ミタイナヒトヲ、ココロノササエニシテ・・・」

 

  子供達「グスグス・・・」

 

 

碇「(うぅっ)レイ!!・・・(ぐしゅぐしゅ!)」

冬月(少々見苦しいぞ、碇)

 

 

ペンペン「デモ」

 

  子供達「・・・・?」

 

ペンペン「ボクタチハ、サビシクナイヨ!」

 

  子供達「どうして?」

 

ペンペン「ダッテ・・・ボクタチハ、モウ、ヒトリボッチジャナイモノ!」

 

  子供達「・・・・・」

 

ペンペン「ミテゴラン。」

 

レイとペンペンが、クルリと舞台袖の方に顔を向けた。

 

そこには・・・・いつの間にやら、舞台に入り込んでしまったミサトが、加持が、リツコが、シンジとアスカが、

ヒカリとトウジとケンスケが、青葉に日向にマヤが、冬月が、そして・・・・・・ゲンドウが、涙と鼻水を流しな

がら、二人を見守っていた・・・。

 

再び、レイとペンペンが子供達の方を向いた。

 

ペンペン「ネ?・・・・・・・キミタチモ、イッショダヨ。」

 

  子供達「え・・・・」

 

ペンペン「マワリヲミテゴランヨ!」

 

  子供達「あっ!・・・・」 「あっ!・・・・」 「あっ!・・・・」

 

ペンペン「・・・・・モウ、サビシクナンカナイヨネ?」

 

  子供達「・・・うん!!」

 

ペンペン「ヨカッタ・・・・」

 

  子供達「ありがとう・・」「ありがとう、ペンペン!」「おねえさん、ありがとう!!」・・・・・・

 

レイ・ペンペン ほっ・・・。

 

ペンペン「ソレジャ、ソロソロ、ボク、カエルネ!・・・・オネエサン、カエロウ。」

 

レイ「そうね。」

 

そっ・・・・

 

レイ「じゃ、いきましょうか。ペンペン?」

 

すたすたすた・・・

 

ペンペン「オッケー!」

 

とてとてとて・・・

 

子供達&ミサト以下一同「え゛〜〜〜!?!」

 

 

 

トウジ「・・・ワイは、いま猛烈に感動しとる!!」

ヒカリ「わたしも・・・」

ケンスケ「ボクもだよ・・・」

トウジ「まさか、ペンペンが人間の言葉を喋るやなんて!」

ヒカリ・ケンスケ  ガクッ!!(そ、そっちへ行くのか・・・)

トウジ「・・・いや、もとい!普段無口な綾波が、あそこまで自分のコトを話してくれるやなんて・・!!」

ヒカリ・ケンスケ  うなづき・・(そうそう)

トウジ「これで、ますます、シンジは綾波から目が離せんようになったなぁ。」

ケンスケ(今度は、そっちか・・・)

ヒカリ(鈴原、危ない・・・!)

 

スタタタタタ――――――どごっ!!!―――――タタタ・・・・

 

トウジ「な、なんやぁ?い・・・今、何が起こったんや??なんや、頭がクラクラするでェ・・・・?」

ケンスケ「なんか、赤いものがチラッと見えたような・・・?」

ヒカリ(アスカぁ〜〜〜)

 

ヒカリ「と、とりあえず、みんな、おねえさんとペンギンさんに会えてよかったわね!」

 

  子供達「ハ――――イッ!!」

 

ヒカリ「それでは、いよいよ、『特務機関ネルフ主催 戦災遺児招待 子供クリスマスパーティ』 

    最後の出し物となりました!」

ヒカリ「ネルフ総司令、碇ゲンドウ氏の登場です!!」

トウジ・ケンスケ「ゲッ!!」

ヒカリ「・・・どうしたの?二人とも。」

トウジ「い、いや・・・(ヒソヒソ)委員長、コレ誰のことか知っとんのか?」

ヒカリ「ええ。碇君のお父さんでしょ?」

ケンスケ「(ヒソヒソ)どんな人か知ってるの?」

ヒカリ「さあ?私は会ったことはないケド・・・碇君のお父さんだから、きっと繊細で優しい人よ。」

トウジ(こらアカン・・・)

ケンスケ(なごやかなクリスマスパーティも、ここまでか・・・)

ヒカリ「?・・・あっ、では、碇司令、ハリキッテどうぞー!」

 

 

カッ カッ カッ カッ・・・・・・・・

 

サンタクロースの服装に身を包んだゲンドウが舞台袖から現れた。長身の身体の上下を鮮やかな赤と

白の布地が覆う・・・・・・・が、ゲンドウがサンタクロースらしいのは、そこまでだった。帽子も被らず、白い

口髭も付けず、もみ上げから顎の周囲にかけて伸びた不精髭とブラシなどまず通したことがない頭髪に

挟まれた顔は、およそ柔和なサンタクロースとは正反対の強烈な意志が存在することを物語っていた。

さらに、その目元をダークブラウンのサングラスが覆う。この異形のサンタクロースは、片手をズボンの

ポケットに突っ込み、傲然と胸を反らせ、挑むような靴音を響かせて、ただひとり舞台中央に進み出た。

一基のスポットライトが、この男を追う。

 

 

冬月(ヤレヤレ・・・。碇の言う『改善点』とは、衣装を着たことか・・・)

 

 

ゲンドウ「メリークリスマス」

 

  子供達「・・・(シーン)・・・」

 

子供達もどう対処したら良いのか分からず、あっけに取られている。

 

ゲンドウ「・・・と言いたいところだが」

 

 

冬月(やはり、出たか・・・)

思わず片手で、冬月が自分の顔を覆う。

 

 

ゲンドウ「もはや、この国に冬という季節が訪れることはない。したがって、君たちが本物の『雪』を見る

     こともない。このような衣装も・・」

 

自分が着ているサンタクロースの服をチラリと見下ろす。

 

ゲンドウ「いずれは、歴史の教科書に載せられるだけとなり、人々の記憶から永遠に失われてしまうこ

     とだろう。」

 

  子供達「・・・・・・・・・」

 

 

ミサト「何言ってんのよ、あのヒゲオヤジ!いまスグあたしがやめさせて・・」

加持「(ぐい)待てよ、葛城。」

 

 

ゲンドウ「そのうえ、わずか1年にも満たない間に度重なる『使徒』の襲来・・・。ここにいる君たちは、そ

     の際に、両親や、兄弟を失ったものばかりだ。・・・・・人類に、明日を生き延びるという保証は、

     どこにもない。」

 

  子供達「・・・・・・・・・」

 

ゲンドウ「なんとも情けない現実だが、これが我々の偽らざる姿だ。所詮、人間の力など、その程度の

     ものなのだ。そんな状況下で、我々は生き抜かなければならない。」

 

  子供達「・・・・・・・・・」

 

 

シンジ「父さん・・・」

きゅっ アスカが両手を握り締めた。

レイの澄んだ瞳は、まっすぐゲンドウへ向けられている。

 

 

ゲンドウ「私は、孤独な男だ。君たちの亡くなった御両親が生前遭遇したセカンドインパクト。人類の大

     半が失われた地獄の中を君たちの親が必死になって生きていたその間も、私は自分の信念に

     のみ従って生きてきた。私を知る者は、私のことを『冷血漢』『人類に対する犯罪者』と呼んだ。

     私は、それを否定しない。」

 

ゲンドウ「・・・・そうした中、私は自分のミスによって、ただ一人の理解者も失った。」

 

 

シンジ(母さんのことだ・・・)

 

 

ゲンドウ「それでも、我々は進まなければならない。人類に余裕はないのだ。それに・・・・・」

 

ここで、珍しくゲンドウが口ごもった。

 

ゲンドウ「それに・・・・・気がつけば、私は一人ではなかった。」

 

 

冬月(ふ・・・・碇のヤツ)

 

 

ゲンドウ「私は、まだ絶望してはいない。人類の歴史を、ここで終わらせるつもりは、私にはない。

     ネルフは、そのための組織だ。」

 

ゲンドウ「だから、君たちも希望を捨てるな。」

 

  子供達「・・・・・・・・」「・・・・・(コクン)」「・・・・・・・・」「・・・・・(コクン)」「・・・・・(コクン)」

 

一方的に話し終えたゲンドウは、人差し指でサングラスを押し上げると、挨拶もなく舞台袖へ消えていった。

 

 

冬月(年甲斐もなく照れおって・・・。まぁ、今回は合格だな・・・)

 

 

ここで、舞台の照明が一旦落ちた。しばらくたって、再び照明が点灯すると、出演者全員が並んでいた。椅子に

腰掛けたシンジはチェロを構え、真っ赤なドレスに着替えたアスカは澄ました顔でグランドピアノに向かっている。

 

ミサトが一歩前へ進み出た。

 

ミサト「みんな、今日はネルフのパーティに来てくれてありがとう!最後に、私達と一緒に歌を唄って終りに

    しましょう?じゃ、今から歌詞カードを配るからネ。」

 

  子供達「それなら、もう持ってるよ!」

 

ミサト「え?」

 

  子供達「ここに来るとき、入り口で『おじいさん』にもらったもの。」「ねぇー。」

 

ミサト「おじいさん?」 

 

  子供達「真っ黒な服を着たおじいさん!」「何人もいたよ!」「ヘンなメガネかけてるおじいさんもいたよ!」

 

ミサト「??」

リツコ「まさか!・・・・・・ちょっと、見せて。・・・・・・・!!!」

ミサト「あたしにも見せて。なになに・・・・・・・ウゲッ!!こ、これは・・・・!」

冬月「どれどれ・・・」 アスカ「どうしたの、ミサト?」 シンジ「何が書いてあるんですか?」・・・・・

みんなが一斉にミサトの手の中の歌詞カードをのぞきこんだ。

 

             “幸せな天使のゼーレ”(楽しく元気に歌いましょう)

          幸せな天使のように少年よひとつになれ

          黒い月が今 胸のドアをたたいてる

          わたしだけをただ見つめて 微笑んでるアダム

          そっと触れるもの とろかすことに夢中で

          痛みさえ 感じれない ぬめらかな世界

          だから 何も 怖くはない ひとつになれば

          キミも ボクも あのコだぁって 心あけすけ〜

          幸せな天使のゼーレ

          気がつけば とけてなくなる

          ほとばしる熱いパトゥスで

          少年よ ひとつになれ

 

ミサト「な・・・なんちゅー歌よ。」

冬月「ふっ、無茶をしよる。」

碇「老人達はアセっているな・・・。」

 

  子供達「キャハハ、『とけてなくなる』だって!」「ドロドロ〜。」 キャ!キャ!・・・

 

ミサト「ハイ、回収、回収!みんな、知らないおじいさんからヘンなものもらっちゃダメよ、いい?」

 

  子供達「は―――い!」

 

ミサト「それじゃあ、本物の歌詞カードを配るからネ!」

 

子供達一人ひとりの手に、伊吹マヤ特製のカードが渡された。その愛らしいデザインに、子供達の間から

歓声が起こる。

 

やがて――――

 

シンジのチェロが、柔らかな旋律を奏ではじめた。クラッシックではない。あたたかく、かろやかで、若々しい

生命に満ちた曲だった。アスカのピアノが、滑り込むように入ってきて、曲に鮮烈な躍動感を加えていった。

 

 

レイ「君の瞳にわたしの愛が揺れてる

 

 

アスカ「アタシの夢 君の未来 必ずやってくる

 

 

シンジ「きっと大丈夫 分かり合える日がくるさ

 

 

ミサト「だからキミも 歩きなさい

 

 

リツコ&マヤ「その日になるまでー

 

 

加持「(語り)人は他人と逢えることに 意味があるから

 

 

レイ&ペンペン「一人なんて恐くはない

 

 

冬月「君がいるから(コホン・・・)

 

 

ゲンドウ「(ボソッ)悲しみの時を乗り越え

 

 

トウジ・ヒカリ・ケンスケ「明日へと アイに飛び立とう!

 

 

青葉&日向「いつだって 一人じゃないさ!

 

 

シンジ「その腕を前へさしだせ!(逃げちゃだめだ・・・)

 

 

アスカ「アタシから あなたへ届け!

 

 

全員「やさしさのすべてをかけて!!

 

 

 

レイ「みんな・・・・・メリー、クリスマス・・・・・」

 

・・・・・・・・・幕・・・・・・・・・

 

 

ちょっとだけ後日談。

 

アスカ「なぁにぃアノ歌詞?バラバラだったじゃなーい!」

シンジ「そうかなぁ?僕は、それなりにまとまってたと思うけど・・・」

レイ「『自分のパートは自分で考えるのが一番』と言ったのは、アナタよ。」

アスカ「なんですってぇー!アンタ、歌がコケたのは、アタシのせいだと言いたいワケ?」

レイ「コケたのは歌ではなく、アナタのマジックよ。」

アスカ「キィー!人が気にしてるコトを!!」

レイ「もう少しで、碇君死ぬところだったのよ。」

アスカ「イイじゃないの!こうして無事だったんだから!!」

シンジ「二人とも、ケンカはやめてよ。」

レイ「ダメ。碇君の命を危険にさらすような人を仲間とは認められないわ。」

アスカ「ヘン!!アンタなんかにそんなコト言われる憶えはないわ!そもそも、シンジの方がアタシを

    パートナーに選んだのよ!アンタなんか、残りモノ同士、ペンペンとくっついたダケじゃない?」

シンジ「アスカ!言い過ぎだよ!!綾波も、やめてよ?」

レイ「・・・・・・・。」(蒼白い炎がメラメラ)

アスカ「なによ!ヤル気?!」(真っ赤な炎がボーボー)

ミサト「アッラ〜、3人とも揃ってるのね。ちょうどヨカッタわ!」

シンジ「何ですか?ミサトさん。」

ミサト「子供達からお礼の手紙がとどいたのよ!」

シンジ「エッ!」

レイ「!!」

アスカ「ホント!ミサト?」

ミサト「コレよん!」

――――――――――――――――――

レイ「ウフフ・・・・・」

アスカ「へぇ〜・・・・・」

シンジ「そっかー・・・・・」

ミサト「ネッ?・・・・・」

いったい、何て書いてあったのでしょうか・・・。

 

皆様も、良いクリスマスを・・・ 


マナ:あのマジックはなに?

アスカ:どう? 凄かったでしょう?

マナ:凄いって・・・シンジが死にかけてたじゃない。

アスカ:大丈夫よ。ちゃんと仕掛けがあるんだから。

マナ:それがうまくいってなかったでしょ。

アスカ:でも、ちゃんと子供達は喜んでくれたわよ? リツコのなんて見てよ。

マナ:あれは・・・酷いわね。

アスカ:ま、ファーストの顔じゃしょうがないけどねぇ。

マナ:あら? 綾波さんは、名誉挽回してるじゃない。

アスカ:話の持っていき方が上手かったわねぇ。

マナ:でさぁ、子供達からどんな手紙が届いたの?

アスカ:それはね。

マナ:ふーん。そうなんだぁ。良かったね。
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