全てにおいて終わりがあるように、全てにおいて始まりがある。 出会いがあるから、別れがあり、 別れがあるから、再会がある。 レイとの出会いがあったからこそ、初号機に乗り、 初号機に乗って戦い続けていたからこそ、アスカとの邂逅があった。 だが、サードインパクト後の赤い世界にて再会を果たしたアスカは少年に対してまだ憎しみを持っていた。 それは気持ちの行き違いに過ぎないのであるが、二人にとっては絶望的な隔たりであった。 ───二人の記念すべき第一戦。 それは、MAGIのメモリーに大切に保管されていた。 現在の関係は、その戦いから始まったのだ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。 ────────────────────────────────────── Vs ―ヴァーサス― EoE・After VS:4 ───────────────────────────────── 白い壁の続く建物の一室。 その部屋のベッドに少女は横たわっていた。 その側らにパイプ椅子をおいて見つめる少年。 意識はあり、言葉も喋る事ができるものの、誰にも心を開かない少女を心配そうに見つめていた。 ここは、何とか活動を再開したNERVの看護病棟である。 結局、赤い世界から人々は還って来て世界を立て直し始めた。 殺害された職員の大半も還って来ているのだが、全員と言うわけでもなく、アスカを看護する手が足りな い。 少年は、その役をかって出たのだ。 無論、身体を拭くとか、カテーテル交換等は女性看護師の仕事である。 彼はそれ以外のケアに努めていた。 ─── 一ヶ月も続いたある日の事。 「・・・・・・アンタ、ヒマなの?」 ついに少女が語りかけてきた。 「違うよ」 「そう・・・・・・」 だが、少年に目を向けない。 「それとも、今のアタシを笑いに来てるの?」 「違うよ」 「そう・・・・・・」 そう言われる事は想像していた。 それでも心が痛む。 「どうせかまってほしいだけなんでしょ? かまってくれたら誰だっていいんでしょ?」 相変わらずの憎まれ口である。 少年の反論は無い。 「ホラみなさい。アンタは自分を見てくれるんだったら誰だ・・・・・・・・・」 言葉が途中で止まる。 言いながら少女が初めて顔を向けると、少年は睨みつけていた。 「・・・・・・・・・・・・・・・カ」 「え?」 「バカアスカって言ったんだよ!!」 「・・・・・・・・・?!」 流石の彼女も、少年の激昂に気押される。 「誰でもいい?! 誰でもいいだって?! あの赤い海にいたのは僕とアスカだけだったじゃないか!!」 「!!」 「『何もしない、抱きしめてもくれないくせに』って言ってたよね?! 触れようとしただけで拒絶し続け たのは誰だよ!!」 「それは・・・・・・」 「僕だってアスカを助けたかった!! 抱きしめてあげたかった!! だけどアスカは近付けば近付くほ ど逃げたじゃないか!!」 アスカは完全に少年に飲まれていた。 激しい心の声がアスカを責め苛む。 だが、不思議とそれは心地よかった。 「僕の全てが手に入らないんだったらいらない?! 酷いよ!! 僕はとっくにアスカ以外のこと考えられなかったのに、これ以上何が欲しいのさ?!」 「え・・・・・・・・・ホント・・・・・・なの?」 「なんでアスカに嘘なんかつかなきゃならないんだよ!!!!!!」 余りの大声にアスカが怯えた。 少年の初めて見る少女らしさである。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・ごめん」 その表情と仕種にやっと落ち着きを取り戻す。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・でも、僕はとっくにアスカだけしか見てなかったよ・・・・・・・・・気付いてくれてなかっ たみたいだけどね」 いつの間にか少女の身体を拭く時間になっていた。 少年は洗面器にお湯を入れに行こうと腰を上げた。 「・・・・・・・・・まって!! 行かないで!!」 「え?!」 衰弱した身体をなんとか起こして少年に哀願する。 当然、すぐに駆け寄って身体を支えてやる。 「アタシね・・・・・・アタシ・・・・・・・・・」 「いいよ・・・・・・無理に言葉にしなくても」 少年は優しく少女の髪を撫でる。 艶やかであった髪は、少女の衰弱と共に痛んでいた。 それが少年の心を傷つける。 「シンジ・・・・・・・・・・・・アタシ、好きなの!! アンタが好きなの!! ううん、アンタ以外の男の人なんかいらないの!! シンジがいてくれたら何もいらない!! シンジがそばにいてくれたら・・・・・・シンジがずっと見てくれてたら・・・・・・・・・・それだけでいいの!! アタシは・・・・・・アタ・・・シ・・・・・・・・・ンん・・・・・・」 少年は強引だった。 少女に最後まで言わさなかった。 数分にも及ぶ、本当の意味でのふれあいの後、やっと顔を離す。 名残惜しそうな少女に、少年はやっと微笑みをあげた。 ───うれしいっ!! 少女の心を歓喜が支配した。 少年はこんなにも自分を求めているのだ。 この少年は、こんなにも自分を愛してくれているのだ。 それが解っただけで、こんなにも自分が幸せを感じられるなんて・・・・・・・・・。 人の想いに触れた時、まさか自分がこんなに被独占欲が強かったのかと思い知らされた。 だが、それは素晴らしく心地よかった。 「アスカ・・・・・・・・・もう放してあげないからね」 「・・・・・・・・・それはこっちの台詞よ」 「僕の方が独占欲強いんだよ?」 少年の言葉にアスカの心がさらに熱くなる。 「でも、好きになり始めたのはアタシの方が早かったのよ?」 「え?」 たちまち赤くなる少年。 強引にキスまでしたくせに・・・・・・・・・と、アスカの顔が綻んだ。 「で、でも、僕の方がアスカを見てたよ?」 「甘いわね。アタシの方が長いのよ」 「僕だよ」 「アタシよ」 そういって見つめ合う二人。 「あは・・・・・・」 「ふふ・・・・・・」 どちらともなく笑みが漏れ、また唇が重なる。 「ね、勝負しよっか?」 「勝負?」 「そ。アタシとシンジのどっちが、どっちをどれだけ想ってるか勝負するの」 「へえ? で、勝ったら?」 「負けた方がプロポーズするの」 「・・・・・・・・・え?」 今更ながら真っ赤になる少年。 そんな少年の愛らしい表情に、またも笑みが浮かぶ。 「シンジにプロポーズしてもらうんだもんね♪」 「・・・・・・ま、負けないよ」 「へえ〜?」 挑発的な少女に、彼もまた笑みを返してくれた。 「絶対、アスカに『結婚して』って言わせてみせるよ」 「うふふ・・・・・・楽しみにしてるわ」 「でも、今は・・・・・・」 「うん。先に身体を治すわ」 「治したら、『帰ろう』ね」 「うん・・・・・・アタシたちの居場所に・・・・・・」 二人の唇が、また重なった。 今度は戦闘開始の合図である。 その為かどうかは解らぬが、それは、相当長かった。 まるで二人の間にあった壁を取り払う儀式のように・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。 少年───碇シンジの戦いは、ここからスタートした。 シンジ VS アスカ レディ〜〜〜〜〜〜〜〜 GO!!!!! 〜〜おまけ〜〜 「司令、入りますか?」 「問題・・・・・・・・・あるな・・・・・・やめておこう」 「しかし・・・・・・ここにずっといるというのもなぁ・・・・・・」 「ふ・・・・・・無様ね・・・・・・・・・」 アスカの病室の前、とてもじゃないが入ることができない雰囲気の為、見舞いに来た四人・・・・・・ゲンドウ、 冬月、ミサト、リツコはヤンキー座りで円陣を組んで待機していた。 その横で、 「ちゅ、中坊の分際で〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!」 行き遅れケテーイな女性看護士が壁に向かって地獄突きを連発していた。
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