1本部食堂のTV『・・・・・てなもんや〜、おまへんか〜・・・ドワッハッハッハッ・・・』

「・・・・・・・・」

「・・・面白いの、綾波?」

本部食堂のTV『・・・・・・さー、今週も“飛んで火に入る歌謡ショー”の時間がやってきました・・・・』

「・・・・・・(スッ)」

「綾波?」

(・・・てなもんや・・・おまへんか・・・)

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 綾波司令   第10話「瞬間、芸に目覚めて」

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青葉「戦自より入電!新駿河湾沖に使徒G出現。ネルフの出動を請う!」

ミサト「シンジ君、アスカ、出撃よ!」

 

アスカ「来たわ!シンジ!」

 

ズザンッ―   海岸から沖へ数百メートル、水煙を上げて使徒ゲンドウが立ち上がった。

 

アスカ「シンジ、援護お願い!」

 

長刀状のSG―01を斜め下に構え、波打ち際を弐号機が突進する。

 

アスカ「たぁああっ!」

 

メリリッ・・  

 

電光一閃!技研が誇る音速の剣は、使徒ゲンドウの肉体を、下から上へ真っ二つに切り裂いた。

ただし、血飛沫は上がらない・・・温めたナイフで切られるバターのような切り口を見せて、二つに離れた

ゲンドウの身体は、それぞれ水しぶきを上げて海中へと没していった。

 

アスカ「あっけないのぉ・・・」

ミサト『まだよ、アスカ!ニ子山作戦での教訓を思い出して!!』

 

ザンッザンッ―  ほどなく、二つの水煙を上げて、使徒ゲンドウが“ニ体”立ち上がる。

 

アスカ「くっ!ならば、こっちも・・・シンジ!」

 

一旦後退した弐号機が、初号機と肩を並べる。

そして、流れるようなステップを踏んで二機のエヴァが空中高く舞い上がった!

 

シンジ&アスカ「「二点同時荷重攻撃!!」」

 

初号機と弐号機のキックがニ体のゲンドウを捉えた!と思われた瞬間、アスカとシンジの目は・・・・・・・・

・・・点&点になっていた。

 

アスカ「コアが、な〜〜いィ!」

シンジ「そんなっ!」

ミサト「あっちゃ〜〜〜っ」

 

バキッ!・・・ドシッ!・・・・・ズダダダァァ〜〜ン

 

青葉「初号機、弐号機、共に沈黙しました。」

ミサト「・・・・・・・・・リツコ、言ってイイわよ。」

リツコ「無様ね。」

 

軽々と二機のエヴァを蹴散らした“ゲンドウ”×2)は、揃ってサングラスを人差し指で押し上げると、

おもむろに第3新東京市めざして侵攻を開始した。もはや、戦自の通常兵器でこれを阻止できない

ことは、過去の対戦で明らかとなっている。

 

冬月「どうするかね、レイ君?」

レイ「・・・葛城三佐、戦自に要請を。N2航空爆雷全弾投下。」

ミサト「ウゲッ!!・・・本気なの、レイ??」

冬月「地図を描き替えるどころか、東海地方そのものがなくなるぞ!」

レイ「あの碇司令の姿をしたモノは、過去に現れた使徒の物真似をしているだけではないわ。以前、私

   達が倒した相手より、数段強力になっている。それは、第4話の芦ノ湖での戦闘でも明らかだわ。」

冬月「む・・・」

ミサト「確かに・・・」

レイ「だから、手加減をしてはダメ。」

 

  伊吹「(ヒソヒソ)今日のレイ、スゴい!」

  青葉「(ヒソヒソ)なんか、いつになくスルドイよ・・」

  日向「(ヒソヒソ)いや、これが彼女本来の姿なんじゃ・・」

 

レイ(日向ニ尉、ナイス)

冬月「・・・しかし、いくらなんでも『全弾投下』は無茶だろう。日本政府が『うん』とは言うまい。」

リツコ「使用後の処理にも莫大なコストが掛かるし、なにより自然環境への影響が無視できない

    レベルになるわね。」

レイ「じゃ、どうするの。」

ミサト「とりあえず、こういうのはどう?・・・確かに、レイの言う通り、一発のN2爆雷ではアイツは倒せな

    い。でも、対使徒戦での使用実績からして、足止めくらいにはなるハズよ。時間を稼いでいる間に、

    こちらは作戦を立て直す・・」

リツコ「何か良い案でもあるの?」

ミサト「ん〜〜チョッチね。だから・・・・・・・レイ?」

レイ「任せるわ、葛城三佐。」

 

ゲンドウ×2が山間部に達したところでN2航空爆雷が投下された。再び発生した巨大な閃光と衝撃・・・

 

ミサト「どう?何かダメージは与えた?」

日向「いえ、まったく無傷ですね・・・。綾波司令の言った通り、第7使徒より格段に強力なATフィールド

   を展開できるようです。」

ミサト「じゃ、スグに再侵攻可能というコト?足止めにはならなかった・・・?」

青葉「いや、そうでもないみたいです。映像を見てください。」

 

発令所のスクリーンに、爆発による電波障害から回復した映像が映し出されていた。

ゲンドウ×2は、ともに無傷。反対に、周囲は灼熱の地獄と化していた。

 

ミサト「1人でもうっとおしいオヤジが2人もいると、2倍うっとおしいわねぇっ」

伊吹「さすがに、碇司令同士じゃ会話もハズまないみたいですね・・・」

ミサト「・・・っと、そんなことより、青葉君、これでどうして次の侵攻まで時間が掛かるの?見たところ、

    何のダメージも与えていないようだケド・・・」

青葉「ゲンドウの足元を見てください!」

ミサト「ん?」

伊吹「あっ、裸足!!」

ミサト「な〜〜〜るホド!」

リツコ(『な〜〜〜るホド!』じゃないでしょ、ミサト?・・・それにしても、なんというオチなの。こんなコトが

    本当に許されるのかしら?)

 

唯一人マトモな赤木リツコ博士を除く全員の意見が一致した結果、使徒Gの侵攻再開まで、あと18時間

と決定された!―――ちなみに、MAGIの判断は・・・『回答不能』。勝手にして頂戴・・・ということらしい。

 

リツコ「・・・・・・で、どうするの、ミサト?アナタに考えがあるんでしょ?(アタマ痛いわ)」

ミサト「実は・・・ソレ、今から考えるの。」

リツコ(・・・本当にアタマ痛いわ)

 

 

コツ、コツ、コツ、コツ、・・・・

 

ミサト(アスカとシンジ君、二人のユニゾンは完璧だった。問題は・・・・・コアね。ヤツのコアは、どこにあるの?)

 

コツ、コツ、コツ・・・

 

ミサト(過去の調査によれば、“ゲンドウ”の肉体の構成要素は“使徒”とほぼ同じ。だから、どこかに必ず『コア』

    ・・・あるいは、『コア』に相当する部分があるハズ。それさえ発見すれば・・・・)

 

コツ、コツ・・コッ

 

ミサト「も、もしかしたら・・・!?」

 

 

ミサト「いい?みんなよく聞いて!」

 

作戦室に、綾波司令以下主だったメンバーが全員集合していた。

作戦課長のミサトが、胸を張って一歩前へ進み出る。

 

ミサト「使徒Gのコアの位置が判明したわ!!」

アスカ「本当!ミサト?」

ミサト「ええ。たぶん間違い無いわ。・・・伊吹二尉」

伊吹「ハイ。」

 

マヤがモニターに映像を流して、解説を始める。

 

伊吹「いま見ていただいているのは、今回を含めて過去四度対戦した“ゲンドウ”に対する攻撃の様子です。

    なお、先のJA2の暴走事故に関しては使徒Gの存在を特定するためのデータが不足していますので、

    検討の対象からは除外してあります。」

 

最初の戦い・・・・・弐号機に「金的」を直撃されたGは、もんどりうって地面で後頭部を痛打。衝撃でサング

           ラスが外れ、白目を剥いた顔がモニターにアップになる。

二度目の戦い・・・レイをビルの上に降ろした後、Gは初号機の目前で自らの意志で崩壊する。液状と化し

           た肉体の上にサングラスだけが残された。

三度目の戦い・・・初号機の放ったポジトロンライフルの一撃がGの肉体をサングラスごと撃ち抜く。

四度目の戦い・・・弐号機のソニックグレイヴが正面からGを分断。二つに割れたサングラスを掛けたまま、

           Gの身体は左右別々に水没したが、間もなくニ体に増えて再出現。サングラスも二つに

           復元されていた・・・

 

伊吹「――つまり、これらの映像から明らかなように、使徒Gの『コア』あるいは『コア』に相当するものは・・・」

シンジ「まさか・・・サングラス?」

青葉「そ、そうか!全っ然、気づかなかったァ!」

日向「まさか、グラサンが弱点だったとはなァ!」

伊吹「ワザとらしいわ・・・」

冬月(リツコ君が怒るのもムリない展開だな)

レイ「メガネ・・・大切なモノ。」

 

ミサト「・・・というわけで、攻撃目標は、ヤツのサングラスよ!!」

 

ゲンドウ侵攻再開まで、あと12時間・・・

 

 

次回予告

アスカとシンジ、二人のユニゾンの特訓が再び始まった。

飛び散る汗、ふれ合う指先、見つめ合う目と目・・・

しかし、そんなラブラブの展開を綾波司令が見逃すハズは無かった。

レイの乱入により、特訓は新たな局面を迎える。

次回、『綾波司令』 第11話 「三すくみ」

よろしくネん!

 

リツコ(コレ↑は間違い。まだ続くわよ)

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 Commander Rei  Episode:10“BASHFUL GIRL”

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

アスカ&シンジ「「じゃーんけーん、ぽい!」」

   アスカ<グー>

   シンジ<パー>

シンジ「あっち向いて、ホイ!」

アスカ「(ク、クルッ!)・・(スパ――ン!)!イタ〜イ!!」

シンジ「アスカ、もう少し真剣にやらないと・・・これで、5敗目だよ。」

アスカ「クヤシ〜〜!バカシンジにバカにされてるゥ!!もう1回よ!」

 

アスカ&シンジ「「じゃーんけーん、ぽい!」」

   アスカ<チョキ>

   シンジ<グー>

シンジ「あっち向いて、ホイ!」

アスカ「(クリンッ!)・・(スパ――ン!)!イタァ〜イィ!!」

シンジ「アスカ、素直過ぎるんじゃ・・・」

アスカ「ウルサイわねー!アンタこそ、手加減しなさいよ!!イタイじゃない!」

シンジ「仕方ないよ。特訓なんだから・・・」

 

座布団を敷いて向かい合って座った二人の前に、“ハリセン”が一つずつ置かれていた。

 

  ミサト「いい?今度の相手の急所はサングラス。普通に攻撃したのでは、まず100%ガードされて

      しまうわ。だから、相手に隙を作らせる必要があるわけ。しかも、ニ体同時にね。となれば、

      方法は一つ。シンジ君とアスカのユニゾンの動きの中に、『間』を作ればいいのよ!相手を

      アッと思わせるような、完璧な『間』をね!そのためには、コレが一番!!」

  アスカ「なに、コレ?」

  ミサト「『ハリセン』というものよ。」

  シンジ「まさか、ミサトさんの『特訓』って・・・」

  ミサト「そっ!『あっち向いてホイ』よ!」

 

アスカ「ゼ〜〜、ゼ〜〜・・・シ、シンジ、もう1回・・」

シンジ「ちょ、チョット休憩しない?アスカ?」

 

屈辱の24連敗を重ねたアスカが、振り乱した髪の下からシンジを睨む。

三角になった目の下には、うっすらと隈ができているような・・・

 

アスカ「もう1回よ!・・・じゃ〜〜んけ〜〜ん、ぽい!」

   アスカ<チョキ>

   シンジ<チョキ>

アスカ「あ〜〜いこ〜〜で、しょ!」

   アスカ<グー>

   シンジ<チョキ>

アスカ「(やった!)あっち向いて、ホイ!!」

シンジ「(クルッ!)・・(スパパ――ンッ!)・・・アタタ、負けちゃったネ・・・」

 

アスカ「・・・ワザと負けたわね。(ジロリッ)」

シンジ「そ、そんなことないよ。」

アスカ「ウソ。」

シンジ「ウソじゃないって。」

アスカ「ワザと負けて、アタシをバカにしてるんでしょ?」

シンジ「違うよ!僕は、ただアスカを勝たせてあげようと・・・あっ

アスカ「ヤッパリネ・・・。バカシンジのくせに生意気なのよ!こんなコトしてもらって、アタシが喜ぶとでも・・」

 

レイ「そう。碇君は、間違ってるわ。」

 

冷たく突き放すような声がトレーニングルームに響いた。

オヤッという顔をミサトが向ける。

レイとミサト、この2人は特訓の最初から壁際で様子を見ていたのである。

 

アスカ「ファースト!横から口を出さないで!」

レイ「いいえ。これは、作戦遂行上重要なこと。わざと低レベルの相手に呼吸を合わせていては、

   質の高い『間』は作り出せないわ。」

アスカ「『低レベルの相手』って・・・アタシのコトを言ってるの!?」

 

レイ「見ていて・・・」

 

片手を自分の胸に当てて、レイを睨みつけるアスカ。

・・・そんな彼女を素通りして、レイはシンジと向かい合わせになるように座った。

 

レイ 「碇君、始めるわよ。」

シンジ「う、うん・・・。」

レイ&シンジ「「じゃーんけーん、ぽん。」」

   レイ <パー>

   シンジ<グー>

レイ 「碇君・・あっち向いて、ホイ♪」

シンジ「(クルッ!)・・・(スパーン!)アッ!・・やられた!」

レイ 「もう1回。」

レイ&シンジ「「じゃーんけーん、ぽん。」」

   レイ <パー>

   シンジ<チョキ>

シンジ「綾波、あっち向いて、ホイ♪」

レイ 「(クルッ!)・・・(スパーン!)・・・・・・・・・。」

レイ 「・・もう1回。」

レイ&シンジ「「じゃーんけーん、ぽん。」」

   レイ <チョキ>

   シンジ<パー>

レイ 「碇君・・あっち向いて、ホイ♪」

シンジ「(クルッ!)・・・(スパーン!)!!・・くそー!」

レイ&シンジ「「じゃーんけーん、ぽん。」」

   レイ <グー>

   シンジ<パー>

シンジ「綾波、あっち向いて、ホイ♪」

レイ 「(クルッ!)・・・(スパーン!)・・・・・・・・・。」

レイ 「・・もう1回。」

 

 

レイ「・・・どう。これが“どつき漫才”の『間』というものよ。(ジンジンジン)」

アスカ「・・・・・くっ。」

レイ「零号機が完成していれば、私が碇君と出撃しているわ。」

アスカ「・・・・・・・・ファースト」

レイ「なに。」

アスカ「ヘアースタイルが目茶苦茶よ。」

レイ「・・・・・・(ぽっ)」

 

ミサト(綾波司令・・・やるわね!)

 

壁際へ戻ってきたレイが、ミサトの耳元へ口を寄せた。

 

レイ「葛城三佐・・・」

ミサト「ん?」

レイ「ぼそぼそぼそ・・・」

ミサト「フンフン・・・」

 

新ユニゾン(?)完成まで、あと4時間・・・

 

――――――――――

 

青葉「Gが、侵攻を再開しました!」

ミサト「こっちも、準備万全よ!シンジ君?アスカ?用意はいい?」

シンジ&アスカ『『いつでも、どうぞ!』』

ミサト「初号機ならびに弐号機、発進!」

 

 

―― 第3新東京市まで3km ――

・・・ズザッ! ズザッ!

迫り来るゲンドウニ体の前に、再び二機のエヴァンゲリオンが立ち塞がろうとしていた。

 

シンジ「いくよ、アスカ!」

アスカ「ええわよ、シンジ!」

 

テケ、チャンリン、チャンリン〜〜ドドンッ

 

特設スピーカーから流れてくる出囃子の名調子。

発案、葛城ミサト。脚色、綾波レイ。特別アドバイザー、冬月コウゾウ。

実演、エヴァ初号機と弐号機による前代未聞の作戦が始まった。

 

紫と真紅の機体が腰をかがめ、揉み手をしながら登場する。

 

初号機『もう、すっかり春だね』

弐号機『ほんまやね〜』

 

初号機『春といったら、アレだよね?』

弐号機『アレやな〜』

 

初号機『ハルといえば・・・』

弐号機『バンソウコウ!』

 

シンジ&アスカ「「チラッ・・」」

 

 『下らん事で私を呼ぶな』

 

ゲンドウは、眉間にシワを寄せ、サングラス越しに射るような視線を二機のエヴァに送っている。

 

 

ミサト「まだまだ序の口、これからよ!」

リツコ(これが作戦と言えるのかしら?)

リツコの心に呆れを通り越した感情がグルグルと渦巻いていた。

リツコ(いつかの『落とし穴作戦』〈注 第2話〉といい、今回の『ボケかまし作戦』といい、この世界で

    ミサトが考案する作戦ってロクなのがないわね)

ミサト(・・・作者のセイよ)

伊吹「日向君、面白い?」

日向「いや・・・」

青葉「ププッ!・・・・くっ、くっ、くっ」

マヤと日向が氷点下の視線を向ける・・・・青葉二尉、お笑いのセンス無し。

さらに、彼らの背後では、

 冬月「・・・・・・・」

 レイ「・・・・・・・」

最近、息の合ってきた凸凹コンビが、黙々と戦況を見守っていた。

 

 

―――初号機と弐号機のモニターには、ミサトが即席で書いた“漫才”の台本が表示されている。

    シンジとアスカは、自分のパートにアンダーラインが引かれたその台本を見ながら、

    外部スピーカーを通して喋り、エヴァを操作しているのだった―――

 

 

初号機『・・・でさぁ、部長が言うんだよ。「お前なんか、左遷だー!」ってね。』

弐号機『ほうほう。そないなことサセンといてほしいですなぁ〜』

 

 

―――ちなみに、アスカの台詞が関西弁なのは、TVの影響を受けたレイの入れ知恵である―――

 

 

ミサト「(うん、うん!)」

リツコ「(ズキズキ・・・)」

青葉「プッッ!!・・・プハッ、ハッ、ハッ!・・ヒー、ヒッヒッヒッ!」

日向・伊吹「「(しら〜〜〜)」」

冬月「・・・・・ふむ。」

レイ「・・・・・(じ〜〜っ)」

 

 

シンジ「ハア、ハア・・・!」

アスカ「ゼィ、ゼィ・・・!」

 

ゲンドウズ『『・・・・・・・・・・』』

 

――― ウケないっっ!!

 

初号機、弐号機、大苦戦<ピンチ>っ

一方、ニつ並んだヒゲオヤジの顔は、シンジとアスカに向かってハッキリとこう言っていた・・・

 

 『用がないなら、帰れっ』

 

 

ピュン・・  シンジのモニターの台本が消え、アスカがアップになった。

 

アスカ『なによ!この台本、全っ然受けないじゃないの!』

シンジ「やっぱり、ミサトさんのセンス古いのかな・・・?」

 

 

ミサト(・・・聞こえてるわよ)

当然モニターされている二人の会話は、発令所にも大音量で流れていた。

ミサトの顔がヒクつき、リツコがこめかみを押さえ、マヤと日向が暗い顔で頷き合う。

―――しかし、

  冬月「手ぬるいな。」

  レイ「そうね。」

突然、綾波司令が立ち上がった。

 

レイ「甘いわ。二人とも・・・」

 

アスカ『なんですってぇー!』

シンジ『綾波・・・?』

 

レイ「葛城三佐、作戦変更。舞台を、第3新東京市内第壱中学校前へ移動。

   それから、観戦希望者を募ってシェルターから出してあげて。」

 

アスカ『エェ〜〜〜!!』

シンジ『そんな!恥ずかしいよ、綾波!!』

 

ミサト「了解!二人とも、一時後退するのよ!!」

 

アスカ『イヤ!イヤ!絶っ対、イ〜ヤッ!!』

シンジ『・・・うそでしょ?ミサトさん・・・』

 

ミサト「とっとと、帰ってくるっ!!」

レイ(碇君、セカンド・・・芸の道は厳しいのよ)

 

 

―― 第壱中学校前 ――

「なんだ、なんだ?」

「碇と惣流が、エヴァンゲリオンで『夫婦漫才』をするらしいぞ!」

「エッ〜〜!あの惣流さんが?」

「イヤ〜ンッ!碇君、ヤメテー!」

トウジ「大人気やな。」

ケンスケ「半分は好奇心、半分は嘲笑と嫉妬。大衆なんてそんなものさ。」

ヒカリ「しーっ!出てきたわよ。」

 

 

バシュ―ッ・・・・・・・・・・・・バッキョン      射出後、初号機がリフト・オフするまで、30秒かかった。

バシュ―ッ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・バッキョン     弐号機がリフト・オフするまで、さらに30秒かかった。

 

 

第壱中学生徒一同 「オ?オオォォ―――!!(パチパチパチパチ!)」

 

 

ゲンドウズ((ヨッコラショ・・・))

 

技研が開発した新兵器、“G”脚止め用の『碇ユイ(レイ)立体映像』を食い入る様に鑑賞していたゲンドウズ。

エヴァ二機の出現を見て、不機嫌そうに腰を上げた。

 

第壱中学を舞台に、ついに決戦の火ブタが切られようとしている!!―――ドクン、ドクン、ドクン、ドクンッ!

 

シンジ「・・・・・・・・・・・・・・・(ドキドキドキドキ)」

アスカ「・・・・・・・・・・・・・・・(イヤヨイヤヨイヤヨイヤヨイヤヨ)」

 

全校生徒&クラスメートが見守る中、二機のエヴァがゲンドウと向き合い沈黙すること約1分と30秒・・・

 

アスカ「・・・・・・・・・・・・・イヤ―――ッ!やっぱり、出来ない―――いっ!!」

 

ダン、ダン、ダン、ダン・・・ 両手で顔を覆って、弐号機が駆け出して行ってしまった。

 

シンジ「あっ!アスカ、待ってよ!・・・・・・僕を一人にしないでよ!」

 

急に相棒に逃げられた初号機が、オロオロと周りを見回していた。

 

 

第壱中学生徒一同 「ボ―――ゼンッ・・」

 

 

―――すると、

 

ゲンドウA 『クッ、クッ、クッ、・・・・・・ドワッハ、ハ、ハ、ハ!!』

ゲンドウB 『フッ・・・フフフ・フ・・ヒャ――ハッ、ハッ、ハッ!!』

 

ゲンドウが、腹を抱えて笑い出した!!

 

その瞬間、初号機のモニターにレイの顔が現れた。  

 

レイ『碇君!今!!』

 

シンジ「ハッ!!・・・・アスカ!!!」

アスカ「ぐすっ・・・・エッ?!(あっ!)」

 

シンジ&アスカ 「「今だ!!」」

 

アスカ「(ダダダダ・・・)でぇ――――い!」  バキッ!!

シンジ「(クルリッ)ごめんよ!父さん!!」  ビシッ!!

 

ゲンドウズ  ピキピキピキ・・・・ボワヮヮ〜〜〜ン!!

 

 

ミサト「やった!」

いまや、床の上で笑い転げている青葉に代わって、日向が報告した。

日向「使徒G、殲滅しました・・・」

伊吹「あの〜、第壱中学のみんなが今の爆発のショックで全員気絶していますケド・・・」

リツコ「・・・今回は最後まで無茶苦茶だったわね。(明日から休暇よ、休暇っ!)」

 

冬月「まだまだ、だな。」

レイ「・・・ええ。」

 

 

『綾波司令』 第10話「瞬間、芸に目覚めて」 終

 

 

次回予告

前代未聞の作戦に投入されたエヴァは、チルドレンとのシンクロに変調を来たしていた。

頭をかくミサト、怒り狂うリツコ、なぜか無言の綾波司令。

そんな中、本部施設内にミクロ化したゲンドウが発生した!

次回、『綾波司令』 第11話 「ゲンドウ、侵入」 

ヨロシクねン!


マナ:科学を結集したネルフが・・・漫才。(ーー;

アスカ:D型装備以上に、最悪だわ。(ーー;

マナ:よくあれで撃退できたわねぇ。

アスカ:漫才ネタで笑わしたんじゃないけど・・・。

マナ:もう少し、アスカも修行が必要ね。

アスカ:上手くなんかなりたかないわよっ。こんなもん。

マナ:でも、司令は気に入ってるみたいよ? 芸の道。

アスカ:そうよっ! だいたい、気に入ったんなら、自分でやればいいのよっ! なんでアタシにっ!

マナ:ヘアースタイル、目茶苦茶にて頑張ってたじゃない。

アスカ:やっぱり、ファースト・・・。バカだわ。
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k100@poem.ocn.ne.jp

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