いつか私が読んだ本の中に、こんな話があったわ・・・
人形作りのおじいさんの手で、木から作り出された人形は、自分を“ひと”だと思い込む
だけど、いくら自分がそう思っていても、“ひと”ではないの
人形は・・・やっぱり・・・人形
「何言ってるんだよ、綾波・・・」
「碇君、あなたは私のことを知っている。」
「それは・・・・」
「そして・・・彼女も。」
ガコン―――
「エッ・・・・アスカ!?」
「・・・シンジ、ファースト。」
「どうして・・・!?」
「ファーストが、レイが教えてくれたのよ・・・」
「なぜっ!??」
「碇君・・・私は、あなたと一つになりたいと思っている
でも、それは・・・・無理
そのことも・・・分かっているわ
碇君が、私を見る目とアスカを見る目・・・
本当は碇君も気づいている
でも、
あなたと結ばれなくても、
一緒にいることは・・・・愛することはできるわ。」
「綾波?!」
「バ、バカッ! 何・・・何勝手なこと言ってんのよ・・・?」
「・・・・・・・アスカ、碇君を大切にしてあげて。」
スタスタスタ
「あ・・・綾波!!」
「レイ!!」
―――ピタッ
クルリンッ―――
「なーんちゃって。」
「あや・・・え?」
「な・・・なん、ちゃって??」
「・・・カワイソウでケナゲな少女だったのは、昔の私。」
「綾波、む、『昔』って・・・」
「よく考えれば――考えなくてもだけど――今の私は、『司令』。
綾波レイ・・・やらせていただきます。」
アスカ(こ、こいつはぁ〜〜!)
これが、『綾波司令』の本来の姿です。 <をい・・・
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綾波司令 第22話「ゲンドウダイバー」
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3日前――――彼は彼女の元から逃げ出した。
『綾波、どうしたの? 顔が真っ青だよ。』
『なんだか・・・気分が悪いの。』
『大丈夫?』
『少し、苦しい・・・』
『シンちゃん、レイを家まで送ってあげて。』
『ハイ。・・・歩ける、綾波?』
『・・・ええ。』
『正義のヒーロー碇シンジも、一皮ムけば健康な男の子! セーゼー送り狼にならないようにねぇ〜。』
『な、なに言うんだよ! アスカ?』
『冗談よっ。シンジにそんな度胸あるワケないでしょ。』
『こんな時に冗談なんか言うなよ。』
『な、なによ、バカっ!』
『アスカこそっ!』
『碇君・・・苦しい。』
『アッ、ごめん・・・行こう。』
『お・気・を・つ・け・てぇ〜!』
『アスカ、いい加減にしなさいっ。』
・・・・・・・
『今日はこのままベッドで横になってるといいよ。・・・それじゃ、帰るね。』
『・・・・碇君』
『どうしたの?』
『・・・・・・一緒にいて。』
『えっ?』
『まだ・・・苦しいの。』
『・・・・・うん。』
・・・・・・・
『ハア、ハア!』
『(すごい熱だ!)綾波、大丈夫? ・・・そうだ、リツコさんを!』
『(グイッ)ま・・・まって。そばに・・そばにいてくれるだけでいいから・・・』
『でも!』
『(ハア、ハア・・)本当に・・・大丈夫だから。だから・・・碇君・・・』
『う・・・うん。』
・・・・・・・・
『アスカ、もう寝なさーい。明日に差し支えるわよー。』
『分かってるわよー。この番組終わったら寝るから。』
『シンちゃんだったら、心配無いわよー。それに、夜更かしは美容の大敵よーっ。』
『・・・そんなんじゃないわよっ!』
『ププッ・・・・じゃ、オヤスミィ〜。』
『一生寝てなさいっ! ・・・・・・・・・・言われなくても、もう少ししたら寝るんだから・・・』
・・・・・・・・
『う・・・ん。あ、もう朝だ・・・綾波は?』
『(スウ、スウ・・・)』
『(よく寝てる・・・)熱は・・・・大丈夫みたいだ。』
『(スウ・・・)ん・・・・シンジ・・・』
『エッ!?(綾波・・・今、何て・・・?)』
『(・・・ぽっ)』
(本当に寝てるのかな・・・??)
『(スウ、スウ・・・)』
(・・・綾波の寝顔って、まるで・・・・まるで・・・・・・・まるで・・・・・・・・・・)
『・・・・母さん』
『(スウ・・)・・・な・・に・・』
ガタンッ!
(綾・・・波! やっぱり・・・僕は・・・!)
『ん・・・・うん。』
ガチャッ―――――プシュンッ
『・・・・碇、君?(キョロ、キョロ)』
2日前―――彼女は男の胸の中で泣いていた。
『アタシは、カジさんのことが好きっ!! カジさんのためだったら何だってしてあがられるわっ!!』
『・・・アスカ。』
『カジさんが死ねと言ったら、死んだっていいわっ! 愛してるのっ!!』
『それは、違うな・・・アスカ』
『えっ・・・・』
『アスカが愛しているのは、俺ではなく、シンジ君だ。』
『 ! 』
『本当は、アスカだって気づいているはずだ。』
『・・・・・・・・カジさん』
『自分の気持ちに嘘をついてはいけない。自分に正直になるんだ、アスカ。』
『そんなの・・・そんなの判ってる・・・判ってるわ!! それでも、自分が許せないのっ!
カジさんが好きで好きで・・・大好きだったのに!! ・・・それなのに! あんなヤツの
コトをいつのまにか・・・・・。そんな自分が許せないのよっ!!!』
ボロボロ――
『アスカ・・・・君は、良い子だ。』
『ごめんなさい・・・・ごめんなさい、カジさん・・』
・・・・・・・・・
ミサト「アラ? 加持君、シャツの胸んトコ濡れちゃってるわよ?」
加持「ん? ・・・これか。」
ミサト「アンタ、また・・・!」
加持「バ、バカ、早とちりするなっ! これは・・・アスカのだ。」
ミサト「アスカの・・・」
加持「・・・・・・怖いのさ、シンジ君に拒絶されるんじゃないかと怯えている。」
ミサト「・・・あの子の場合、特に・・・だものね。」
加持「・・・ああ。」
ミサト「・・・・・・」
加持「・・・・・・」
ミサト「・・・・ねえ、加持君。」
加持「・・・ん?」
ミサト「こんなシリアス調でイイの?」
加持「確かに・・・ちょっと、な。」
1日前――――葛城家は一見平和だった。
カキカキ・・・
『何してるの、アスカ?』
『見て判らないの? 手紙書いてるに決まってんじゃん。』
『へぇ、誰に? あ・・・加持さん、とか?』
『そ――よ。』
『・・・・・じゃ、もしかして・・・ラブ・レター・・?』
『!!・・・・ま、そんなもん・・・・・ね、見せたげよっか?』
『い、いいよっ。』
『・・・・気になる?』
『べ、別に! どうでもいいよ、アスカの手紙なんか・・・』
『そ、そりゃ、悪ーぅござんしたネ! じゃ、ファーストのなら良いってぇの!?』
『ど、どうして綾波が出て来るんだよ!?』
『・・・アンタ、好きなんでしょ。ファーストの・・・レイのこと。』
『 ! 』
『別に隠すことないじゃん。アタシにはカジさんがいるんだし・・・・・どうしたの?』
『アスカ、綾波は・・・綾波は・・・』
『・・・・・・・』
『綾波は・・・・・。ううん、なんでもないんだ。』
『・・・・・・・チョットォ〜、話してたら間違えちゃったじゃないっ。』
『あ・・・ゴメン。あっち行ってる、ね。』
『・・・・・・・バカ。』
カキカキ・・・カキ
『・・・・ふぅ。』
(さよなら、カジさん・・・)
―――湖尻―――
バロロロロ・・―――
ミサト「“ゲンドウ”を肉眼で確認・・・か。カンベンしてよねぇ〜。」
クリンクリンクリン―――
サングラスに右手を添えながら、空中に直立した“ゲンドウ”が、そのままの姿勢で
オルゴール人形よろしく回転している。
茶―青―紫―赤―茶
周期的に変化するレンズの色が、添えた指先に反射して、それを同色に染めていた。
ミサト「ん?・・・いつになくシンプルね。作者もネタ切れかしら? ま、あたしには関係無いケドねっ!」
ギャンッ―――キュッ、キュッ!!
―― 発令所 ――
青葉「大湧谷上空に滞空中の“G”は、現在毎秒12.5°の割合で定点回転を続けています!」
日向「MAGIによる“G”の分析結果・・・発生理由不明! 目的不明!」
伊吹「エヴァ初号機並びに弐号機、発進準備完了!・・・いつでもいけます!」
オペレーター達の報告が、発令所の各部署からテキパキと上がってくる。
しかし、司令塔に立つ冬月の表情は冴えなかった。
冬月(碇・・・・このパロディは、さすがにマズイぞ)
いや、嵐の前の静けさを漂わせるメインスクリーンを前に、シブい顔の人物がもう一人。
リツコ(明らかに第16使徒のコピーね・・・・。マヤ、このSSからの脱出ルートを確保しておくのよ)
―――となると、今回一番気分を害しているのは、やっぱり・・・
レイ「・・・・・・。」
一見ポーカーフェイスの、この方に違いないのである。
レイ(この設定は・・・何?)
レイ「ふっ・・・」
口元に不気味な微笑みを浮かべる綾波司令。
そこへ、葛城三佐がバタバタと駆け込んできた。
ミサト「ゴメン! 遅くなっちゃって!」
お約束通りの展開に、赤木博士が露骨にイヤそうな顔をする。
リツコ「ミサト、何してたの?」
だがしかし、今回は言い訳をする葛城三佐なのである。
ミサト「チョッチ事故っちゃって・・・・タハハ。」
日向「葛城さんの車、年代モノですからねぇ・・・」
青葉「ちゃんと定期点検しとかないとヤバイっすよ。」
伊吹「あの・・・余計な事かもしれませんけど、この間オイル漏れてました・・」
ミサト「ぐ・・・。」
なんだ、こりゃ・・・・
と、そこへ、第1種戦闘配置の発令所にはおよそ相応しくないラフな服装の男がフラリと入ってきた。
加持「今度腕の良い板金屋を紹介してやるよ。」
ミサト「加持君!・・・・アンタ、この前は第21話スッとばしてドコ行ってたのっ!?」
ここを幸い、加持に話を振るミサト。
(そりゃ作者の都合だろ?)
そう言いたい加持だったが、脱線した話の修正が優先事項である。
加持「それより・・・そろそろ、シンジ君達を出撃させた方が良いんじゃないか?」
ミサト「分ってるわよぉ・・・・シンジ君! アスカ!」
シンジ・アスカ『『ハイ。』』
ミサト「今回のアイツは、間違い無く第16使徒のコピーよ。十分注意してっ!」
シンジ・アスカ『『了解!』』
ミサト「エヴァンゲリオン初号機並びに弐号機、発進っ!!」
バシューッ! バシューッ!
―――大湧谷―――
シンジ「気をつけて、アスカ。」
アスカ「アンタもねっ。」
それぞれパレットガンとスマッシュホークを装備したエヴァが、回転を続ける“G”を挟み込むように、
山陰を利用しつつ、じりじりと接近する。
と、不意に“ゲンドウ”の回転が止まった。
シュォオオッッ!
突然、左右の腕が初号機と弐号機に向けて高速で伸び始めた!
シンジ「来た!」
初号機が、迫り来る右腕に向けてパレットガンを連射する。
アスカ「コンノォーッ!」
弧を描いて接近する左腕を睨んで、弐号機がスマッシュホークを振り上げた。
―――が、“ゲンドウ”が伸ばしていたのは両腕だけではなかった!
シンジ「エッ!?」
アスカ「なっ!?」
急速に戻ってゆく“ゲンドウ”の両腕・・・
一瞬アッケに取られる二人。
そんな彼等の足下から・・・オヤジの両足が忍び寄っていたっ!
ミサト『・・・・下よっ!! シンジ君!! アスカ!!』
シンジ「わぁっ!!」
アスカ「イヤァッ!!」
ズブブブ―――
腕からワンテンポ遅れて伸ばされた、スネ毛だらけの両足―――その足の裏が
初号機と弐号機の機体にペッタリと貼り付き、融合を開始する。
―― 発令所 ――
冬月「イ、イカンッ!」
沈着冷静で鳴る副司令が顔を引き攣らせた。
(ヤツは重度の水虫持ちだぞっ!!)
―――さすがにそこまではコピーしてないと思うが・・・
伊吹「初号機、弐号機、共に“G”の侵食を受け始めています! 生体部品が・・・!」
(ふ、不潔っ!)そんな叫び声を上げたい伊吹マヤ、2○歳。仕事が恋人。
ミサト「シンジ君! アスカ! 応戦してっ!!」
鋼―ハガネ―の精神の持ち主、葛城ミサト。特性、味覚オンチ。
ミサト(鼻毛・口臭・水虫。とうとう、オヤジの最終兵器を駆使し始めたわネ・・・手強い!)
そ、そうですか・・・・(汗)
シンジ「くっ!」
ジャキッ!!
初号機が、パレットガンを直接“G”の顔面へ向けた。
―――私を撃てるか・・・・シンジ
銃口越しに、真っ直ぐにシンジを見返す“ゲンドウ”。
シンジ(父さん・・・!)
アスカ「シンジッ! 何してんのよっ!! コイツはアンタの『お父さん』じゃないのよ!」
自機と一体化を始めた足(?)に向かって、改めてスマッシュホークを振り上げる弐号機。
―――と、
グルリッ―――“G”が、今度は弐号機に顔を向けた。
アスカ「な、なによっ・・・!?」
すると、それが―――アスカのよく知る“ある人物”の顔へと変化していった・・・・
アスカ「 !!! 」
リツコ「あれはっ!」
一斉にざわめく発令所。
そんな中、葛城三佐が辛うじて意味の通る言葉を吐き出した。
ミサト「まさか・・・シンジ、君?!」
シンジモドキ『フッ・・・・アス・・カ』
アスカ「な・・・なによ、これ・・?」
最初の『フッ』はともかく、脳に直接話し掛けてくるようなその“声”は、シンジ本人と全く
区別ができなかった。
シンジモドキ『アス・カ・・・・ボク・・アスカの・・気持ちが・・判らない・・よ』
少しずつ滑らかさを増すそのセリフに合わせて、苦しそうな表情を見せる“シンジ”(+サングラス)。
アスカ「シ・・・シンジ? シンジなの??」
弐号機が完全に動きを止める。
一方・・・
―――初号機エントリープラグ―――
シンジ「父さん・・・アスカに・・・アスカに何をするつもりだ!?」
―――フッ・・・お前の・・・“心”・・を・・・見せてやる・・・だけだ
シンジ「何だって!?」
―――見ろ、シンジ・・・これがお前・・・・惣流・アスカ・ラングレーに対する・・お前の・・心だ
シンジモドキ『アスカ・・・どうして加持さんとばかり・・・仲良くするんだよ・・・きっと・・ボクのことなんて・・・
ボクのことなんて・・・・どうでも良いんだ・・・!』
アスカ「違う・・・違うのよっ、シンジ!」
―――初号機エントリープラグ―――
『違う・・・違うのよっ、シンジ!』
開きっぱなしの通信回線から、アスカの声が流れてくる。
シンジ「エッ・・・違うって・・・?」
――― 発令所 ―――
『アスカ・・・どうして加持さんとばかり・・・仲良くするんだよ・・・きっと・・ボクのことなんて・・・
ボクのことなんて・・・・どうでも良いんだ・・・!』
『違う・・・違うのよっ、シンジ!』
『エッ・・・違うって・・・?』
状況をモニター中の発令所に、三つの声が大音量で響き渡る。
レイ「・・・・・・。」
口元で両手を結んだまま、微動だにしない綾波司令。
もう少しで、ネルフ本部第1発令所にATフィールドが発生するかもしれない。
冬月(レイ君!? ・・・これは、うっかり声を掛けられんな)
ズブブブ・・―――
伊吹「侵食、さらに進行! 初号機は・・・3%、弐号機は・・・弐号機はすで生体部品の6%以上が
“G”と融合しましたっ!」
リツコ「これ以上は・・・ミサトっ!」
ミサト「シンジ君! アスカ! 武器を取るのよっ!!」
スッ―――コッ、コッ、コッ・・・プシュン!
冬月(レイ君、急ぎたまえ・・・)
シンジモドキ『・・・ボクのことなんて・・・アスカはどうでもいいんだ・・・ボクのこと、嫌いなんだ』
アスカ『違うのよ!! シンジ・・・そうじゃないのよっ!』
シンジ『父さん、止めてよ!』
加持「いやはや、壮大な痴話喧嘩だな・・・」
ミサト「冗談言ってる場合じゃないでしょっ! それ以上無駄口聞いたら、ココからたたき出すわよっ!」
加持「ときに・・・葛城、司令はドコに行ったんだ?」
ワザとらしく手をかざして、レイを探す真似をする加持。
ミサト「エッ!? レ、レイ!??」
慌てて後ろを振り返るミサト。
後ろ手を組んでたたずむ冬月の隣の長官席は、空っぽだった。
リツコ「まさか!? ・・・副司令!!」
これまた血相を変える赤木博士に向かって、冬月はポツリと一言。
冬月「彼女も、乙女だからな。」
レイ『エヴァ零号機、発進準備完了。』
伊吹「エエッ!? いつの間に??」
メインスクリーン上に突然現れたレイが、無表情に口だけを動かしている。
驚いているマヤを無視して、勝手に発進準備を整えていく綾波司令・・・
レイ『・・・エヴァ零号機、発進。』
バシューッ!!
ミサト「レ・・・レイ?」
リツコ「完全に目が据わってたわね・・・」
冬月「もはや、誰も彼女を止められん。」
ズゴゴゴゴッ!―――ガシャンッ!!
レイ「・・・アレね。」
リフトオフした零号機の向こうの方で、相変わらず大騒ぎしているエヴァニ機と“G”。
ずかずかと近づく零号機―――
アスカ「だったら、どーしてレイの顔色ばっか見てんのよっ!!」
シンジモドキ『ち、違うよ! アスカ・・・誤解だよ!』
シンジ「止めてよ! 父さん、みんな見てるんだよっ!!」
―――シンジはともかく、弐号機と“G”は、いつの間にか立場が逆転してたりする。
レイ「・・・・(ムスッ)」
ずかずかずか―――――ズムッ
ミサト「あっ・・・」
リツコ「ま・・・」
伊吹「えっ・・・」
加持「やるな、レイちゃん・・・」
大股で歩み寄るやいなや、イキナリ零号機が“G”のサングラスに右手を突っ込んだ。
シンジモドキ『誤解だよ、アス・・・・!!』
アスカ「シンジなんて、最っテ・・・・・エッ?」
シンジ「違うんだってば・・・・あ、綾波!?」
ズムズム―――
伊吹「な・・・なに、これ!? ゼ、零号機が・・・逆に“G”を侵食していますっっ!!!」
『信じられない』という顔で、マヤが端末機のモニターを見ている。
リツコ「どうやら、レイの逆鱗に触れたみたいね。」
ミサト「ヒゲオヤジ・・・やりすぎたのね。」
弐号機の機体から、“G”の肉体がヘロヘロと離れていった。
伊吹「弐号機、解放されます。」
―――――――――――――――――――
「・・・誰・・・だ・・・」
私を見て、思い出さないの・・・
「・・・レ・・イ・・・」
そう・・・・そして・・・
「・・・・ユ・イ」
碇君は、ときどき私を見ておびえるわ・・・
「自分・の・・・だから・・な・・・」
でも、私は碇君の母親じゃない・・・
「そう・・だ・・・」
私は、私・・・・だけど、碇君にとって私は・・・
「・・・・・そう・だ」
!・・・・私が碇君と出会っていなければ・・・彼は・・・きっと・・・
「・・・・・・」
碇君は苦しまずにすんだ・・・
「・・・・・・」
初めて・・・・・“あなた”を『恨む』わ・・・・
「・・・・・・・・」
私は・・・・・私は・・
「・・・・・ユ・イ・・・」
―――――――――――――――――――
伊吹「どうしてっ!!?? 零号機のATフィールドが、徐々に反転していきますっ!」
リツコを振り返ったマヤの声は悲鳴に近かった。
リツコ「そんなっ!」
加持が発令所の面々をさしおいて身を乗り出した。
加持「レイちゃん、気持ちをしっかり持つんだ! 君の前にいるのは碇司令じゃない!
アダムの分身だ!!」
ミサト「な・・・なんですってっ!!??」
加持の発言に愕然とする発令所一同。
加持「説明は後だ! 葛城!!」
加持の叱咤にハッと気を取り直したミサトは、スクリーンに向かって叫んだ。
ミサト「聞こえる、アスカ! 零号機と初号機を“G”から引き離すのよっ!」
アスカ「で、でも、どうやって!?」
スマッシュホークを手にしたまま、弐号機が“G”とエヴァ2機を見比べる。
―――すでに肘の所まで“G”との融合が進んでしまった青い機体
―――融合の初期状態ながら、いまだ“G”と接触中の初号機
アスカ「シンジ! アンタもなんとかしなさいよっ!!」
たまらずアスカが叫び声を上げる。
シンジ「くっ・・・! で、でも・・・どうやって!」
シンジにも打開策は見えなかった。
ドクンッ――――その時、初号機の両眼が輝きを増した。
―――零号機エントリープラグ―――
・・・レイ・・・・レイ
レイ「! アナタは・・・」
・・・ゴメンナサイ・・・レイ・・・あなたの苦しみは・・・すべては・・・私から始まったこと・・・
レイ「・・・・・・。」
・・・でも・・・悲しむのは・・・もう・・お止めなさい・・・
レイ「え・・・」
生まれてきた魂は・・・あなた・・・・私ではない・・のよ
レイ「 ! 」
・・・・行きなさい・・・レイ・・・・あなたの・・・あなたの・・・・シンジの所へ・・・
――― 発令所 ―――
メインモニターの中で突如映像が歪んだ。
同時に、アラームが響き渡る。
ミサト「どうしたの!?」
青葉「きょ、強烈なATフィールドですっ! 初号機から発せられた模様!」
伊吹「・・・スゴイ! “G”のATフィールドが急激に抑え込まれていきますっ!」
加持「副司令・・・」
冬月「うむ・・・彼女が再び覚醒したようだな。」
ズッ―――サングラスから、零号機の右腕が押し出されるように抜け出てきた。
コックピットの中で、レイが呆然とした表情を浮かべている。
人々の驚きをヨソに、覚醒した初号機は片手で“ゲンドウ”の首根っこを掴むと、その髭面に向けて
―――往復ビンタッをかましだした!!
ビンタッビンタッビンタッビンタッ!!!
―――さあ、アナタ・・・―――
――― 発令所 ―――
伊吹「痛そ〜。」
マヤが指の隙間からスクリーンを覗いていた。
日向「うへ・・・」
肩をすぼめ、上下の歯を噛み合わせて見上げる日向と青葉。
冬月「うむ。」
腕組みをして、何故か頷いている副司令。
言葉も無く、口を開けて見上げるミサトとリツコの同級生コンビ。
ポリポリと人差し指で無精髭を掻く加持。
―――弐号機エントリープラグ―――
アスカ「な、な、な・・・・」
―――初号機エントリープラグ―――
シンジ「か、か、母さん・・・」
ビタンッビタンッビタンッビタンッ!!!
―――もう・・・還りなさい―――
“ゲンドウ”『な、泣い・・て・・・いるのか・・・この・・私が?』
バチッバチッバチッバチッ!!!!
―――もういいから・・・カ・エ・リ・ナ・サ・イ―――
“ゲンドウ”『(コクコク!)』
ドロロロ〜
初号機が掴み上げていた“G”の肉体は、第2話同様、粘土状の物質に変化したかと思うと、
一気に初号機の手の中から地面へ崩れ落ちた。
それに合わせるかのように、初号機の目の光が静かに消える。
青葉「(・・・ハッ)・・・し、使徒G、消滅・・・しました。」
伊吹「初号機も、ATフィールド消滅・・・活動を停止しました。」
レイ(ありがとう・・・・“おかあさん”)
加持「結局・・・」
冬月「母親の勝利・・・だな。」
『綾波司令』 第22話 「ゲンドウダイバー」終
(おまけ)
「シ、シンジ・・・か、顔が赤いわよっ(ぽっ)」
「ア、アスカこそ・・・(ぽっ)」
すすすっ
「碇君。“あの人”から『許可』が下りたわ・・・(ぽぽっ)」
「ええっ!?」
「(ギョッ!)」
―――というワケで、お話の冒頭部へ戻るのです。
次回予告
少女が守り続けた街は、彼女の願い通り、そこにあった。
ぎごちなく心を通じ合った人々も、変わらず彼女の傍らにいた。
そして、始まりのための終末が近づく。
少女を「無」へと帰すために・・・
次回、『綾波司令』 第23話 「最後の“G”」
お楽しみにねンッ!
感想は新たな作品を作り出す原動力です。1行の感想でも結構 ですので、ぜひとも作者の方に感想メールを送って下さい。 |