「んーー・・・・・・・やっぱりアスカちゃんが一歩リードかな?」

そう言いながら、ユイは手に持っているミスター○ーナツの手帳になにやら書き込んでいる。

「こんなことしていいんでしょうか?」

「そう言いながら、一番見てますよ」

「はは、まぁ、保護者としてです」

扉越しに集うミサト、キョウコ、ユイ。

目の前の扉は少し隙間が開いている。その先に見えるものは・・・・・・・・・・言うまでもない。

「けど、だめね。我子ながら・・・・・・・・」

はぁ、とため息をつく。

「どこが駄目なんですか?」

聞きながらも目を離すことなくミサトが尋ねる。

今までずっとギスギスした状態だったため、これは見逃せないようだ。

「ふふ、それはね、どんなことがあっても男の子は女の子を泣かしちゃいけないのよ!」

「古臭い台詞」

「いいじゃない。好きなんだから」

「しかし・・・・・・・・・ここがいい気がしますけどねーー」

ここで、目を離してミサトが言う。

これ以上の進展は無いと踏んでのことだろう。

「ふふ、なし崩し的な展開ばかりに任せても駄目なのよ!自分から夜這いするくらいの度胸が無きゃ!」

拳を握り締めて熱く語る。

「きゃぁーー夜這いよ!夜這い!」「やっぱ男はそのくらいしなきゃ!」と言う、親として不謹慎な言葉を連呼する。

キョウコはそんな2人を今すぐハリセンで叩けるようスタンバイはしているのだが、自分もこの状況を見て、楽しんでいるので何もできずにいた。  

 


 

「家族の食卓?」  

 


 

「いくよ!レイ、見ときなさいよーー」

なにが「いく」なんだ?何を見とけと言ってるんだ?

シンジはまだ覚醒しきれていない頭でそんなことを思った。

だが、次の瞬間わかった。

「くらえ!!」

ボスっ、と腹に重い衝撃がきた。

プロレス?K−1?多分どれかの攻撃法をシンジにかけてきた。

「ぐわっ!」

シンジの頭が一気に覚醒する。

瞬時にどけようとするが、中学生の平均水準以下の力の持ち主であるシンジに、見た目より力のあるマナをどけられるはずが無い。

「あのーーどいてくれませんか?」

自分の力では動かせないため、相手を自主的にどかせようとするが、そう簡単にどくマナではない。

「駄目よーーシンジ君。昨日私と寝るはずなのにアスカと寝た罰。ほら!レイもやりなさい」

「うん」

そう言うと、またシンジの腹にボスっ、という重たい衝撃がきた。

「ぐわっ!」

再び、短く悲鳴をあげる。

傍から見ると、一人の男に女が2人のっかかっているこの状況は、近頃の中学生諸君らは、涙を流しながら、見守る状態だ。

「へへーーシンジ君の体、暖かい」

「あったかい」

顔をシンジの体にすりすり、としてくる。

流石にこれには恥ずかしさがこみ上げてくるシンジは、必死の力で逃げ出そうとする。

「あんた達・・・・・・・・・なにやってんのよっ!!」

そこで、助け舟が来た。

アスカだ。

アスカの登場にマナがちっと舌打ちをする。それを見たレイが同じくちっと舌打ちをした。

「なにが、ちっ、よ!人にご飯作らせといて!」

軽く説明すると、この家の中でご飯を作れるのは三人。シンジ、アスカ、キョウコだ。

シンジは無論。アスカは近頃になって覚え、1児の母であるキョウコは当然。

レイは、今までの生活からか、料理は駄目。もともと手先が器用なため、今は修行中。マナは、ペンギンなので無論駄目。

問題なのは、ユイ。1児の母であるユイが料理を作れない理由は、夫であるゲンドウが料理がうまいからだ。

ゲンドウ曰く、お袋の味は必要不可欠!といわれたユイは、とりあえず作ってみたことがあるらしい、それを食べたゲンドウは、後に、あれは忘れられない味だった。と、苦虫をつぶしたような顔で冬月に語ったらしい。どういう味かは語らなかった。

「まったくもう!いいとこだったのに・・・・・・・・」

「だったのに・・・・・・・・・・」

ぶつくさ言うマナ、レイをアスカが睨む。

「さーて、今日のご飯はなにかなーー?」

「かなーー?」

目をそらし、キッチンへ逃げてゆくマナとレイ。

ようやく、シンジが起き上がる。

腹をさすりながらも、流石に鈍いシンジ君でもさっきのは良かったなーーと思っていると、アスカの鉄拳が飛んできた。

知らずのうちに顔がにやけていたらしい。

「馬鹿!」

捨て台詞を放つと、アスカもキッチンへ向かった。扉を閉めるときに必要以上に力を入れたのは、怒っているという意志表現だろうか?

殴られた、顔をさすりながらもやはりにやけるシンジであった。  

 

 


 

 

食は戦いだ。

よく、そんなことを言うが、ピンとは来ないだろう・・・・・・・・

しかし、どこにも必ずそれが現れる。

そう、食は争い

フォークとスプーンとナイフと箸は武器

テーブルの上は戦場

生きるか死ぬかのサバイバルゲーム

己の全身全霊をかけて挑まねばならない。

かなりのスピードで迫る箸、だが、軌道が正直すぎる。

素早く箸でそれを弾く。

だが、弾かれたと言うのにその顔は勝ち誇った顔をしている。

「いただきっ!」

しまった!!

そう思ったときはすでに遅い。

ユイのは囮だ。

ミサトの箸がシンジのおかずを奪う。

「あっ・・・・・・・・ずるい!」

取られたおかずをミサトの箸から奪おうとする。

だが、その判断は間違いだ。

争いの場において、隙を見せること、すなわち死を意味する。戦いは常に一対一とは限らない。自分の視野で捕らえているだけの敵だけと思ってはいけない。

ミサトに取られたおかずを奪い返そうと、ミサトの箸だけに集中したシンジの周りは敵。

一人に集中すると・・・・・・・・・・

「もらいっ!」

ミサトはシンジから奪ったおかずを口に入れた。

もぐもぐと口を動かし慢心の笑みを浮かべる。

「酷い・・・・・・・・あっ!」

最初の言葉はミサトに向けて、最後の言葉は、自分の皿を見ての言葉。

メインのおかずが根こそぎ無い。

周りを見回すと、皆、目をそらし、もぐもぐと口を動かしている。

「・・・・・・・・・・・酷い」

ため息混じりに言う。

残されたのはご飯のみ。

小食といえど流石にご飯だけでは腹は膨れない。

それを見かねたマナは、

「んふふ・・・・・・・シンジ君、あーーん」

無気味な笑いと共にマナが、自分の箸でシンジに向けておかずを差し出している。

シンジはアスカに睨まれたためこれを丁寧に断る。

「あっ、シンジ君。私のが食べられないって言うんだ・・・・・・・・酷い・・・・・・・・・・・・」

なきそうな声で言うマナ。

「えっ?いや、そんな・・・・・・・・・・」

戸惑うシンジ。

そして、その隙を見逃さないマナ。

「えいっ!」

「んぐっ・・・・・・・・・・」

マナの箸が、シンジの口の中へ強引に突っ込まれる。

シンジは、マナに突っ込まれたから揚げ(朝なのに、何故から揚げか?は、葛城家だから)をなんとか飲み込む。

シンジは、飲み込んだ後、水を口へと流し込む。

「ちょっと!マナ!なにやってるのよ!!」

「えっ?なに・・・・・って・・・・・・」

そこで言葉を区切り、マナはからかってるような笑みを慢心に浮かべ、

「間接キッス」

アスカは、(シンジも)顔を赤くし、

「あっ、あんたは・・・・・・・・・・」

「いいじゃん、アスカはシンジとキスしたんだから」

「な、なんでそれを知ってるのよ!」

アスカが、ひく。

だが、これは、どこからどう見ても、マナがカマをかけただけだ。これに引っかかるアスカもアスカらしいが・・・・・・・

「あっ!やっぱりしたんだね!」

「なっ、・・・・・・・あっ!!・・・・・・・はめたわね・・・・・・・・・・・・」

ここで、罠と気づく。

「ならいいじゃん別」

「良くない!!」

「はい、シンジ君、あーーん」

さりげなく、レイが、マナの真似をする。

最近、レイは、よくマナの真似をし、後ろにいる。

ペンペンだったときが仲が良かったのか、姉妹みたいだ。

無表情君のレイが、喜怒哀楽のはっきりするマナのおかげで、表情も豊かになってきた。

だが、流石はマナの影響。マナのように大胆な行動までしてくるようになっていた。

無表情でも、かなりの可愛らしさを誇るレイが、表情豊かになり、大胆な行動まで取ってくると、そのギャップがレイの可愛らしさをさらに引き立てる。

流石の、可憐さを誇るアスカでも、危機を感じずにはいられない。

無論、この行動も阻止するべくアスカは動いた。

「!!!」

零コンマ何秒かの間に、レイは敵の接近に気づいた。

「えいっ!」

これまた、掛け声も、マナと同じでシンジの口へ箸を先走らせる。

それを、阻止するために、アスカは箸に向かい、まっすぐに手とうを下ろす。

だが、弾かれた。

A,Tフィールドではないなにかに・・・・・・・・・・・

「んぐっ・・・・・・・」

シンジの口にレイの箸が突っ込まれた。さくらんぼ(何故かは・・・・・・以下略)の味がシンジの口の中に広がる。

「あっ・・・・・・・・・・」

「間接キッス・・・・・・・・・・・・・」

レイが、慢心の笑みを浮かべ、言うが、暫くして・・・・・・・・

「って、なに?」  

 

 


 

 

シンジ達からは見えないが、とあるコンフォートのシンジ達葛城家が丸見えなポジションに、加持リョウジはいた。

(ふぅ・・・・・・危ない・・・・・・・・・)

加持の手には、狙撃用のスナイパーライフル(エアガン)が握られている。これを使い、先ほどのアスカの行動を阻止した。

(アスカには悪いが、これが仕事なんだからなぁ・・・・・・・・・・)

ぽりぽりと頭を掻く。  

 

「加持君、アスカ君の邪魔をしてくれたまえ」

一時間前、司令室に呼ばれた加持はそういわれた。

「はぁ?」

わけがわからない

「アスカ君の邪魔をしてくれ。私は、LRSだ。LASは悪くないが、LRSが好きだ。そのため、アスカ君と、シンジ君の仲を発展させないため、阻止してくれ」

何をいっているんだこのオヤジは・・・・・・・・・・

そう思わざるえない。

マニアが使いそうな専門用語まで使ってるし・・・・・・・・・・・

「ですが、マナはどうするんですか??」

とりあえず聞いてみる。

「大丈夫だ。LMSも好きだ。順に並べると、LRS、LMS、LASだ。LRSがベストだが、LMSでもいい。とにかく、アスカ君を阻止し、LASにさせないように」

「はぁ、」

と気のない返事をした。  

 

「さて・・・・・・・・・・」

口に出して考える。

阻止するには、エアガンじゃ限界がある。

そのため、どうするか・・・・・・・・・・・・

「!!!」

加持の頭にひらめきが走った。たとえるならば、ニュータイプが何か感じたときに出すあの白い奴だ。

加持は、早速行動に移る。

実際、その行為は危険を伴い、且つ馬鹿だ。だが、今までがシリアスだったため、これもいいかな?と思う。

加持は、コンフォートへと向かった。  

 

 


 

 

『結局、サードインパクトとは何か!!?』

キョウコは新聞をめくっていたが、いまだ、サードインパクトなんかを扱っている新聞にため息が出る。

新聞をとじ、シンジ達を見る。

こちらのほうが、数倍・・・・・・・・いや、何よりも面白い。

どうやら、今はマナが『間接キス』たるものをレイに語っている。

そして、その横では、アスカが何故か顔を赤くしながらなにやらもじもじとしている。

キョウコはその理由に気づいた。

(初々しいわね)

その姿が微笑ましく思える。

「シンジ・・・・・・・・・・」

アスカがシンジを呼ぶ。キョウコは心の中で「頑張ってと」今からの行動に声援を送った。

「なに?アスカ?」

「口、開けなさい」

「は?」

「いいから口開けなさいよっ!!」

「えっ?あっ、うん」

そして、シンジはおとなしくアスカに従い、口を開ける。

(強引ねぇ・・・・・・・まったく、素直じゃないんだから)

顔を真っ赤にしながら、恐る恐るシンジの口へとデザートであるプリンを(これは普通だろう)シンジの口へと運ぶアスカを見ていた。

そして、シンジの口に入るか否かの時に、

「父さんは許さんぞーー!!」

人影が跳びでて来、机をひっくり返した。

ちゃぶ台返し・・・・・・・・・・・・・

一同、ぽかん・・・・・・と口を開けている。

「加持・・・・・・・・・・・」

ミサトが呆れ顔で座っている。

ユイが立ち上がった。

「ユイ・・・・・・・・・・」

ユイは何もいわず、手を出してきた。

キョウコはそれに、自分専用の「一撃必殺」のハリセンを手渡す。

そして、ユイはそれを手にとると、飛び出していった。

キョウコは、ボコボコになるゲンドウの姿を見て、言葉をなくす冬月や、オペレーター三人集を思い浮かべていた。  

 

 


 

 

コーヒーの苦さを堪能しながらキョウコは目の前の光景を楽しんでいる。

「ほら、シンジ君、あーーん」

「あーーん」

「むきぃぃぃ!!なにやってんのよ!」

「いいじゃん別、えいっ!」

「えいっ!」

「んぐぅ・・・・・・・・・」

「ああーーもう!えいつ!!」

「アスカだってやってるじゃない!」

「いいじゃない別に」

そう言いながらも、シンジの口にスプーンでプリンを運んでくる。

案の定、シンジはもう、ダウンしていた。

そして、何故かその、なかに、ミサトまで加わっている。

「ふふっ・・・・・・・・・」

つい、笑みがこぼれてしまう。

今時の親なら、「近頃の若いもんは・・・・・・・」とかなんか言いうだろうが、自分の娘が男と同棲、(同居だが、キョウコから見ればすでに、同棲も同然)していても、キョウコは何も言わない。むしろ嬉しい。

走り去った加持も、殴りこみに行ったユイも、アスカもマナもレイもシンジもミサトも・・・・・・笑っている。

『家族の食卓』

その言葉の意味をなんとなくわかった気がする。

普通、日常。それら全てが、あのころの自分たちには輝いて見え、そしてそれが今、現実となって、目の前で展開されている。

優しさ、穏やかさ、嬉しさ、楽しさ、それら全てが今、この瞬間にあるような気がした。

キョウコは空を仰ぐ。

(・・・・・・・・・自分たちの子は、不幸な星の下に生まれたのかもしれない、だけど、それでも生きている。ユイは生きていれば幸せをつかむチャンスはある。と言っていた。自分たちの子は、今まさに、幸せを掴んでいるのだと思う。そうでしょ?あなた・・・・・・・・・・・・)

キョウコは、今は亡き夫に向けて静かに思った。  

 


 

 

同時刻、ネルフ司令室では、冬月が言葉も出せないほどの惨劇を目にしたらしい、  

 


 

 愚者の後書き

引越し編に入るとか嘘言ってごめんなさい。外伝書くとか嘘言ってごめんなさい。許して・・・・・

さて、どう繋げようかなーーと書いてるうちに、結局引越ししなかった、今回、次はちゃんと・・・・・・

しかも、最後無理にまとめたような形に・・・・・・・・・・まぁいいや。


アスカ:邪魔が多すぎるわ!

マナ:シンジも大変ねぇ。みんなに食べさして貰って・・・こりゃ、たまんないわ。

アスカ:そうよっ! アタシひとりでいいのよっ!

マナ:愛情が多いっのって幸せなことよ?

アスカ:ペンギンはともかく、ファーストをなんとかしなくちゃいけないわねっ!

マナ:独占欲はよくないわよ?

アスカ:シンジは、アタシんだっつーのっ!!!
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