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あの時、彼はあたしの首を締めていた。  

彼の顔は、よくわからなかった。なにを考えているのか、何も考えていないのか・・・・  

あたしは、手を伸ばした。彼の顔をなでる為に。  

撫でた。首はいまだ締められているが、特に何も感じなった。ただ生ぬるかった。  

撫でた。理由は自分でもわからない。なにも考えられなかった。  

「うっ・・ううぅ・・・・」  

やがて彼の口から嗚咽が漏れた。  

もう首は締められていない。  

あたしは泣いている彼を見ていたが視線空に移して言った。  

「気持ち悪い」  

 

    

 外伝「微笑を君に。」  

 

 

アスカは、今ネルフ総合病院の廊下を歩いている。  

あの後、ネルフの人たちに連れられ病院に入院している。  

体はどこも悪くない、念のためというやつだ。  

かつかつかつ・・・・・  

ただ歩いている、意味は無い。なんとなく病室にいるのがいやなだけだ。  

ネルフ総合病院は、総合病院だけあってなかなか広い。そのうえ設備も充実している。 だがその広さに似合わず人が全然いない。アスカはいままでここで人にあったことは無い。自分の見舞いに来る人は別だが、  

かつかつかつ・・・・・  

だいぶ回った。  

だいぶといっても全体からみれば少ないかも知れないが、人にとって十分な距離だ。  

戻ろう・・・・・  

アスカは、エレベーターへ向かった。  

少しまっすぐ行ったところを右に曲がればあるはず・・・・  

少しまっすぐ行き、右に曲がるとエレベーターがあった。  

行き先を押す。上からエレベータが来てる。ランプで確認した。  

エレベーターはアスカの一階上で一度止まり、降りてきた。  

チー−ン、  

エレベーターが着いた事を音が教える。  「・・・・・・・・・・」  

アスカは、一歩も動かない。  

エレベーターは、扉の閉鎖音とともに下りていく。  

乗らなかった。  

エレベーターのなかにシンジがいた。ただそれだけで乗らない、  

・・・・・・・・・碇・・・・・シンジ・・・・・  

アスカは、今度はエレベーターでなく、階段を使って自分の階へ向かった。  

向かってる間、アスカは、なにも考えなかった。  

なにも・・・・  

 

 

 

 

自分の、病室、303号室に入った。  

目の前には、綺麗にしかれている、ベットがある。  

その横に、小さな机があり花が飾ってある。  

ミサト達が持ってきた花だ。  

とりあえず・・・・・寝よう・・・・・  

アスカは、ベットの上に横になった。  

だがすぐには寝れなかった。  

目を閉じると、かなりぼやけているが、シンジの顔が映る。  

どんな表情かはとてもわからない。  

・・・・・寝よう・・・・  

アスカは、気にしないように勤め、寝ようとしたが、実際眠ったのは、一時間後だった。  

その間、ずっと瞼を閉じているとシンジの顔が消えずに映っていた。  

 

 

 

がたんがたん  

目を開けると、自分は何かの電車の中に乗っていることに気づいた。  

外からは夕日が差し込んでいる。  

自分以外に乗っている人は見当たらない。  

夢・・・・・・・夢なのね・・・・・  

「夢?・・・・ちょっと違う・・・・自分の心の中、そう言う表現が適切だ。」  

声が聞こえた。全ての声を合わせて中性的な声にしたような声だ。  

前を見ると、奇妙なやつが足を組みながら座っていた。  

「やあ、」  

そいつは手を上げて挨拶をした。  

そいつの格好は、服装は、普通に第壱中学校の制服を着ているが、変なのは仮面だ。リリスの仮面を被っており、左の瞳の部分だけ開いている。  

覗いている瞳は赤い  

「だれよ・・・・あんた・・・・」  

「僕かい?そうだねぇ・・・・・渚・・・・渚カオルということにしておこう。」  

ふざけてるような口調で答える。  

「そ・・・・・」  

それだけ言うと、アスカは、黙った。話すことなんて無いから。  

「君が、話すことが無くても、僕にはある。」  

アスカは、少し困惑した。  

心の中が読めるの?・・・・・・  

「そんな大層なことはできない、ただ言っただろう。ここは心の中、自分というかたちを形成しているA、Tフィールドの内部、君の思いは、いまここに同化している僕にとっては、自分の思いのように、僕には感じるだけだ。」  

カオルの声が、声という、空気の振動によって伝わるものではなく、心の中に響く、といった感じで聞こえる 。  

また・・・・また、入ってこられたのね・・・・心の中に・・・・もう・・・どうでもいい・・・  

「さて、僕には、話があるんだが・・・・・」  

アスカの「声」には触れず、カオルは話す。  

「いつまで一人でいるつもりだい?」  

カオルはアスカにそんなことを聞いてきた。  

・・・・・・・・・・・  

心の「声」でも、アスカは、答えない。  

「さらに深く、心の中に入るか・・・・・・・ふぅ・・・・誰とも話したくないんだな・・・・・・」  

独り言のように呟く。聞いていないことをわかっているから・・・・・

「A,Tフィールド、それは心の壁、他人を拒絶し、自分を守る。強ければ強いほど、一人、ただ孤独に生きる・・・・・・だが、人は決して一人では生きてはいけない。」  

遠い目で語る。

「だが、君は、一人で生きて行けないことを知っている。だけど君はそれを否定する。A,Tフィールドという箱舟に閉じこもり、自ら出ようとしない、待つだけ・・・・・たとえ扉を開ける人が来たとしても、鍵をかける。望んでいるのに・・・・・」

無論、アスカは聞いていない。  

カオルは、被っていた仮面をとりながら今までの声と、違う声で話し掛ける。  

「素直になりなよ、アスカ、」  

シンジの声で、シンジの顔で話し掛ける。  

・・・・シンジ・・・・・  

顔を上げた、間の前には、先ほどのカオルという少年が、シンジそっくりになっていた。  

「やめて・・・・・」  

「何がだい?」  

シンジの声、シンジの顔のまま答える。さっきと違うのは口調だけだ。  

「なんでその顔をするのよ!そんな顔なんか見たくも無い!」   

アスカが叫ぶ、感情のこもった声で・・・・・・  

「この、碇シンジ、という存在が君の救いだからだ。」  

カオルは、中性的なこえに戻して言う、顔は、そのままだ。  

「馬鹿シンジなんかに救われたくない!」  

「馬鹿とは酷いなぁ・・・・この碇シンジだって君と同じ、それ以上の辛さを味わった。それでも彼は君みたいに、逃げ出したりはしなかった。逃げても、人の助けによりまた戻った。最終的には彼は、一人で答えを出した。彼は強い、全てにおいて、君よりも・・・・・」  

「なによ!あたしがこうなったのは、全てにおいてあたしを超えたシンジが悪い!あたしの存在理由を奪った!あたしは、全てにおいて一番じゃなきゃいけないのに!そうじゃないと誰も見てくれないのに!」  

「シンジ君は君を見てくれなかったのか?」  

いや・・・・・・・  

「全てにおいて、自分を超えている、超天才美少女「惣流アスカラングレー」しか見ていなかったのか?」  

やめて・・・・・・・・・  

「一人の少女「惣流アスカラングレー」とは見てくれなかったのか?」  

「やめて・・・・お願いだから・・・・・それ以上・・・・・言わないで・・・・・・」  

懇願するように言う。  

だが、カオルはやめない。  

「そばにいて欲しい大切な人と見てくれたんじゃないのか?」  

「ひっく・・・・・うぐぅ・・・・・」  

アスカは泣いていた。  

「わかってる!わかってるわよぉ・・・・・そんなことくらい・・・・・あたしより辛いって・・・・それなのにあいつはぁ・・・・人の心配ばかりして、自分より人を優先してぇ・・・・あいつが、もっと辛くなってぇ・・・・ひっく・・・・だから・・・・あたしにかまって欲しくなかった、だからあいつを、突き放した! だけどあいつは、笑ってくれない!あたしなんかがいるから!あたしなんか、いなければいいのにぃ!」  

泣きじゃくりながらアスカは言う。  

かつてアスカは、一人で生きていくと決めた。  

かつてアスカは、泣かないと決めた。  

自分のせいだと思ってるのかもしれない。  

人の愛が信じられないのかもしれない。  

経験は人を強くするものかもしれない。だけど乗り越えられたらの話だ。  

根は優しいのに、どこか歪んだ方向にいってしまう。  

それは、経験からなのかもしれない。  

「君は、人の幸せを決めれるほど偉いのか?」  

静かに言う。  

アスカはうつむいている。  

「確かに、シンジ君は辛いかもしれない。君のせいで。だけど辛いだけじゃないんじゃないのか?君がいるから幸せを感じれた時もあるんじゃないのか?」  

「信じられない・・・・そうは思えない・・・・・」  

うつむいたまま言う。  

「確かに、そう思えないかもしれない。だが、物には見方がある。君が不幸と思っても、他から見れば幸福なのかもしれない。」  

「信じられない・・・・・そうは思えない・・・・」  

「正義と悪なんて、見方しだいだ、ただ大切なのは、何を信じるか?だ。」  

「何かを信じるなんてあたしにはできない・・・・」  

「君は、ほんとはわかってるんじゃないのか?君がいたほうが、シンジ君にとって幸せだと。」  

「信じられない・・・・そうは思えない・・・・・」  

「そして、自分もそれを望んでいると・・・・・・」  

「信じられない・・・・そうは思えない・・・・・」  

「君は、意地を張っているだけだ。ここまでしてしまったのに、今更戻れるわけ無いと・・・・・」  

「・・・・・・・」  

アスカは、黙った。  

確かに、カオルの言ってるとおりだ。  

ただ、過去の、歪んだプライドのためか、アスカは、認めたくなった。  

ふぅ・・・・とため息をついて、カオルはシンジの顔、シンジの声のまま言う。  

「素直になりなよ、アスカ。」  

シンジの声に反応して、顔を上げる。  

そこには、先ほど泣いたせいで、霞んで見えるが、カオルが、シンジの顔で、微笑んでいた。優しく、包み込むように・・・・・  

「あ・・・・・・・・」  

アスカは、この笑顔を見て、シンジにもう一度会いたいと思った。こう言う風に微笑んでくれる優しいシンジに・・・・・  

周りが、急に雪のように舞ってゆく。  

「やっと、素直になれたようだね。」  

消えかけのカオルが言う。  

声は、戻っている、顔は、自分は見たことが無い。  

銀髪に、赤い瞳の顔。  

「違うと思う・・・・素直になれたかなんてわからない。何を信じてるかなんてわからない。・・・・・ただ、会いたいと思った、もう一度、この気持ちは、素直なあたしの気持ちだと思うから。」  

先ほど泣いたせいで、やや瞳が赤い。  

「それでいいんじゃないか?」  

もうほとんど消えかけのカオルが言う。  

「ありがとう・・・・・・」  

アスカが、感謝の気持ちを述べる。  

「君の口から感謝の気持ちが聞けるとは・・・・・思わなかったよ・・・・・・」  

中性的な声だけが返ってくる。  

周りは、ほとんど消えた。  

アスカの目にも、何も見えない。  

ただ、感覚で上にあがっていくような感覚だけわかった。  

最後に、微笑んでるような、悲しんでるような、左右非対称の、カオルの顔が、見えたように思えた。  

 

 

 

 

 

アスカは、病院のベットで、目を覚ました。  

なんとなく、清清しい。  

きぃ、と扉が開く音が聞こえた。  

顔を向けるとシンジが立っていた。  

シンジは、どこと無くおどおどしている。  

そんなシンジに向かって、アスカは微笑んだ。今まで見せたことの無い、心から微笑めるような、微笑を・・・・・  

シンジは、一瞬驚いたような、顔をしたが、やがてシンジも微笑んだ。  

シンジの笑顔をもう一度見て、アスカは思う。あたしは、今までこの笑顔のために、シンジに辛く当たってたのかもしれない。あたしが、素直じゃなかったから・・・・・・あの時も、泣いてるシンジを見て「気持ち悪い」としか、言えなかった。ただ、シンジの泣いてる顔を見たくないだけなのに・・・・・・  

そんな思いも、シンジの笑顔を見てると、とても些細なことのように思えてきた。素直じゃなった自分が、ばかばかしく思えてきた。  

「シンジーーお腹すいたーー」  

「えっ?」  

アスカの、突然の発言に驚く、  

「シンジの料理食べたいなーー」  

アスカの意外な発言に驚く、  

本人も驚く、素直になれたことに・・・・・  

照れ隠しか、アスカは、えへへ・・・・という感じで、笑っている。  

「そうだね・・・・早く退院しよう。そしたら、おいしい料理を作ってあげる。」  

「うん!」  

アスカは、また微笑んだ。

だが、二人は知らない。  

葛城ミサトという、者により。自分たちの家が、とてつもなく汚れていることに。  

そのため、退院したら、料理ではなく、掃除が待っているということに。  

 

 

 

 

「君が、優しいなんて知らなかったな・・・・アダム」  

ネルフ総合病院の、屋上で、2人の人影が見える。  

「意外かな?ダブリス君」  

アダムとダブリスに呼ばれたやつが答える。  

驚くことに、2人の姿、形は同じで、違うのは声だけだ。  

「ああ、意外だよ。」  

素直な感想を述べる。  

「なに、孫には優しいものだろう?普通。」  

「リリスより生まれし、リリンか・・・・確かに、君から見れば、孫かもしれないな・・・」  

「そういうものだ・・・・・」  

暫く、黙っていたが、ダブリスが  

「君も、シンジ君に惹かれたのか?」  

「ああ、そうだね。彼は、もう一度、みんなといる、世界を望んだ、だから、そのようにするために、したまでだよ」  

「ということは、レイや、シンジ君の、お母さんが、戻るのも、手助けするわけか・・・・」  

「そうなるね。」  

暫く、沈黙が、流れる。  

やがて、突然、アダムが、口笛を、吹き出した。  

とても、綺麗な旋律で流れる。「交響曲、第九番ニ短調、第四楽章」  

暫く、吹いていた。  

やがて、吹き終わると。  

「歌はいいね・・・・・・」  

「そうだね。」   

ダブリスが、感想を口にしたとたん、アダムは、空気に溶けるように、消えていった。  

後には、ダブリスだけが残る。  

やがて、ダブリスも口笛を、吹き始めた。「交響曲、第九番ニ短調、第四楽章」を

 

愚者の後書き

 

たった、2話しか書いてないのに、もう外伝、しかも本編には、無いのに外伝に後書き・・・・  

まぁ、本編が、退院した後から始まったので、外伝、という形でしか書けませんでした。  

しかも、外伝には、もろパクリキャラが一名、アダム君。  

某文庫の某黒帽子君です。ジュニア小説ですが、有名ですので、知ってる人は、いると思います。  

このような、愚者の、愚作ですが、最後まで、よろしくお願いします。


マナ:やっぱり1人で生きるなんてできないのよね。

アスカ:渚のヤツに教えられたってのは、なんかシャクだけど。

マナ:でも、とても大切なことよ?

アスカ:おかげでアタシも幸せになれるんだし。いいけどさ。

マナ:アスカも幸せになれたことだし、わたしも幸せになろうかなぁ。

アスカ:しゃーないわねぇ。幸せをおすそ分けしてあげるわ。

マナ:わたしもシンジと支えあっていくのぉっ!

アスカ:それは分けてあげないーーーーーーーーーーーっ!
作者"河中"様へのメール/小説の感想はこちら。
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