「シンジのやつ、ええのお。ハ−レムやないけ。」
「こら、トウジ!なに言ってるのよ!」
 ヒカリは、拳を振り上げた。
「わ、かんにんや、ヒカリ!」
 トウジ達が痴話喧嘩をしている内に、シンジ達は、皆に挨拶をしていた。
「指令、行ってきます。」
「気よ付けるんだぞ、シンジ君、良い知らせをまっとるぞ。」
「ハイ、行ってきます。」
 シンジ達は、意気揚々と、北海道へと向かっていった。そこに大きな試練があると、知らずに・・・。

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 天冥戦争 第四話エヴァンゲリオンガブリエル

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 この世界に飛行機やら、自動車の類の乗り物がない。したがって、移動手段は、徒歩、あるいは、シンジが
使った、「ディラックの海」しかない。
「ねえ、ミサト、北海道まで、どれくらい掛かるの?」
 アスカが、聞いた。
「う〜ん、大体、半年ぐらいかしら?」
「え〜!そんなに掛かるの〜!それじゃあ、間に合わないじゃない!」
「大丈夫だよアスカ。僕のディラックの海で、みんなをすぐに運べるからさ。」
「そっか。そういうのを早く言ってよ。半年も歩くのかと思ったじゃない。ミサトも人が悪いわね!」
「そ、そうよ。私は、ちゃんとそのことを、計算に入れてたのよ。」
 何だかうろたえている。どうやら、ミサトは本気で、半年歩いて行くつもりだったようだ・・・。
「それじゃあ、行くよ。」
 シンジはそう言うと、みんなの足下にディラックの海を展開させた。そして、みんなは、ディラックの海に
沈んでいった・・・。


 北海道の、ほぼ中央に位置する、大雪山。この山の麓に、黒い影が、突然と現れた。
「ここら辺だね。」
 中からシンジ達が出てきた。
「ホント、あっという間だったわね。」
 アスカは言った。
「そのようだ。」
「ミカエルは、分かるの?」
「ああ。我々は、約半径十キロ以内に、エヴァが有れば、感じ取ることが出来る。この山の中に
るっぽいな。」
「へー、便利ねー。」
「そんなことよりも早く探せ!魔界の生物が、近づいてきた!後一時間ぐらいで、来てしまうぞ!」
「え〜、マジで!?そしたら早く探さなきゃ!」
 こうして、四人は、エヴァ散策を始めた。

 十分もしない内に、シンジが、洞窟を見つけた。そして、中へドンドンと、入っていった。
 何分歩いたろうか。ずいぶん歩いたが、まだエヴァが有るところには、着いていない。
「あ〜もう!まだなの!?さっきからずいぶん歩いてるじゃない!」
「仕方ないよアスカ。そんなに近くにあったら、他の人に見つかっちゃうじゃないか。それに、結界も張って
ると思う。」
「アスカ、我慢しろ。たぶんもう少しだ。反応が強くなってきた。」
「ホント!じゃ、速く行きましょ!」
「フフ、アスカったら、単純ねー。」
「う、五月蝿いわね!いいじゃない別に!」
「ケンカはそれくらいにして、急ごう。そろそろ、魔界の生物が、来ちゃうかも知れない。」
 皆は、シンジの言葉に頷き、やや、急ぎ足で奥へと進んでいった。


「あったわ・・・」
 そこには、青い刀身、山吹の柄、エヴァンゲリオンガブリエルがあった。その場は、照明もないのに、明る
くなっていて、目の前には、透き通った水色の壁のようなものがあった。これが、結界なのだろう。
「この結界は、厄介だぞ。外すのにも時間が掛かるし、ガブリエルが認めたヤツしか入れないように
なっている。シンジ、外せるか?」
「大丈夫だよ。ちょっと時間が掛かるけどね。」
 そういって、シンジは、目を瞑り、なにやらブツブツ言い始めた。  
 が、その時だった。目の前に、一迅の光の筋が、上から落ちてきて、そして、空いた天井から、何者かが降
りてきた。
 魔界の生物だ。
「エヴァを見つけてくれて、ありがとう。私たちでは、エヴァを探す能力がないから、あなた達に、探して
貰ったんですよ。私の名は、ラミエル。軍士長、雷のラミエルとは、私のことです。」
 身長は、170ぐらいだろうか。言葉遣いからして、地上で、紳士をやっていても、全然違和感がないしゃ
べり方だった。
「ハン、アンタなんか知らないわよ!べ〜っだ。」
「おやおやお嬢さん。そんな顔したら、綺麗な顔が台無しですよ。」
「う、うっさいわね!シンジ、早くこんなヤツなんか、やっつけちゃってよ!」
「うん。」
「いきなり天の者ですか・・、楽しみが減っちゃいますが、まぁ、良いでしょう。」
「ふん、もう勝ったつもりか。舐めるなよ!」
 シンジは、その場に残像が残るほどのスピードで、ラミエルの懐に、潜り込み、上へと斬りかかった。が、
ラミエルは、雷で出来た、剣のようなもので、それを受け止めた。
「フハハハハ。良いぞ天の者!それほどの実力を持っていれば、サキエルや、シャムシェルでは、勝てなかっ
たでしょう。」
「おまえも、すぐに、そいつらの仲間入りをするんだよ!」
 シンジは、雷の剣を、振り払い、いったん間合いを取った。
「くらえ!ウォータークラッシャー!!」
 シンジが唱えた魔術は、水の津波と化し、狭い洞窟では、避けられるすべの無い、大きさだった。
「甘いですね。雷迅!!」
 ラミエルは、先ほどの天井を破壊してきた、一迅の光、いや、雷の光線がシンジが放った魔術をいとも容易
く津波を弾き貫いた。そして、それは、そのままシンジに向かって来た。
「くそっ。」
 シンジは、ラミエルが放った『雷迅』を、エヴァで弾いた。
 しかし、ラミエルは、その雷迅を連射してきた。一つでも喰らったら、いくらシンジでも、ただでは済まな
いだろう。
 シンジは、『雷迅』を、一つ一つエヴァで弾いていった。しかし、それでは攻撃に移れない。しかも、アス
カ達を守りながらの戦いだ。とてもじゃないが、シンジの方が圧倒的に不利な状況だ。
「どうしました?天の者。そんな防戦一方じゃ、私には勝てませんよ?」
「くそっ。」
 シンジは舌打ちをした。しかし、ヤツの言う通りなのは否めない。この状況を打破するために、シンジは、
考えてはいるが、どうにもいかない。
「どどどど、どうしよう!アスカ!何とかならない!?」
 レイは言った。
「無理よ。シンジの魔術や剣術が通用しないんだから、今のアタシじゃ、どうすることもできないわ。」
「でも・・・」
「今は、シンジを信じるのよ・・・。今のアタシ達じゃ、足手まといだわ。」
 アスカは、そう言いながら下唇を咬んだ。
「うん・・・」
(そっか・・・アスカも悔しいんだよね。シンちゃんに何もできない自分が許せないんだよね・・・でもこの
ままじゃ・・・)
「信じること以外にも出来ることはありますよ・・・レイ・・・」
「な、なに?この声は!?」
「どうしたの?レイ。」
「アスカは聞こえなかったの?」
「貴女だけに聞こえるように話しているわ。レイ、もう一度言うわ。信じること以外にも、出来るこ
とはあるわ。」
「でも、どうやって・・・」
「私の所に来なさい。力を貸すわ。」
「・・・あなたは、誰?」
「言い忘れていたわ。私の名は、エヴァンゲリオンガブリエル。貴女を、マスターとして受け入れる
わ。」
 そう言うと、エヴァの目の前にあった、結界は消え、レイは、誘われるがままに、エヴァの元へと歩み寄っ
ていった。
「エヴァ、いえ、ガブリエル!私に力を貸して!!」
 そういって、レイは、エヴァに手をかけ、そして、力一杯引き抜いた。刀身の長さから言って、ショート
ソードとでも言うべきであろうか。その形から言って、力のない女性でも簡単に扱えそうであった。
「す、すごい・・・力が・・・力が湧いてくるわ。」
「私たちエヴァンゲリオンは、使用者、俗にチルドレンとも呼ばれていたわ。そのチルドレンの魔力
と、身体能力を高める役割もあるの。最も、ミカエルだけには、安全装置が付いていて、天の力が暴
走しないようにもなってるの。さあ、おしゃべりはお終い。天の子に加勢するわよ!」
「で、でも、私に出来るかしら・・・」
「今の貴女になら出来るわ。自分の力を信じなさい。」
「わかったわ。私、やってみる!」
 そして、レイはシンジに負けず劣らずのスピードで、シンジの横に並び、魔術を唱え始めた。
「シンちゃん、加勢するわ。水術 地中水迅!!」
 レイの唱えた魔術は、その名の通り地中を伝わり、ラミエルの足下で水柱が巻き起こった。
「し、しまった。」
 ラミエルは、一瞬だが、体勢を崩してしまった。それは、シンジの前では命取りだった。 
 シンジは、防いでいた「雷(いかずち)」をはね除け、一瞬で間合いを詰めた。
 そして、一瞬にして、ラミエルを胴切りにした。その剣には、炎が纏っていた。おそらく、シンジが、使っ
た魔法剣だろう。
 しかし、魔界の生物は胴切りにしたぐらいでは死なない。ましてや、軍団長以上のクラスともなれば、尚更
だ。しかし、致命傷のは違いない。
「ち、畜生・・油断した。まさか、ここにも、エヴァを使いこなせるヤツがいたとは・・・」
「あとは、私に任せて。水術 水神烈刃。」
 レイは、水の刃を発生させ、ラミエルを、細切れにした。さすがに、こうなってしまっては、いくら軍士長
でも、もう生きてはいない。
「ありがとう、レイ。おかげで助かったよ。」
「ありがとう。シンちゃん。でも、このエヴァって代物は凄いわね。」
「いーなぁ、レイは。エヴァ使えて・・・。」
「あら、なに言ってるの?アスカ。貴女だって、エヴァ、ウリエルを持ってるじゃない。」
「はあ?何言ってんのアンタ。アタシは、エヴァなんて持ってないわよ。それに、なんでアンタ、アタシの名
前を知ってんのよ」
「そう言えば、ガブリエルは、私の名前もしってたわ。なんで?」
「何でって、貴女はレイで、赤髪の子はアスカで、ミカエルを持ってるのがシンジじゃないの?」
「そりゃそうだけど・・」
「ガブリエル、聞け。お前は眠ってて分かっていないようだがここは、あの戦いからもう千年も経っ
ている。だから、ここに居るシンジやレは、あの時とは別人なのだ。」
「え〜そうなの!?あれから千年も経ってるの!?でもなんでみんな、あの時と姿が瓜二つなの?」
「それは私にもわからん・・・。」
「ちょっと待ってよ、ミカエル。そんなこと前言ってなかったじゃ無いか。」
「そうだったか?ま、そんなことはどうでも良い。問題なのは、以前のチルドレンと、現在のチルド
レンの名前と、姿が全く同じだってことだ。ま、きっと神の気まぐれだろう。」
「そんなことよりもさぁ、アタシにもエヴァがあるって本当?」
「ええ、以前の貴女はウリエルを使ってたわ。炎のエヴァンゲリオンウリエルをね。」
「益々アタシ向けのエヴァじゃない。アタシの属性も火だし。フフ、待ってなさいよ!ウリエル。今すぐにで
もこのアタシが行ってあげるわ!」
「別に、アスカのって決まったわけじゃない。ねーレイ。」
「む、なんか言った?ミサト。」
 アスカは、棘のある声で言った。
「い、いえ。何もいってません。」
 ミサトは、たじろきながらいった。
「とにかく、ネルフに戻ろうよ。魔力を回復しなくちゃいけないし、リツコさんに報告しなくちゃ。」
 そう言ってシンジは、ディラックの海を展開させ、ネルフへと戻っていった。


「おつかれさま。みんな良くやったわ。」
 リツコは、みんなを労った。
「まぁ、私が居たんだから当然よね。ということでリツコ、増給、お願いね。」
「なにいってんのよ。アンタ何もやってなかったじゃない。増給どころか減給よ減給!」
「そう・・指令には良く伝えておくわ・・。」
「わーー、リツコ、勘弁してよ(汗)。おねがい、これあげるから。」
 ミサトはそう言って、差し出したのは猫のブロマイド数枚だった。
「・・・・ま、考えておくわ。」
 そう言いながらも、ちゃっかりと猫ブロマイドは、懐へと移動していった。
「ねぇリツコ、他のエヴァの場所は見つかったの?」
 アスカは、期待を込めて言った。
「それがまだなのよ。まだ、何日かは掛かるわ。」
「そう・・・」
「ま、それまでちゃんと訓練しときなさい。あ、それとレイ。エヴァのことをもっと知りたいから、ちょっと
残ってて。すぐ終わると思うから。」
 そういって、アスカ達は、レイを残し、自室へと戻っていき。今日の疲れを癒した。が、レイは、リツコの
妖しげな実験につき合わされ、就寝時刻がとんでもない時間になったというのは余談だが・・・。
                                     
                                       続く

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あとがき
 ひさしぶりです。カムイです。ちょっと更新が遅れて申し訳有りません。最近なんか、疲れが出てきて指がなかなか進まなくなってきました。
 さて、次回ですが、次回はついにアスカに待望のエヴァが手にはいるかも・・・!?


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感想は新たな作品を作り出す原動力です。1行の感想でも結構
ですので、ぜひとも作者の方に感想メールを送って下さい。

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