「贖罪の儀式を始める。」

・・・もうすぐだな・・・私の夢がかなうのは・・・





光が世界を包み、人はひとつになる。







ここは・・・どうやら私の夢がかなえられたようだ。

人々の争いのない平和な世界だ。

人々の心が流れ込んでくる。

ふと私の心に強烈な憎悪の感情が流れ込んできた。










「あなたが、キール・ローレンツ・・・・・・」

「そのとおりだ。」










「私はあなたを許したりはしない。絶対に・・・・・・」



私はその瞬間、人々がばらばらになるのを感じた。





とってつけたようなThe Epistles 500万ヒット記念
彼の望んだもの
LAS×RKS Version






気がつくと、私はベッドに寝かされていた。

あの感じは本当だったのか・・・・・・

せっかく人々が1つになれたというのに・・・・・・

私はまた人々の醜い争いの世界で生きてゆかねばならないのか・・・・・・


1人の日本人であろう女性が部屋に入ってくる。

「おめざめのようですね。キール・ローレンツさん。」

・・・この声はどこかで聞いたことがあるような気がするな・・・

「そのとおりだ。私はキール・ローレンツ。君は?」

「私はNERV三佐葛城ミサトといいます。」

・・・思い出せない。どこかで・・・いや、そんなことは・・・

「君は私とどこかであったことはないかね。」

「いいえ。あなたとは一回も会っておりません。
 私はあなたのことを碇司令に今さっき聞いたとこですから。」

・・・嘘、だな・・・私のカンがそう言っている・・・

「少し考えさせてほしい。一人にしてくれないか?」

「かまいませんよ。あなたは逃げられませんから。ごゆっくり。
 ・・・と言いたいところなんですけどね、指令達が待ってますから、1時間後には迎えに来ますよ。」

彼女はバカにしたような笑みを浮かべ、出ていった。
逃げる気などないのだが・・・


私はベッドの上に起き上がってまわりをみまわす。
いたるところにNERVのマークが見える。
やはり、ここはNERV内、それも、おそらく病院だな。
それに、ここまで設備が整っているということは、私はVIP扱いということになりそうだな。

まあ、あたりまえか・・・・・・
彼女の話だと、1時間後に私は裁かれるようだな。
おそらく、彼女や、碇達に・・・・・・

・・・・・・どうやら、私の願いは理解してもらえなかったようだな・・・・・・



1時間後、彼女、葛城三佐とかいったな、が迎えにきた。
驚いたことに、碇ユイ博士もいっしょだった。

「さあ、キール・ローレンツさん。行きましょう。」



といっても、私はまだ歩くことができないので、ベッドごと運ばれていった。



彼女達はある部屋の前で立ち止まった。

「NERV総司令執務室」そこにはそう書いてあった。

碇の部屋か・・・・・・私の生涯もこれで終わったかな。

「あなた、入りますよ。」

「ユイか。待ちかねておったぞ。」

そこにはいると、碇とその横に赤城博士と冬月、そして加持リョウジ・・・うちのスパイだ・・・が、
それにファースト・サード・セカンド・フィフス、そして、惣流博士がいた。

・・・・・・なぜ、ファーストとフィフスがいるのだ・・・・・・
・・・・・・彼らはヒトではなかったはず・・・・・・

碇が口を開いた。

「これはキール・ローレンツ委員長。お待ちしておったぞ。」

ふ、私を裁くのを待ちかねておったのか。

「久しぶりだな、碇。ところで、何の用だ。」

「ちょっと、アンタ、ふざけんじゃないわよ。アンタの犯した罪、よーく分かってるわよね。」

セカンドが大声を出す。

罪、か・・・・・・

「あなたはセカンドインパクト・サードインパクトを起こし、多くのヒトを不幸にしましたね。
 そのことがどういうことか、おわかりですか?」

葛城三佐が言う。
・・・・・・そうか、この女性は葛城博士の娘だな・・・・・・

「僕は・・・あなたを許すわけにはいかない・・・こんなことのために綾波やカヲル君は・・・」

サードが憎しみをこめて言う。

このあと、彼らは私を殺す気だろう。
どうせ、殺されるなら言いたいことをしゃべってしまおうか。
死人に口なし、というからな。

「こんなこととは、どういうことかね?」

「僕は、あなたの理想のためだけに大切なヒトを失ったのです。
 なぜ・・・なぜ、あなたはこんなことをしようとしたのですか・・・」

決まり、だな。
地獄に落ちる前に、すっきりさせておいたほうがいいだろう。

「つまらない話だが、聞きたいかね?」

「なによ、シンジ。こんなやつ・・・・・・」

「まあ、いいだろう。聞こうではないか。」

「し、司令・・・」

・・・変わったな、碇・・・前はこんなに信頼されてなかったはずなのに・・・
・・・サードインパクトは確実にヒトの心に影響を及ぼしているようだな・・・



「私は、第2次世界大戦直前のドイツに生まれた・・・

そう、ここから悲劇が始まったのだ。



私が生まれたころのドイツは第1次世界大戦の法外な賠償金の影響で起こったインフレのつめ跡が所々に見られた。
そして、そんな中でナチスの暗躍が始まった。

ナチスの魔の手は「ハイル・ヒトラー」のかけ声とともに私の住む農村にも及び始めていた。
「アドルフ・ヒトラー」その名前を聞いただけで、私は今でも吐き気をおぼえる。

ちょうど、君達が「キール・ローレンツ」と言う名前を聞いたときと同じようにな。

私達一家はユダヤ人だったが、私はそれを知らされていなかった。
両親は私が普通に暮らせることを望んでいたのだろう。
それゆえ、私はキリスト教徒だった。

ヒトラーが総統になった日に、私達一家は夜逃げした。
その時、私は始めて自分がユダヤ人であることを知らされた。
それを聞いたとき、私はとてもショックだった。

彼がユダヤ人を憎んでいたのには諸説あるようだが、
彼は少年時代、貧しい生活を送っている時に、もうけて裕福な暮らしをしているユダヤ人を見て不条理感をおぼえたらしい。
その気持ち、わからないでもないが。
しかし、彼は1つ忘れていることがあった。

そう、それは私達一家みたいに貧しい農民生活をしているユダヤ人も多くいるということだった。

その後、私達一家はドイツ南部のアルプス山脈山麓を転々とした。
そこにいれば、安全のように思われたからだ。
私達は酪農をしている農家の手伝いをしてその日その日を暮らしていた。

しかし、そこにもナチスの魔の手が及んできた。
私達がゲシュタポから間一髪で逃れた回数は数え切れない。
一時はスイスに逃げると言う話もあったが、私が幼かった・・・私は当時5歳前後だった・・・のでそれもかなわなかった。



「ところで、キール委員長。どうしてそんなに克明に憶えてるんですか?
 幼児期の記憶としては鮮明すぎると思うんですけど。」

惣流博士が言う。

「たしかに、しかし、ここまで強烈な印象を伴っているのだから、当然とはいえないかね。」

「確かに・・・・・・」

「・・・・・・続けていいかね?」

「どうぞご自由に。」



では、続けさせてもらう。

ある日、ついに私達はゲシュタポにつかまってしまった。
私の父はその時私達をかばって、私達の目の前で、銃で撃たれて死んだ。
残された私達・・・私、母、それに10歳ぐらいの兄・・・は列車で収容所に運ばれた。
そう、私達は「運ばれた」のだ。「連れて行かれた」のではなかった・・・

列車から降りると・・・いや、降ろされると・・・目の前には巨大な工場のようなものが建っていた。
私はそれを見た時の母の表情を克明に覚えている。
そして、その時、母の口から漏れた言葉も。
・・・母は完全なる無表情で、こう口から漏らした・・・「・・・アウシュビッツ・・・」

そこで、私達の苦しい生活が始まった。
私と兄は母とは別の部屋に放り込まれた。
そこで、私達は労働をさせられた。
唯一私達が幸運だったのは、その1週間後に連合国にアウシュビッツが占領されたことだった。

開放された時、私と兄は母と再会することができた。
その時、母は私に言った。
「強い人間になりなさい」と。

その後、私と兄は共に商売を学び、それぞれの分野で成功した。
しかし、兄も東西ドイツ統合のころには死んでしまった。
もちろん、母はもう死んでいた。
彼女は私が就職したその日に肺炎でなくなった。
女手1つで私達兄弟を育てた負担があまりにも重かったのであろう。



「そんな・・・・・・」

サードが信じられないような顔で言う。

「私は君達に同情してもらいたいなどとは思ってはいない。
 これは事実だ。だいたい、君達の方がひどかったのではないのかね。」

「そうよ。アンタのせいよ・・・
 はやく本筋に入りなさいよ。前置きが長すぎるわよ。」

「分かっている。この次からが本筋だ。」



私は前から思っていることがあった。
なぜ、私達は迫害されなければならなかったのか?
私は宗教に次第に熱を入れるようになっていった。

そして、死海文書の失われた部分を手に入れた時、私は一つの決心をした。
私の金を使ってここに予言されるサードインパクトを自分達で起こそう、と。
その後は君達も知っているだろう。
もちろん、セカンドインパクトはその前準備だった。



私が話し終わるとしばらく沈黙に包まれた。

「それで終わりですか。キール委員長。」

葛城三佐が言う。

「あなたはほかの人のことを考えてなかったようですね。」

「・・・ちょっとまってください。葛城三佐。」

今まで黙っていたファーストが口を開く。

「れ、レイ?」

「あなたは、キール委員長の気持ちがわかりませんか?」

これは驚いた。私に味方してくれるとはな。

「どういうこと、レイ。」

それに、フィフスが答える。

「考えてみてください。
 どうして、惣流さんとシンジ君がおたがいを受け入れたと思います?
 どうして、綾波さんが赤木博士の養子になれたと思います?
 どうして、葛城さん、あなたが加持さんとなかなおりできたと思います?
 もう分かるはずでしょう?葛城さん」

そうか、彼らは私の願いを理解したようだな。

「カヲル君・・・・・・」

「そう、あなたはサードインパクトがおこってひとつになったとき、何か感じなかった?ミサト。」

「リツコ・・・・・・・・・・・・・・・」

「あなたの中に、何か感情が流れ込んでこなかったの?」

「・・・・・・きたわ・・・・・・」

「私もそうだった。その時、私は気づいたの。私はレイと似てるんだなって。」

「リツコさん・・・」

「あなたはどうだったの?シンジ君。」

「・・・はい、僕は何か温かいものを感じました。
 なぜか、それが母さんと父さんのものであることに気づくのには時間がかからなかったです。」

「シンジ・・・・・・」

「あなたは?ミサト。」

「・・・・・・私も温かいものを感じたわ・・・・・・」

「じゃあ、それがどういうことか、わかるわよね。」

「まさか・・・ヒトがサードインパクトを通してわかりあったというの?」

葛城君。君の言うとおりだ。私が願っていたもの。それは・・・・・・

「そうだ。サードインパクトはヒトとヒトとの間にある『ココロの壁』、即ちATフィールドを取り除くことによって
 ヒトを完全なる個体に進化させるもの。
 だから、その間、ヒトとヒトとはわかりあうことができる。」

そう、私の願いはそうすることによって、平和な世界を作ることだった。

「アンタ・・・もしかして・・・」

「そう、私はもういやだったのだ。人々が醜く争う世界が・・・」

「キール・・・お前・・・」



そのとき、おもむろにファーストが口を開いた。

「だけど、やっぱりあなたは間違っていた。
 あなたは気づかなかったの?ヒトとヒトとが真にわかりあうことが不可能なこと。
 そして・・・」

「だからこそ、ヒトとヒトとは分かりあおうとするんだよね。綾波。」

その言葉をサードが続けた。

「あなたは、ひとつになっていたときに何を感じたの?」

・・・あの時は・・・たしか・・・

「私は、強烈な憎悪の感情を感じた。」

「え・・・・・・そんな・・・・・・」

それを聞いて、葛城三佐がいすにへたりこんだ。
・・・そうか・・・やはりな・・・

「ミサト・・・・・・」

「これが現実ですよ。キール委員長。
 リリンはひとつになっても、やはり、完全にわかりあうことはできなかったのです。」

「フィフス・・・・・・私は間違っていたのか・・・・・・」

結局私のやったことは正しくなかったのかもしれないな。
そういうことか・・・・・・

「いいえ。そんなことはありませんよ。委員長。
 ヒトはよりよい状態を求めて努力するもの。
 たとえ、その努力の結果が失敗に終わっても、その努力は美しいと思いませんか?」

碇博士・・・・・・
しかし、ここまでの被害を出してしまったのだ・・・
罪は重い、な。

「しかし、犯した罪は償わねばならない。」

「そうよ、そのとおりよ。アンタなんか・・・」

そういってセカンドが襲いかかる。
それをサードが押しとどめた。

「ちょっとまってよ、アスカ!例え、罪深きヒトだといっても、アスカが手を下してもいいの?」

「・・・・・・この、バカシンジ・・・・・・」

それを見て、碇がおもむろに口を開いた。

「さて、キール。どうしてほしい?この状況を見る限り、無罪放免は許されそうにないがな。」

「私はそんなものは望まない。というより、もう私に残された道はない。」

そう、私には何もない。いや、1つしか道は残されていない。

「葛城三佐。私を撃ちたかったら撃ちたまえ。私もそれを望む。」

そう、私に残された道、それは、死、のみだ。

「・・・ふふふ、では。遠慮なく。」

葛城三佐が不敵な笑みを浮かべ、銃を構える。

私の生涯もこれで終わりか。
まあ、私にふさわしい終わり方だな。

「「「「「「「ミサト(葛城)(ミッちゃん)(葛城君)(葛城さん)!!!!!」」」」」」」

そんな声にもお構いなく、葛城三佐は銃の引き金を引き、銃声が聞こえた。



その直後、私の意識は途絶えた。













私は気づくと、麦畑のど真ん中に座っていた。

ここはどこだ?

ふと、自分の体を見ると、驚いたことに3歳ぐらいの幼児の体だった。

たしか、私は葛城三佐に撃たれたんだったな。
ということは、ここは、どこなんだろうか?




突然目の前がぱっと明るくなり、私は目をつぶった。




私が目を開けると、そこは羊小屋だった。
私はそこに見覚えがあった。
そう、私達がつかまった所、そして、私の父が・・・・・・

「どけ、どかんと撃つぞ!!」

「どくものか!!」

そのとたん、銃声が聞こえた。
私は心の中で叫んでいた、父さん!!、と。




再び目の前がぱっと明るくなり、私は再び目をつぶった。




私が目を開けると、そこは、母の病室だった。
母は肺炎で瀕死の状態だった。
私は母にかけよった。

「母さん・・・・・・」

「キールか。母さんはもうだめだよ。強い人になっておくれ・・・」

「母さん、そんなこと言わないで。」

「自分の体は自分が一番よくわかるんだよ。
 キール。頼むから、これだけは忘れないでおくれ。
 キールの父さんがどうして、死んでしまったのか。」

「母さん・・・・・・」

「それはね、私達とナチスたちがが分かりあうことができなかったためだよ。
 たしかに人と人とは完全にはわかりあうことができない。
 でもね、努力することによってある程度はわかりあうことができるんだよ。
 だから、キール。お前は人とわかりあえる人間になっておくれ。
 そして、争いのない世界を作っておくれ。
 母さんの願いは、それだけだよ。」

「・・・分かった、母さん。必ず、そうしてみせるよ。だから・・・」

「よかった。もう母さんは思い残すことはないよ。」

「母さん!おねがいだから、そんなこと・・・」

「さよなら、キール・・・」




そして、私の目の前が再び明るくなった。




私は過去の世界から遠ざかっていくのを感じた。



母さん・・・・・・私は、いや、僕は間違ってたのかな・・・

・・・僕、わかったよ・・・幸せな世界を作るための犠牲を出してはいけないことを・・・





・・・僕は死んじゃったんだよね・・・




・・・できるなら、もう1度、やりなおしたいな・・・
・・・今度は、ちゃんと・・・





私が再び目を開けると、そこは見覚えのある病室だった。



なぜだ?私は過去の世界からぬけだしたはずなのに・・・

母さん、やりなおせるのかな、私は・・・


1人の日本人であろう女性が部屋に入ってくる。

「おめざめのようですね。キール・ローレンツさん。」

やはり、葛城三佐だった。
ということは、私は過去に戻ってきたということか・・・

「そのとおりだ。わたしはキール・ローレンツ、君は?」

気づくと、私は同じことを言っていた。

「私はNERV三佐葛城ミサトといいます。」

「君は私とどこかであったことはないかね。」

「いいえ。あなたとは一回も会っておりません。
 私はあなたのことを碇司令に今さっき聞いたとこですから。」

・・・・・・・・・・・・
母さん、やっぱりそうなんだね。ありがとう。
今度こそ・・・・・・

「それで、碇司令がお呼びですので、司令室にお連れします。」

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ちょっと過去とちがうようだ。
しかし、ここからどうやって・・・・・・



「葛城三佐、キール・ローレンツをお連れしました。」

「よろしい、入れ。」

私がそこにはいると、やはり、同じように人々がいた。

「碇、ひさしぶりだな。」

「ああ、キール委員長。私達は、あなたに、生きつづけて罪を償うことを要求します。」

「・・・・・・どういうことだ、碇。」

「何があっても生きつづけるのが大事ですよ。生きていれば天国への扉は必ず見つかるんですから。
 そう、人々がわかりあう道もね。」

??????????
碇博士、なぜ、そのことを?もしかして・・・・・・

「碇、またお前の18番か?」

「ふっ、ばれたようだな。」

「どういうことだ、碇。私は撃たれて死んだはずだが・・・」

「確かに私はあなたを殺す気で撃ったわよ。実弾だったし、私の狙いは正確だったわ。」

では、なぜ・・・・・・

「でもね、その瞬間に、何が起きたと思う?
 あなたの前に、ATフィールドが形成されたのよ。
 それで、みんながこう言ったの。」

「この人は、生きて罪を償うべき人だってね。
 私、弐号機の中にいた時をのぞいてATフィールドを張ったのは初めてだったわ。
 それも、他人のためにね。」

惣流博士・・・・・・

「委員長。どういうことだと思います?
 ATフィールドは、リリンの心の壁。即ち、みんながあなたを受け入れたということです。」

フィフス・・・まさか、そんなことは・・・

「だけど、アンタもお人よしよね、加持。」

「俺は、これ以上俺の前で人が死ぬのを見たくなかっただけさ、葛城。」

「・・・・・・・・・・・・」

「・・・ということだ。どうだ、キール。お前は世界の再建に協力するか?」

私を許してくれると言うのか。

神よ、母よ、私は許されるべき存在なのだろうか。

「・・・・・・拒否する。私は許されるべき存在ではない。」

突然、セカンドが私をくみふした。

「アンタ、いつまでそんなこといってんの!
 ほんとにもう。だいだい、なんでNERV関係の大人にはバカシンジみたいにウジウジしたやつが多いのよ!」

「アスカぁ。それはひどいんじゃない。」

「だってそうじゃない。」

「まあ、まあ、アスカ。キール委員長が死んじゃうわよ。」

「え・・・リツコ・・・・・・あ、ほんとだ(汗)」

それを見ていた碇が口を開いた。

「委員長。」

「何だ?」

「あなたの夢はそれで終わりですか?」

「どういう意味だ。」

「あなたは母親との約束を果たせずして死ぬと言うのですかな?」

「・・・・・・・・・・・・」

「そうですよ、委員長。私たちと協力して・・・・・・」

碇博士も言う。

「・・・・・・ふっ、前にも同じような会話があったな。碇、いや、六分儀ゲンドウ君・・・そして、碇ユイ博士。」

「「・・・・・・・・・・・・」」

「失敗・・・それは・・・繰り返さなければいい物・・・」

「そうですよ、委員長!」

ファーストの言葉にサードが同調する。

「アンタは自分の母親を裏切る気!?」

「委員長、あなたのお母さんの気持ちを考えてみてください、ね?」

約束か・・・・・・
私は母との約束を果たすつもりでずっと生きてきた。
そして、その計画が完成した直後・・・・・・崩壊した・・・・・・

「委員長。目的を同じくする者が協力するのは当然ではないのですか?」

「ふっ・・・・・・私は同じことを繰り返したくない・・・・・・


そう、私は同じ失敗を繰り返したくはない


 しかし・・・・・・今度こそ、と言うのもいいかも知れんな。」


そう、私の命は残り少ない・・・泣いても笑ってもこれが最後だ


「本当か?」

「ただし、条件がある。私のために、静かな住居を提供してほしい。
 どこか温帯の国の山の中にでも。
 私は、そこで静かに暮らしたいと思う。」

「わかった。それだけか?」

「それだけだ。」



・・・・・・果たせなかった約束・・・・・・


・・・・・・今度こそ・・・・・・


果たしてみせますよ



母さん








私は山小屋の中で1年前のことを思い出していた。

そう、今日はサードインパクトからちょうど1年後。私はドイツのとある山村で暮らしている。

私の楽しみは、羊達の世話と、碇たちから送られてくる手紙を読むことだ。
彼らはマンションに何部屋か続きですんでいるらしい。

ちなみに、私の全財産は「地球復興委員会」に寄付した。
碇の取り計らいでそれの利子の一部が私の生活費に当てられるようになっているらしい。


私が手紙を読んでいると、突然扉をたたく音がした。

「入りたいなら勝手に入ってくれ。かぎはかかっていない。取られるものなんてないからな。」

「では、入るぞ。」

!!その声は・・・・・・

「ひさしぶりだな、キール。」
「「「「「「「お久しぶりです。キール委員長」」」」」」」

入ってきたのはやはり彼らだった。

「何だ?突然。」

「サードインパクト記念だ。」

「ゲンドウさん。わけわかんないこと言わないでください。」

「サードインパクトで人々が分かりあえたことの記念、ってとこですかね?司令。」

加持君が言葉を追加する。
そういうことか・・・・・・

「私は司令ではない。」

そうだ、碇はゲヒルンの所長をしていた。研究活動に戻るとか・・・

「まあ、いいじゃない、ゲンちゃん。」

「ははは・・・・・・碇、お前・・・・・・」

ゲンちゃんとはな・・・

「惣流博士。その呼び方だけはやめてって言ってるじゃないですか。」

「キール委員長。ということで、私達はパーティーをしにきたんですよ、ここに。」

「赤木君。しかし、ここにはそんな食料はないぞ。」

「大丈夫。もって来ましたから。」

「そうか。」


「じゃあ、作り始めるから、アスカ、綾波、母さん、手伝って。あ、それと、リツコさんもできれば・・・」

「いいわよ。それより、台所の使い方分かるの?シンジ君。」

「あ・・・・・・・・・・・・」

「大丈夫だ、私も手伝う。」



私は料理を作りながら、こんなのもいいもんだなと思っていた。
私はこんなことをしたことがなかったのだ。
ますます彼らには感謝せんとな。



「できましたよーーーーーーー」

サード・・・いや、シンジ君だったな・・・がそういって料理を運ぶ。
しかし、彼の腕はすごいな。うまいもんだ。

料理が全て運び終わり、全員が席に着くと、葛城君が音頭をとった。

「では、これから、サードインパクト記念パーティーを始めます。」

「おい、葛城、テンション高くないか。」

うるさい、加持。では、はじめに乾杯と行きたいと思います。
 ・・・(がさごそ)・・・あれ・・・」

「ミサト、カンニングペーパーなんか作ってたの(汗)」

「・・・(がさごそ)・・・あ、あったわ
 では、気を取り直して、



 人類の未来と、キールさんの健康を祝って


「「「「「乾杯!!!」」」」」


私の健康を祝ってくれるんだな。

「ありがとう。私のために・・・・・・」

「いいんですよ・・・・・・・・・・・・・ぷは〜〜〜!!やっぱり、ビール最高!」

そうだ、彼女は大のビール好きだと手紙に書いてあったな。

「よく人の家でそんなに豪快にのめるな・・・葛城・・・」

「綾波さん、君は飲まないのかい?」

「・・・いい・・・ビヤ樽はいや・・・」

「・・・けっこうひどい事をいうね、君も(汗)」

「司令・・・・・・私をもらってぇ・・・・・・
 行かず後家はもういやぁ・・・(泣)」

「あ、赤木君・・・・・・(汗)」

「リッちゃん。ものすごく酔っぱらってるわね。(汗)
 でも、だめよ。ゲンドウさんは私のものだから・・・(ポッ)」

にぎやかなやつらだな。まあ、時にはこんなこともいいか。

「どうです、キールさん。日本酒なんか。」

「あ、惣流君。遠慮しとくよ。年寄りには毒だ・・・」

「大丈夫ですよ。ほら、中学生でも・・・」

犯罪ではないのか?そう思って私は彼女の横を見る。

「くぉら、バカシンジ・・・私の酒がのめないってんの・・・」

「あ、アスカ・・・怖いよ・・・」

・・・・・・・・・・・・あきれてものもいえんな。


宴会は夜遅くまで続いた。



次の日、彼らは帰っていったが、そのとき、また1年後に来ると約束してくれた。

こんなくらしもいいもんだな。

ね、母さん。





私の再挑戦はまだ始まったばかりですけれど、

私は命ある限り、この仕事を続けるつもりです。

天国で見守っていてください。







あとがき

とりあえず、タームさん500万ヒットおめでとうございます。


メインはキール委員長の補完です。
一番補完率の低い悪者の彼を補完してみようと思いました。
そのために、彼をユダヤ系ドイツ人にしてみました。
これは、間違ってるかもしれませんけど、それは許してくださいね。

あ、あと、どうしてATフィールドが展開できたのか、ということですけど、
「それぞれの微弱なATフィールドも共鳴させる、即ち、心を一つにすることによって強いものにできる。」
ということで御勘弁ください。

ちなみに、これはLAS×RKS(Rei Kaworu Sweet(©ZodiaCockさん)) Ver.です。もともとはLRS×LAKでした(笑)
まあ、この話では彼らは所詮脇役ですからあんまり変更点はないんですけどね。
一応、投稿先を考えただけのことで(笑)

あと、私は霧島嬢の扱いが苦手なのであまりだせません。
コメント係のマナさん。なにかよい方法はありませんか?
あ、できればコメント係のアスカさんに撃ち殺されるようなのでないものを。
いや、私としてはLMSでもいいんですけど、やっぱり殺されるのはいやですし(笑)


マナ:上津屋さん。投稿ありがとーっ!\(^O^)/

アスカ:キールの補完物語って、珍しいわね。

マナ:やっぱり、全てのキャラに分け隔てなく愛情を持つことが大事なのよ。

アスカ:キールにも辛い過去があったみたいだしね。

マナ:平和な世の中じゃわからない苦しみよね。

アスカ:やっぱり、戦争ってよくないわ。

マナ:憎しみからは憎しみしか生まれないもの。きっとそれが葛城さん達にもわかってたのよ。

アスカ:よーし、決めたわっ! これからは、アタシもみんなと仲良くするんだからっ!

マナ:もう、シンジは独り占めしないってことね。

アスカ:それは、話が別でしょうがっ!

マナ:全てのキャラを分け隔てなくって言ったとこでしょっ! 独り占めはんたーいっ!

アスカ:やかましいぃっ! かかってらっしゃいっ!!

マナ:ドカッ! ドカッ! ドカッ!

アスカ:ゲシッ! ゲシッ! ゲシッ!

レイ:結局、何もわかってないのね・・・。(ーー;
作者"上津屋"様へのメール/小説の感想はこちら。
kouduya@rose.freemail.ne.jp

感想は新たな作品を作り出す原動力です。1行の感想でも結構
ですので、ぜひとも作者の方に感想メールを送って下さい。

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