レイ 「およびでないの。」

アスカ「何よっ。アンタ、まだ前回の続きやってんの?」

シンジ「そうなの、綾波?」

レイ 「今回のお話は・・・私達3人共、およびでないの。」

アスカ「・・・・・・」

シンジ「・・・・・・」

シンジ&アスカ「「エ〜〜ッ!!??」」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 綾波司令   第11話「リツコ、怒る」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

忙しくキーを叩いていた指先が止まり、マヤが二人を振り返った。

 

伊吹「ダメです。まだ神経パルスにノイズが混じっています。」

リツコ「・・・思った以上に時間が掛かりそうね。」

ミサト「あれま。一体、どうしちゃったのかしらねぇ。」

 

深刻な会話の中に、呑気そうな声が約1名。

 

伊吹「・・・・・・・」

リツコ「・・・・・・・」

 

ピクリと耳を動かした師弟コンビは、美味しそうに“ICCコーヒー”を飲んでいる人物を、無言で

ジロリと睨みつけた。

 

ミサト「・・・ん?どったの?急に黙っちゃって。」

 

缶コーヒーに口を付けたまま、目の端で2人を見返すミサト。

 

伊吹「あの、葛城三佐・・・」

リツコ「アナタ、分からないの?」

ミサト「何が?」

 

チャッポン・・・降ろした手の中で、缶の中味がこれまた呑気な音を立てる。

 

伊吹「初号機、弐号機不調の原因は・・・」

リツコ「ミサトが立てた前回の作戦にあるのよ!」

 

ミサト「え・・・(ぎくっ)」

 

葛城三佐の手から、コーヒー飲料のアルミ缶が約10cmズリ落ちた。

 

伊吹「もともと、エヴァンゲリオンは対使徒戦用に作られた人造人間ですから・・・」

 

リツコ「全ての機能が戦闘に適するようにインプットされているのよ。アナタも、知らないワケじゃ

    ないでしょ?それを、こともあろうに戦闘とは正反対の“漫才”なんかに使用するからっ」

 

伊吹「神経中枢に異常を来たしてしまったんです。」

 

ミサト「そ・・・そうなの?」

 

言われてみれば至極もっともな話だけに、一言も反論できない作戦課長のコメカミには、超特大の汗が

タラリ〜ンと浮き上がっている。

 

リツコ「ホントに!人類の科学が生んだ最高傑作をアナタは何だと思ってるの?ネルフの作戦課長が

    聞いてアキレるわっ。」

 

こちらは、スッカリ“おかんむり”の赤木博士。両手を腰に当ててミサトを睨みつける。

 

ミサト「う・・・そ、そんなコト言ったって・・・あの場合、他に作戦の立てようがなかったんだモン。それにィ、

    “G”は始末できたんだから、少しくらい大目に見てくれてもい〜じゃない、ネ?ネ?」

 

人差し指で頬をツンツンしながらスリ寄って来る同僚に向かって、E計画責任者はピシャリと言った。

 

リツコ「・・・・・とにかく、これからは二度とこういうコトがないようにお願いするわね、葛城三佐。」

 

ミサト「・・・・わかったわよぉ。」

 

伊吹「(クスクス)」

 

ショボンと自分の手元に目を落したミサトの前に、コーヒー豆の絵柄の入った缶があった。

すっかりヌルくなったそれを一息に飲み下す。

 

ミサト「甘っ・・・」

 

―――というわけで、エヴァ初号機と弐号機は事態が改善されるまでケージに拘束。

    チルドレンたちは、しかたなく模擬体を流用しての訓練となった。

 

初号機模擬体(碇シンジ)

    シンジ「いったい、いつまで、ボクは“父さん”と戦い続けなければいけないんだろう・・・

        ・・・・父さん、どこへ行ったんだ。」

    ミサト『シンジ君、シンクロ率が下がってるわよ!意識を訓練に集中して!』

    シンジ「ハ・・・ハイ!」

 

弐号機模擬体(惣流・アスカ・ラングレー)

    アスカ「いくら作戦だったとはいえ、もうあんな恥ずかしいマネはゴメンだわっ・・・。いつのまにか

        関西弁も憶えちゃってるし・・・」

    伊吹『どうしたの?アスカ。何か悩み事?』

    アスカ「なんでもあらへんよ〜」

    伊吹『・・・え?』

    アスカ「な、なんでもないわよっ!!さ、訓練、訓練!」

 

零号機模擬体(綾波レイ)

    リツコ『どう?レイ。久し振りにプラグに入った感想は。』

    レイ「特に変わったトコロはないみたい・・・」

    リツコ『そう。基本的に、新しい零号機は旧型と同じ機体だと思っていいわ。システムはレイ専用に

        プログラムしてあるから、リラックスしていいわよ。』

    レイ「・・・了解。」

 

 

ヴィーッ!ヴィーッ!ヴィーッ!

だしぬけに、警報がセントラルドグマ全体に鳴り響いた。

 

日向『ドグマ内部に正体不明の物体出現!MAGIによる分析パターン・・・オレンジから青へ!“G”です!!』

ミサト「日向君、場所は!?」

日向『ちょっと待って下さい・・・・!!・・・・も、模擬体実験施設内!!ミサトさん達の足元です!!!』

ミサト「なんですって!!」

伊吹「葛城さん!先輩!アレを!!」

 

初号機模擬体に近い側壁から、次々と染み出すように人型の物体が現れた。

      

ミサト「プラグ射出!・・・急いでっ!!」

伊吹「ダメです!脱出扉付近にも“G”出現!!」

ミサト「リツコ!!」

リツコ「・・・・・・マヤ!レーザーを手動に切り替えて!!」

伊吹「ハイ!」

ミサト「リツコ・・・?!」

リツコ「自動だと状況の展開に付いていけない可能性が高いわ・・・マヤっ!レーザー、最大出力!!」

伊吹「ハイッ!」

リツコ「ミサト、ここは私にまかせてっ!・・・・やらせないっ、やらせないわよ!!“あのコ達”に指1本

    触れさせるものですかっ!!!」

伊吹「準備完了!いけます!!」

 

シュ――ン・・  シュ――ン・・  シュ――ン・・  シュ――ン・・  シュ――ン・・  シュ――ン・・

“G”の群を囲む三方の壁面から2機ずつ、計6機の熱線照射装置がせり出し、照準を一点にロックした。

 

リツコ「――発射っ!」

 

ズボゥッ――!!

 

初号機模擬体に最も接近していた一体が、6本のビームをコアに集中され、たまらず消滅する。

 

リツコ「お次は、こっち!」

 

ズバッ―――!

 

零号機模擬体に手を伸ばした一体が、触れる寸前で姿を消す。

 

ミサト「ハッ!・・・リツコっ!!」

リツコ「・・・くっ!」

 

ボンッ―――!

 

弐号機模擬体の頭上から降りかかった一体は、細かな粒子と化して溶けていった。

 

バシュッ―――・・  ビュンッ―――・・  ズバゥ―――・・  ・ ・ ・ ・ ・ ・

 

リツコ「・・・これで、ラストッ!!」

 

ボシュッ―――――・・

 

“G”発生から52秒、ついに最後の一体が姿を消した。

 

ミサト「ヤルゥ―――っ!リツコ!!」

伊吹「成功ですねっ!センパイ!!」

 

ところが―――肩で息をしているリツコを振り向いた2人の笑顔は、次の瞬間、見事に凍りついていた。

 

リツコ「ハァ、ハァ・・・・・どう?思い知った、『碇司令』?」

ミサト&伊吹「「 !!! 」」

 

絶対に聞いてはいけないコトを聞いてしまった・・・ような

リ、リ、リツコ・・・アナタ、ま、まだ?

せ、先輩・・・や、や、やっぱり?

 

リツコ「アラ?どうしたの。」

 

赤木博士が、クルリと2人に顔を向けた。

 

ミサト&伊吹((ひぃ・・!))

 

リツコ「私、何か言ったかしら?」

 

な、なんでもありません!―――プルプルッ、必死で首を横に振る2人。

 

ミサト「そ、それより、リツコ!えと・・・・い、いくら6本のレーザーを集中したからって、アッケなさ過ぎるわね?」

伊吹「A、ATフィールドを展開できないニュ、ニュータイプでしょうか?」

リツコ「・・・・え?そうね・・・どうしてそんなタイプが・・・」

 

全力で話を逸らそうと試みるミサトとマヤ。その努力が辛うじて実を結ぼうとした・・・その時

 

ジワ・・ジワジワ・・・・ジワッ

 

伊吹「えっ?・・・キ、キャ―――ッ!!」

 

モニタールームに、伊吹マヤの悲鳴が響き渡った。

床から涌き出るように続々と姿を現したのは、倒したハズの“G”。ただし、体長約5cm・・・。

10体余りのミニサイズ“ゲンドウ”は、足をすくませ怯えているマヤの両脚を次々とよじ登り始める。

 

伊吹「ひっ!イ、イヤッ!!・・・・・・アッ!」

 

マヤに取りついた“ゲンドウ”たちは、制服の襟元、袖の先、上着のスソ、服の合わせ目・・・あらゆる隙間から

伊吹二尉の身体へ侵入を開始した!

 

ミサト「あ、コラッ!」

リツコ「マヤッ!!」

 

伊吹「セ、センパイ・・・!た、助けて・・・」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 ここからは、大人の時間となります。18歳未満の方は、直ちに引き返してください。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

・・・・・ウソです。

 

と、とにかく(汗)、制服の中へ“ミニゲンドウ”<約1ダース>の侵入を許した若きオペレーターは、

モニタールームの床に倒れ・・・ぶるぶると震えていた。

 

伊吹「せ・・・先輩、わ、私ごと“G”を殲滅してください!・・・・・あっ」

 

マヤの身体が、ぴくんっと弾んだ。

呼吸が乱れ始めている・・・

 

リツコ「マヤ・・・!」

ミサト「リツコ・・・!」

 

伊吹「せ、先輩、・・・葛城さん、は・・・早く!で、でないと・・・私・・・・・・くっ!」

 

横倒しになったマヤは、両足を胸まで引きつけ、両腕で自分の身体を抱きしめて、迫りくる何物かに

必死に耐えながら、小刻みに震えていた。

 

ミサト「いったい、何が起こっているの?!」

リツコ「マヤ!!」

 

――――どやどやどや!

 

日向「葛城さん!大丈夫ですか!?」

青葉「さっきから応答がないから・・・」

 

伊吹「ああ〜〜んっ!」

 

日向&青葉「「うっ!――ぶわぁ!!」」

 

駆けつけた二人が、いきなり鼻血を大量に噴き出してノケぞった・・・・・この役立たず。

 

ミサト「男子立入禁止――っ!!」

 

ダラダラ鼻血を流し続ける二人を蹴り出し、ミサトが宣告する。

 

ミサト「モニタールーム内に使徒G発生!直ちにこの区画を封鎖します!!全職員に伝えるのよっ!」

 

日向&青葉「「ハ、ハヒッ!!」」

 

上を向いて鼻を押さえながら、慌てて駆け出して行く二人の青年オペレーター・・・・・まさに、無様。

 

プシュッ・・・

 

ミサト「邪魔者(?)は追い払ったわ!・・・・どう、マヤちゃんの具合は?」

リツコ「見ての通りよ・・・」

 

伊吹「くっ!・・・・・う・・・ぁああ!!」

 

細身の体にフィットした制服の下で、小さく、しかし、危険な存在が活動を続けている。

 

リツコ(まさか・・・マヤと生体融合するつもり?)

 

伊吹「あ・・・・ヒゲが!・・・・・・ヒゲが―――ぁ〜〜あ!!」

 

ミサト「と、とにかく・・・マ、マズイわね。」

 

リツコ(・・・・・『ヒゲ』?)

 

ぴくん、とリツコの眉が吊り上った。

 

リツコ(“ゲンドウ”・・・アナタは、何をしに来たの

 

伊吹「あっ・・・イ、イヤッ!!」

 

うら若きオペレーターの顔は紅潮し始めている。

 

マヤ、あなたは知らなくてイイのよ・・・・

 

どこかしら冷酷な光を帯びはじめたリツコの瞳が、身悶えする後輩を観察していた。

 

伊吹「・・・先輩!・・・センパァ〜〜イィ!!」

 

じたばた・・・

 

冷ややかな両の目が、フッと憐れむように細められる。

 

そう、苦しいのね・・・

助けてあげるわ、マヤ・・・

私が・・・

 

カッ、コッ!―――

 

ミサト「何をするの、リツコ!?」

 

リツコ「“ゲンドウ”!こっちを見なさい!!」

 

歯を食いしばって震えているマヤのすぐ側に立ったリツコは、大きく脚を開いて床を踏みしめ、

白衣を脱ぎ捨てると、ジッパーを下ろした上着を両手で掴み・・・・・ガバッ!と左右に開いた!!

白桃のような胸が顕わになる。

 

――――ちなみに、その斜め後方では・・・・・口をあーんぐり開けて、ミサトが完全に固まっているのであった。

 

リツコ「さあっ!」

 

ぷるんっ

 

胸をはだけ、仁王立ちの赤木博士。スカートの背中側に、いつのまに用意したのか自動拳銃が挟まれている。

 

と、伊吹二尉の制服の隙間から、ピョコピョコと“ゲンドウ”が顔を出した。

 

そうよ・・・アナタは、私だけのモノ

 

ニタッと吊り上るルージュの口元・・・

 

すると―――今やマヤの肉体から完全に離れた使徒“G”は、赤木リツコの足下に横一列で集合すると、

        片手をサングラスに添え、一斉に頭を軽〜くうなだれて――――冷笑を浮かべるのであった。

 

ミニゲンドウズ 『『『『『『『『『『 フッ。(ちょっと高い声で) 』』』』』』』』』』

 

ぶちっ

 

赤木博士の頭の中で、何かが「キレ」た。

 

リツコ「△※□×○≧◇!!!」

 

プチ!・・・プチ!プチ!プチ!・・・・・・・プッチン!!

 

<何が起こったのかは、恐ろしくて書けません。音声から想像して下さい>

 

ミサト「ハッ!」

 

活動停止から回復したミサトが見たもの・・・・それは、累々と屍をさらす“ゲンドウ”たちと、それを

帚とチリ取りで片付けている親友、さらに、その傍らでハァハァと息を切らして横座りしている伊吹

マヤの姿であった。

 

ミサト(なんだかよく分からないケド、終わったのね・・・)

 

葛城三佐がマイクに向かった。

ミサト「シンジ君!アスカ!レイ!上がってきてイイわよ。」

 

 

葛城ミサトの業務日誌より抜粋

 ○月○日   本日、18:45本部施設内に使徒G発生。

          同、19:00技術開発部技術1課赤木リツコ博士、独力にてGを殲滅

          以後、本部施設内にGの侵入を認めず。

          『母さんも私も、結局、女というコトかしら』と、赤木博士は語る。

 

 

―― 同日 23:30 赤木博士の研究室 ――

 

リツコ「・・・・狙いはコレだったのね。」

 

端末機のモニターに表示されているのは、エヴァ・オートパイロットシステムの最新プログラムデータ。

 

リツコ「マヤにほとんど任せっきりにしていたから・・・」

 

あのコ自身を乗っ取ろうとしたのね・・・私ではなくて

 

リツコ「・・・・・・・・・・」

 

ちょん

 

ペアのマスコット・ネコの顔がくっつく。

 

リツコ「ニャ〜ン・・・」

 

 

『綾波司令』 第11話「リツコ、怒る」 終

 

 

次回予告

初号機機、弐号機の不調によって、事実上の防衛機能を

喪失した迎撃都市に、巨大“G”襲来!

断末魔の第3新東京市に、人々の叫びがこだまする。

愛する人と友を救うため―――レイは、シンクロを開始した!

次回、『綾波司令』 第12話 「起動」

ヨロシクねン!


マヤ:わ、わ、わたしの清楚なイメージがぁぁぁぁぁぁっ!

マナ:あら? マヤさん。どうしたの?

マヤ:わたしにも一言、言わせて。

マナ:アスカに代わって貰ったのね。それはいいけど・・・名前がわかりずらいなぁ。

マヤ:わたしは、エヴァの中では唯一純潔を売りにしてるキャラなのよっ! なによこれぇぇぇっ!

マナ:でも、マヤさんって、赤木博士と・・・ごにょごにょ。

マヤ:先輩は別よっ。

マナ:例外は・・・いいんですね。

マヤ:このままじゃ、わたしのイメージが壊れたままじゃないぃ。サルベージしてぇぇ。>k100さん

マナ:じゃ、次は小さな冬月副司令の登場?

マヤ:いやーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!(TOT)
作者"k100"様へのメール/小説の感想はこちら。
k100@poem.ocn.ne.jp

感想は新たな作品を作り出す原動力です。1行の感想でも結構
ですので、ぜひとも作者の方に感想メールを送って下さい。

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