アスカ達はレイを残し、自室へと戻っていき、今日の疲れを癒した。
 が、レイは、リツコの妖しげな実験に付き合わされ、就寝時刻がとん
でもない時間になったというのは余談だが・・・。

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 天冥戦争 第五話 エヴァンゲリオンウリエル

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 数日後のある日、シンジ達はリツコによって呼び出された。
「来たわね。」
「なんなのリツコ?アタシ達をよびだして。」
「もしかして、エヴァの在処が分かったんですか!?」
「その通りよ。在処は熊本の阿蘇山に有るみたい。
で、今回はシンジ君とアスカ、それと加持君に行ってもらうことにするわ。」
「え〜!?なんで加持なの?私は?作戦部長の私は!?」
 と、ミサトは訴える。
「今回貴女は本部待機。これは司令の命令よ。」
「ぶ〜、分かったわよ。」
「私も本部待機ですか?」
「そうよレイ。本部を攻められたら、シンジ君がいないとどんな被害にな
るか分からないわ。だから、シンジ君程じゃないけど、それに近い実力を
持つ貴女には本部にいてもらいたいの。わかった?」
「ハイ・・・」
「ワシらはどうなるんでしょうか?」
 トウジ達は不安そうに、リツコに問いかけた。
「・・・言い難いんだけど、鈴原君と洞木さん、それと相田君は戦線を離
脱してもらうわ。」
「え?何でですか?」
「あなた達の実力じゃ、上、中級魔界戦士ぐらいにしか太刀打ちできないの。
これからは、団長クラスのやつらが攻めてくるわ。今、あなた達を失うの
は、ネルフにとって大きな損害だわ。だから、これからは、戦士育成コース
に移ってもらうわ。」
「「「・・・ハイ。」」」
 三人は力無く頷くだけだった。同世代の人間、それも親友と呼べる人たち
が、前線で戦っているというのに、自分たちは何もできないのか・・・。
 その悔しさからの返事だった。
 その事にいち早く気付いたのは、シンジだった。
「大丈夫だよみんな。僕たちは死なないよ。親友のみんなを残して死ねるわ
けないじゃないか。必ず、生き残ってみせるよ。」
「シンジ・・・」
「シンジの言う通りよ。こんな言い方変だけど、必ずココに戻ってきなさい。
アタシ達に負けないぐらい、強くなってね。アタシ達は待ってるわよ。」
「そうやな!惣流のゆう通りやな。シンジ、見ておれ。必ずまた戻ってくるかんな!」
 そういって、三人はミサトに連れられていった。
 必ず戻ってくるだろう。あの三人ならば・・・。

「それじゃ、今回の作戦を説明するわ。おそらくエヴァがあるのは、山の麓。以前の
ことを考えると、おそらく今回のエヴァも洞窟のような所に封印されている可能性が
高いわ。その事を忘れないでね。阿蘇山付近に来たら、ミカエルに探らせて。」
「分かりました。」
『おう、任せろ。』
「それと、今回も闇の生物が奇襲してくるかも知れないから、警戒していてね。
以上よ。それじゃあ頑張って。」
「「ハイ、分かりました。」」
「それじゃあ、シンジ君、アスカ、行こうか。」
 加持がそう言うと、シンジは足下に『ディラックの海』を広げた。
 そして三人は、闇の中へと消えていった。





「着いたわね。」
「そうだね。でも何か凄く暑いな。何でだろう?」
 阿蘇山の山の麓ということを差し引いても、この場は異様に暑い。
『おそらく、ウリエルの封印が解け掛かっているのだろう。あいつの別名は「神の炎」
だからな。』
「それでミカエル、ウリエルはこの近くにあるのかい?」
『ああ、あいつのエネルギーがそこらじゅうに広がっている。多分ガブリエルの封印が
解けたことも関係しているんだろう。この分じゃ、『魔界の生物』にも感づかれている
だろう。・・・こっちだ。』
 三人は、ミカエルの指示する方向に進んでいった。
 しばらく歩いただろうか。三人はミカエルの指示で足を止めた。
『ここだ。』
「ここだって、何にもないじゃないの。」
 確かに。アスカの言うとおり、ここには何もない。ただ目の前に大きな岩があること
を除いては。
『シンジ、ここをぶった斬れ。思いっ切りだ。』
「わかったよ。行くぞ・・・水刃 龍牙破斬!」
 水刃 龍牙破斬、剣に水の刃を纏い、上下段への二段切りを行う技。シンジはこれを
使い、大岩をぶった斬った。
 大岩は、みごとに真っ二つに斬られ、その奥には洞窟の入り口が顔を出していた。
「ふ〜ん、こうなっていたのね。」
 アスカは感心する。
「さぁ、行くぞ。」
 加持の言葉に二人は頷く。
 そして三人は中へと進んでいった。



 洞窟の中は極めて熱かった。まるでサウナだ。
「あ、あつい・・・」
「ミカエル、あとどれくらいなの?」
『ふむ、まぁ大体半分ぐらいってとこかな。』
「えぇ〜〜まだ半分なの!?アタシ、疲れちゃったわよ。」
「アスカ、頑張ろう?あと半分なんだし・・・」
 シンジが言いかけたその時だ。またもや天井から大きな爆発音。それと同時に砂煙が舞う。
 魔界の生物だ。
「「あなたが天の者、碇シンジね。私たちはイスラフェル、軍団長のイスラフェル。あなた
の首を取りに来たわ。」」
 そこに立っていたのは二人の女性。金髪と銀髪のグラマラスな女性だった。
「僕の首を取る・・・?笑わせるな。」
「「私たちは冗談は言わないわ。」」
 二人は一糸乱れず言った。どうやらこの二人、ピタリと息が合っているらしい。
「まぁいい。先手必勝!くらえ!!火炎空襲剣!!」
 シンジが金髪のイスラフェルに斬りかかった。
 すると、あっけなく金髪のイスラフェルは胴体真っ二つになった。
「へっ?」
 シンジは素っ頓狂な声を上げた。
「フフフフ。」
「ちょ、ちょっと。相方が斬られたっていうのに、なに笑ってんのよ!」
「斬られた?ああ、斬られたわね。でもだからどうしたって言うの?」
 銀髪のイスラフェルが言った。
 するとどうだろう。胴体輪切りにされたというのに金髪のイスラフェルは、なんと再生した。
「「フフフフ、私たちはこれくらいじゃ死なないわよ?」」
 シンジは下唇を噛み、少し考えた後にこういった。
「アスカ!ここは僕と加持さんにまかせて、アスカはエヴァを取って来るんだ!」
「え?で、でも・・」
「アスカ、僕たちを信じて・・。」
「・・・・わかったわ。アタシが帰ってくるまでに死ぬんじゃないわよ!」
 アスカはそう言って、洞窟の奥へと走っていった。
「「逃がさないわ!!」」
 そう言って、イスラフェルはアスカに攻撃を加えようとした。が、それは加持の手によって
阻まれる。
「ここから先は、通さん!」
「「ちっ」」
「どうした?お前達の目的は僕の首じゃなかったのか?かかって来いよ。」
「「う、うるさーーーい!!」」





「ハァハァハァ、」
『ドグォーーーン』
「なに?今の音?」
 アスカは足を止め、引き返そうとした。
「ダメ・・・シンジと加持さんを信じなきゃ・・・今アタシに出来ることはエヴァを取りに
行くこと。」
 アスカは再び足を動かし、エヴァの元へ走り始めた。

「ハァハァハァ、」
 走る、走る、走る、走る、走る、走る・・・
 アスカは一生懸命に走った。自分もシンジの力になりたい。その想いがアスカの足を
動かした。
「あ、あった・・・」
 アスカは見つけた。
 深紅の曲刀の刀身、エンジ色の柄。その姿からはまさに『神の炎』をイメージさせる。
 エヴァンゲリオンウリエルを。
「ど、どうすればいいの・・・?」
 アスカは迷った。目の前には予想通り結界があった。炎の結界が。
「どうしよう・・・アタシは水系の魔術は使えないし、かといって結界破りの術も使えない
・・・・ん?誰!?今の声!?」
『私の声が聞こえるのか!?』
「もしかして・・・エヴァ・・・?」
『そうだ。私の声が聞こえるようだな。もしかしてアスカか?」
「そ、そうよ。アタシは惣流・アスカ・ラングレーよ。」
『ハハハハハ、バカを言うな。アスカは、アスカはあの時の戦いで命を落としているのだぞ!?
お前がアスカな分けないだろう!?』
「ホンットあなた達って、あたま堅いわね。ガブリエルもそうだったし。良い!?もうあの時の
『天冥戦争』からもう千年立ってるの!!寝ぼけてんじゃないわよ!」
『な!せ、千年だと!?』
「そうよ。そして、今まさに新たなる『天冥戦争』が始まってるの。ほら聞こえるでしょう?」
 アスカの後ろからは確かに、爆発音やら金属音が微かに聞こえる。
『確かに・・・』
「だからお願い!アタシに力を貸して!」
『・・・もしかして、ミカエルとガブリエルの封印が解けているのか?そしてその使い手はレイ、
そしてシンジか?』
「ええ、そうよ・・・。」
『フハハハハハハハハ、面白い!面白いぞ!ガブリエルの使い手、ミカエルの使い手、共に千年前
と同じ名を持つ。そして私の使い手もアスカ、お前も同じ名だ。実に興味深い。いいだろう。
お前に力を貸してやるよ。』
 エヴァンゲリオンウリエルはそう言うと、封印を解き、エヴァンゲリオンウリエルはスッと
アスカの手の中に収まった。
『さぁ、行くぞ!シンジ達の加勢に行くんだ。」
「もちろんよ。」
 アスカはウリエルを手に、意気揚々とシンジ達の元へと走っていった。
 ふと気づくと、エヴァの封印が解かれた今、先ほどのような不快な熱さは消えていた。





 アスカがエヴァの元に着いた頃、シンジ達はイスラフェル達と戦っていた。
「ハァハァハァ、くそっ!」
 シンジ達は苦戦していた。いや、押されていると言っても過言ではないだろう。
 相手、イスラフェルは魔術、剣術共に効かないのだ。
 いや、効かないと言う表現はちょっと違うだろう。効くには効くが、アッという間に再生し
てしまうのだ。
 驚異の再生能力。これがイスラフェル達の最大の武器だろう。
「「ハハハハハ、、どうしたの?もうお終い?」」
「く、こないだのラミエルよりも遙かに強い!」
「「さぁ、そっちが来ないなら、こちらから行くわよ!」」
 銀髪のイスラフェルの属性は『水』、金髪のイスラフェルは『火』のようだ。
 二人は相反する属性の力を使い、確実にシンジ達にダメージを与えていた。
「ぐわぁ!!」
「か、加持さん!!」
 シンジは加持の元へ駆け寄った。
「待っててください。今、回復魔術を・・・」
「いや、いい。そんなことよりシンジ君、良く聞け。俺は別に闇雲に攻撃していたわけじゃない。
敵の弱点を解明することのみに集中していた。そしてそれが分かった今、あんなやつら敵じゃない。
いいか、やつらの弱点は、『二点加重攻撃』だ。」
「二点加重攻撃?」
「簡単に言うと、同じ箇所を同じタイミングであの二人に攻撃するんだ。」
「そんな・・・そんなこと一人じゃ出来無いじゃないですか。すぐに回復魔術を・・」
 そんなシンジの言葉に笑顔で加持は首を振る。
「シンジ君、俺なんかよりピッタリのパートナーがいるよ。ほら・・・」
 加持の指さす方向には、赤髪の美少女、アスカがいた。
「シンジ!!」
「アスカ!!」
 アスカはエヴァを携え、シンジ達の元へ駆け寄った。
「アスカ、それがもしかして・・・」
「そうよ、これがアタシのエヴァ、ウリエルよ。」
『よう、久しぶりだな、ミカエル。』
『久しぶりといっても、千年ぶりだからイマイチよくわからんがな。』
「アスカ、良く聞くんだ。あの魔界の生物を倒すためには『二点加重攻撃』しかない。これを可能
に出来るのは、アスカ、シンジ君、君たちだけだ。頑張るんだぞ。俺はちょっと休ませてもらう。」
 そういって、加持は気絶してしまった。
「フフフ、任せておきなさい。アタシとシンジのコンビネーションは完璧だわ。シンジ!行くわよ!」
「うん、行くよ!アスカ!」
 そう言って、アスカとシンジはエヴァを構え、イスラフェルに突っ込んでいった。
「「ハハハ、私たちの弱点が分かったところで、私たちを倒すことは出来ないわ。」」
「「そんなこと無いわよ(さ)いくわよ(よ)シンジ(アスカ)!!」」
 アスカとシンジはエヴァでイスラフェル達の腕をぶった斬った。
 アスカとシンジの攻撃により、イスラフェル達の腕は切り落とされた。
「「そんなことをしたって無駄よ!!すぐに再生・・・しないわ!なんで!?」」
「そんなの決まってるでしょ?アタシとシンジの攻撃がピタリ一致したからよ。」
「「そ、そんなことあり得ないわ!人間は必ず誤差が生じるはず!」」
「それが僕たちには可能なんだ。」
「アタシ達の愛の力を舐めない事ね。シンジ!ケリを付けるわよ!」
 シンジはアスカの言葉に頷き、アスカと同じように構えた。
「「鳳凰炎舞!!」」
 全身に炎を纏い、アスカとシンジはイスラフェルに無数の剣を浴びせた。
「「ぎゃーーーーーーーーーーーーーーーー!!」」
 イスラフェル達はアスカ達に同じ箇所、同じタイミングで斬られバラバラになり、
二度と再生することはなかった。
「やったわね、シンジ。」
「そうだね、アスカ。」
「それにしてもエヴァって凄いのね。凄いパワー。押さえるのだけでも大変だわ。」
『そうだな。あまりにパワーを開放すると、お前ら人間には辛いかもな。』
『そう言うことだ。シンジも余り無茶をするな。』
「わかったよミカエル。」
「さ、帰りましょ、シンジ。」
「ちょっと待って。加持さんのことを忘れてるよ。ヒーリング!」
 シンジは加持の体に手をかざし、回復魔術を唱えた。
 数分後、加持は目を覚まし、体も全開したようだ。
「ふぅ、ありがとな、シンジ君。どうやら倒したようだな。」
「はい。」
「フ、やはり俺の目に狂いはなかったな。シンジ君達なら可能だと思ったぞ。」
「へへへ、アリガト加持さん!」
「さぁ、帰りましょう。ネルフでみんなが待ってるよ。」
 そういって、シンジは『ディラックの海』を展開し、ネルフへと戻っていった。





 シンジ達はネルフに戻り、戦闘結果報告を冬月に行い、リツコの元へエヴァを提出して、
早めの睡眠をとった。


 次の日
「どう?アタシのウリエル。」
 アスカは、リツコの所にエヴァを取りに来ていた。
「ええ、実に興味深いわ。」
「なにが?」
「べっつにー?」
「む〜、なによ!その態度!気に入らないわね!」
「まぁいいじゃないの。ハイ、アスカのエヴァ。」
「ありがと。ねぇ、ウリエル、リツコになにかされなかった?」
『・・・アスカ・・・何も言わないでくれ・・・思い出したくない・・・』
「そ、そう。」
 ウリエルの身に何があったのかは、全て闇の中である・・・。



                                       続く


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