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「なんか言いなさいよ・・・・・」  

沈黙を破ったのはアスカだった。  

いま、アスカはレイと2人でリビングにいる。  

シンジとミサトとマナは、父某ネルフ司令、碇ゲンドウに呼ばれてネルフに行っている。大事な話があるそうだ。  

ネルフ職員でも、チルドレンでもないマナが、付いて行く理由は、よく言えば見聞を広めるためだ。悪く言えば散歩だ。  

人間になったといえ、せいぜい体、頭脳が発達しただけで、ペンペンのとき、部屋にこもりっぱなしだったため、第三新東京の案内を兼ねて連れて行ったのだ。  

無論そのときマナは「私は、犬じゃないです!」と反論したが、シンジがそこをなんとかなだめた。  

アスカとレイも連れて行っても良かったが、2人の仲が良くないことを知っているミサトが、この機会に仲良くなってもらおうと、わざと2人っきりにさせた。  

そんなわけで、2人っきりで居るのだが、そううまくいくはず無く、険悪な沈黙が漂っていた。        

「・・・・・・・・」  

レイは答えない、うつむいている。  

「あんた、なによ!また命令があれば・・・・とかいうんでしょ!」  

「・・・・・・・・・」  

レイは答えない。うつむいている。  

「なんか言いなさいよ!人形のくせに!」  

レイが、言葉に反応し、顔を上げた。  

その赤い両眼には、明らかに意志がこもっていた。  

「あたし、人形じゃない。」  

 

 

 

  

「キョウコ&ユイ復活」  

 

 

 

 

「ミサトさん・・・・2人はあれでいいんでしょうか?・・・・・」  

シンジが、車の中で聞いた。  

シンジが言っている二人というのは、アスカとレイのことだ。  

ミサトだけでなく、シンジもあの2人が決して、仲がいいといえる仲ではないということを知っている。知らないのはマナだけだ。  

「なんとかなるんじゃない?」  

ミサトが曖昧に答える。  

ミサトとしては、これから共同生活をするわけだし、仲が良くなって欲しい。二人のためにも、また自分の飲むビールがおいしくなる為にも。  

「それよりもシンちゃん?聞きたいのは、そう言うことじゃないんじゃない?」  

シンジは核心を突かれた。  

確かに、2人も心配だが、それよりも、なぜ、今ごろ父、碇ゲンドウが自分を呼び出すのかわからなかった。  

「なぜ・・・・今ごろ呼ぶんでしょう?」  

ミサトの顔を見ず言う。  

「わからないわ・・・・・もしかしたら、謝罪かもしれない・・・・・」  

シンジは、ミサトの言葉に驚く。  

「謝罪ですか!?父が?」  

「可能性の話をしただけよ。本気にしないで。ただありうるってだけだから。」  

「・・・・・そうですね・・・・・・」  

シンジにとって、父が謝罪など、ありえるはずが無い。ミサトもまずありえないと、思っているはずだ。  

ならば、なぜ・・・・・・  

「気持ち悪い・・・・・」  

シンジの考えは、今まで黙っていたマナにより、中断させられた。  

マナの声は、元気が無い。気持ち悪い、と言ってるから当たり前だろうが・・・・  

「マナ・・・・もしかして車酔い?・・・・・・」  

「なにそれ?・・・・・・」  

マナは、車酔いという言葉自体知らないようだ。  

「えーっと・・・・車酔いって言うのはね・・・・三半規管が・・・・・・・(略)」  

「そうなんだ・・・・・見てるだけじゃかっこいいのに・・・・・こんなに気持ち悪いなんて・・・」  

たいていの人はそこまで酔わないだろう・・・・・  

「まだですか?」  

マナがミサトに聞いた。  

後にこの判断は間違っていると気づくだろう。  

「わかったわ、ちょっちスピード上げるわよ。」  

「えっ!?ミサトさん。それ・・・・・・」  

ミサトの運転を知っているシンジは、講義の声を上げようとしたが、すでに遅く、ミサトはアクセルを思いっきり踏んでいた。  

普段、車酔いなどしないシンジだが、それでもミサトの運転は、シンジを、酔わすほどだ、マナはひとたまりも無いだろう。

   

それから、約十五分後、ネルフに到着した。  

マナは、後部座席で、気を失っている。  

「あらあら、情けないわねーー」  

「普通の反応だと思います・・・・・・」  

シンジもかなりへばっている。体がふらふらしている。  

「ほらほら、へばってないで早くキスしなさいよ。」  

「なっ!?なに言ってるんですか!?」  

ミサトの突然の言葉に、シンジは顔を赤くする。   

「眠りについたお姫様にキスするのは、王子様って相場が決まってるじゃない。」  

「普通に起こせばいいと思いますけど・・・・・」  

「それじゃあ面白くないじゃない。」  

シンジは確信をもった。  

絶対、マナの性格はミサト譲りだと・・・・・  

シンジは、マナの頬っぺたを軽く叩いた。  

「起きて、マナ、着いたよ。」  

「うーーん、あとごふん・・・・・。」  

マナは寝ぼけているらしい。  

暫く、頬を叩いたが起きる気配はしない。  

横を見ると、ミサトが口で声に出してないが、キース、キース、と連呼している。  

ふぅ・・・と諦めた表情を見せてシンジは・・・・・  

自分の顔をマナの顔に近づけた。  

横で、ミサトがキス、の連呼を早くした。  

シンジは、さらに近づけ、マナの耳元に唇を持ってきた。  

「ミサトさんが運転するよ。」  

シンジは囁いた。  

横でミサトが、キスしないの?と嘆いている。  

マナは穏やかだった表情を、一変させ、悪夢にうなされるような表情をし、急に目を開けて、上半身を起こそうとした。  

そのため、マナとシンジは頭部に50のダメージを受けた。  

「あいたたたた。」  

マナはおでこを抑えている。  

「大丈夫?マナ?」  

「うん、大丈夫・・・・・」  

「そう・・・・良かった・・・・・」  

シンジは、胸をなでおろした。  

「シンジ君、私とキスしたいなら、言ってよね。いつでもオーケーだから。」  

シンジは再び顔を赤くした。  

「違う!」  

 

 

 

 

 

 

「そういえば、ここに来るのは久しぶりだな・・・・・」  

シンジが、感傷に浸った声で言う。  

今シンジ達は、司令室へと向かっている。  

あの戦いの後、シンジは一度もここへ来たことは無かった。  

そのためか、印象が違ってるように見える。  

なんか、こう・・・・色とかは同じだが、前みたいな暗い感じではなく、鮮やかな印象を受ける。  

暫く歩くと、司令室へのドアが見えてきた。  

「着いたわ・・・・・」  

ミサトは、ドアの横にあるボタンを押した。  

「葛城三佐です。連れて参りました。」  

「うむ・・・・すまないが、葛城三佐そこで、暫く待っていてくれないか?シンジと話がしたい。」  

ミサトはシンジの顔を見た。  

シンジは静かにミサトにうなずいた。  

「わかりました。」  

ミサトは、ボタンから手を離した。  

「じゃぁ私は、リツコのところに行くわ。真なの酔い覚まし貰ってこなきゃ。」  

「わかりました。」  

そう言うと、シンジは司令室へと入っていった。躊躇わずに・・・・・・  

「強くなったわねー。」  

そう言うと、マナと一緒にリツコのところへと歩いていった。  

 

 

 

 

「シンジ君。お父さんが待ってるわよ。」  

司令室に入ったとたん見知らぬ声が聞こえた。  

「誰ですか?」  

シンジの目の前には、25〜6だろうか・・・・ショートカットの金髪で、青い瞳の人が立っていた。  

「あぁ、貴方は知らないわね。キョウコ、惣流キョウコツェッペリン、アスカの母親よ。」  

「ええっ!?それじゃあ・・・・・・・」  

「話は後、お父さんが待っているわ。それに、後でいくらでも話せるわ。」  

後で、話せるって・・・・・どういう意味なんだろ?  

考えてみたが、思いつかない。  

まぁ、後でわかるだろ・・・・・・  

前向きに考えながら、キョウコに連れられて父の前まで来た。  

「大きくなったわね、シンジ。」  

父しか見てなかったので気づかなかったが、両横に、冬月副指令と歳はキョウコと同じくらいの黒い髪、黒い瞳の女性が立っていた。  

紛れも無く、シンジの母、碇ユイだ。  

「母さん!?」  

「嗚呼、シンジ、わかるわ。貴方は今、私の胸に飛び込んで来たい気分なのは、沸騰した水に触るくらいその気持ちは伝わってくるわ。だけど、貴方はもう十五歳、昔ならもう元服を迎えて大人になるころ、だったら、飛び込むのは私の胸じゃなく、彼女の胸、貴方には、アスカちゃんや、レイちゃん、それにマナちゃんまでいるでしょ。だけどね・・・・・シンジ、私は母として貴方を抱きしめたいという衝動にものすごく駆られそう・・・・・嗚呼・・・・・・」  

冬月が、コホンと咳払いをし、  

「ユイ君・・・・・・・」  

「あら・・・・すみません。」  

冬月が、なんだかイッてるユイを止めた。  

母さん・・・・・こんな人だったんだ・・・・・  

唖然としているシンジの横で、キョウコがクスクス笑っている。  

「さてシンジ・・・・・」  

ゲンドウが、いつものポーズで口を開いた。  

「まず、お前に謝らなければならん。」  

「えっ!?」  

思いもしない言葉に、つい驚きの声を上げてしまう。  

「お前には、本当にすまない事をした・・・・・すまなかった、シンジ。」  

ゲンドウが、頭を下げた。  

「えっ?あっ、いや・・・いいよ・・・・父さん・・・・・父さんのせいで辛いこともあったけど、そのおかげで、今の自分が居るんだと思う。前のままだったら、ずっと自分のことが嫌いだったと思うから・・・・・」  

「そうか・・・・・そう言ってもらえるとありがたい・・・・・」  

「本当にすまなかったな、シンジ君。」  

冬月までもがシンジに謝った。  

「いえ・・・・元に戻してくれるんでしょう?」  

「あぁ、全て、とはいかないが、そうするつもりだ。」  

「それだけで十分だよ父さん。」  

シンジは、微笑んだ。  

ゲンドウは、驚いたような顔をした。  

横では、カメラ、カメラ、とユイがポケットをあさっていたが、後ろから、いったいどこから取り出したか、キョウコが、ユイの後頭部めがけてハリセンをおとしている。  

驚いてるゲンドウに冬月が、「あれはいいのか?」と囁いた。  

「あっ、あぁ、シンジ・・・・・葛城三佐を呼んで来てくれ、葛城三佐も一緒に話すことがある。」  

「うん、わかった。」  

シンジは、そういって司令室を出て行った。  

「・・・・・・・・あなた・・・・」   

シンジが出て行くと真剣な表情で、ゲンドウに話し掛ける。  

「ちゃんと・・・・いつか来てくださいね。」  

「あぁ、自分の罪をぬぐい終わったらな・・・・・・」  

「待ってますよ・・・・・・」  

「あぁ・・・・・・」  

 

 

 

 

 

 

 

「ミサトさん、父はなんて言ったんですか?」  

シンジは、今、車で家へと帰っているところだ。  

マナが、車酔いのため、リツコに、「車酔いの薬を少し上げるけど・・・・これは、弱いやつよ。生憎、作ってる暇も無くてね・・・・だから、できるだけ、助手席に座って、景色を見てなさい。」と言われたので、マナは助手席に座っている。  

シンジは、後部座席から聞いた。  

「ふふふ、ひ、み、つ!」  

「教えてくれてもいいじゃないですかぁ〜」  

マナが言う。  

気分は悪くないらしく、元気そうだ。  

「ふふふ、家に着いたらわかるわ。」  

「ミサトさん・・・・・・2人は、大丈夫でしょうか?」  

「あっ!そういえば・・・・・・」  

ミサトは、アスカとレイのことを忘れていたらしい。  

「忘れてたんですね・・・・・」  

「あはははは・・・・・大丈夫でしょう。私のシチュエーションに狂いは無いわ。」  

「そうだといいんですが・・・・・・・」  

シンジは、心配になる。  

その心配をよそに、前ではマナが「あっ!犬だ!かっわいいーー」とはしゃいでいる。  

 

 

 

 

 

「「「ただいま。」」」  

シンジ達は、靴を脱いで、部屋へ向かった。  

「アスカーー?レイーー?」  

返事は返ってこない。  

「どうしたんでしょう?」  

「さぁ?」  

シンジとミサトはより一層不安になる。  

「もしかして・・・・・」  

「大丈夫でしょう・・・・・」  

「でも・・・・・」  

シンジとミサトは、玄関で問答している。  

「シンジ君、ご主人様、アスカさんと、レイさんならここにいますよ。」  

リビングから、マナの声がする。  

「ご主人様ぁ?」   

シンジは、ミサトのほうを見る。  

「なっ、なによその目は、ペンペンは私のペットなんだから、別にいいじゃない、どう呼ばせようとも!それよりも、レイたちのとこへいくわよ。」  

「・・・・・話を逸らしたな・・・・・・」  

 

 

 

 

リビングに入ると、わが目を疑った。  

目の前には、仲良さそうに2人、寄り添って寝ている。  

「ここまで仲良くなるとはね・・・・・」  

ミサトは驚いている。  

無論、シンジも驚いている。  

前まで、仲が悪かったのが嘘のようだ。  

2人の寝顔はとても穏やかだ。  

「いいですねーー仲良くて・・・・・・」  

マナが、そう言ってシンジを見る。  

「・・・・・なに?・・・・・・・」  

「一緒に寝よ!シンジ君!」  

マナがそう言ってシンジに抱きついてきた。  

横で、ミサトが苦笑いしている。  

その言葉に反応してかしないでか、アスカの米神がピクッと動いた。  

 

                                         

<続>


マナ:ママさん’sも復活したし、碇司令と和解もできたし、良かったわね。

アスカ:うーん。まさか、ファーストと仲良くなっちゃうなんて・・・。

マナ:よかったじゃない。友達が多いのは、いいことよ?

アスカ:絶対ファーストが『アスカ様の下僕にして下さい。』って泣いて頼んだのね。

マナ:そんなばかな・・・。

アスカ:『アスカ様に比べて私はなんて不細工だったの?』って悟ったとか。

レイ:何か言った?(ーー#

マナ:さ、さよなら。(ぴゅっ!)

アスカ:あ、あら。ファースト。どうしたの?(@@;

レイ:赤い壁が見たいのね。

アスカ:ち、ちがっ!(@@;;;;

レイ:ATフィールド全開!!(どっかーーーーーーーーーーーーーーんっ!)

アスカ:いやーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!(TOT)
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