ゆさゆさ・・・

「起きて、シンジ」

朝の7時、少年、シンジを起こす少女

ゆさゆさ・・・

「起きてって言ってるでしょ。」

先ほどよし激しく揺らす。

だが、起きる気配はない。

暫く揺すってみたがだめだった。

「ふぅ・・・・」

ため息をつく。

そして、悪戯っぽい笑みを浮かべると・・・・・・

「ほーらっ!」

少女はシンジの布団を剥ぎ取った。

「ん・・・・・」

やっと起きたようだ・・・・・

頭を掻いている。

「おはよう、シンジ」

「あぁ・・・おはよう、ユイ」

少女、ユイはやっと起きたので満足したのか、笑みを浮かべている。

「ほらほら、さっさと制服着なさい」

「わかったよ・・・・」

シンジはかなり眠い。

昨日発売した、新作RPGを夜中の3時までやっていたせいだ。

眠い目を擦りながら、制服のかけてある所へふらふらしながら行く。

「あのさぁ・・・・ユイ・・・・・」

「なに?」

「着替えられないんだけど・・・・・」

ユイはまだシンジの部屋に残っていた。

「大丈夫よ。」

「ユイは大丈夫でも、僕が嫌なんだけど・・・・」

「はいはい、わかりました。」

ユイはやっと出て行った。

季節は冬、新学期の始まる日、まだまだ寒い。

身にしみる寒さを感じながらシンジは制服を着た。  

 

 

 

短編読みきり「あの冬の思い出」  

 

 

 

 

「はい、お茶!」

ユイは、シンジの両親とお茶を飲んでいた。

「ありがとうございます。」

シンジの母、碇レイに入れてもらった紅茶を飲む。

ユイは、甘党なのでそれを知っているレイは、必ず砂糖を多く入れてくれる。

青い髪、赤い瞳、若く、とても綺麗だ。

実際、18歳だ。

父親の碇カオルも同じくらいで、18歳だ。

銀髪の髪、レイと同じ赤い瞳。

そんなに若いのになぜ、中学の息子を持ってるの?と、ユイは聞いたことがあった。

すると、「実は、捨て子なのよ、シンジは」と、レイが笑いながらふざけてる様に答えた。

実際、そうなのかアスカはわからない。

シンジに聞いたらわかるだろうが、本人に聞くなんて気がひける。

「おはよう、母さん、父さん」

「おはよう、シンジ、早く食べなさい、遅刻するわよ」

シンジは、席について用意されている、朝ごはんを食べる。

「シンジ君、いつもユイさんに起こされないでも一人で起きれるようになったほうがいいよ。」

新聞を読んでいるカオルが言う。

「わかってるよ・・・・・ごちそうさま」

シンジは高速でご飯を食べ終わった。

シンジは、立ち上がり玄関へ向かう。

「紅茶、美味しかったです」

ユイも紅茶を飲み終わり、玄関へ行く。

玄関から「ほら、早く行くよ!」「わっ、ちょっと待ってよ。」等と聞こえる。

やがて、扉が閉まる音が聞こえた。  

 

「ほら、あなたも急いでください、冬月先生におごと言われるのは私なんだから」

台所で片付けをしているユイが言う。

「はははっ、君はもてるからねぇ・・・・」

ざくぅっ・・・・・

レイの方を見ると包丁が思いっきりまな板に突き刺さっていた。

「急いでくださいねぇ」

カオルに向かって微笑む。

「ははは・・・・・・・」

カオルは引きつった笑いをみせると、いそいそと準備を始めた。  

 

 

 

 

「そういえば今日、転校生が来るらしいよ。」

学校へ向かう道を、かなりのスピードで走っている。

「ここんとこ、転校生多いね」

シンジの通う学校、第壱中は、最も伝統のある・・・・といっても、まだ数十年かそこらだが、この第三新東京では最も古く、大きい学校だった。

そのため、最近になり、第三新東京が首都になることが決まったので、最近に限り、転校生が多い。新学期なら尚更だろう。

「シンジも新学期なんだし彼女の一人くらい作りなさいよ」

「なっ、なに言ってるんだよ!」

「はははっ!」

ユイは笑った。

ユイから見ても誰から見ても、シンジはからかい甲斐のある奴だ。

シンジのほうを見ると、後、数メートルのところからダッシュしてくる少女を見つけた。

「危ない!シンジ!」

「えっ?」

ユイが言った時にはすでに遅く、シンジは曲がり角から飛び出してきた少女と正面衝突した。

ドン!!

「うわっ!」

「きゃっ!」

シンジは地面に倒れた。

運動神経のいい人なら受身を取っていたかもしれないが、シンジがそれに当てはまるはずもない。

かなりの衝撃を受けた。

「いたたたた・・・・・・・」

シンジは全身に痛みを感じながらも身を起こそうとした。

前を見るとぶつかってきた少女も、体を起こそうとしていた。

よく見ると、かなり可愛い。

さらさらの金髪。

透き通るような青い瞳。

美少女の分野でもトップクラスに入るだろう。

ぼーっとシンジが見惚れていると・・・・

「ちょっと!よくもぶつかってくれたわね!」

「えっ!?」

「問答無用!」

バチン!!・・・・・

少女の繰り出した平手が見事にシンジの顔に、紅葉型の跡を残した。

「これで許してやるわ。」

そう言うと、少女はまた走り去っていった。

「なんで?・・・・・・・・・」

相手も悪いのに何故か叩かれた理不尽なシンジだった。

この後、ユイが「こういうこともあるさ・・・・」と、シンジに飴玉を一個あげて、慰めた。  

 

 

 

 

 

「それで?見えたんか?」

第壱中、朝のCH前のわずかな休み時間。

シンジは、悪友もとい親友の鈴原トウジ、相田ケンスケと喋っている。

「見たって・・・・なにを?」

「シンジ、わからないのか?」

「うん・・・」

「かぁぁぁーーーええか?シンジ。あのなぁ・・・・・・」

トウジが語りだそうとすると・・・・

「すーずーはーらー」

後ろから、委員長こと洞木ヒカリが凄い形相でトウジの肩に手を乗せる。

トウジが、朝の週番の仕事をしていないのでキレている。

身の危険を感じたトウジは、すぐさま、

「鈴原トウジは、すぐさま週番の仕事をしてくるであります!」

と言い、まずは花瓶の水替えをしにいった。

「まったく、もう!」

委員長が腰に手を当てながらぼやく。

「・・・・・トウジってさ、尻に敷かれるタイプだな・・・・・」

ケンスケは、「君もね・・・・・」と思ったが、口には出さなかった。

ケンスケが窓の外に目をやると、猛スピードで、駐車場につっこんでくる車を発見した。

「お!ミサト先生だ!」

ケンスケが、声を上げたとたん、クラス中の男子が(一部除く)窓から顔を出した。

ミサト先生は人気がある。

先生のくせにずぼらなところや、大雑把なとこ。

なにより、綺麗だ。

「ミサト先生――」

生徒がミサト先生に向けて声をかけると、ミサト先生が生徒に向かって、ピースをした。

「くぅぅぅ!やっぱいいな!ミサト先生は!」

ケンスケが、ミサト先生をカメラに写しながら言う。

「なによ!でれでれしちゃってさ!」

女子の大半は、こう呟く。

そんな光景を見ながらシンジは「平和だねぇ・・・」と思った。  

 

 

 

 

「喜べ!だーんし!」

ミサト先生が教卓を、ドン!!と叩いた。

「今日は、噂の転校生を紹介する!」

それを聞いた瞬間、教室内が騒がしくなった。

「どうぞ!!!」

ミサト先生が扉に手を向けた。

扉から、とても可愛い少女が出てきた。

さらさらとした金髪。

透き通るような青い瞳。

そう、その人は・・・・・

「惣流アスカラングレーです。よろしく」

「あぁーーーーーっ!」

目の前で自己紹介している人は今朝、シンジにぶつかってきた子だった。

シンジは、ガタンと席を立った。

アスカもシンジに気づいたようだ。

「あぁーーーっ!あんたは!今朝あたしを倒した奴!」

「いや、それは君が!」

クラスでは、「碇!お前と言う奴は!」「不潔よ!」などという声が聞こえる。

いまどきの中学生、倒した=襲ったに繋がるらしい。

「ちょっと!授業中よ!」

クラスが、騒がしくなったので、学校に一人はいるであろう真面目委員長のヒカリが止めに入った。

「興味あるわーー続けて頂戴」

だが、肝心の先生がこれでは無理だろう。

「先生・・・・・」

委員長が先生を睨む。

「わ、わかったわよ、授業するから静かにして!」

先生が注意し始めたので、やっと納まった。

トウジは、先生をも睨みひとつで従わせる委員長には、「逆らわないほうがいい」と、本気で思った。

「それじゃあ、惣流さんはシンジ君の席の隣に座って、あと、シンジ君に放課後にでも学校とか案内してもらいなさい。いいわね?シンジ君。」

「えっ?はい、わかりました」

シンジは、これといって断る理由もなかったので、了解した。

「よろしい、それじゃ、授業始めるわよ!」

ミサト先生の、特徴のある文字が、黒板に刻まれていった。  

 

 

 

 

時は過ぎて放課後、学生諸君の開放される時間、ほとんどの学生は、部活のためいそいそと着替えている。

「惣流さん、そろそろ行こうか」

シンジが、アスカを案内するべく話し掛けた。

ちなみに、珍しくシンジ一人だ。

トウジは、週番で委員長と掃除をしてるし、

ケンスケは、どうしても見逃せないイベントがあるらしい、

ユイは、彼氏である六文儀ゲンドウと帰った。

つまり、シンジとアスカ、2人っきりで学校を案内するという、思春期真っ只中、青春ど真ん中ストライク状態の中学生にとっては、涙が出るほどの絶好のシチュエーションだ。

だが鈍いシンジの思考がそこまでいくはずがない。

「シンジ、だったよね」

アスカが言う

「うん、そうだけど・・・」

「ひとつ、忠告しておくわ。あたしのこと惣流さんって呼ばないで、アスカって呼んで」

「えっ?」

シンジは戸惑った。

外国からきたアスカには、アスカと呼ばれるのが普通だろうが、ここ日本では普通、女の人には上の名前で語りかける。下の名前で語りかけるのは、せいぜいとても仲がいい子か、彼女くらいだろう。

「わかった?」

「うっ・・・わかったよ、ア、アスカ」

抵抗があったが、逆らったら怖い。

おとなしく、従った。

「わかればよろしい。それじゃ行くわよ」

「えっ?ちょっと待ってよ、どこ行くかわかってるの?」

「わからないわよ!そのためにあんたいるんでしょ?」

「ごめん」

「きぃぃぃーーーなによすぐ謝っちゃってさ、男でしょ!」

「ごめん」

「だからやめろって!」

教室にいる数名のものはそんな会話がおもいっきり聞こえていた。

「ここが、音楽室」

シンジが指差したとこには、音楽室と書かれていた。

「ふぅーーん・・・・・・まあまあね」

アスカがそんな感想をもらした。

実際、まあまあだった。

とりわけ広いという訳でもなく、狭いという訳でもない。

誰がみても、「まあまあ」とか「普通」という感想をもらすだろう。

「次は?」

「最後だよ、後は各教室か、体育館中くらい」

「そう、案外時間かかったわね」

今はもう六時五十分だ。

冬なので日の沈みが早い。

もう外は暗くなっている。

シンジ達の学校は前も述べたように広い。

そのため、時間を食ってしまったのだ。

「それじゃあ、シンジ、帰りましょうか」

「えっ?帰りましょうか?って・・・・」

「なによ、こんな暗い中を女の子一人で帰させるわけ?」

シンジは暫く戸惑っていたが、たしかに、こんな暗い中を女の子一人で帰らせるのも難だな・・・と思ったシンジは、

「わかったよ・・・」

とうなずいた。  

 

 

 

 

暗い帰り道、道路では、車が忙しく走っている。

だが、ある曲がり角では、一台の車が道路で止まっていた。

人をひいたらしい。

数メートル前に人が一人、血まみれで倒れている。

「シンジ!しっかりしてよ!」

血まみれで倒れている少年に必死に話し掛ける少女。

後ろでは、車の運転手らしき人が、携帯を片手に持っている。

救急車を呼んでいるようだ。

だが、急いできても、数十分はかかるだろう。

「シンジ!しっかりしてって言ってるでしょ!」

少年の体は、右腕と右脚が、奇怪な方向に曲がっている。

少年の目は虚ろだ。

意識はあるのかわからない。

「シンジ!シンジ!・・・・しんじぃ・・・おきてよぉ・・・・・」

少女の目から涙が零れる。

少女は、ただ少年の名を呼ぶことしかできない。

後ろの、運転手らしき青年は、ただその光景を黙って見ているしかできなかった。  

 

12分後、救急車が到着した。  

 

 

 

 

 

 

 

 

超、愚者の後書き  

 

前の予告で、外伝とか書いてたくせに、短編読みきり、

超、愚か者だ。

外伝、シリアスすぎて、全然進まないので読みきりにしました。(待ってた人すみません)

さて、読みきり「あの冬の思い出」は、どうでしたか?

とりあえず、後編で終わる予定・・・・・(今度は確か)

さて、いわゆる、「学園エヴァ」です。

オーソドックスな展開ですが、後編まで読んでくれるとありがたいです。

後編は、アスカの一人称小説の予定・・・・・(確かだといい)


マナ:ほんと、あなたって手が早いわねぇ。

アスカ:ボケボケっとぶつかってきたシンジが悪いのよっ!

マナ:だからって、いきなり・・・。(ーー)

アスカ:いいのっ。アタシのビンタは、愛情表現なんだから。

マナ:って、シンジが大変なことになってるじゃない!

アスカ:あの運転手、弐号機で踏み潰してくれるわっ!(ーー#

マナ:学園者だから弐号機はないってば・・・。

アスカ:救急車なんか待ってられないわっ! 輸送ヘリで運ぶのよっ!

マナ:それも・・・ないってば・・・。
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