ヴィーッ!ヴィーッ!ヴィーッ!

日向「芦ノ湖上空に正体不明の飛行物体接近中!分析パターン、青!これは・・・」

正面スクリーンに映像が出る。

ミサト「三度目の、襲来ね・・・。」

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 綾波司令  第4話「蒼い瞳の信じるものは」

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ミサト(しっかし、毎回あんな恰好で・・・。アイツには羞恥心てモノが無いのかしら?)

 

“ゲンドウ”

ネルフ司令長官碇ゲンドウの姿を借りた謎の巨大生命体。外見、行動パターン(もしかすると思考パターンも)

共に碇ゲンドウに生き写しのその物体を、スーパーコンピュータ“MAGI”は、常に『パターン 青』、つまり『使徒』と

判定していた。その姿は・・・例によって、ひたすら恥ずかしい。真剣に迎撃する方がバカみたいに思えてくる。ちな

みに、今回の“ゲンドウ”―仮称『使徒G』―は、バンザイした両腕を軽く曲げ、スネ毛の生えた両足を膝から大きく

外開きに曲げて・・・つまり、水に落っこちる寸前のカエルのような姿勢をとり、その態勢で地面と水平に空中を飛行

しているのであった。

 

伊吹「“ゲンドウ”、間もなく芦ノ湖上空にさしかかります!」

うっかりスクリーンに向けた目を慌てて自分のモニターに戻しながら、マヤが報告する。

ミサト(空も飛べるってのが不気味だケド、どーせ今回も大したコトないわね、きっと・・・)

さすがに、作戦課長は腕組みをして正面からスクリーンを睨んでいた。

ミサトが、おもむろに口を開く。

ミサト「シンジ君、初号機発進準備・・・」

リツコ「待って!葛城三佐。」

突然、赤木博士が初号機の発進命令を遮った。

スクリーンを反射して光るレンズの奥の目が、食い入るように“ゲンドウ”へと向けられている。

ミサト「どうしたの、リツコ?」

親友の意図を量りかねたミサトが質問した。

リツコ「このシチュエーション・・・何か思い出さない?」

その口調は真剣そのものだった。

ミサト「芦ノ湖上空に謎の飛行物体が出現・・・シンジ君の初号機が出撃・・・・・・まさか!?」

ミサトの脳裏に衝撃が走る。

リツコ「・・・ええ。第5使徒を迎え撃った時と状況が酷似しているわ。」

 

ミサト「それじゃあ、“アイツ”は過去に発生した使徒の情報も取り込んでいるってコト?!」

バッ、とスクリーンを振り返ったミサトが噛みつくように問い質した。

日向や青葉も、自分の端末機から目を離して“ゲンドウ”を見上げている。

リツコ「おそらく・・・・碇司令の記憶からコピーしたんでしょうね。」

両手を白衣のポケットに入れたまま、空中の一点を見据えてリツコが言った。

ミサト(あの、ヘンタイ髭オヤジ!全裸で巨大化するだけでは飽き足らず、どこまでもどこまでも・・・)

ピクピクと肩を震わせる葛城ミサトの額には、“怒りの表現=青筋マーク”が特大サイズで浮き上がっていた。

リツコ(あるいは、己の貧困な発想に行き詰まった作者が、『本編ネタのツマミ食い』という身のホド知らずの

    恐ろしくリスキーな道へハマリ込んだ結果――という線も大いに考えられるわね)

悲惨、悲惨・・・こめかみに手を当てたリツコが、フルフルと頭を振った。

ミサト&リツコ((ホント、頭痛い話よねぇ〜))

考えているコトこそ違え、始末に負えない問題であることは共通している。

レイ「いいえ。痛いのはココロ。作者のココロが痛いのね。」

発令所一同「「「・・・・・・・・・」」」

リツコ「(コホンッ)・・・とりあえず、今考えなければならないのは、あの物体の始末をどうするかよ。」

全員の目が、正面のスクリーンに向けられた―――

 

 

芦ノ湖上空への侵入を終えたゲンドウは、そのまま静かに空中で停止していた。

沈黙・・・

眩い陽光を反射して輝く湖面と、空中に浮かぶ裸ゲンドウが奇妙なコントラストを形成していた。

今後予想される“G”の行動は不明・・・しかし、状況は、人々に5番目の使徒ラミレスを思い起こさせていた。

 

 

ミサト(試してみるか・・・)

初号機の発進を中止したミサトは、代わりに、それよりもやや控えめな命令を下した。

ミサト「十二式臼砲、発射準備!」

伊吹「了解!」

マヤが、新たな命令をテキパキと伝達していく。

 

トンネルから列車に引かれた大口径砲が現れた。

 

ミサト「撃っ!」

 

ギッュ―ン・・・カキ―ン!!

 

青葉「Gの周囲に、強力なATフィールドが張り巡らされています!」

日向「あの時と、同じだ・・・」

日向が漏らした言葉は、発令所に詰める大部分の人々の気持ちを代弁していた。

 

ビュンッ!!・・バシュッ――!!・・・ズダダ――ン!!

 

ゲンドウの“サングラス”から発射された光線が、一瞬にして臼砲を蒸発させた。

 

青葉「間違いありません。加粒子砲です!」

ここに至って、ついにミサトも確信した。

ミサト「!・・・ということは、取るべき手段はひとつ。」

リツコ「ポジトロンライフルね?」

ミサト「それしかないわ!伊吹二尉、ただちに戦自に協力を要請して!それから、シンジ君とアスカに

    ポジトロンライフルの準備が完了するまで、待機を命じておいて!・・・いいですね、司令?」

その時、長官席のレイは組み合わせた両手を口元にあてがっていた。

レイ「反対する理由は何もないわ。存分にやって、葛城三佐。」

 

 

―――17:30―――

晴れ上がった一日の終わりは・・・近い。

西に大きく傾いた太陽を背に、スライドした山腹から、初号機と弐号機が出撃する。

見送る市民は、総勢二人。

ケンスケ「おお!初号機と弐号機のツーショットだ!これは高く売れるかも・・・!」

トウジ「そんなもんかァ?」

ケンスケ&トウジ「「ガンバレよ〜!碇!惣流!」」

ささやかな声援を受けて、ニ体のエヴァは意外なほどの速さで彼らの前から遠ざかって行った。

 

 

―――二子山作戦待機地点 特設ケージ―――

シンジ「今度の父・・・“G”は、これまでのとは・・なんだか違う気がするんだ・・・。この作戦だって、本当の

     トコロは上手くいくかなんて、全然分からない・・・。――――アスカ、僕達、死ぬかもしれないね。」

沈みゆく夕陽を眺めながら、シンジはつぶやいていた。

アスカ「・・・シンジは、死なないわ。アタシが、守るもの。」

えっ・・・・

シンジは驚いて、弐号機の横で膝を抱えている人物を振り返った。

シンジ「アスカ!?」

アスカは、吹き上げてくる風に髪をなびかせて立ち上がった。

アスカ「時間ね・・・。サヨナラ、シンジ。」

今、ケンカばかりしていた蒼い瞳が、声にならない何かを彼に告げようとしている。

しかし、少年がそれを確かめるよりも早く、夕陽に輝くアスカの姿はエントリープラグの中へ消えた。

 

 

バッシャ――ン!!

 

青葉「使徒G、芦ノ湖に墜落・・いえ、着水しました!」

ミサト「う、動かないわ・・・」

リツコ「息、できるのかしら?」

伊吹「『うつぶせ』ですからね・・・」

 

ギャリン!ギャリン!ギャリン!―――

 

青葉「使徒G、ジオフロント上の岩盤の穿孔を開始しました!!」

日向「MAGIの計算では!・・・・・・・・4時間後に全装甲板が貫通されます!!」

ミサト(早い!!・・・・・二人共、頼んだわよ)

ミサト「シンジ君!アスカ!攻撃準備!ポジトロンライフルへの電力注入開始!!」

 

ヴ、ヴ、ヴ、ヴ、ヴ、ヴ・・・・・・

 

日向「充填完了!撃鉄起こせ!」

 

アスカ(シンジ、頑張って・・・)

盾を携えた弐号機が、足元の地面に伏して、長大なライフルを構えている初号機を見下ろしていた。

 

青葉「“G”のサングラスに高エネルギー反応!」

 

アスカ「エッ?!」

シンジ「くっ!」

ポジトロンライフルを抱え上げた初号機が、弐号機を突き飛ばすようにして、横っ飛びに身をかわす・・・

 

ズダダ――ン

 

さっきまで初号機と弐号機のいた地面が消えた。

 

ミサト「ナイス!シンジ君!!これでもらったわ!」

パチンッと、ミサトが指を弾く。

 

アスカ(アタシったら・・・何してるのよ!)

真一文字に結んだ唇に、白い歯が食い込む。

 

ジャキッ!初号機がゲンドウに狙いを定めた。

 

青葉「再び高エネルギー反応ッ!!」

日向「まさか!連発が利くのか?」

リツコ「ワナだったというの?!」

冬月「いかん!」

 

時間に直せば0コンマ数秒――ミサトの目には、モニターの中の初号機が発射をためらったように見えた。

 

ミサト「何しているの!!シンジ君!はや・・・」

 

ビュンッ!!バシュ―――ッ・・・・

 

映像を見守る誰もが作戦の失敗を予感して目を伏せたその時、真紅の機体が飛び出した!!

 

ズババババッッ!!

 

アスカ「クッ・・・シ、シンジ・・・アァァッ!!!」

 

急激に増幅されたゲンドウの光線は、アスカの構える耐熱シールド済みの盾を、瞬時に融解させた!

直撃を浴びる弐号機。

真紅色の装甲がみるみる溶け落ちてゆく・・・

 

シンジ「うあ・・・アスカーッ!!」

反射的にシンジの指がトリガーを引いた。

カチッ・・・

 

バヒュッ!・・・・・・・Duwaaan!!!

 

青葉「目標、消滅!!」

 

ミサト「医療班、急いで!」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

シンジ「アスカ・・・!」

 

バキョン!・・・プシュゥッッ

 

シンジ「ぐっ!・・・く、く・・うぅぅ・・!」

 

ギ、ギギ、ギ・・・ガコンッ!

 

シンジ「ごめんよ、アスカ!!・・・アスカ、大丈・・・・・・・」

 

床に残ったLCLに力なく浸けられた両脚・・・・反り返った胸・・・だらりと下りた細い腕・・・ヘッドレストから

こぼれ落ちたまま動かない茶色がかったクォーターの髪・・・・・・

 

操縦席のアスカは、顎を上に向けてシートにもたれかかり―――彼女の時間は・・・止まっていた。

 

シンジ「アスカ!?・・・しっかりしてよ!アスカ!アスカ!!」

 

赤いプラグスーツの両肩に手をかけて、必死に揺さぶり続ける。

――――が、いつも自分を叱っていたその少女は、閉じた瞼を・・・・開こうとはしなかった。

 

シンジ「アスカ!アスカ―――ァ!!!」

 

崩れ落ちようとするアスカの身体を、力一杯抱きしめながら、碇シンジは泣いた。

自分のためではなく、

惣流・アスカ・ラングレーのために、碇シンジは初めて泣いた。

弐号機のエントリープラグが、少年の嗚咽で満たされていった・・・・

 

シンジ「どうしてアスカが・・・アスカが死ななきゃいけないんだ!・・・・・・どうして・・・・・・!」

 

 

『綾波司令』 第4話「蒼い瞳の信じるものは」 終

 

 

 

 

 

 

―――えっ、「終わり」じゃない?・・・・・では、続きをどうぞ〜(↓)。

 

 

 

 

 

 

アスカ(・・・・・・・・はっ・・・・・・・誰よ・・・・・苦しいじゃないの・・・・・・・・・・シンジ!?・・・・・アンタが何でココに・・

     ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・シンジ・・・・・・・泣いているの?・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

     アタシの・・・ため?・・・・・・・・・・・・・・・・・アタシ・・・の・・・ために・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

     ・・・・・・・・・・・・・泣いてくれているの?)

 

 

涙が一筋、少女の目尻から流れ落ちた。

 

 

シンジ「アスカ!・・・・・・アスカー!!」

――シンジの方は、それに気づくドコロではなかったのだが。

 

 

アスカ(・・・・バカね・・・大丈夫よ・・・・・・・・・・・でも・・・・まっ、そんなに泣かれちゃ仕方ないわね。

    今日だけ特別よ・・・バカシンジ。(トクン、トクン、トクン・・・))

 

 

 

レイ「・・・赤木博士。至急、零号機の復活を。」

リツコ「エエッ!!?」

 

 

綾波司令、イキナリの重大発言。

その背後に、微妙な ―― いや、たいへん露骨な ―― 乙女心が隠されていたことは、誰も知らない。

 

 

『綾波司令』 第4話「蒼い瞳の信じるものは」 本当に終

 

次回予告

過酷な運命は、少年の肩にはあまりに重すぎた。

降りしきる雨の中、サードチルドレンはミサトのマンションを飛び出す。

ひそかに想いを寄せる、二人の少女を残して・・・

しゃべくりだけの展開に明日はあるのか?

次回、『綾波司令』 第5話 「にわか雨――のち」

ヨロシクねン!

 

たぶん、こう(↑)はならないような・・・ハイ。


マナ:なに死んだ振りしてんのよっ。

アスカ:だって、こんなおいしいシチュエーション、もっと楽しまなくちゃね。

マナ:もうすぐ綾波司令の天誅が下るわよ。

アスカ:ファーストなんかに負けるもんですかっ!

マナ:綾波さんは司令よ。司令。

アスカ:それがなんだってのよ。

マナ:零号機を起動した綾波さんが、何するか楽しみだわぁ。

アスカ:ムムムム。

マナ:命が惜しかったら、もうシンジには近付かないことね。

アスカ:わかったわよ。アタシはネルフを離れるわ。

マナ:うんうん。(^^v

アスカ:シンジと愛の逃避行よーーっ!

マナ:違うでしょーがっ!!!
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