いつもの様にある部屋に手紙を置き、いつもの場所へ行く。



 部屋の主は何者かが手紙を仕掛け終わった後の部屋の戻ると、それを手に取った。

 ここの所、毎日のように届けられるその手紙には、様々な情報が書かれていた。



 “アダム”や“リリス”、そして“使徒”の事。さらに“セカンドインパクト”の
真実、はては“委員会”の事まで・・・・・・。



 色々裏を取ってみたが、与えられる情報は正確で、真実であった。

 差出人はわからない。


 プリンターで打ち出された素っ気無い手紙の最後に、いつも“クワトロ”とだけ書
かれている。


 イタリア語で“4”を意味する言葉だ。


 フェイクなのだろう。


 事実、それをヒントに色々手を回すも全く手がかりは無かった。





 今回の手紙・・・・・・この手紙が最後だという。




 『君が私の言う事を信じるかどうか・・・・・・それは君の自由だ。だが、確実にサード
  インパクトの危機は迫り、そして“委員会”は前述の通りそれを起こそうとして
  いる。

  君は君の思うままに行動すればいい。
  ただ、君には八年も待たせている女性がいるはずだ。
  彼女を悲しませてはならない。

  君と同じく、彼女も復讐に駆られ一人の少年を手駒にし、自分で自分の心を傷つ
  けている。

  いずれ、その心の傷が彼女を殺すだろう。

  彼女は君が思っているより凛々しいが、君が思っているよりずっと弱いのだ。

  私達は君たちが幸せになる事を願う。
  だから生きるのだ。


  君だけじゃない、君と葛城ミサトと二人の為に。




  願わくば、君と彼女の未来に幸いが訪れることを・・・・・・


                                  クワトロ』







 前文ワープロ打ちで英語である。


 よって、特定はできない。
 英語という事は、あえて独語を回避した可能性もある。


 だが、彼にはもうどうでもよかった。


 何かに吹っ切れたように、いつも通り手紙を破り捨て、灰にしてから揉み砕いて植
木鉢に捨てて水をかける。


 肥料としての味付けは不味いかもしれないが、観葉植物にはガマンしてもらう。




 手早く必要なものだけをかき集め、部屋を出た。





 「加持さ〜ん!!」



 赤みがかった金髪の少女が元気に走って来る。


 彼は微笑んで少女を見つめた。

 その笑みには、いつもの作り笑いは無かった。


 「どうしたの?」


 流石にその笑みに気付いて訝しげな顔をする。

 「あ、いや・・・・・・なんでもないよ。今日の訓練は終わりかい?」

 「ええ、そうよ! 加持さんはヒマ?」


 どうやらデートのお誘いらしい。


 笑顔で見つめる少女の頭に手を乗せ、わしゃと髪を乱暴に撫でる。


 「ちょっと! 髪が痛んじゃうわよ! 乙女の髪は安くないのよ?!」


 気が強い少女が抗議するが、彼は苦笑して手を離すだけ。


 「すまんすまん・・・・・・悪いが、しばらく会えなくなる。ちょっと用事でな・・・・・・」



 “仕事”ではない。

 “用事”だ。



 「ええ〜〜〜〜〜〜〜??!! なんでぇ??!!」


 また抗議される。今度は完全に怒りが混じっている。


 「すまないな・・・・・・・・・本当に大事な事なんだ・・・・・・」


 未練を断つように少女に背を向けると、加持はそのまま歩き出していた。



 彼が背を向けたもの・・・・・・それは少女にではなく、忌まわしい過去に囚われていた
自分に別れを告げるものだった。



 そんな事を理解するはずも無い少女の声が廊下に響く。


 「ちょっと加持さん!! 待ってよぉ!! アタシの護衛はどうするのよぉ!!」


 「大丈夫さ。キミの射撃の美人教官に頼んであるよ。彼女なら大丈夫さ」


───ミサトに似てるしな・・・・・・。



 その言葉は口には出さなかった。

 口癖や仕種が驚くほどミサトに似ていた。

 だが、自己アピールが高いくせに貞操観念が異様に高く、全く誘いに乗らない。



 それに、彼女は“葛城ミサト”ではない。





 小さくなってゆく加持の背中に、少女の罵声が飛んだ。




 「加持さんのバカァァァアアアアアアアアッ!!!!!」




 『悪いな・・・・・・』


 それだけを口に出さずに言い残し、男は去って行った。



 息を荒げ、肩を震わせて少女は自室に飛び込む。



 決別を言い渡された少女の仕種そのものでベッドに飛び込み、シーツを被った。





 だが、その瞬間、少女の表情はガラリと変わった。





───加持さん・・・・・・がんばんなさいよ? アンタが死んだらミサトが悲しむんだか
   らね・・・・・・・・・・・・。



 毎日、加持の部屋に手紙を仕掛けてきたのだが、彼はなんとか思い通りのコースに
自分の意思で進んでくれた。



 人を欺くのはもういやだったが、自分の大切な人たちを守る為には仕方が無かった。




───シンジ・・・・・・ゴメンね・・・・・・また人を騙しちゃった・・・・・・。




 愛しい少年を想いつつ、少女は訓練疲れから眠りに入ってゆく。


 少年の待つ日本への出発は明日に迫っていたのだ。




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   For “EVA” Shinji

      フェード:零・零壱

    For “EVA” Asuka

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 暗い・・・・・・





 何も無い・・・・・・。





 自分にはもう何も無い・・・・・・。





 アタシは無いんだ・・・・・・。





 瞼をなんとなく閉じているだけなのだが、少女の眼は光を感じてはいなかった。





 深く心の奥に沈んでいるのだ。





 自分で自分を否定し、自分自分の心を壊し、





 自分を等身大で見てくれた少年の手を振り払い、




 自分の殻の奥へと逃げた。




 でも彼は、自分が助けてほしい時には来てくれなかった。




 自分が求めている時に、自分を見てくれなかった。




 結局、自分は“無い”んだ・・・・・・。





───そんな訳ないでしょ!! いい加減にしなさいよ!!




 いきなりの大声が頭の中を貫いた。




 ・・・・・・誰よ・・・・・・




───ハン! 誰? 誰って聞くわけ? 解んないの?



 ・・・・・・・・・解る訳ないでしょう・・・・・・



───じゃあ、立って前を見なさいよ! 眼を開けてこっちを見なさいよ!



 ・・・・・・・・・うるさい・・・・・・・・・



───やれやれ・・・・・・アタシにしては気が弱いわねぇ・・・・・・そんなにシンジに守って
   もらえなかったのが辛いのかしら?


 なっ・・・・・・!!!!!!



 その言葉に思わず眼を開けてしまう。

 やっと受け入れた“赤い”風景。

 外界を遮断していた為、なかなか輪郭が整わなかったが、しばらくすると脳が画像
を理解した。



 ア、アタシ・・・・・・?!



 そこには、アタシが二人立っていた。



───やっと起きたわね。


───初めまして・・・・・・かしら? アスカ。


 な、ナニよアンタたちは・・・・・・。


───アタシも“アスカ”よ。


───アタシも。もっとも、アタシたちの世界は滅んじゃったけどね。


 その“アスカ”が寂しそうに言った。


───アタシの方は、ビッグバンが起こっちゃってさ。



 なっ??!!


 流石に息が止まるほど驚いた。


 ビ、ビッグバン?! それって、OMUNIの事よね? 宇宙創造の息吹が起こっ
たっていうの?!


 荒唐無稽な話だが、あんな眼で言われたら信じる他無い。


 信じてほしい時の、真実を語る時の自分の眼で・・・・・・。



───アタシの方は宇宙怪獣に滅ぼされちゃったわ。


 う、ううう、宇宙怪獣ぅ〜〜??!!

 コイツ、ばかぁ?! 

 なんて事言うのよ!!



 ・・・・・・・・・だけど・・・・・・やっぱり本当の事を言う眼だった・・・・・・。



 そっか・・・・・・結局、アタシは何もできなかったのか・・・・・・。


 やっぱり・・・・・・・・・・・・・・・アタシは駄目な女だったんだ・・・・・・・・・・。



───また勝手に落ち込む〜・・・・・・。だから、そうじゃないわよ!! アタシたちの
   方は力不足だったけど、アンタの方は起こるべくして起こったんじゃないの!!



 ・・・・・・・・・どういう事?



───・・・・・・やっと話を聞く気になったわね・・・・・・まぁ良いわ。



───アンタの方は、アンタに壊れてもらって、シンジの心を破壊して、シンジを人
   柱にする計画だったのよ。知ってるでしょ? 仮にもLCLで世界と交わった
   んだから・・・・・・。


 それは・・・・・・ああ、知って・・・・・・知ってるわ・・・・・・ううん。今、知っている事を思
い出したわ。


 アスカの心に、ようやく僅かな力が戻ってくる。


 その様子を見、アスカ“達”は話を続けた。


───だから、アンタは計画に邪魔になったから駒にされた。


 そうね・・・・・・・・・。


───どうして駒にされた? アンタがいるとシンジが明るくなるからよ。シンジが
   内向的にならないからよ。シンジが外の世界に眼を向けるからよ?



 ・・・・・・え?



───どうやって駒にされた? アタシの心身が破壊されるのをシンジに見せたかっ
   たから・・・・・・つまり、アンタが死んだ事により、シンジの心が破壊されたのよ。


 え?


───わかんないの? ファーストが死んだ時シンジは凄く落ち込んだわよね? だ
   けど、アンタが“死んだ”時、シンジはイキナリ壊れたわ。






 ・・・・・・・・・それって・・・・・・。






───アンタはアイツを信用できないみたいだけど、“理解”はしてるはずよ?



 ・・・・・・・・・理解・・・・・・?



───そ。シンジはアンタが苦しんでても平気なヤツだった?



 違うわ・・・・・・。あのお人よしが放って置けるわけない。



───アイツはアンタが死に掛かってるのに逃げるヤツだっけ?



 そんな事無い! シンジはアタシがマグマに沈みかかってた時に、後先考えずに飛
び込んでくれた!!



───な〜んだ。解ってんじゃない。













 ・・・・・・・・・そうよ・・・・・・・・・そうだわ! シンジはそんなヤツじゃない!




 シンジは、シンジは、アタシの事をセカンドチルドレンとしてじゃなく、初めて一
人の女の子として等身大で見てくれた!


 アタシがいくら辛くあたっても、アタシの事を心配してくれてた!!

 
 シンジは、いつも、いつも、そばにいてくれてた!! 


 シンジはアタシを見捨てたりしない!!


 アタシを見捨てたんじゃない!!


 アタシが気付かなかったんだ!!






───やっと思い出したんだね。




 優しい声がした。

 自分は知らない声。

 だけど、他のアタシは知っている。

 最強のパイロットと呼ばれていたが、とても孤独の中にいた人だ。




───君は一人ではない。その事を思い出したんだ。もう、ここへ来る事は無いだろ
   う。




 この人も知っている。

 さっきの人と戦い、互いの大切な人を互いのミスで失った人。
 
 共闘し、求めるものは違えど腐敗と戦う事を分かり合えた人。




───・・・・・・オレ達は大事なものを守りきれなかった。盾になって死ぬ事すらかなわ
   なかった・・・・・・。




 コイツも知ってる。

 優しさを、心を捨てて平和の為に戦った少年。

 自分の命を一番安く考え、テロリストと言われても戦い続けた戦士。




 気が付けは、アタシ“達”はもういない。

 そう、“アタシ”になったから・・・・・・。




───アスカは・・・・・・まだ戦えるかい?



 え?



───シンジが、あの世界に・・・・・・あの時間に戻って戦うとしたら・・・・・・キミはどう
   する?




 行くわ!



 アタシは即答した。

 ちょっと悔しいが、三人はアタシがそう言う事を知っている。

 ただ、質問しただけだ。


 アタシの中に入ったアタシ“達”のせいで、アタシの中にあるシンジへの想いが増
加している。



 会いたくて、一緒に“生きたくて”仕方が無い。




───なら行け。レイが待ってる・・・・・・。



 え?



───僕たちはここで消える。君たちが歴史を変え、世界を救う事ができたのなら、
   僕たちの破滅して行く運命にも勝利して行く分岐が現れるだろう。



   ア、アンタ達はそれでいいの??!!




───死ぬ訳ではない。“無かった”事になるだけだ。
   それも、“最悪の未来”という世界がな。


───オレ達が皆に会えないだけで、勝ち続けてゆく道を進む“オレ達”は皆と進み
   続ける・・・・・・。ただそれだけだ。なんの問題も無い。



 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・。



───我々の“想い”は君と共に行く事になるだろう。


───だから、忘れないでほしい。アスカ君には仲間がいる。君の事を想い、支えて
   くれる人がいる事を・・・・・・。



 ・・・・・・・・・アタシは・・・・・・・・・。




───進む事を止めるな。諦めなければ、幾らでも道を進める。






 アタシの心に降り積もる。

 挫けず、貫く心。




 人を信じる想いが・・・・・・。




 そうだなんだ。


 アタシは一人じゃないんだ・・・・・・・・・。




 ううん。そうじゃない。




 たとえ一人になっても、シンジは居てくれる。



 どんな時でも、どんなに離れても、彼だけは自分を忘れないでいてくれる。



 無理に一番なる必要はないんだ・・・・・・・・・。






 アタシが、アタシでいるだけで、アイツは・・・・・・・・・・・・・・・。


































 唐突に世界が輝く。


 空には満天の美しい星空。


 星空を見上げる事なんて、しばらくなかったなぁ・・・・・・。


 「アスカ・・・・・・」


 ふと気付くと、アタシの横にファーストがいる。


 あは・・・・・・“アスカ”だって・・・・・・。


 いつも弐号機パイロットって言ってたのにね・・・・・・。


 これはこれで嬉しくなる。



 気が付くとアタシたちは服を着ていない。


 生まれ変わったからかな?


 どうせ、一度は心をむき出しにしたんだから恥ずかしく無い。



 「待たせたかしら?」

 「ううん・・・・・・」


 前では解らなかったけど、ファーストには表情があった。
 ささやかで解りにくいだけ。


 「手間かけさせるわね」


 「・・・・・・いいの」


 アタシはくすっと微笑んだ。


 すると、ファーストも微笑を返す。


 へぇ・・・・・・けっこう可愛いじゃない。


 「また・・・・・・よろしく頼むわ」


 「・・・・・・こちらこそ」







 と、アタシたちの前に男の子が現れる。


 前と同じ顔。


 黒い髪。


 無駄な肉の無い、華奢な体つき。


 前と同じ優しい眼差し。
 

 だけど、前よりずっと強い力のある眼の輝き。




 あ、マズイ。ドキドキする。




 アタシたちと同じで服を着てないけど、そっちは気にならない。




 この眼が、ダメだわ。

 凄すぎる・・・・・・・・・。




 「やっと来たわね。バカシンジ」


 気持ちをごまかすように口を開いた。


 でも、口調とは裏腹に口の端が笑ってしまうのが自分でも判る。



 「アスカ・・・・・・ごめんね」


 シンジがイキナリ謝ってきた。


 「バーカ。ナニ謝ってんのよ」

 「うん・・・・・・でも、ごめんね」



 ああん。もうっ! また! 冷静になれないじゃないの!



 「ホント・・・・・・バカなんだから・・・・・・」


 アタシは涙ぐんでしまう。



 “ここ”には心の壁は無いに等しい。

 シンジの心の中にある、アタシたちへの想いがダイレクトに伝わってくる。


 アタシを守れなかったこと、

 心を守ってあげられなかったこと、

 そして、病室でアタシを汚したこと、

 アタシを・・・・・・殺そうとしたこと・・・・・・。





 もちろん単純にそれだけの話じゃない。



 所詮はヒトの脳の理解力。理解できる範囲は少ない。

 心の方は全部理解しているのにね。


 それでも、シンジの傷の大きさを知ることはできた。

 アタシの心だけが傷だらけじゃない。

 そのことを知ることができた。




 でも、そのせいで心が痛くなる。




 なんで、もっと早く解ってやれなかったんだろう・・・・・・。



 「もういいよ。アスカ」




 だけど、シンジは微笑む。


 「今度は間違えない・・・・・・今度こそ、アスカを、綾波を守るよ」


 「シンジ・・・・・・」



 くぅ〜〜〜〜・・・・・・今のは効いたわ!! グサッときたわ。



 ファーストも顔が赤い。そりゃそうよね・・・・・・。




 「碇君・・・・・・私はあの時間にもどると、リリスの力を無くすわ。まだ、綾波レイだ
  から・・・・・・」


 「そうだね」


 「だから、碇君を守れないかもしれない・・・・・・」


 ファーストが悲しそうに呟く。


 そんな彼女の頬を、シンジの手が優しく触れる。



 ムぅ〜〜・・・・・・なんか悔しい。



 「綾波は“綾波”でいいんだ」


 「碇君・・・・・・」


 「僕たちは“今”を無くしに帰るんだ。だから、アスカはアスカでいいし、綾波は
  綾波でいいんだ・・・・・・・・・・・・・・・違うか。そうじゃないと嫌なんだ」



 「シンジぃ・・・・・・」
 「碇君・・・・・・」






 こんちくしょう。
 やられた。




 シンジへの想いが強くなった今じゃあ、今の一撃は致命的だわ。


 心臓が止まって身体がLCLに戻るかと思った。
















 世界が光に包まれてゆく。


 お? 来たわね。




 “過去”への始まりの時が・・・・・・・・・。





























 唐突にシンジはアタシたちを抱きしめた。



 「え? シンジ?!」
 「碇君?!」




 そして、耳元で呟いた。




 「二人とも、大好きだよ」





 やっ・・・・・・・・・!!!!!!!!






 殺られたっ!!!





 アタシの心はシンジに完全に殺された!!







 シンジ以外の事が木っ端微塵になった!!







 シンジの腕の中という事実も拍車をかける。






 “愛しい”って事を焼印として心に押し付けられてしまった。






 恨むわよ?




 一生、離さないんだからね!











 視界は全部、光に溶けてゆく。










 アタシたちと、世界を包み込み、
















 世界は光に溶けていった・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
















































 ・・・・・・・・・あれ? いつの間に眠ってたんだろう?

 気が付くと朝になっていた。

 あの時の夢をみるなんてね。





 アタシがこの世界に帰って来て、最初に行動したのは加持さんを助ける事だった。


 アタシに興味が無かった事なんか、既にどーでもいい。


 シンジが見てくれていたら、他はどーだっていい。


 今のアタシは、女一人ほったらかして自己満足の末に死んでしまう男なんて、馬鹿
としか思えなかった。



 ただ、ミサトを幸せにしてほしいから・・・・・・・・・。



 大体、女を八年も待たすなんてどーかしてるわよ!!



 アタシは頭に浮かんだ“クワトロ”という偽名を使って、知っている情報を与え続け
た。


 好奇心が全てを優先する加持さんの事、馬鹿馬鹿しいほどアッサリ喰らい付いて来た
わ。


 そして今日、ついに彼は行動した。


 アタシの想像通りなら、必ずゼーレに一泡吹かせられる。




 見てなさいよ・・・・・・。









 昨日の内に荷物は整えておいたから、後は運んでもらうだけだ。





 やっとシンジに会えるんだ!!





 顔を叩いて気合を入れ、アタシは鞄を掴む。




 “行くわよ!! アスカ!!”




 アタシは“前のアタシ”という仮面を被り、不機嫌そうに部屋を出た。





 「なんで加持さんいなくなっちゃったのよっ!!!」







 でも、心がはずむ。







 あの、ミサトとシンジとの生活に“戻れる”んだから・・・・・・・・・。










 アタシにとっての世界・・・・・・それは、シンジといたあの部屋なんだから・・・・・・・・・・。
















                         “Asuka・SIDE”STORY
 
                                END

                            TURN IN THE NEXT


                             For “EVA” Shinji














──あ(と)がき──

 ハイ。外伝終了です。

 長くてスミマセン(^^;)
 
 シンジ君だけの話では、二人の事を説明し切れなかったもので・・・・・・。
 いわゆる“苦肉の策”ってヤツです。

 メールで頂いた感想の中に、彼らの力のことがありましたけど、シンジ
君たちを幸せにするために必要なものは“力”と“知恵”と“勇気”です。


 “力”だけではゼーレやゲンドウはおろか、戦自にも勝てません。


 “知恵”だけでは、使徒に勝てません。


 “勇気”だけでは、“状況”以外の何にも勝てません。


 それがこの作品の骨子です。


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・って、エラそうですね(^^;)


 では、長くなりましたが、そろそろこの辺で・・・・・・・・・。


 次回、ようやくラミエル戦が近寄ってきます。


 ではでは・・・・・・・・・。



 〜〜シンジ君の生活に幸いあれ・・・・・・〜〜


作者"片山 十三"様へのメール/小説の感想はこちら。
boh3@mwc.biglobe.ne.jp

感想は新たな作品を作り出す原動力です。1行の感想でも結構
ですので、ぜひとも作者の方に感想メールを送って下さい。

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