「その提案は受け入れられません」

 少女は極めて冷静にそう言い放った。

 「なぜなんですか?! このプランを実行できれば我々にっとって大きなプラスに働くと・・・・・・」

 提出した書類をにべも無く却下されれば流石に噛み付きたくもなる。

 まとめられたプランは約十枚の書類で彼女に提出され、後はゴーサインを受けるのみ・・・・・・。

 そう思い込んでいたからこその困惑である。

 だが、世の中にはルールがあり、決まりがある。

 少女はその決まり事とルールから外れることは無い。

 「最初から説明しているじゃないですか。貴方達のプランにはその部分を補える箇所が存在しません。そ
  れが理由です」

 「説明になってない!!」

 ばんっと机を叩いて激昂するも、その行動をとった瞬間、後から突き刺すように視線を浴びた。

 非難されているのだ。

 彼女の“親友”に。


 ゆらり・・・・・・。


 そう表現するのが正しいと感じさせる気配で、その“親友”は立ち上がった。

 そして、


 「アンタ、ばかぁ?! さっきからヒカリは生モノ扱えないって言ってるでしょ?! このクソ暑いのに
  そんなもの出せる訳ないでしょ?!」

 人差し指を突きつけられてぐうの音も出せなくなる。

 だが、それでも反撃に転じようとする涙ぐましい行為は行われた。

 「で、でも、鉄火丼とか出した方が絶対にウケるんだぜ? 簡単で安くて実入りがいいんだ」

 その提案を出した少年の家は魚屋である。

 だからこそ自分の家のプラスにもなる案を出したのだ。

 「受けよーが受けまいがダメなものはダメなんです!! 衛生上の問題から使用禁止だって、禁止要項に
  書いてあるでしょ?!」

 クラスの皆に提出されたプリントにもそう書いてあった。

 それを見ていない少年の不幸といえる。

 「じゃ、じゃあ碇に任せたら何とかなるんじゃないか? 碇だったらそこらのレストランよか信頼できる
  し・・・・・・」

 そう又も反論するも、その言葉は余計だった。

 いらない火種を撒き散らしたからである。

 「貴方ねぇ〜〜・・・・・・プリント読んでないの〜? 禁止要項に“2−A 碇シンジの調理禁止”ってある
  でしょう?!」

 今度は蒼みがかった銀髪の少女が立ち上がる。

 慌てて少年がプリントを見直すとちゃんと書いてあった。

 「ゲ?! な、なんで・・・・・・・・・?」

 「アンタ、ほんっっっっっっっっっっっっっっっっっっとにバカね!! シンジが作っちゃったら他のク
  ラスの食べ物なんか見向きもされないでしょ?! 解かんないの?!」

 「そ、そうなの?」

 人の自分の評価が理解できていない気弱そうな少年の声がする。

 「そうよ〜。シンちゃんの料理ってとてつもなく美味しいんだもん」

 「そ、そうかなぁ・・・・・・」

 そう言われても今一つピンとこない黒髪の少年。

 彼自身、そんなに気をつけている訳ではないと思っている事が最大の要因である。

 が、彼の出す料理の一品一品は全て相手の事を考えている物であり、且つ、栄養価と品数を落とさないよ
うに細心の注意を払っている。

 それを“当たり前”として考え、且つ行っている少年・・・・・・シンジにとってはナニがナニやらといった混
乱も仕方ないと言えた。



 で、そのシンジ達のクラスの争論とは何か?



 「なぁ、結局どないすんのや? 食いモン屋止めんのか?」

 「だって、B組はお化け屋敷でしょ? だったらそれ以外やんなきゃ・・・・・・」

 「定番の喫茶は?」

 「碇に作らせなきゃ売上半減だぜ?」

 「「「「「「「「「う〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん・・・・・・・・・」」」」」」」」」


 そう、文化祭の出し物である。


 体育祭は今週の土曜日。

 で、その一月後には文化祭である。

 用意をする為には時間が無いような気もしないでもないが、この学校の伝統だそうだ。


 できて十年弱の中学校に伝統もなにもあったものであろうか?


 まぁ、それはそれとして、シンジ達の悩みは尽きなかった。


 「どーすんのよ!! これじゃあ決まらないじゃないの!!」

 せっかく一日授業がつぶれ、作戦実行行動に移れるのだ。皆をごまかして某同居少年とデートなんか行っ
ちゃったりなんかしちゃったりしようとしていた計画がパーである。

 もっとも、もう一人の同居人が赤い眼を光らせているので限りなく難しいが・・・・・・。

 「じゃかましいわ!! ほないに怒鳴ったかて、どーかなる訳ないやろが!!」

 アスカの怒鳴り声に流石のトウジもキレる。

 「なによ!! アンタも後ろ向きの意見しか出してないくせに!! ゴチャゴチャ文句ばっか言って!! 
  ホントに男?!」

 「な、なんやとぉ〜〜??!!」

 喧嘩でアスカにかなう訳が無いのだが、こうなったらトウジも引っ込みがつかない。

 腕を捲り上げて臨戦態勢に入ってしまう。

 「ちょ、ちょっと鈴原もアスカもやめてよ・・・・・・」

 委員長であるヒカリがその場を押さえようと移動し始めると同時に、

 「あ・・・・・・・・・」

 と、それまでボンヤリとしていたレイが小さく声を上げた。

 「どうしたのレイ?」

 シンジが問い掛けると、今まで見たことないような顔をしてレイが微笑んだ。


 ニヤリ・・・・・・と・・・・・・。



 ざわざわ・・・・・・



 シンジの背景にそんな文字が浮かぶ。

 なんだかよく解からないが、とてつもなく不安になってきたからである。

 「いい事思いついちゃった〜〜〜♪」


 そう言ってクネクネと身体をねじるレイに、その不安は固まってゆくのであった。





                               はっぴぃ Day’S

                             19・STEP 戦略会議“変”




 「そ、そんなのできっこないよ〜〜」

 “昔”から変わらない否定的なセリフ。

 『見たこともないのに』はいらない。知っているからだ。

 かと言って出来るものではない。出来るものではないが・・・・・・・・・。

 「ダメよシンジ。アンタに拒否権は無いの」

 とてつもなく嬉しそうにアスカが腕を組んで少年に立っている。

 「そうよ、シンちゃん。それとも他の代案を飲むの〜? それでもいいけど・・・・・・・・・」

 「そ、それは・・・・・・・・・」

 そう言われると流石のシンジも黙るしかない。

 その“他の案”でとてつもなくもめたのである。あの騒乱は二度とゴメンだというのが正直な意見だった。


 その他の案・・・・・・それは演劇である。

 クラス演劇で一発狙うというものなのだ。

 しかし、それはかなりの争議を呼んだ。



 例えばシンデレラ。

 シンデレラをアスカにしてみる→継母&義姉を怖いからやる人がいない・・・・・・・・・。

 レイをシンデレラにしてみる→義姉がアスカでないとムリ→姉妹間の壮絶バトルがメインになってしまう。

 シンジをシンデレラにしてみる→継母&義姉に虐められはするが、絶対に役立たずと言われないし大半が
いちゃつき百合話になる。或いは王子役でモメる。舞踏会に行けたとしても、その王子に拉致られ18禁か21
禁の世界に突入する為に上演不可。或いは12時なっても帰してくれず、身分詐称の罪で王子のモノにされる
話になる事は想像に難くない。

 それ以外のキャスティングにしてみる→普通の話にはなるが、あくまでも“普通”なのでたいした物にな
らない。



 例えば桃太郎。

 アスカを桃太郎→鬼が逃げる。レイを桃太郎として雇用しても同じ。

 シンジを桃太郎→家来に引き摺られる桃太郎→桃太郎は座ってるだけで家来に倒されていく鬼。

 逆に鬼をアスカかレイにする→桃太郎が勝てる訳もなく鬼の支配する世になる。

 結局、なんだかなぁ・・・・・・な話になる。



 例えば白雪姫。

 誰が白雪姫をやるかでモメるし、この場合は王子はシンジであることが決定事項。

 シンジを白雪姫にしてみる→王子を誰がするかでモメる→それ以前に白雪姫の義母をやるものが命に関わ
る。

 王妃をアスカ→「アンタの全てがアタシのものにならないんだったら殺してやる」と白雪姫を毒殺しよう
とする。

 王妃がレイ→「白雪(碇君)と一つになりたいの」と、白雪姫が“白百合姫”になってしまう。

 王妃をシンジ→「どうせ自分はいらない王妃なんだ」といじける→白雪姫に慰めてもらって劇にならない。



 とまぁ、三つ上げただけでコレである。

 創作劇をいれてもかなりのモメ具合であった。

 結局は頓挫。

 せっかくの呼び水であるシンジ,アスカ,レイを使えないのなら意味が無い。


 で、飲食関係となったのだ。

 一品料理店で落ち着くのは簡単だが、このクラスには料理人シンジがいる。

 彼が料理に関わると、他のクラス&クラブの模擬店の売上に響くのだ。

 よって生徒会からの御達し、

 『2−A 碇シンジの調理禁止』と相成った訳である。


 だが、この御達しは2−Aにとっては痛恨である。

 クラスの母たるヒカリに担われるからだ。

 尤も、クラスの人間はヒカリの料理の腕前を知っているのでそう悲観的ではない。

 洞木家においての主婦業が長いヒカリの事であるからして、一通りの物を作ることが出来るし味も良い。

 それは餌付けされているトウジも認めるところだ。

 視覚的・・・・・・つまりビジュアル的なものが足りないのだ。

 ヒカリが美少女ではない・・・・・・なんてことは無いが、眼を引くかというとそうではない。

 問題はヒカリのクラスには校内美少女トップ3の内の二人までがいることである。


 つまりはアスカとレイ。

 この異様に目立つ二人がいる為、ヒカリの“世間一般的な美少女”が目立たなくなるのである。

 まぁ、ヒカリの気持ち的に言うとトウジに見つめてもらったらそれはそれで結構なのであろうけど・・・・・・。


 ともかく、シンジという“ビジュアル的に美少女顔の美少年がドスゲェ美味い物を作る”という売れ線の
シチュエーションが使えない。

 それはかなり痛かった。


 『な〜んだ。じゃあ、惣流と六分儀が作りゃあいいじゃないか』


 という意見が出るだろう。


 ・・・・・・だが、甘い。

 サッカリンをそのまま飲みこむが如く甘い考えだ。


 彼女らの料理は、“シンジ(シンちゃん)に作ってあげて喜んでもらえる妻の手料理”であって、その他大
勢に作るものではないのだ。


 『ナニが悲しゅうて、どこの馬の骨とも限らん輩に作ってやらなきゃならないワケ(−−#)?』

 コレが二人の認識である。



 ほな、どないせーちゅーんじゃ?!



 そこでレイの案が適用された。

 アスカも納得、一部の腐女子も納得の案である。

 「お、面白そうだけど・・・・・・それだけの服、どーすんだよ?」

 至極当然な意見を述べるケンスケ。

 レイの案にクラスは賛同するも、その為には服を作るか借りてこなければならないのだ。

 アスカとシンジの両親のいるNERVやレイの実家である綾波財閥の力を持ってすれば簡単であろう。

 が、それでは中学校の文化祭という範疇を超えてしまうのだ。

 そこが頭の痛いところであった。


 「話は聞かせてもらったわよ」


 唐突にそんな声がした。

 一人を除いてビクッとする級友達。

 慌てて見回すも姿が無い。

 空耳ではなかったのかと疑うほどだ。


 しかし、一人だけ気付いたものがいた。

 聞きなれた声・・・・・・だから驚かなかったのだ。

 「この声・・・・・・ハルコか?!!」

 「当た〜り〜〜。流石はケンちゃん」

 イキナリ窓からケンスケと同じ髪の色で外ハネしたショートの美女が突っ込んできた。

 この教室は二階であったような気もしないではないが・・・・・・それはそれである。


 やや垂れ眼のアンニュイな購買部のお姉さん兼相田家住み込み家政婦のハルハラ・ハルコである。


 いつもミニである為、窓枠に足をかけたときにマトモにスカートの奥の黒い布切れを眼にしてしまったシ
ンジは、顔を真っ赤にして鼻を抑える。

 別の意味で顔を赤くしたアスカとレイに教室の後にシンジが引きずっていかれたのは御愛嬌だ。



 「で? 何の用だよ」

 対してケンスケの態度は冷たい。

 なにせこの女が来てからというもの、学校ではカヲル、家ではハルコに・・・といびられ続けているので全然
気が休まらないのである。

 「あ〜〜・・・・・・ケンちゃん冷たい〜〜・・・・・・いつもコトが終わったら優しくしてくれるのにぃ〜〜」

 本気でしゅんとしているように見えるが、ケンスケは騙されない。

 上目遣いで、太腿をすり合わせるようにもじもじとし、怒られた子犬のような耳と尻尾をたらした雰囲気
を回りに振り撒いてはいるが、もうこの程度ではケンスケに通用しない。

 伊達にカヲルにいびられ続けいる訳ではない。

 この虐げられたカメラメガネは、完璧且つ徹底的に演技であるコトを理解しているのだ。



 が、欠点は騙されていないのがケンスケ“だけ”というところである。



 「ケンスケ・・・・・・おどれ責任くらいとったらんかい」

 「は?」

 トウジの物言いも、親友を攻めるもの以外の何物でもない。

 「自分のオナゴにそんだけの事しよったんやったら、それなりの誠意っちゅーもん見せなあかんやろが」

 『オメーに言われたくないわぁっ!!!!』

 と叫びたくなるが、それでは藪蛇になりそうだった。

 女子の目つきも“虫”か“カビ”でも見るようなものに変わっている。

 ここは引くのが上策だろう。

 「・・・・・・・・・で、何しに来たんだ?」

 「それはもちろんナニしに・・・・・・・・・って、怒んないで〜〜〜〜〜〜」

 あまりと言えばあまりのベタな返事にキレかかるも何とか踏みとどまって息を整える。

 「・・・・・・・・・で?」

 「うん。あんねぇ〜〜〜」

 ケンスケの後に立ち、顎を肩に乗せて話し始めるハルコ。

 メガネ少年にとってはいつものハルコの癖であるが、クラスの面々にとっては“羨ましすぎる”光景だ。

 『俺は殺るぜ・・・・・・』

 『オレもだ・・・・・・』

 とメリケンサックやら特殊警棒やらを装備する男子もいたりする。

 教室内と言うよりか、刑務所の極悪犯収容場の様な雰囲気だ。


 「で? なんだってのよ」

 なかなか話が進まないのをイラだってかアスカが切り出した。

 右手にぐったりとしたシンジを引き摺って・・・・・・。

 「ん? あ、そうそう。家の人に服をそろえてもらうのは文化祭範疇じゃないっしょ?」

 「そりゃそうよね」

 「だけど、布を集めるだけだったらいいんじゃないの〜?」

 「は?」

 「つまりねぇ、あたしが縫うのメインで手伝うから、勇士で作ればいいじゃない」

 「あ、あのねぇ・・・・・・」

 そんな事は言われなくても解かってる。

 問題の定義は、その手間をどうするのかと言う事なのである。

 だが、アスカ達が溜息をついて反論しようとする前に、ケンスケが動いた。

 「ナニ? まさか“本気モード”で手伝うのか?」

 「当ったり前じゃないの〜〜」

 眉を顰めてそう言ったケンスケに、トロンとした眼と口調で返すハルコ。

 どー見ても恋人同士にしか見えないが、そういった風に見えるようにハルコが行動しているだけである。

 『この女・・・・・・やる・・・・・・』

 その“力量”を瞬時に理解し、驚きを禁じ得ないアスカとレイ・・・・・・とヒカリであった。

 「・・・・・・ほんで、本気モードってなんなんや?」

 一人ポツンとムードに置いてけぼりのトウジが疑問を口にした。

 いきなり二人だけの符丁を言われても理解できる訳ないからである。

 「え? ああ・・・・・・・ハルコは普段、な〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜んにもしない癖に、い
  ざ本気になったら家事で出来ない事なんて無いし、むちゃくちゃ手早いんだ。
  解かるか? この制服ってコイツの手作りなんだぜ?」

 「「「「「「「「「マジか?!」」」」」」」」」


 そろってケンスケに詰め寄って制服を調べてみる。

 手触り、布の種類等は自分らのと同じだ。

 だが、よく見るとベルト通しが斜めのデザインになってたり、胸ポケットの裏に返し(中の物の保護用)
がついてたりする。

 そして、決定的なのが“タグ”である。

 “HARUKO”という名前と、デフォルメされた彼女の顔であろう刺繍がついているのだ。

 
 しかし、作った理由は制服を洗濯していて消し炭にしてしまったからだったりする。

 なぜ消し炭になったかはMIBでも解からない謎だ。


 「こ、これが手作り・・・・・・?」

 流石のヒカリも驚きかえっていた。

 「ん〜〜流石に時間かかったけどね〜〜〜」

 「一時間で作った奴のセリフか?」

 「「「「「「「「「い、一時間????!!!!!!」」」」」」」」」

 この制服上下を一時間で作ったというのだ。

 驚くのは当たり前である。

 「だからぁ、時間かかったって言ったでしょぉ〜〜?」

 「ヤレヤレ・・・・・・」

 一時間で制服作れるというのだ。

 どちらにしても人間業ではない。


 「皆のサイズは見たら解かるからぁ〜〜・・・・・・後は布の用意だけなの。型紙から布切るのと縫うのとかは
  大方やったげるから、後は自分らでどうにかしてよねぇ」

 「いや、それってほとんど全部って言わないか?」


 にへ〜っと笑うハルコ。

 笑って誤魔化しているつもりなのか?


 「・・・・・・・・・ちょっと・・・・・・サイズ見たら解かるってどういうこと?」

 聞かずにはいられない事をサラリと言ってのけたハルコにアスカが聞いてきた。

 「んん〜〜? そのまんまの意味だけど?」

 「はぁ〜?!」

 「ん〜〜と・・・・・・例えば・・・・・・あなたのは・・・・・・(ボソボソ)」

 耳元で明かされる真実にアスカの顔色が変わる。

 「な、何で知ってるのよ?!」

 「だから見たら解かるって・・・・・・あ、そこのあなた〜」

 「わ、わたしぃ〜?」

 今度はレイの耳元で呟く。

 当然として顔色が変わった。

 「ね?」

 教室内をぐるりと見渡して、にまぁと笑うハルコ。

 一人を除いた全員の顔色が変わった。

 ちなみにその一人はシンジ。

 気絶中だからである。

 「ん♪ これで皆のサイズ覚えたから型紙作ろっと」


 げげっ


 皆の後頭部にでっかい汗が浮いた。

 全員のそれぞれのサイズを見、そして記憶したというのである。

 「な、なんでそんな事出来るのよ?!」

 流石のヒカリも動揺を隠せない。

 「あたしの108の秘密よん♪」


 『『『『『『『『『後の107はなんなんだぁあああああっ???!!!』』』』』』』』』


 さらりととんでもない事を言ってのけ、皆の心の叫びを無視する形でハルコは窓から出て行こうとする。

 一瞬、床に転がるシンジに眼を向けると、

 「・・・・・・この子のが一番スゴイわねぇ・・・・・・」

 と言い残して飛び降りた。

 ここは二階であったが誰も気にしない。

 それ所では無かったからだ。



 『スゴイ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・? 何が?』



 全員の思考がそこでフリーズしていたからである。

 そんな中、アスカだけが肩を竦めていたりした。



 『うん・・・・・・確かに・・・・・・・・・』



 と・・・・・・・・・。








 メニューは女性陣と相談役シンジ。

 当日の教室改造は男子に任せる。

 “衣装”は勇士一同と、傭兵としてハルコが加わる。

 下準備は(なんとか)整った。


 「許可おりたわよ〜〜」


 ヒカリが生徒会から認可をとってきた事により、出し物が確定した。


 『2−A変装軽食店 ジブラルタル』


 真にアヤシサ大爆発の店が出来ようとしていた・・・・・・・・・。



 迫ってくる試練に溜息をつきつつ、シンジはメニューを整えてゆく。

 自分が作る事ができないから、出せるメニューとして、簡単でスピーディーで美味しい物をとヒカリ達と
がんばって整理しているのである。


 「ところで碇君・・・・・・」

 「うん? 何? 委員長」

 「碇君て・・・・・・スゴイの?」

 「は?」



 訳が解からないシンジ。


 その質問の意味に反応してニヤリとするアスカ。

 そんなアスカを見てムクれるレイ。

 ハルコのその言葉を思い出し、なぜかがっくりと肩を落とすトウジ。

 クラスのしっとマスク達に簀巻きにされて窓にぶら下がっているケンスケ。


 それぞれの思惑はともかく、準備は着々と整えられていった。


 兎にも角にも文化祭の準備は進む。

 だが、シンジにとっての最初の戦いはその前に迫っているのである。

 この週末・・・・・・土曜日に・・・・・・・・・。








 土曜日、体育祭はすぐそこであった。


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