───PM 05:10  綾波財閥 六分儀レイカ会長室。


 「・・・・・・・・・ったく・・・・・・未だ過去の栄光にしがみ付いてる国というものは見苦しいものですわね・・・・・・」


 元大国、米国の難民支援と海流変化による都市破壊被害の復興支援のデータを纏めながらそう愚痴るのは、
この部屋の主である六分儀レイカ会長その人である。

 間違いなくレイの祖母であり、レイの髪と瞳をそのままブラウンにして大人にしたような外見であるのだ
が、その外見はシンジの母であるユイに酷似しており、尚且つ外見年齢も酷似していた。


 ユイやアスカの母であるキョウコ、そしてレイカはNERVの関係者であるからして、その恩恵に肖って
いるとしか思えない。


 特にレイカはレイの母と言われても、『やぁ、若いお母さんですねぇ』と納得してしまうほどなのだ。

それ程見た目が若々しい。


 レイに“お婆様”等と呼ばせず、“レイカさん”と呼ばせているのもその為であろうし、一目見れば納得で
きると言うもの。

 現に、今も財閥トップで執務を行ってはいるが、外見年齢から行ってもその場から浮いている。



 もっとも、彼女の背後から滲み出るものは王者のそれである。



 ともかく、その元大国の現大統領から支援増強の嘆願書を受け取り、その支援データを見直しているとこ
ろである。


 その書類は命令書一歩手前で、えらく大上段に構えたものであった。


 NERVに介入させて大統領の座から叩き落してやっても良いのだが、それも大人気ないし難民らには何
の罪もないのでので素直に支援してやる事にした。

 もっとも条件は付けるのだが、あの能無し大統領ならば如何な無理難題をふっかけたとしても、そのリス
クを理解できぬであろう。




 レイカはふと思う。

 孫娘のレイが恋焦がれるシンジを大統領に当てたらどうだろうと。

 おそらく彼は、自分の家はひたすら質素にし、弾ける笑顔の外交で次々と支援を得て国を立て直すであろ
う。

 軍事増強などする訳もないし、家事全般に造詣のある彼の事だ。まず国民の衣食住から取り掛かるはずだ。

 なんとその国の未来は明るい事か。

 国民第一主義の大統領・・・・・・なんと素晴らしい。

 シンジとレイの結婚祝いに米国大統領の椅子を用意してやろうか・・・・・・・・・等と恐ろしい事を考えていた。




 その時、



 Beeee! Beeee! Beeee!

 六枚の翼をひろげた天使の姿をしたタペストリーの目が輝く。

 驚いてインターフォンのキーを押した。

 見た目以上に高性能のスピーカーから彼女の専属秘書の声が響く。

 『レイカ様』

 「何があったの?」

 『コードS7が確認されました』

 「S7??!!」

 滅多に動揺しないレイカの顔色が変わった。

 「直ぐに援軍を現地に派遣!! 諜報班は情報戦処理にかかって!! どんな些少なデータもこぼさない
  で!!」

 『了解いたしました』

 ブツッと音が切れる。


 まずい事になった・・・・・・・・・。


 コードS7・・・・・・・・・シンジ君とレイ以外の女性が二人して行方が解らなくなったのだ。

 このままでは『シンジ君とレイたんのはぁはぁモエモエ結婚大作戦(未公開データ)』が頓挫してしまう。

 残ってた書類・・・・・・大統領の任期延長云々は全て破棄。

 全作戦をシンジ確保に切り替えた。


 後に、この事で米国大統領が解任されちゃったりなんかしたのは財閥では公然のヒミツである(笑)。





                          はっぴいDay’S

                      14・STEP 夜の大捜査線 中編





───同時刻  惣流邸

 キッチンで夕食の用意を整えているキョウコをアラームの音が手を止めさせる。

 壁に備え付けのモニターからだ。

 夫婦二人暮らしとなっているが、愛娘とは連絡を欠かさない。

 今日もメールが届いたのだ。

 「シンジくんとの仲が進展したのかな〜・・・・・・ま、そう簡単には・・・・・・・・・」

 モニターを見つめるキョウコが固まる。


 『ママへ マタニティ作戦を実行します。支援ヨロシク♪ From.アスカ』


 「なんですってぇ?! こうしちゃいられない!! アナタぁ〜〜〜っ!!!!!!!!!」

 腕時計型の主人への直通回線を開き、支援行動を起こした。


 ついにこの時が来たのだ。


 娘が大人の階段を上る時が・・・・・・・・・。


 マタニティ作戦とは・・・・・・シンジとの子供をフライング妊娠する為の大作戦である。





───PM 05:33 某所


 少年と少女が背中を合わせて座っていた。

 その手は、柔らかく繋がれている。

 “前”の世界でよく見られた光景だった。


 「ねぇ、シンジ・・・・・・久しぶりね・・・・・・二人っきりって・・・・・・」

 「え? あ、そうだね。“こっち”に来てからは母さん達やキョウコさん・・・・・・そしてレイ達がいたからね」

 「“あっち”じゃあ、ほとんど夫婦だったのにね」

 内心、血管を膨らませていたりするアスカ。

 「そうだね・・・」

 そんな彼女の心を知ってか知らずか、振り返って微笑みかける少年。

 少女の頭から、今さっきまでの嫉妬がすぽーんと消える。

 「・・・・・・あんまり幸せなんで“前”の事忘れちゃいそうだよ」

 「そうね・・・・・・でも・・・・・・」

 「ん?」

 「アタシは忘れないわよ・・・・・・あんな世界だったからこそ、シンジ達に出会えたんだもん」

 「そうだね・・・・・・・・・それが救いだよね」

 「うん・・・」

 「・・・」

 シンジに重ねられた手が、きゅっと握られる。

 「アスカ・・・・・・?」

 「シンジぃ・・・・・・せめて、今だけ・・・・・・今だけ“前”のアタシ達に戻らせて・・・・・・お願い・・・・・・」

 力無い弱い声・・・・・・・・・。


 彼女の心がか弱く壊れやすいものである事を少年は熟知している。


 断る訳等・・・・・・

 「うん・・・・・・解ったよアスカ・・・・・・」

 あろう筈が無かった・・・・・・・・・・・・・。



 ニヤリ・・・・・・・・・。



 かなりとんでもない笑みを少女は浮かべているのであるが、心優しい少年が気付く訳もなかった・・・・・・。



───PM 06:04  公園中仮設作戦実行本部。

 「病院から公園へ直で移動。公園トイレで服を着替え、次にデパートへ移動。デパート内で着替え、本屋
  で参考書と料理の本を購入し、それからトイレへ移動。それからの足取りが不明です」

 恐ろしいスピードで押し寄せてくる情報を、これまた恐ろしい速度でコンピューターに入力してゆく少女。

 ──いや、少女のような童顔の女性。

 伊吹マヤ嬢である。

 レイ&マナからの通報を受け、なぜか講義を“生理痛”を理由に退出し、公園に直行したのだ。


 マヤは医学部なのであるが、理系専攻であった為かやたらとタイピングが早い。


 与えられた情報を、レイカが使用(私用)許可を出したMAGI弐式に打ち込んでデータに篩いをかける。

 残った情報から信憑性の高いものの順番に揃えるのだ。

 ただ、決定的な情報が一つ抜けている事に気付いてはいないのだが・・・・・・・・・・・・。


 「公園でシンジくんが男っぽいラフなジージャンと帽子に着替え、アスカもカットジーンズにチェンジし
  ているわ。デパートへ行ったのは、着替えを購入する為ね。監視カメラの映像からアスカがバーゲン品
  を適当に取っていることが解かるもの」

 「考えたわね〜・・・・・・シンちゃんに見せる服をそんなトコから選ぶわけ無いもの・・・・・・」

 「ここで購入したのは大人しいブラウス。ホラ、これよ」

 画面に映るのはいつものアスカではない。

 髪を三つ編みにし、赤いリボンで束ねた、なんとなくか弱げな少女がいた。

 「・・・・・・いきなり演技かい・・・・・・似合わないわね・・・・・・」

 マナの眼も厳しい。

 その少女に寄り添うようにまたラフなTシャツ姿の少年がいた。

 その庇うように立っている事が、少女達には腹立たしい。

 たちまち少女達の額に井桁マーク浮かぶ。


 「怖い・・・・・・」

 「ホンマ・・・・・・」

 逃げ遅れ、巻き込まれてしまった中学生カップルもいた。

 無論、トウジ&ヒカリである。


 仮設本部のテントの中、22個のモニター監視の人員に駆り出されているのだ。

 『どーしてアスカを止めなかったのよ!!』

 というかなり理不尽な理由で・・・・・・・・・。


 「(ボソボソ)せやけど・・・・・・この二人って、けっこう似合うてへんか?」

 「(ボソボソ)うん・・・・・・アスカも碇君といるとこんな可愛い顔して笑ってるし・・・・・・」


 画面の中、実に幸せそうな二人。

 “前”の世界において、夫婦同然の暮らしをしていた二人である。

 阿吽の呼吸ができているのは当然の事だ。



 だが、ここでそれを言うのはちょっちマズイ。


 「ほほ〜〜〜・・・・・・鈴原くんはアスカ側ですか〜〜・・・・・・」

 ヤバゲな眼が二人を貫いた。

 レイの赤い眼が、皆殺し集団ケ○ベロス隊の『赤い眼』を連想させて実にイヤン。


 「へ〜・・・・・・そうなんだ・・・・・・・・・」

 なぜか野戦服姿のマナ。

 彼女の手にはかの名銃、M16−A2のスーパーカスタム使用のガスガンが握られている。

 グリーンガス6連直結(注:違法)のイカした威力がもうステキ。



 「ハッハッハッ・・・・・・何をイッテルンダイ。ボクが惣流のミカタナワケナイヂャナイカ。ネェ洞木サン」

 「ソウデスワネ、鈴原クン」


 カタカタと音をたてそうな固い言葉を出す二人。

 流石にまだ死にたくないらしい。



 「でもさ、この格好の惣流もいいよなぁ・・・・・・」

 メガネは死にたいらしい・・・・・・・・・。


 「「「ほほう・・・・・・」」」


 公園を猟奇殺人事件の現場のような悲鳴が木霊した・・・・・・・・・。



 「相田君・・・・・・なんて君はステキなんだ・・・・・・こんなにもボクを笑わせてくれる・・・・・・」

 なぜかバラを口元に当てて笑う人もいてたりした・・・・・・・・・。



───PM 06:30 同所


 「くっ・・・・・・・・・このままじゃあ、シンちゃんがぁ〜〜・・・・・・」




 「や、やめてよ、アスカぁ!!」

 「くっくっくっ・・・・・・・・・シンジぃ・・・・・・今日こそアンタを汚してあげるわ・・・」

 「や、やだやだやだぁ〜〜〜っ!!」

 「ふふふ・・・・・・・・・いくらでも叫んでいいわ。誰も助けになんか来ないわよ」

 「あ、あ、あ・・・・・・・・・レ、レイ〜〜〜〜〜〜〜!!!!」

 「あ〜〜〜〜はははははははは・・・・・・・綺麗な肌ね・・・・・アタシがむちゃくちゃにしてあげるわ」

 「ああ〜〜〜〜〜〜・・・・・・・・・・・・・・・・・」


 赤い雫が水面に落ち、涙の王冠を作り出す。

 その水面を広がってゆく波紋は、少年の静かなる悲しみ。


 涙の跡を頬に残したまま、虚ろな眼をして横たわる両腕を縄で縛られた少年。

 そして彼を見下ろしながら下品な笑みを浮かべた赤毛の全裸の少女。


 無理矢理散らされたシャクヤクの蕾は、あくまで悲しく無残であった・・・・・・。





 「あ゛あ゛〜〜〜〜〜〜っ!!! シンちゃ〜〜〜〜〜ん!!!!!!!!!!!」

 頭を抱えて転がるレイ。


 マナも眼の色が怖い。

 ブツブツ言いながらアサルトライフルを磨き続けている。


 そんな二人に怯えるトウジ達。



 そこへ、


 「レイ様」

 シュタッと何処からともなく黒子姿の男が現れた。

 綾波財閥(六分儀レイカがトップであるが、財閥名は綾波)財閥の私設工作部隊である。

 “黒子姿”は制服だ。

 「情報は?」

 イキナリ落ち着いて反応するレイ。

 流石は未来のトップだ。


 「はっ。アスカ嬢から惣流邸にメール連絡が送られた地点が判明いたしました」

 「・・・・・・随分と時間がかかったわね〜・・・・・・・・・で? どこなの?」

 「駅前改札口前です」

 「「「なっ!!!???」」」


 つまり市外に出た可能性が浮上したのだ。


 「なんてこと・・・・・・・・・っ!!」

 とてつもない速度でキーを叩くマヤ。

 素早く都市施設のコントロールキーを奪い去り、駅の監視カメラに介入する。


 監視カメラで撮られた二時間前からの画像をあらゆるモニターに映し出し、監視員(トウジ達含む)に分
析させる。





 「・・・・・・おったで!!!」

 見つけたのはトウジ。

 改札口に歩き、カードを読み込ませて中へ入ってゆくラフなジャケット姿のシンジがいた。

 「どこ? シンちゃんはどこへ行こうとしてるの?!」

 「・・・ちょっと待って!!」

 マヤが炎の独楽でも出せそうな速度でキーを叩く。


 入手データと時刻表から検索し、駅構内のカメラの画像から割り出されたのは・・・・・・。


 「17時だったら芦ノ湖か、双子山よ!!」

 「ふ、双子山?! この間行ったトコじゃないの〜?!」

 夏休みに皆でハイキングに行ったばかりだ。

 つまり、あの時から既に計画を起こしていたと言う事か?


 「あの周辺で『ご休憩』ができるところを出して!!!」

 「解ってるわ!!!」


 画面に映し出される8つの光点。


 そして、山の中にも・・・・・・。


 「はぁ?! キャンプ場の中ぁ〜?!」

 「光点は周辺のラブホテル。山の中のはログハウスよ」

 乙女達の脳裏を雷光が走った。






 夜のロッジの中。それも暖炉の前。

 一組の若い男女が全裸で毛布に包まっている。


 外は雨。


 濡れた衣服が暖炉の近くの置かれた椅子にかけられている。


 「シンジぃ・・・・・・」

 「震えてるよアスカ・・・・・・怖い?」

 「・・・・・・寒いの」

 「こっちへおいでよアスカ・・・・・・」

 「うん・・・・・・」

 「アスカの身体はあたたかいね・・・・・・」

 「シンジの身体は熱いわ・・・・・・」

 「アスカのせいだよ・・・・・・」

 「あ、ダメ・・・・・・」

 「やめないよ・・・・・・いい?」

 「・・・・・・・・・・・・・・・・うん」

 そのまま縺れる様に倒れこむ二人。

 パチパチと火の粉を飛ばす暖炉の火が二人だけの空間を優しく暖めていった・・・・・・・・・。








 「「「じょ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜だんじゃないわよ!!!!!!!!!!!!!!!!」」」



 期せずして同じ妄想に至った乙女隊。

 いきり立ってそのまま双子山へ向かおうとした其の時、


 「第伍班から入電!! 惣流夫婦が大きな荷物を持ち、車で移動!! 想定地点は・・・・・・芦ノ湖!!」




 「「「ぬぁんですってぇええええ〜〜〜〜〜〜?????!!!!!」」」




 恐らくどちらかはフェイクだ。


 芦ノ湖か双子山・・・・・・二つにしぼられた地点。


 ならば・・・・・・・・・・・・。


 「行動部隊を二班に分けて!! あたしとレイが芦ノ湖!! 伊吹さんは双子山へ!!」

 「ど〜して、わたしと組むのよ?」


 少々不機嫌になるレイ。


 「決まってるでしょ? あなただけだったら抜け駆けする可能性あるもん」

 「(チッ)」


 バタバタと駆け出してゆく乙女隊。

 余りの素早い展開についていけないトウジとヒカリ。


 「ああ、鈴原君と洞木さんは帰っていいと思うよ。後はボクがここにいてあげるから」


 しれっと二人に自由を与えてやるカヲル。

 その言葉にほっとする中学生カップル。

 
 「あ、もちろん洞木さんは送っていくんだよ?」

 「わ〜〜っとるわ!! オナゴ一人で帰せへんて」

 「鈴原・・・・・・」

 ぽんっと頬が赤くなるヒカリ。

 最初から送るつもりでいた彼の心遣いが嬉しい。


 「な、なんや・・・・・・?! 行くで」

 「うん!!」


 肩を並べて公園を後にする二人。

 地面に伸びる二人の影はぴったりと寄り添っていた・・・・・・・・・。


 「初々しく美しい光景だね・・・・・・。比翼の鳥を想像させてくれるよ・・・・・・」

 二羽一対の中国の伝説の鳥だ。

 仲の良い夫婦などの喩えで知られている。





───PM 6:43  同所



 そんな二人の姿が見えなくなるまで見送った後、カヲルはモニターに出される画像に眼を向ける。

 ここにはカヲルと廃棄物以外は残っていない。

 乙女隊について行ったのだ。


 「ふふ・・・・・・六分儀さん、伊吹さん・・・・・・君達は忘れているね・・・・・・・・・」


 カヲルの白魚の様な指がキーを叩く。

 マヤに全く見劣りせず、かといって荒々しくもない。

 まるでピアニストの様に繊細で、風の様に素早かった。


 「惣流さんだけの行動データしか入力してないよ・・・・・・彼女はね、シンジ君といるんだよ?」

 改札口を抜け、一度リニアモノレールに乗るが、発車ギリギリで降りてトイレに駆け込むアスカの画像。


 シンジは“あの”世界でずっとアスカと生活を共にしていた。

 だから、お互いのフォローは完璧なのである。


 数分後、赤い野球帽を被り、袖をちぎったジャケットを着た、ワイルドな少女がトイレから現れる。

 髪と瞳の色は黒かったが、その顔立ちはカヲルが良く知る少女であった。


 「・・・・・・ほらね・・・・・・」


 その少女は一筋縄ではいかないのだ。


 「このまま行き着くとこまで行くのかな? 相田君、どう思う?」

 「・・・・・・・・・」

 「あれ? 解らないのかい?」

 「・・・・・・・・・」

 「・・・・・・返事が無い。ただの屍のようだ」

 「誰が屍だ!!!」

 がばっと身を起こす廃棄物・・・・・・・・・もとい、相田ケンスケ。


 「おや、生きてたね。うれしいよ相田君」

 「くぅ〜〜〜〜〜〜・・・・・・・・心にもないことを・・・・・・」

 「何を言うんだい? ボクが嘘を言っているとでも? ・・・・・・ああ、僕は悲しいよ」


 やたらと大げさなアクションで悲しみのポーズをとるカヲル。

 それを見て余計に怒りを湧かせるケンスケ。


 「でも、大丈夫かな?」

 「何がだ?!」

 イキナリ素に戻って誰言うことなく問い掛けるカヲルについて行けない。

 声が荒くなるのも致し方ない。

 「だって、シンジ君が惣流さんの毒牙にかかっている可能性は否定できないだろう?」

 「あ? う、うん・・・・・・まぁ、惣流の事だから、今頃シンジをいただいてるかもな・・・・・・」

 「だったら、その責任は君に掛ってくるよ?」

 「なっ!!! なんでだぁ?????!!!!!!」

 「当たり前じゃないか。君が止めなかったからこんな事になってるんだよ? だったら八つ当たりで処刑
  されるのは仕方ないじゃないか」


 八つ当たりで殺されるのもどうかと言う話もあるが、まぁ、世界の歴史においては間々あることであるか
ら致し方・・・・・・・・・無いかなぁ?



 ぎゅるるるるるると顔色が音を立てて悪くなるケンスケ。

 それほどシンジが襲われている事を決定事項にしたいのか?


 「バカヤロウ!! 惣流だったらヤってる可能性の方がでっかいだろうが!!!」

 バカ呼ばわりかい・・・・・・オボエテロ・・・・・・・・・。


 「に、逃げるぞ!! オレは逃げる!! 未来へ向かってランナウェイだ!!!」

 と、逃亡に移ろうとしたのだが・・・・・・・・・。


 がきんっ


 彼の足は指揮車のウインチに鎖で固定されていた。

 「な、なんで?!」


 ザマミロ。


 「お、オノレかぁ〜〜〜〜〜〜〜???????!!!!!!!!」

 「まぁまぁ相田君。諦めてボクと話をしていよう。実はネタは用意してあるんだ。18世紀ごろのフラン
  スの死刑なんだけど・・・・・・」


 「や〜〜め〜〜ろ〜〜〜〜〜〜〜っ!!! た〜〜す〜〜け〜〜て〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!!!!」






 彼の悲鳴は夕方の公園の遊具を揺り動かすのであった。

 マル。



 「『マル』。じゃねぇえええええええええええええええええええええっ!!!!!!!!!!!!!!!!」


作者"片山 十三"様へのメール/小説の感想はこちら。
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