学校と言うものもいずれは放課後になる。 NERVへの出勤義務がなくなった以上、シンジ達はただの中学生として生活を送 る事となる。 父として全ての生活保障をしてくれる事となり、問題なくミサトの部屋で生活を続 けるシンジとアスカ。 トウジも一時期パイロットであったが為に、保証金が出て妹との生活は保障されて おり、高校へと進学する事ができるようになっていた。 そして父の家には妹となった碇レイが住んでいる。 苦しみ抜いたパイロット達は、大人達から本当の意味での庇護を受けられるように なった。 かといって戦いが終わったわけではない。 サードインパクト後の世界復興支援活動、生物体系のダメージの回復等、数えても きりが無い。 名前だけの大国の力など全く当てにはできず、やはり世界はNERVの手によって 癒しの時を進めていた。 そして、元初号機パイロット碇シンジの戦いは、形を変えても未だ続いているので ある・・・・・・・・・・。 ────────────────────────────────────── Vs ―ヴァーサス― EoE・After VS:3 ───────────────────────────────── カァカァカァ・・・・・・・・・。 遠くでカラスが飛んでいた。 童謡にカラスが鳴くから帰ろうというのがあったが、二人は今帰途についていた。 学校が終わったのが三時半。 掃除係ではなかった為、すぐに学校を出た二人ではあったが、復興したデパートを 回っていたらこんな時間となってしまっていた。 二人の手には買い物袋が持たれており、ニュッと突き出たネギとセロリが見えてい るところを見ると食材であろう事がうかがい知れる。 ぱっと見、仲良く買い物帰りの若いカップルに見える。 だが、よくよく見てみると違和感を感じる事ができるであろう。 二人の間に会話がないのだ。 何一つ喋らず、無表情に歩いている。 手をつなぐ訳でもなく、顔を見る訳でもなく、 ただ、黙々と歩いていた。 そんな二人を訝しげな眼で見る人物がいた。 「あれは・・・・・・お兄ちゃんと赤毛・・・・・・」 すっかりシンジを兄と認識していた碇レイ(注:四人目)と、 「ん? ああ、確かに・・・・・・」 少年盗撮家、相田ケンスケ容疑者(予定)である。 断っておくが、別に二人は付き合っているわけではない。 当番から逃亡しまくっていたが為に、ヒカリ監視の中バツ掃除をさせられて、やっ と帰宅となり一緒に学校を出ただけである。 もし、付き合っていたならば、ケンスケはヒゲ男の陰謀によってこの世から消えて なくなっている。 「・・・・・・二人の様子が・・・・・・変・・・・・・」 流石にレイは二人の様子に気が付いた。 「これは・・・・・・ひょっとして別れ話か?!」 もし、そうならばアスカの写真の値が上がる。 今まで集めていたライブラリがお宝に変わるのだ。 それに、自分にもアスカの彼になれるチャンスが・・・・・・・・・・・・。 等という愚にもつかないことを考え、ケンスケは心の中で小躍りした。 レイの絶対零度の視線に気付かないほど・・・・・・。 「追うのよ・・・・・・」 ケンスケの後頭部をブロックで殴ってから、シンジ達がゆく公園へと後を追った。 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 公園のベンチに荷物を置き、人気のなくなった公園で二人は対峙していた。 身体から緊張感が漂っていたが、力みそのものはなかった。 リラックスしているのではなく、戦う為に全身から力を抜いているのだ。 「この公園覚えてる?」 シンジから眼を放さずにアスカが口を開いた。 「・・・・・・覚えているよ。当たり前じゃないか・・・・・・」 「そう・・・・・・」 二人の表情は変わらない。 復興事業によってすっかり形は変わってしまったが、ここはユニゾン特訓の折にア スカが飛び出して来た公園である。 二人にとって、とても思い出深い公園だ。 「ここで初めてアタシはアンタを真っ直ぐ見たような気がするわ」 「僕もだよ」 「今は、あの時は何を意地になってたんだろうって思えるわ・・・・・・だって、EVAの ない今なら、あの時のアタシだったら自分を否定して死んじゃってると思うから」 「・・・・・・」 「シンジには感謝してるわよ?」 「・・・・・・」 「だけど・・・・・・勝負は勝負よ・・・・・・白黒ハッキリさせないとね・・・・・・」 「・・・・・・・・・うん」 風が吹いてアスカのスカートの裾が舞う。 それが合図であったかのように二人が動いた! がっ! がしっ! 「ん・・・・・・」 「うン・・・・・・」 二人の攻撃・・・・・・・・・いや、“口”撃は同時だった。 狙い済ましたシンジとアスカの唇は同時に触れ合う。 瞼を閉じるタイミングさえも完璧にユミゾンしていた。 「ふぅ・・・・・・」 「はぁ・・・・・・」 一度唇を離してから、啄ばむように軽くフレンチキスを続ける。 「ん・・・・・・アス・・・カ・・・・・・」 「シ・・・ンジぃ・・・・・・」 顔を離し、とろける様に潤んだ瞳がお互いの顔を映す。 「アスカ・・・・・・」 「シンジぃ・・・・・・」 もう一度重なる唇。 お互いの舌が行き交い、お互いの口中を味わう。 「んん・・・・・・」 「ンふ・・・・・・うぅン・・・・・・」 かくんっとアスカの膝が崩れた。 ついに力が抜けたのである。 「あっ」 「やンっ」 ギリギリのところで支えるシンジ。 なんとか座り込む事態を回避した。 シンジはアスカの手を取りベンチに座らせてあげた。 息を整えながら、アスカは赤い顔のままで空を見上げる。 「あ〜あ・・・・・・負けちゃったかぁ・・・・・・」 言葉とは裏腹に、アスカの顔は残念がってはいない。 とても満足しきった幼い子供のそれである。 「違うよ。途中で我を失った僕の負けだよ」 シンジは途中から歯止めが利かなくなり、もう少しで理性を吹き飛ばすところだっ たのだ。 もっとも、アスカにしてみれば、 『それがどうかしたの?』 であろうけど・・・・・・。 「ん〜〜・・・・・でも、どこから理性消えかけたか覚えてるの?」 「解らないよ・・・・・・アスカとキスした時にそうなったのかもしれないし、アスカの 綺麗な眼を見てからかもしれないし・・・・・・」 正直に話すシンジ。 例えどんな時でもアスカに嘘をついたりしない。 「じゃあ、ダメね。また引き分けかぁ・・・・・・」 「そうだね・・・・・・」 二人肩を寄せ合って夕焼けを見つめていた。 少女の髪は、夕日によって赤く燃えていた。 その髪を優しく撫でる。 少女は眼を細めながら少年の抱擁を受け入れていた。 心の奥から溢れてくる気持ち・・・・・・。 “幸せ”を味わいながら・・・・・・・・・・・・。 「シンジ・・・・・・」 「うん・・・・・・僕はここにいるよ」 「うん」 人気のなくなった公園の遊具のそば、 二人は夕焼けを眺め続けていた・・・・・・・・・。 「やっとれっかぁ〜〜〜〜〜〜〜〜!! ボケ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!」 「アツアツの二人・・・・・・それはキレイなモノ・・・・・・」 そんな二人を目の当たりにし、嫉妬の余りケンスケはカメラごとフイルムをぶん投げ、 レイはハンカチで涙を拭きながら二人を祝福していた。 シンジの戦いは終わらない・・・・・・・・・。 今回の勝負 ダブルノックダウンにより引き分け。 通算成績 シンジ 0勝 0敗 1014引き分け アスカ 0勝 0敗 1014引き分け 〜〜〜おまけ〜〜〜 「・・・・・・シンちゃ〜〜ん・・・・・・お〜〜そ〜〜い〜〜〜〜」 ぐぅ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 「お腹すいたよ〜〜〜〜〜〜〜」 コンフォートの一室、 独り者の女性がお腹を空かせまくっていた。 「えびちゅじゃお腹ふくれないわよ〜〜〜〜〜・・・・・・・・・」
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