「・・・・・・学校、急いだらまだやってるわよね・・・・・・」

 「そうね・・・・・」

 訓練日のロッカールーム。

 美少女二人はシャワーを浴び終わり、バスタオルを巻いただけの格好で髪を乾かしていた。

 無粋なタオルに隠されてはいるものの、成長途中とは考えられないほどバランスの取れた肢体、

 世の女達が歯噛みするほど若々しく極めの細かい肌。

 笑顔であれば弾ける様な魅力を振り撒き、男共を惹きつけるであろう事は想像に難くない。


 そしてその美少女二人の全てを得る権利を一人の男だけが持っている。

 もっとも、その男はまだ少年であり、純情であり、鈍感だ。

 彼女達が如何なる想いをもって身体をさらすか理解する事などできないであろう。


 その対象はここには居ない。

 彼は今、学校である。


 少年は、自分も訓練に付き合うと申し出たのであるが、彼女達は丁寧(やや暴力的ではあったのだが・・・)
に断った。

 ここ二日間、白兵戦闘師範の東郷リシュウの集中訓練によって少年はボロボロに疲労していたからである。

 少しでも休ませてやりたいという想いからの申し出に気付いた少年は、大人しく学校に向かって行った。

 『その代わり、晩御飯は期待しててよ』

 と言う言葉と笑顔を残して・・・・・・・・・。

 二人の美少女はそんなものを出掛けに食らったものだから再起動に時間がかかり、危うく訓練時間に間に
合わなくなるところであった。


 ま、それはともかく。


 髪が乾くと手早く学校の制服に着替え、タオルや汚れ物をクリーニングケースに放り込む。

 荷物などは持ってきていないので、ヘッドセットをポケットに入れたら完了である。

 ちなみに、赤みがかった金髪の少女は赤いヘッドセットの代わりに星型のポップな髪留めにしている。

 日本に“再”来日した日に少年が買ってくれたものだ。

 “昔”ならばヘッドセットに拘ったであろうが、“今”の少女にとって大切な宝物ではこの髪留めである。

 千円にも満たないそれも、少女の輝く魅力の後押しでブランド品を凌駕するものになっていた。


 だが、そうなると蒼みがかった銀髪の少女が納得できない。

 自分にはそんなものがないからである。

 “昔”は『壊れたメガネ』という思い出の品があったのであるが、“現在”の彼女にとっては『ただのゴミ』。

 コンビニ弁当の空箱に入れて燃えないゴミの日に出してしまった。


 そんな彼女に見かねた少年は、ついに彼女にも髪に着けるアクセサリーを買ってあげた。

 鈍感帝王である少年にしては、なかなかの気の付きようだ。

 少女に買ってあげたのは藍色のカチューシャだった。

 彼女の髪の色に良く映え、彼女の楚々とした雰囲気を醸し出している。

 もちろん、彼女の大切な宝物だ。

 例え“髭眼鏡”であろうと、彼女に黙って触ったりしたら行方不明者リスト直行であろう。


 お気に入りのヘアアクセサリーを着け、下着もバッチリお気に入りのものに代えた。

 学校に向かう為に制服を着なければならない事は致し方ないので、せめて下着と髪に拘った。

 うすくリップクリームをぬり、ロッカールームから二人同時に出て来る。

 眼はあわせていないものの、二人の間にはある種の緊張感があった。


 後に、戦闘師範であるリシュウは語る。

 『わしは合戦前の武者かと思ったぞ・・・・・・』

 と・・・・・・・・・。



 その感想は間違ってはいない。

 なぜなら明日の土曜日曜は休日。

 さらにNERVに出る用事もない。

 “前”の記憶を元にしても、使徒はしばらく来ない。

 となると・・・・・・・・・。

 この二日間、『誰』が、『愛しの少年』と『過ごす』かという大問題が起こるのである。


 愛する少年──碇シンジ──をデートに誘う。

 その命題を抱え、二人の少女・・・・・・赤みがかった金髪の少女──惣流・アスカ・ラングレー──と、蒼みが
かった銀髪の少女──綾波レイ──は学校に向かうのだった。



 学生達に突拍子もないほどの迷惑をかけに・・・・・・・・・・・・・・・・・・。




───────────────────────────────────────

                            リクエスト作品 弐

                        For “EVA” Shinji
                                異伝

                               雨降って固まる“地”

─────────────────────────────

                         



 ガラッ


 「シンジいる?」

 教室のドアを開け、開口一番それである。


 ちなみに、今は放課後。

 HRが終わってすぐである。

 靴箱は先に確認しているので、学校に居る事は間違いない。

 だから教室に来たのである。


 が、


 「え? ア、アスカ? どうしたのよ、今頃」

 「訓練終わったからシンジと帰ろうと思って・・・・・・シンジは?」

 教室に居たのは掃除当番であるトウジと、見張り役のヒカリ。それと数人の生徒達だけであった。

 「碇君だったら職員室に行ってるわよ? なんだかプリントの記入ミスとかで・・・・・・」

 「そうなの?」

 ふとシンジの机を見ると、まだ鞄が引っ掛けてある。

 いずれ彼は戻ってくるであろう。

 だったら教室で待っている方が得策である。

 自分の机は他のと一緒に教室の後に寄せられていたので、適当な机に腰をかける。

 「アスカ、行儀悪いわよ」

 「気にしない気にしない」

 もぅ・・・・・・っと、溜息をついて諦める委員長。

 その隙に逃亡を図っていたトウジだが、気付いたヒカリによって踵落としを食らって悶絶する。

 そんないつもの光景に思わずアスカの頬も緩む。


 こんな平和な日々がずっと続けばいいのに・・・・・・。


 それがアスカ達の切なる思いである。

 いずれ使徒との戦いも終わり、自分に栄光が訪れる・・・・・・と単純に考えていた“あの時間”が恨めしい。

 仮に使徒に勝てたしても、自分に待っているのは人柱として精神を破壊される未来だけ。

 何の事はない、ドイツの連中が自分に期待していたのは、都合よく壊れる人形だったのだ。


 もう、あんな想いをしてたまるものか・・・・・・。

 今度は・・・・・・・・・あいつらの好きにはさせない。

 だから、今度こそシンジ達と自分の未来を勝ち取る。

 その為に戦ってゆくんだ。

 そう、口には出せない強い想いをアスカは再確認していた。



 「ところで・・・・・・今日は一人なの?」

 「へ? ナニが?」

 「だから、最近は碇君とレイと一緒でしょ? レイはまだNERVなの?」

 「え? だってファーストは・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

  あっ? あ゛あ゛ぁああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!!!!」



 今さっきまでの柔らかい雰囲気はどこかへスッ飛ばし、机から飛び降りて教室から飛び出していった。



 「くぉおおおるぅぁあああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!!!

  抜け駆けすんなぁあああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!!!」




 「今ンは、惣流か?」

 ドップラー効果で声が伸びつつ遠ざかった頃、トウジが再起動を果たした。

 「え? う、うん・・・・・・」

 「・・・・・・・・・察するところ、綾波がシンジんトコに先に行っとるみたいやな」

 「みたいね・・・・・・」

 「・・・・・・・・・荒れるでぇ・・・・・・」

 「お、脅かさないでよ・・・・・・」

 何となく、教室に残る他の級友と顔を見合わせる。

 皆、そしてヒカリすらもコクリと頷く。

 想いは一緒のようだ。


 「「「「「「「「「「「「逃げよか?」」」」」」」」」」」」


 と、建設的な意見で落ち着いていた。

 掃除は終わっていないものの、机だけは元の位置に戻して足早に教室を去る面々。


 彼らの行動は感嘆に値するほど、迅速で的確であった・・・・・・・・・。



                      *   *   *   *   *   *



 レイは職員室に急いでいた。

 先ほどアスカが、『シンジいる?』と言って先に教室に入って行った。

 そしてヒカリとの話し声から不在を知り、階段近くで彼の居場所を立ち聞きし、先に行動したのである。

 一階にまで一気に下り、職員室を目指そうとした時、

 一階と二階の間の踊り場にアスカが出現した。


 「くぉおおらぁああああ・・・・・・・・・レイぃいい・・・・・・よくも抜け駆けしたわねぇえええ・・・・・・・・・」


 アスカは階段を踊り場まで一気に飛び降りてやって来たのである。

 「・・・・・・アスカ・・・・・・パンツ見えたわよ」

 レイの眼に、オレンジと白のストライプがハッキリ映った。

 「ンな事はどうでもいいのよ!!!!」

 何となくざわざわと髪が動いて見える。

 なんだか使徒相手の時より強い殺気を感じてしまうのは気のせいか?

 「ひぃ・・・・・・」

 一般生徒が耐えられる訳も無く、レイの近くにいた数人の男子生徒が、アスカのパンチラという超レアな
ものを拝見できたと言うのに、恐怖が前に立って腰を抜かしていた。

 「さぁ・・・・・・言い訳を聞かせてもらいましょうか・・・・・・・・・」


 バギリ、ボギリ・・・・・・・・・。


 どこかの世紀末救世主の様に指を鳴らせて近寄ろうとするアスカ。

 美少女と言うより、劇画漫画の格闘家だ。

 「訳は・・・・・・」

 レイは右手をポケットに入れた。

 「これよ!!!」

 レイの右手がきらめく。

 「ちいっ・・・・・・!!!」

 アスカは階段側に身を反らせて“それ”を回避する。


 たたーーーーーん


 だが、それは壁にぶつかり、跳ね返ってアスカにぶち当たる。

 「あ痛たっ!!」

 硬質のゴムボール・・・・・・いわゆるスーパーボールである。

 直径三センチほどのとんでもない数のスーパーボールを投げつけてきたのだ。

 階段の踊り場付近は四方がコンクリートであるからして、あたかも光が乱反射するが如く跳ね回り、アス
カの視界を塞ぐ。

 ただでさえ兆弾率が高いスーパーボールなのに、“今”のレイの腕力で投げられたのだから堪らない。

 まるで暴動鎮圧用のゴム弾を彷彿とさせるスピードで跳ねに跳ねる。

 「く・・・・・・っ。やってくれる・・・・・・」

 だが、アスカはその只中に飛び込み、恐ろしく器用に玉を回避する。

 顔面に襲い掛かるボールを紙一重で見切ると、それは背後の壁に当たり、階段に兆弾してアスカの頭頂に
迫る。


 だが、


 『見える!!』


 それも避ける。

 全身余すところ無くセンサーがついているかのように避けに避けるのだ。



 しかし、その間にもレイは職員室に入り、シンジを探す。

 「碇君・・・・・・いない・・・・・・」

 シンジの不在にがっくりと肩を落とす。

 「どうしたのかな?」

 そんなレイの落ち込んだ暗黒空間に気付いたのか、社会の教師が声をかけた。

 「あの・・・・・・碇君は?」

 「碇君? ああ、彼ならゴミを捨てに行ってくれているよ」

 「そうですか・・・・・・」


 その教師に礼を言う前に、



 ビュウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウっ!!!!



 職員室の前を赤い彗星が駆け抜けた。


 「!!!!!!」


 早い。

 いつもより三倍は早かった。


 「こらっ!! 廊下は走る・・・・・・・・・な・・・・・・・・・?」

 教師が文句を言う前にその姿は裏庭へ向かう廊下に消えていた。

 「・・・・・・・・・」

 レイの、闘争本能に火が着いた・・・・・・。

 「・・・・・・・・・って・・・・・・・」

 闘争本能がそのまま野生の力へとなだれ込んでゆく。

 「・・・・・・やってやるわ・・・・・・」

 職員室のドアも閉めず、廊下を猛禽類が飛び抜けてゆく。

 その赤い眼は、まるで獲物を追う鷹のようだった。



                     *   *   *   *   *   *



 (見かけ)平和な第壱中学の校門に、黒塗りの車が停止した。

 メタルブラックの車体に、スモークがかかった窓。

 軍が使用する公用車のような車である。

 はっきり言って胡散臭い事この上も無い。

 その件の車の後部のドアが開き、中から“如何にも”な風体の男が降り立った。

 長身で黒髪。

 顎髭付きの顔にサングラスをかけ、この暑いのに小豆色のタートルネックを着て、尚且つその上に組織の
制服を着てたりする。

 アヤシさ大爆発のこの男。

 言わずもがな、シンジの父親にしてNERV総司令、碇ゲンドウその人であった。


 なんでその男が第壱中学に? と誰しもが思うであろう。

 理由は単純にして明快だ。

 『レイに会う為』

 である。


 なにせ“今”のレイはシンジは当然として、冬月やキョウスケ、リシュウ、トウジやケンスケ以外の男と
は殆ど口を利かない。

 無論、“前”のレイと違うので日向や青葉とも少しではあるが話をする。


 しかし、ゲンドウは別だった。


 徹底的に避けているのだ。

 眼に入れるレベルで言えば、ケンスケ以下であると言えばお分かりであろうか?


 今現在のレイのシンジへの想いはざっと三倍、ゲンドウへの拒否感も三倍である。

 それに、リリスとして世界と交わった時、ユイ(正確に言うとユイの“記憶”であるが・・・)はゲンドウの
男としての不貞の部分を拒否したのだが、その時の感触も魂の欠片として残っている。

 よってゲンドウをゴミの様に考えていたとしても攻められないであろう。

 だから避けに避けているのだ。

 ゲンドウの呪縛がスッカリ消えているリツコも、レイの保護者として優しい女性となり、レイの身を守っ
ている。

 そのリツコ&レイの二人が協力してゲンドウを避けているのだから会える訳がない。

 作戦実行中以外、姿を見る事もできないのである。

 レイの部屋に行っていた時も、常に鍵がガッチリかかっており、チェーン・・・・・・というより重化合分子の
プレート(技術部謹製)がかけられており、開ける事など不可能であり、直したはずのチャイムも鳴らない。

 よっても会う為にはわざわざ学校に来なければならなかったのである。



 にしても、わざわざ会いに来るところからして、このヲっさんのビョーキの度合いが知れるというものだ。



 律儀にも玄関でスリッパに履き替え、まずは職員室へ向かおうとした・・・・・・。



 その時、



 ずがしゅっ!!!



 一瞬、オレンジと白のストライプの“何か”が見えたと思った。

 だが、彼の顔はどごんっと陥没していたりする。



 ぴゅるるるるるるる〜〜〜〜〜〜〜。



 トレードマークのサングラスが飛び散る。

 見事な曲線を描いて鼻血が吹く。

 でも、生きているのだから素晴らしい。


 余りの加速に角を曲がりきれなかった“ある少女が”が、ブレーキ代わりに両足で蹴ったのである。

 当然ながら、その少女は対象の判別はしていないし、被害者であるゲンドウも確認する暇もなかった。



 ずざぁああああああああああああああああああああああああっ!!!!



 そんな少女に人の形をした猛禽類が迫っている。


 「ちぃ・・・・・・っ!!!」

 少女らしからぬ舌打ちをして、下に転がった“その男”の襟首を掴んでぶん投げた。

 「なに・・・・・・?!」

 訳も解らず宙を飛ばされるゲンドウ。

 時間にして一秒もかかっていないが、彼の眼にはスローで迫る赤い眼の“ナニか”が映った。

 『ひぃ・・・・・・』

 数多くの修羅場を潜ったゲンドウですら、その赤い眼の光に心底怯えた。

 ただし、一瞬の事である。



 ずばんっっっっっ!!!!!!!



 弾丸Xと化したゲンドウは、その赤く眼を光らせた少女がいつの間にか掴んでいたモップで切り払われて
しまったのである。


 「ぐふぅっっ」


 ばごぉぉおおおおおおおおおおおおおおん!!!!!!!!


 掃除用具入れに頭から突っ込んでピクリとも動かなくなる。


 ふしゅう・・・ふしゅう・・・と息を切らせるショートの銀髪少女。


 本人は気付いていないであろうが、今の彼女は発令所の面々が見れば暴走した初号機を想像したであろう。

 肩で息をしながら窓の外を見る少女。

 焼却炉が見えていたが、お目当ての少年の姿は無い。

 先ほどの赤みがかった金髪の少女が物凄い勢いで辺りを見回し、ガックリと肩を落としていた。

 その姿を見てニヤリとする少女。


 ふと見ると、掃除用具入れがカタカタと動いている。

 息を吹き返したのであろうか? にしてもエライ早い。

 好敵手の行動は空振りに終わったものの、この男のせいで足止めを食らったのである。

 少女の額に#マークが“みしり”と音をたてて現れる。

 丁度、トボトボとあの少女が戻ってくるではないか。

 その、蒼みがかった銀髪の少女は虫の息の男をむんずと掴んで、


 ぎゅんぎゅんぎゅんぎゅんぎゅんぎゅんぎゅんぎゅんぎゅんぎゅんぎゅんぎゅん。


 加速をつけて振り回し、


 轟っっっっ!!!!!


 と、“その男”を赤みがかかった金髪の少女に投げつけた。


 ぎゅ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜んと一直線に吹っ飛んでゆくゲンドウ。


 『!!! 見える!!!』

 だが、流石に少女は気付いて電撃的反応で“それ”を避ける。

 “それ”は、そのままドアから外にすっ飛んで行き、クラブハウスの壁に頭から突っ込んで今度こそ動か
なくなった。


 当然、二人とも無視だ。

 ってゆーか何者であったか気付いていない。


 段々と殺気が高まってゆく。

 既に“少年を探す”と言う目的はスッパリと脳裏から消え去っており、今は“如何に決着を付けるか”に
変わっていたりする。


 「レェエエエエエ〜〜〜イィイイイイイイイイイイ〜〜〜〜〜〜・・・・・・・・・ついに決着を付ける時がきた様
  ねぇえええ・・・・・・・・・」

 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・望むところ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・殺って・・・・・・やるわ」


 二人の間に殺気と闘気が撓んでくる。

 彼女らの周辺では陽炎にも似た、風景の歪みがハッキリと見て取れた。

 みきみきみき・・・と二人の筋肉がアドレナリンに反応してきしみ出す。


 迫り来る死闘に全身の細胞が粟立っているような感がある。

 正に太古の昔に置き忘れた“獣”の戦い。

 血を吹き、吹かせ、肉を切らせて肉を断ち、骨を砕かせ骨を砕く・・・・・・そんな戦いが迫っている事に細胞
に残る原始のDNAが歓喜の声を上げているのだ。


 二人の足元からゴミや小石が消し飛ぶ。


 闘気が物理的に効果を及ぼしているのだ。

 遠くから様子を窺っているほかの生徒達も、その闘気に中てられると白眼になって気絶した。



 がちがちに高められたお互いの殺気と闘気が触れ合い、きしみ、弾けた時、



 その二人は、


































 「あれ? アスカと綾波? 迎えに来てくれたの?」

 とても優しい声がかけられた。

 「あ、シンジぃ〜〜♪」

 「碇君・・・・・・(ぽっ)」




 すぽーーーんと殺気とかが霧散する。




 なるでそんなもの知らないように。

 ナニソレ? 美味しい? と聞きたくなるほどそんな雰囲気は死んでいた。


 「どこ行ってたの? 探したわよ」

 「ゴメンね。図書室で料理のレシピを調べてたんだ。今、鍵を返しに行ってたところだよ」

 「・・・・・・何作ってくれるの?」

 「うん。シーフードカレーのつもりなんだ。これだったら綾波も平気だろ?」

 「・・・・・・うれしい・・・・・・」

 「さ、そうと決まったら買い物して帰ろ♪ お菓子もなくなったしね〜〜〜」

 「もぅ・・・・・・アスカってば、食べ過ぎたらダメじゃないか・・・・・・」

 「・・・・・・太るわよ?」

 「ナニよ〜〜」

 「・・・・・・」

 「・・・」








 二階から一階までの階段に散らばるスーパーボール。

 一階廊下に残る、上履きの底の部分のゴムの跡。

 なぜか壁に付き捲っている足跡(恐らくは壁ブレーキの跡)。

 コンクリートの壁に突き刺さる、木製のモップの柄。

 破壊されている一階廊下の掃除用具入れ。

 そして大穴を開けているクラブハウスの壁。

 精神失調気味の生徒達。

 重傷状態の謎の髭男・・・・・・・・・。


 本日の被害は、けっこう楽であったとさ。








 ──おまけ──


 「あ〜〜〜〜う〜〜〜〜〜・・・・・・・・・」

 「・・・・・・・・・・・」

 「ん〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜・・・・・・・・・」

 「・・・・・・・・・アスカ、うるさい・・・・・・・・・」

 「唸りたくもなるわよ!! こんな天気じゃあね!!」

 外は雨。

 それも意外に大雨である。

 土日を使ってシンジとデートをするという二人の計画はもろくも崩れ去っていた。

 「二人っきりになれないし、雨は降るし、湿度高いし・・・・・・・・・もぅ、やんなっちゃう!!」

 「・・・・・・・・・アスカ・・・・・・・・・」

 「ナニよ?!」

 レイは唇の前で指を立てて、静かにしろという言葉を伝えた。

 「?」

 ふとアスカが視線を動かせると、いつの間にか眠っているシンジの姿が入った。

 音楽を聴きながら眠ってしまったようだ。


 アスカとレイは無言でジャンケンをし、勝ったアスカは部屋から枕を持ってきて、シンジの左側に、アス
カから枕を受け取ったレイは右側に着いた。

 少年の呼吸音が、なんとも言えないほど心を落ち着かせ、安らかな気持ちにさせてくれる。

 いつしか二人は眠りについていた。

 誰にも渡したくない、少年の隣というポジション。

 その特権を味わいつつも、二人の少女も夢の中へと旅立って行くのであった・・・・・・・・・。






 雨の休日・・・・・・・・・。

 たまにはこんな“ひととき”も・・・・・・ね?













 その頃、工務店の方々は、雨の中で学校の修理に追われているのであった。

 マル。





今回の戦闘
   零号機パイロット・・・・・・無傷
             色ボケ
   初号機パイロット・・・・・・無傷
              安眠
   弐号機パイロット・・・・・・無傷
             色ボケ
   教室被害・・・・・・・・・・・・・・軽微
   踊り場被害・・・・・・・・・・・・軽微
             要掃除
   一階廊下・・・・・・・・・・・・・・甚大
             要修繕
   クラブハウス・・・・・・・・・・大破
   NERV総司令・・・・・・・・重体
          一部記憶障害
              入院





 ──あ(と)がき──

 ハイ、今回は、疾風怒濤(改)さんのリクでした。

 “彼ら(シンジ、アスカ、レイ)の中に入っている魂の能力(ニュータイプ、念導力、大雪山降ろし(←?)
等)を使った日常のお話が見たい“


 だったんですけど・・・・・・・・・。

 ちょっと壊れすぎた気がします(^^;)。シンジ出番無いし・・・・・・・・・(^^;)

 なんか添削してから『なんなんだ〜〜〜〜?!』って思った作品でした。

 でも、一般生活してて、私の話の二人が本気で争ったらこんな事になるはずです。

 ゲンドウ死にかけてますけどね・・・・・・(^^;)。

 これで勘弁してください。

 ただし、疾風怒濤(改)さんの文句でしたら受け付けます。

 『くぉのぉ〜〜・・・・・・ヘボ!!』て言われたって、

 『うう〜〜〜ゴメンよぉ〜〜〜〜〜〜(;;)』

 と泣くしかないものですからね〜〜。

 それじゃあ、本編でお会いしましょう。


 ではでは・・・・・・・・・・・・。


作者"片山 十三"様へのメール/小説の感想はこちら。
boh3@mwc.biglobe.ne.jp

感想は新たな作品を作り出す原動力です。1行の感想でも結構
ですので、ぜひとも作者の方に感想メールを送って下さい。

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