シンジは、自分の剣に雷が纏っていることに気づき驚愕した。そして、アスカは自分の額を指さし、こう
いった。
「し、シンジ、その文字・・・」
 シンジは、はじめは何が何だか分からなかった。
                                                  

 天冥戦争 第一話 〜シンジの過去〜
                                                  

「シンジ、その文字・・・「天」よ?ど、どうなっているの?」
 シンジは、やっと現状を理解した。しかしそれは、理解しがたい状況だった。まさか、自分が「天」の力を
持つなんて・・・。
「なんで僕が、『天』なんだ?僕は、『火』のはずじゃ・・」
「と、とにかく本部へ行って司令に報告に行きましょう。シンジ君の生い立ちを知っているのは指令だけなん
だから。」
 ミサトは、とにかくこのことは、自分じゃなにも解決しないと思い、指令に助け船出してもらおうとおもっ
た。
「そうね、私は早く実験やら、なにやら色んなことをしたいけど、そっちの方がいいわね。」
 リツコは、リツコで、よからぬ事を考えていたらしい。
(り、リツコさん、目が納得していませんよ・・)
 シンジに目には、リツコが今すぐにでも実験したそうな目に気づき、ちょっと身を引いた。それに目ざとく
気づいたのは、アスカ。
「ちょっとリツコ!目がやばいわよ!」
「と、とにかく、早く本部に戻りましょう。怪我も治さなくちゃいけないわ。」
 シンジ達は、本部へと戻り、傷を癒し、指令の所へ向かった。


「指令、リツコです。戦果の報告に参りました。」
「入りなさい。」
 中から、冬月指令の声がし、シンジ達は、中へと入っていった。
「君たちにしては時間がかかった・・・し、シンジ君!その額・・・まさか封印が解けてしまったのか!?」
「指令、そのことについては、私たちも知りたくてここまで来ました。シンジくんは、一体何者なんです
か?」
 ミサトは、その場を代表し、冬月に問いかけた。
 冬月は、多少取り乱したが、落ち着きを取り戻し、ミサト、いや、みんなの疑問に答え始めた。
「・・・シンジ君、そのことには、まず十年前、君の両親達の話をしなければならない。みんな知っている通
り、シンジ君の父、碇ゲンドウは、世界最強の戦士であり、母、碇ユイは、世界最強の賢者だった。」
「賢者ってなーに?」
 アスカは、疑問に思い、口を挟んだ。
「賢者とは、黒、白両方の魔術を極めた者のことだよ。故に今現在賢者として確認されたのは、ユイ君ただ一
人だよ。だから彼女は、「大魔導師」とも呼ばれていたよ。」
「ふーん、シンジの両親て、すごかったんだねー。」
「僕も今まで知らなかったよ。父さん達って、すごかったんだ。」
((私に言わせれば、シンジ君だって、十分すごいわよ))
 リツコとミサトは、同じ事を思っていた。
「話を続けるぞ。あれは、君が生まれた時のことだった・・・

回想
「おんぎゃー、おんぎゃー」
 有る病院で、一人の子供がうまれた。そう、彼が碇シンジ。
「奥さん、元気な男の子ですよ。」
「・・・かわいい、属性は、何かしら?・・・!!まさか!?看護婦さん!夫を、呼んでください!!」
「え?は、はいい」
 看護婦は、ユイのものすごい剣幕に、驚き、舌がもつれた。
 しばらくして、ユイの夫、碇ゲンドウが、入ってきた。
「ユイ、よくやった。私にもみしておくれ」
「ゲンドウさん、見て、この子。「天」だわ!」
「!!なに!?まさか、魔界にはもう、冥の力を持つ奴が・・・」
 ゲンドウは、変な所で、口を切ってしまった。ユイは、不思議に思い、ゲンドウの見つめる方向を見た。そ
こには、14,5歳の、銀髪、銀眼の男がたっていた。
「ゲンドウ、その通りですよ。魔界には、もう「冥」がいます。それが、僕です。」
 ゲンドウは、その言葉を聞き、腰に差した、バスターソードを抜き、戦闘態勢に入った。
「ユイ、シンジを連れて早くにげろ!ここは、私がくい止める!」
「でも、ゲンドウさん!」
「ユイ!!」
「・・・分かったわ、でも約束して。必ず、生きて!」
「もちろんだ、ユイ、・・・愛してるぞ。」
「私もです。ゲンドウさん。」
 ユイは、そう言うと、シンジを、抱え、逃げ出した。
「ふふ、いい判断だね、ゲンドウ、天の子を逃がしたのは正解だよ。僕の目的は、彼だからね。あなたを倒
し、早く後を追わなければ・・・」
「・・・私は、簡単にはやられんぞ・・・」
「フフ、分かっているよ。僕の名前は、ダブリスカオル。冥の力を持つ者だよ。」
 ゲンドウと、カオルとの戦いが、始まった。


 ドンドン「冬月先生」ドンドン「冬月先生」
「なんだ、ユイ君じゃないか、どうしたんだ?こんな夜遅く・・・、その子は!まさか・・・、」
「そのまさかです、先生。どうかこの子を匿ってください。」
「し、しかし、君はどうするつもりだ!?」
「先生、ゲンドウさんが、いま、冥の力を持つ者と戦っています。でも、いくらゲンドウさんでも、あいつに
は、勝てません・・・、おそらく殺されるでしょう。」
「しかし、天の力を持つ者が、ここにいれば、エネルギー反応ですぐのばれてしまう!」
「だからこうするのです。
秘術氷魔術魔力封印!!」
 すると、シンジの額の文字が、天から、火へと変わった。
「!!この術は!!」
「私が開発した術です。時が来れば封印も自然消滅するでしょう。私は、シンジのダミーをもって、逃げま
す。どうかこの子をお願いします。」
「・・・分かった、任してくれ。」
「お願いします。」
 そういうと彼女は、闇の中へと、消えていった。


「それ以来、彼女は、帰ってこなかったよ・・。きっと、冥の奴に、見つかってしまったんだろう・・。」
 冬月は、物悲しげにいった。
「そうか・・、ユイさんが作った、ダミーが、彼らには、シンジ君だと思って、もう殺したっていったの
ね。」
 リツコは、冷静にいった。
「・・・そうか、ぼくは、今まで、母さん、父さんの命と引き替えに、生かされていたんだ。・・・これは、
僕の宿命だ。だけど、今の僕じゃあ、世界を、奴らから救えない・・・、指令、僕は、中国に行きます!」
「中国って、まさか・・・『魔の森』に行く気じゃないだろうな?」
『魔の森』とは、魔界の生物が、巣を食っている所で、普通の戦士じゃ、三日も経たずに息絶えてしまうよう
な所だ。
「し、シンジ、なんだってあんな所に行くのよ!」
「アスカ・・・今回のような奴が来たら、僕はもう一回君を守れるかどうかと聞かれたら、たぶん守れないだ
ろう・・・。僕は、火なら、使いこなせるけど他の力はさっぱりだ。」
「それなら、ネルフで訓練すればいいじゃない!」 
「アスカ、もう時間がないんだ。訓練なんて、生ぬるいやつじゃダメなんだ。分かってくれないかな・・・」
 アスカは、今にも泣き出しそうだった。シンジは、そんな顔も可愛いと思ってたりしていた。
「・・・わかったわ。でも約束して!必ず生きて私の所に帰ってきて!私は、シンジじゃないとダメなんだか
ら。」
「わかったよ、アスカ・・・」
 二人は、自然に、唇を重ね合った。これが二人の、ファーストキスだった。
「シンジくん?そういうことは、二人っきりのときだけにしてくれないかしら?オネイさん熱くて、熱く
て。」
 ミサトは、手を、団扇のように仰ぎながら言った。
「ミサト!ひがんでんじゃないわよ!いくら、加持さんが、いつまでもプロポーズしてくれないからって
さ!」
加持とは、ミサトの婚約者であり、世界でもトップレベルの「忍び」だ。忍びは、主に、スパイ活動や、忍術
を使う。
「そ、そんなことないわよ!」
 ミサトは、思いっきり否定した。ムキになるところが、怪しいのであるが・・・。
「シンジくん、本当に行くのか?」
「はい。」
「そうか、そこまで決意が固いなら、私は止めぬ。だが、決して死ぬな。」
「はい。」
「今日はゆっくり休め。出かけるなら、明日行こうにしなさい。」
「分かりました、指令。」
 シンジは、喧嘩しているアスカ達をとめ、司令室を後にした。

 シンジは、トウジ、ケンスケ、ヒカリ、レイに、事情を話した。
「ふえ〜シンジが、天だったなんて、ホンマ驚きや。」>トウジ
「シンジ、修行がんばれよ。俺達はここに残るけど、ちゃんと訓練してシンジの足手まといにならないように
は、なっているからな。」>ケンスケ
「碇君、アスカを、悲しませちゃダメよ!」>ヒカリ
「シンちゃん!生きてかえって来てね!」>レイ
「うん、必ず帰ってくるよ。」
「よっしゃ、今日は、シンジの、ためにパーティにしよう!ええな?みんな?」
 みんなは、トウジの提案に有無を言わず、賛成した。本来なら、この後訓練が、有るはずだったが、大人達
は、みな、今日の所は、目をつぶった。

 そして翌日の明朝
「みんな、元気で・・・」
 シンジは、みんなが起きる前に出発しようとしていてが、
「シンジ!!」
「あ、アスカ!?」
 この、金髪の少女だけは出し抜けなかったようだ。
「シンジ、私になにも言わず出て行こうなんてそうは、いかないわ。」
「アスカ・・・」
「シンジ、私、心配なの。シンジは、もう帰ってこないんじゃないかとか、もう二度と逢えないんじゃないか
とか・・・。」
「アスカ、僕が君との約束を、破ったことは、あったかい?」
 アスカは、首を横に振った。
「アスカ、僕とも約束して。」
「なに?」
「・・・浮気しちゃダメだよ?」
「ば、バカ!私が浮気するわけないじゃない!」
「フフ、そうだね。じゃあ、もうお別れだ。」
「くどいようだけど、絶対帰ってきなさいよ!」
 シンジは、笑いながら肯き、アスカに背を向け、もう二度と振り返ることはなかった。方が小刻みに震えて
いる。どうやら泣いているようだ。みると、アスカの目にも、涙が溢れている。
「シンジーーーーー必ず帰ってきなさいよーーーーーーーーーーーーーーーーーー」
 シンジは、振り返らず、ただただ、西へ向かって走りだした。
 シンジの、旅は、まだ始まったばかりだ。
                                 
                       続く
                                                  
あとがき
どうも、カムイです。ついにシンジの過去が明らかになりました。
 次回は、一気に四年後に飛びます。修行を終えたシンジ、どれくらい、強くなって帰ってくるのでしょう
か?それは、次回のお楽しみ。


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