「いつまでもこのままじゃ・・・イケナイわね。」

丘の上は、風が吹いていた。

ブルーのルノー・アルピーヌV6ターボから降り立った彼女は、自分の手元を見つめた。

黒のコードをグルグルと巻きつけた留守録機能付きのプッシュホン。

繰り返し聞いた再生カードの声・・・

「さよなら、加持君。」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 綾波司令  第18話「捨てられた、電話」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

ミサト「どっせぇぇ――いぃ!!

しばし無言で見つめていたものを右手に持ち替えると、頭上高く左足を引き上げて、スポ根アニメも

顔負けの豪快なフォームから、気合もろともミサトは投げた。29.9歳の悲しみが込められた電話は、

45°の鮮やかな放物線を描いて、丘の下まで続く深い茂みの奥へと向けて小さくなっていった―――

ミサト「これで、いいのよ・・・」

 

        キ―――――ン (←電話飛行中)

          キ―――ン

            キ――ン

                    ・・ 

                   バサッ

           ガッツーン!!

                 「ぐはっ!!」

        「キャーッ! 人殺しーっ!」

 

総重量768gのプッシュホンが消えた茂みの向こうで、何やら悲劇が発生した模様である。

ミサト「ヤバ・・・」

一気に、シリアス調からコメディ調へと顔色が変わる葛城三佐。

やっぱ、資源ゴミの日に出すべきだったわ・・・と反省してももう遅い。

 

          ガサガサガサッ!

 

不心得者を引っ捕えに誰かが茂みを掻き分けて登ってくる。

ミサト「こ、ここはひとマズ・・」

―――ひとマズ・・・何だというのだろう?

 

          ガサガサガサッ!!

 

ミサト「逃げ・・」

ソ〜〜〜〜〜・・・

 

           ガサッ!

 

加持「なんだ、葛城じゃないか。」

長髪を無造作に後ろで括った男が、後頭部をさすりながら目の前に立っていた。

片手に持っているのは、受話器にヒビの入ったプッシュホン。

 

ミサト「・・・・・・・・」

 

加持「オマエ、あいかわらず無茶するなぁ。オカゲでタンコブができちまっ・・・葛城?」

 

・・・・ドサッ

 

愛車の半開きのドアに片手を掛け、今まさに乗り込もうとしていた葛城ミサトは、腰をかがめ、

後ろを振り返った情けない姿勢のまま、クルリと上を向いて――――気を失った。

 

 

彼女が目を覚ましたのは、ついさっき永遠の別れを告げたばかりの男の膝の上。

ミサト「・・・・・夢、じゃないのね。」

穏やかに見下ろしている不精面。包み込む掌の温もり。

ミサトの腕が伸びて、指先が顎のあたりに触れる。

かすかにチクリとするその感触・・・

ミサト「本当に、加持君なのね・・・」

両手がさらに伸びて、顎から頬、そして首の後ろへと回された。

加持「オ、オイ・・・葛城?」

ミサト「・・・・・・・」

押しつけられる唇、溢れ出る涙、そして抱擁・・・

ミサト「・・・・・死んだと思っていたわ。」

涙声が細く震える。

加持「・・・・そうか。」

互いの耳元で交わされるささやきは、仮面を脱ぎ捨てた大人の素顔。

ミサト「バカ・・・・責任取りなさい。」

加持「・・・スマナかった、葛城。」

 

 

Pirururu・・・

シンジ「ハイ、碇です。・・・あ、ミサトさん?」

アスカ「シンジィ〜、誰から〜?」

シンジ「え? そう・・・ですか。分かりました。・・・それじゃ。」

・・・Pi

シンジ「ミサトさんからだよ! 今晩仕事で徹夜だって!」

アスカ「エ〜〜〜ッ! それじゃ、晩ご飯待つことなかったんじゃない!」

シンジ「そうだね・・・」

アスカ「じゃ、早くしてよ〜! お腹スイたぁ〜〜!!」

シンジ「待ってて、いま温めるから・・・」

 

 

午前0時30分、第3新東京市内某所。

ミサト「加持君・・・」

加持「・・・何だ。」

ミサト「あの悲鳴上げてた女・・・誰なの?」

加持「・・・え!? た、た、たまたま通りかかった・・・だ、誰かだろう? し、知らないなぁ・・」

ミサト「あんな所に?」

加持「な、なんだよ、その目は? ・・・・は、話せば分かるって! ・・・・・む? ・・・・・・・・・葛城?」

ミサト「もう、どこへも行かないでね・・・」

加持「あぁ・・・約束する。」

 

 

翌日の発令所。

チルドレンを含む全員が集まっているそこへ、ミサトが含み笑いを浮かべて、後ろ手で登場した。

ミサト「みんな集合してるわね? 実わ〜ぁ、みんなに紹介したい人がいるの! ・・・・ジャッジャーン!! 

    ・・・・? 早く来なさいよっ!」

作戦課長の後ろから、ヤレヤレといった表情の男がネルフの制服姿で登場し、しぶしぶ片手を挙げた。

加持「ヤ・・・ヤア。」

シンジ「カッ・・!!!」

アスカ「・・・・・・・・カジ・・さん???!!!」

いるはずもない人物の姿を目の当たりにして言葉を無くす二人・・・

とりわけ、アスカは、たったいま木から彫り出された人形のように動かないのだった。

―――と驚いたのは、実はこの二人だけで・・・

リツコ「アラ・・・。加持君、もういいの?」

冬月「久し振りだな。」

オペレーター達の反応も同様であった。

日向「ども。」

青葉「ウスッ。」

伊吹「(ペコ・・・)」

  ・・・・・・

ミサト「エ―――ッ!? 何で驚かないのよォー??」

思惑がハズレて、下顎が落っこちそうになる葛城三佐。

リツコが、仕方ないわね、と説明を始めた。

リツコ「・・・ミサトが知らないのも無理はないわね。みんな、アナタに気を遣っていたから・・・。

    ・・・加持君ね、ずっとある所に入院・療養していたの。」

ミサト「ある所って・・・?」

続きを冬月が引き取った。

冬月「日本政府にも、ゼーレにも知られていないネルフの特殊施設だ。彼の場合、立場が微妙だったからな。」

ミサト「特殊・・・施設?」

もはや、ミサトは両手だらりである。

最後に、本人が説明を締めくくった。

加持「そういうことだ、葛城。・・・あの時、オレは、元相棒に一発お見舞いされたんだが、トドメを刺される前に

    飛び込んできた諜報部の連中に、逆に相棒の方が始末されてしまった。以来、オレは、副司令の監視

    の下、療養生活を送っていたというワケさ。お前が電話を投げた丘の下辺りで、な。」

冬月「せめて、『保護』と言って欲しいな。」

加持「イヤ、これは失礼しました。・・・副司令には感謝してます。それから、リっちゃんやみんなにも・・・」

リツコが『どういたしまして』と澄まして見せ、マヤや日向達は『いえいえ』と軽く首を振った。

加持「それに、レイ・・・いや、司令。御心配をお掛けしました。」

レイ「話は副司令から聞いているわ。」

まわりの過ぎたるココロ配りにより、自分一人カヤの外だったことが判明したのは、他ならぬ葛城ミサト様。

ミサト「じゃ・・・じゃ、なんで連絡してくれないのよっ!」

振り向き様に、加持の胸倉を掴み上げ、詰め寄る。

両目と口元を吊り上げたその形相は、映画版で戦自の兵士を撃ち殺した時の彼女に非常に良く似ていた。

トボケ上手な男の顔から、サア――・・と血の気が引いていった。

加持「し、仕方ないだろ? ああいう状況だったし・・・それに、オレ、重傷だったんだゼ?!」

ミサト「言い訳無用!!」

胸倉を掴んでいた両手が首へ伸びた。もちろん、キスをネダるためではなく、締め上げるために・・・

ミサト「今すぐ死になさいっ!」

加持「ぐあ、か、葛城・・・」

御愁傷様―――息を潜めてコトの成り行きを見守る発令所の面々。

・・・と、そこへ

アスカ「カジさん!!!!」

ミサトを押しのけるようにして、救いの女神が飛び込んできた。

赤いプラグスーツの両腕が加持の首へ回される・・・もちろん、こちらは、しがみつくために。

アスカ「カジさん!!!・・・アタシ、ずっと・・・ずっと待ってたのよ! バカシンジやミサトが何度も変なコト

    言って忘れさせようとしたけど・・・アタシはず――――――っと信じてたのよ!! 忘れた事なんて

    なかったわっ!!」

ひしっと、加持の胸に身を寄せるアスカ。さすがのミサトも、ここは引かざるを得ない。

加持「そ、そりゃぁ・・・ど、どうも。」

   伊吹「(ヒソヒソ)なんだか、加持さん、声が上ズってません?」

   リツコ「さながら、古女房の前で若い押しかけ女房に迫られる、憐れな浮気亭主というトコロかしら。」

   伊吹「(ボソッ)やっぱり、若さですよね。」

   リツコ「(ピキッ)そ・・・そうかしらね。」

一方、シンジは、そんなアスカの様子をうんざりした目で眺めていた。

シンジ(自分だって加持さんが死んだと思ってたくせに・・・・生きてるって判った途端にコレなんだから)

アスカ「カジさん! カジさぁ〜〜ん!!」

ぐりん! ぐりん! ぐりん!

シンジ(幸せそうな顔しちゃって・・・・・・・・・でも、加持さんが無事で本当に良かった)

立ち尽くして二人を見つめるシンジに、後ろから声が掛けられた。

シンジ「・・・・・・・」

レイ「碇君・・・」

ドキッ・・

レイ「どうしたの。」

シンジ「あ、うん。アスカ、喜んでるなって・・・」

レイ「・・・・そう。」

 

 

その夜のミサトのマンション。

リツコ「それでは・・・加持君のネルフ復帰を祝して、カンパイ!」

シンジ「カ、カンパイ・・・!」

ミサト「ヘイヘイ、そりゃヨカッタわね〜〜。」

アスカ「カジさん、どうして二人きりじゃないんですかぁ〜?」

アナタたちね・・・

赤木リツコは、喉元まで込み上げた激情を辛うじて呑み込んだ。

リツコ(加持君の復帰記念パーティーをするからゼヒ来てくれと言ったのは、ミサト達でしょ?)

加持「ま、そうコワイ顔すんなよ。」

加持がリツコに身を寄せてささやいた。

加持「ホントは、葛城だって喜んでんだからさ。」

それはそうかもしれないケドね・・・と、主催者二人を横目で見やるリツコ。

ミサト「へっ! だぁ〜れが。(グビグビ・・・)」

アスカ「カジさぁ〜ん!(スリスリ・・・)」

リツコ(まったく、やってらんないわね)

そんなリツコの目に、反対側の席で、黙ってジュースを飲んでいるシンジの姿が入ってきた。

リツコ「どうしたの? シンジ君。なんだか元気がないわね?」

シンジ「えっ! そう・・・ですか?」

原因はアレね。

アスカ「カジさ〜〜ん、ど――してアタシにTelしてくれなかったんですかぁ? アタシ・・・寂しくて、寂しくて、

    寂しくて、寂しくて、寂しくて、寂しくて、寂しくて、寂しくて(×10)・・・毎晩泣いちゃたんですよぉ〜?」

普通の男なら持て余すところだが、そこはさすがに“腐っても加持”である。

加持「そりゃ、光栄だな。アスカみたいなかわいい子に泣いてもらえるなんて。」

アスカ「そ、そんなことぉ〜(フリフリ!)」

リツコ「・・・・・・。」

シンジ君もこれから大変ね。

コップに注いだシャンパンを口へと運ぶリツコの耳元が、蛍光灯の光に輝いていた。

 

シンジ(・・・あんなうれしそうなアスカ、久しぶりだな)

ジュースに口をつけたまま、シンジは加持に抱きつくアスカを眺めていた。

シンジ(加持さんもうれしいんだろうな・・・)

と、不意にアスカがシンジに顔を向けた。

シンジ(?)

アスカ「(ンベっ!)」

シンジ(なんなんだよ? もー・・・)

さすがに不機嫌そうに頬を膨らませるシンジ。

 

リツコ(ふ・・・若いってイイわね)

30.6歳の本音が、軽くアルコールを含んだ吐息と共に吐き出された直後、玄関のチャイムが鳴った。

ピンポ〜ン―――・・・スタスタ――カチャ

レイ「復帰祝いのお酒・・・副司令から。」

日本酒らしき風呂敷包みを持ってレイが入って来た。

ミサト「アラ! いらっしゃ〜〜い! レーイ!!」

トン・・・

レイ「それじゃ。」

そのままクルリと背を向けて帰ろうとする制服姿の少女司令。

シンジ「エッ? もう帰っちゃうの?」

ミサト「なによ〜、レイ? こういう時はみんなで一緒に楽しむものなのよ!」

レイ「・・・・・・。」

しばし立ち止まった後、スタスタと引き返してきたレイは、ストンッとシンジの隣に腰を下ろした。

シンジ「あ・・・」

肌が触れるほどに近づいたレイを意識して、シンジの顔が赤くなる。

ミサト「さぁ〜、レイ! 駆けつけ3杯っていうからね〜・・・」 

リツコ「ミサトッ! レイにヘンなものを飲ませないでよっ。」

コポコポコポ・・・!

ミサト「ヘンなものとは何よ? 失っ礼ね〜。ジュースよ、ジュース! あたしだって分かってるわよ〜! 

    ・・・ハイ、どーぞ。」

半信半疑でコップを見つめたレイは、飲む前に、隣で黙っているシンジを振り返った。

その目が、かすかに曇る。

レイ「・・・楽しいの? 碇君。」

シンジ「え! う、うん・・・。」

アスカ「む・・・。」

そんな二人の向こう側で、一瞬目を吊り上げる少女とその様子を微笑ましそうに眺めている男。

 

リツコ(ますます、シンジ君大変ね・・・)

他人に愛される事に不慣れなのよね、誰かさんと同じ・・・・・・・・・・・・・・・・・誘惑しちゃおうかしら?

―――お願いだから、これ以上の混乱は勘弁して下さい。

 

加持「ところで、シンジ君。」

シンジ「・・・えっ! ・・・ハ、ハイ。」

いつのまにか、ビールの入ったコップを片手に、加持がシンジの横に座っていた。

加持「・・・碇司令のことは、知っているよ。・・・・・いろいろと大変みたいだな。」

シンジ「は・・・はい。」

加持「及ばずながら、オレも応援させてもらうよ。ま・・・・・気を落さずに、な。」

シンジ「はい・・・・・ありがとうございます。」

ん? なんか暗いな・・・片方の眉を吊り上げて、加持が横目でシンジの様子を窺う。

加持(ハハ〜〜ン・・・さては)

急に、加持がシンジに顔を寄せた。

加持「・・・で、どうなんだい、シンジ君?」

シンジ「な、何がですか?」

酒臭い息に辟易しながらも、耳を傾けるシンジ。

加持「アスカと・・・だよ。それとも、レイかな? どうなんだい、最近?」

シンジ「ど、どうって・・・?」

加持「特にアスカは、なかなか意地っ張りな所があるからね・・・シンジ君、苦労してるんじゃないか?」

にやりと微笑む口元がシンジの顔を明るくする。

シンジ「・・・そう、ですね。」

このとき、シンジの向こう側からチラリと投げ掛けられた視線が、加持の目に止まった。

加持「おっと・・・。(ヒソヒソ)可愛いもんだな、女の子ってのは・・・そう思うだろ、シンジ君?」

シンジ「は、はぁ・・・」

アスカ「男同士で何ヒソヒソ話してるのよっ! カジさ〜ん! バカシンジなんか放っといて、アタシと

    お話しましょ〜よぉ?!」

空いている方の側から、アスカが加持の腕を引っ張っていた。

加持「ハイハイ・・・じゃ、また後でな、シンジ君。」

加持はシンジに向かって片目をつぶると、アスカに引かれてテーブルの反対側へと移っていった。

シンジ(加持さん・・・)

シンジの横では、レイが静かに一杯目のコップを空けようとしていた。

 

レイ「(コクンコクンコクン)」

シンジ「あ・・・綾波。そんなに飲むと・・・・。それに、それ・・・」

レイ「何・・・。」

心配そうなシンジの顔を、レイがぽ〜〜っと見つめ返していた。

目元がほんのりと桜色に染まっている。

シンジ「だから、綾波の飲んでるそれって・・・」

レイ「(コクンコクン・・・)・・・おいしいわ。」

 

その後、宴会は、次第に混乱の様相を見せ始め・・・・

ミサト「ヒック・・・ところでさぁ〜、『8年前に言えなかったコトバ』って何なの?」

はっ・・・・

加持「それはな・・・葛城(キリリッ)」

ミサト「みんなぁ――! 聞いて、聞いて!! これから、このバカがあたしにプロポ・・・(フガフガ!)」

加持「バ、バカ! やめろ・・・こんなトコで!!」

一升瓶を片手に立ち上がったミサトの口を、加持が必死になって塞いでいた。

ミサト「(フガ)なによ〜! イイじゃない、ど――せその内オヒロメするんだからぁ〜。みんな、聞いてぇ――!!」

アスカ「何よぉ〜〜、ミサト? ウルサイわねぇ〜〜! 寝かしてよぉ〜〜!!」

ムクリと、上半身だけ持ち上げたアスカが、寝ぼけ眼で抗議の声を上げる。

リツコ「(ムスッ・・・・)グビグビ・・・キュ〜〜・・・」

テーブルに両肘を突き、ひとり黙々とコップ酒をアオり続けるリツコ。

シンジ「・・・ゴメン!・・・・ゴメンよ、アスカ!!・・・ムニャムニャ・・・」

夢の中で、シンジが必死にアスカに謝っている。

レイ「・・・・・私は特務機関ネルフ総司令、綾波レイ・・・なんだかとっても・・・気持ちが悪いの・・・う〜」

レイはペットボトルとビンの間で、うつ伏せになって沈没していた。

ミサト「あたしはぁ――! くぉ〜〜のバッカ男とぉ――! 結っ・・・」

加持「うわわぁぁ〜〜〜!!」

・・・・バタンッ

加持「うん?・・・・」

ミサト「ぐぉ――〜〜・・・ぶひゅるるる・・・・すぴ――・・・・・・・・・バカ・・・・心配したんだから・・・・ぐぅ〜・・」

ヤレヤレ、眠ってくれたか・・・・

 

 

酔いつぶれたミサトとアスカとレイ、それにシンジを残して、加持はそっと席を立った。

ベランダへ出て、ポケットから取り出したタバコに火をつける。

リツコ「まだ、療養中でしょ?」

加持がくわえたタバコを、リツコの白い指が取り上げた。

そのまま、それを自分の唇に運ぶと、さも美味しそうに煙を吐き出す・・・

加持「その節は、リっちゃんにはイロイロと世話になったな。・・・改めてお礼を言うよ。」

リツコ「言葉だけ?」

伏せた睫毛の下から流し目が送られる。

加持「そうだな・・・・・そりゃ、礼儀に反する・・かな」

加持の顔がリツコに近づいた。

が、リツコはするりと身をかわすと、ベランダの胸壁に背中を預けた。

リツコ「冗談よ、加持君。あのコ達に叱られちゃうわ。」

加持「ん・・・・?」

リツコにつられて振り返った加持の前に、ガラス戸をはさんだ明るい部屋の中で、幸せそうに眠っている

4人の姿があった。

加持「帰ってきたんだな・・・オレ。」

俯き気味に目を伏せたリツコが、加持の感傷に釘を刺した。

リツコ「感慨に耽るのもいいけど、仕事の方も忘れないでね。」

加持「分かっているさ・・・・」

振り仰いだ夜空に、小さく、星が瞬いていた・・・

 

 

『綾波司令』 第18話「捨てられた、電話」 終

 

 

次回予告

次々と使徒の情報を取り込んでゆく“G”は、

ついに第14使徒ゼルエルの能力を身に付けた!

ジオフロント内部での戦闘を余儀なくされるネルフに、今最大の危機が迫る!

次回、『綾波司令』 第19話 「シンジ、迎撃」

お楽しみにねンッ!


マナ:あら? アスカぁ? 加持さんが戻ってきて、嬉しそうねぇ。

アスカ:そ、そりゃぁ、生きてるって素敵なことじゃない。

マナ:後はわたしに任せて、加持さんと楽しくしてなさいって。

アスカ:後って何よ。

マナ:わたしは、シンジと楽しくするもん。

アスカ:ふざけたこと言ってんじゃないわよっ!

マナ:バカシンジなんかほっといて、加持さんとお話したいんでしょ?

アスカ:あれは・・・。ファーストなんかと楽しそうにしてるからよっ!(ーー#

マナ:この調子じゃ、シンジもアスカに愛想尽かす日も近いわね。

アスカ:そんなこと許すもんですかっ!

マナ:じゃぁ、シンジが本当にアスカが好きか勝負しない?

アスカ:いいわよ。絶対勝つんだから。

マナ:死ぬ迄あなたがシンジに近寄らなくても、シンジが愛想つかさなかったらあなたの勝ちよっ。

アスカ:フンっ! そんなくらいでシンジが愛想つかしたりしないもんっ! いいわよっ!

マナ:やっぱり・・・ばか。
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