あれからみんな帰ってきた。

ミサトは
「あれ?死んだはずじゃあ・・・?まあ、命一つ儲けたわね。」

リツコは
「おめおめと生き残るなんて・・・無様ね。」

トウジは
「なんで足があるんや?なんや夢みてるみたいやな。」

ヒカリは
「また鈴原と会えた・・・。」

ケンスケは
「あ〜あ。結局エヴァンゲリオンに乗れなかったか・・・。」

ゲンドウは
「・・・・・・・ユイ。」

ユイは
「・・・・・・・シンジ。」

キョウコは
「アスカ・・・・。」

みんな帰ってきた。
そう。シンジ一人を除いて・・・。


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少女のこころの行方

                                  
                                            byころすけ

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「アスカちゃん・・・。」
「?ママ?ママなの?」
「ええそうよ。・・・ただいま。」
ひとり呆然として世界から取り残された様になっていたアスカに
声をかけたのは、アスカが待ち望んでいたキョウコだった。

「ママ!」
「アスカちゃん!」
アスカはキョウコの胸に飛び込んでいった。
もちろんキョウコもアスカをしっかり受け止めてあげた。

「ママ。シンジが。シンジが消えちゃったの。どうすれば帰ってくるの?」
「アスカちゃん・・・。シンジくんは自分の体を保てなくなったの。それはわかるわね?」
「うん。」
「つまり逆に言えば、シンジくんがATフィールドを保てれば、そこにシンジくんは存在で
きるのよ。」
「それってどうすればいいの?」
「まだわからないわ。」
「わからないって!」
「聞いてアスカちゃん。私もユイも帰ってこれなかった。エヴァンゲリオンに取り込まれて。」
「・・・・・。」
「シンジくんの場合、本人がどこに行ったかわからない分、余計に難しいわ。」
「・・・・・いるよ。」
「えっ?」
「シンジはいるよ。」
「ア、アスカちゃん?」
「シンジはずっと私の側にいるって言ったもん!」
「・・・・そう。そうね。シンジくんはきっとアスカちゃんの側にいるわね。見えないだけで。」
「当然じゃないママ。シンジは側にいるのよ。」
「じゃあ、シンジくんが見えるようになるためにもこれから頑張らないとね。アスカちゃんにも
協力してもらうわよ。幸いユイも帰ってきたみたいだしね。」
「ええ。ぱぱぱーっと済ましてあげるわよ!」


「ユイ」
「あなた・・・。」
一方ゲンドウとユイは久しぶりの再会をはたしていた。
「すまなかったな。」
「いいえ。もう済んだことです。」
「結局、私は君にシンジのことを託されたのにこんな結果になってしまった。」
「あなた。シンジは素晴らしい子に育ちましたわ。それにまだシンジが死んだわけではないのよ。」
「そうだったな。私は良い父親ではなかったかもしれんが、今からでも遅くないな。」
「ええ。シンジもあなたのその言葉を聞いたら喜びますよ。」


それからシンジのサルベージ計画がスタートした。
ユイとキョウコとリツコ。
この世界最高の頭脳をもつ3人がチームを組んだとき、このシンジのサルベージ計画は容易に
成功すると楽観視された。が・・・。
1年・・・・
2年・・・・
3年・・・・
4年・・・・
5年・・・・
これだけの月日が流れてもシンジのサルベージは成功しなかった。
その間、アスカはキョウコの助手として計画に無くてはならない存在になっていた。


「ママ・・・。シンジのサルベージ成功するのかしら。」
「アスカちゃん。成功するわ。みんなそう信じてる。」
「だって・・・。もう5年だよ。シンジとの年の差がどんどん広がっちゃった。ユイさんが年を取っ
てなかったことからシンジだってきっと年をとってないわ。このままだとシンジが帰ってきても私
のこと見てくれなくなるわ。そんなの嫌よ。」
「アスカちゃん・・・。」
「私にはシンジが側にいるってわかるの。心でわかるって感じで手で触れるわけじゃないけど。でも
帰ってきて今の私を見てシンジが離れて行っちゃったらどうしょう。そんな不安が段々私を追いつめ
るの。」
「アスカちゃん。今のアスカちゃんはとっても綺麗よ。シンジくんこそ早く帰ってこないとアスカち
ゃんに捨てられるかもって焦ってるわよ。安心しなさい。もうすぐよ。もうすぐシンジくんは帰って
これるわ。」
「えっ?」
「今日ね、今までどうしてもクリア出来なかった問題が解決したの。」
「えっ?ほんと?」
「ええ。ユイが解決したって教えてくれたわ。まあ、ユイに先を越されたのはちょっと悔しいけどね
。アスカちゃんが喜ぶことを思えばなんてことないわ。」
「じ、じゃあいよいよシンジのサルベージが始まるの?」
「ええ。準備なんかがあって1ヶ月後に計画実行よ。」
「・・・・シンジが帰ってくるんだ・・・・」
「ええ。きっと成功させるわよ。」
「そうね。ママ。きっと成功させてみせるわ。」


アスカにとって1ヶ月という時間は長く感じる時間だった。
不安と期待。準備の忙しさ。
そして遂にその日がやってきた。


「アスカちゃんいいわね?」
「はい。ユイさん。」
「シンジはアスカちゃんの側にいるんでしょ。もし側にいなかったら許さないわよシンジ。こんな可
愛い子を泣かせるようなことする子は。」
「ユイさん。シンジはきっといます。私の側に。だから始めましょう!」
「そうね。私も自分の息子を信じるわ。」
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
「シンジ!どうして帰って来ないのよ!私の側に居たんじゃないの!」
「アスカちゃん・・・。」
「どうして!どうしてよ!」
「シンジがアスカちゃんを泣かせる様な子だったなんて母さんがっかりだわ。理論上は帰ってこれる
はずよ。早く帰ってきなさい!」


「シンジ・・・・」
アスカは一人芦ノ湖のほとりに来ていた。
シンジが消えた海に景色が似ていたから。
ただそれだけの理由だった。
「シンジはもう帰ってこないのかな・・・」
アスカはただ一人膝を抱えて泣いていた。


「・・カ。」
「・スカ。」
「ん?いけない。寝ちゃってたわ。」
アスカはいつの間にか寝てしまっていた。太陽はとっくに沈み、暗い中一人アスカが居た。
「はぁ〜っ。今回は失敗したけど、これで諦めたらシンジに一生会えないんだもんね。頑張らない
と。私はやるわよ!待ってなさい!バカシンジ!」
「アスカ。」
「ん?だれ?」
「僕だよ。」
「えっ?」
振り向いた先にいたのはシンジだった。
「シ、シンジ?なんで?だってサルベージは失敗したんじゃ・・・。」
「じゃあ、僕は幽霊なのかい?」
「だ、だって、どう見ても私と同い年にみえるわよ?シンジは年を取ってないはずじゃ?あんた誰?」
「だ・か・ら・碇シンジだって。信じてよ。」
「本当にシンジ?」
「うん。本当に僕だよ。」
「本当に本当にシンジ?」
「本当に本当に僕だよ。」
「本当に本当に本当にシンジ?」
「本当にほんと・・・ってもう。僕は僕だよ。なんだったら研究所に電話して母さんに聞いてみれば
いいよ。」
「もう!そんなことしないわよ!シンジ!」
「アスカ!」
「お帰りなさい!シンジ!」
「うん。ただいまアスカ!」
・
・
・
・
・
気づけばアスカは芦ノ湖のベンチで一人腰掛けていた。目の前では夕日が沈もうとしていた。
「・・・・。あ〜あ。夢だったんだ・・・・。しっかり涙の跡なんかつけちゃって。格好わるいな。
シンジぃ〜。寂しいよ〜。あいたいよ〜。」


・・・シンジぃ〜。寂しいよ〜。あいたいよ〜。」
そう言って泣いてるアスカの背中はすごく小さく見えた。
僕はそんなアスカを見て、感じて、今の自分にすごく腹が立っていた。
今日のサルベージが失敗したのは、僕のせいだった。
帰った僕をアスカが受け入れてくれるか怖かったんだ。
だから計画実行時にアスカの側から離れた。
自信がなかったんだ。
でもそれがアスカをこんなにも傷つけてしまった。
僕はまた同じ失敗を繰り返すところだった。
ごめんよアスカ。
もう僕は逃げないよ。
アスカが許してくれるなら。
こんな僕でもいいなら。
これから僕はずっとアスカの側にいるよ。
もちろん見える僕が。


「ユイ!」
「なに?キョウコ。私は今日の失敗を糧にさらなる実験中で忙しいのよ。」
「みて。サルベージ装置の質量計測機の数値が上がっていくわ!」
「ど、どういうこと?さっきは失敗したのよ!」
「で、でもこの数値の示す意味は・・・」
「「シンジ(くん)!」」



「さっ。そろそろ帰らないとママが心配するわね。またしばらくここに来ることもないわね。」
そう言ったアスカの耳に誰かが近づいてくる足音が聞こえた。
「(げっ。こんな時間にこんなところに1人で居たのまずかったわね。変質者かしら?とっとと逃げ
ないと。何されるかわかったもんじゃないわね。)」
そう思ったアスカは足音とは反対の方向に向かって走り出そうとした。

「アスカ・・・。」
「えっ?」
走り出そうとしたアスカに聞こえた声は・・・・
「アスカ。もうこんな時間だよ。心配だから迎えに来たんだ。母さん達を振り切るの大変だったんだ
よ。さあ。僕でよければ一緒に帰らない?」
「シ、シンジ?」
「そうだよ。僕だよ。」
「・・・これは夢ね。またこんな夢見ちゃってる。妙にリアルなのはある意味辛いわね。そろそろ起
きないといけないわね。」
「プッ!なに自分のほっぺたつねってるの?」
「あ、あれ?なんで起きないの?しかも痛いし?」
「それは痛いだろうね。つねってるんだから。ほどほどにしないと赤くなっちゃうよ。」
「え?シンジ?ほ・ん・も・の?」
「そうだよ。」
「だって!シンジが帰ってきた!と思ったらいっつも夢なんだもん。私そんな夢みるの辛いけど、見
れないともっと辛くて・・・もうどうしていいかわかんないけど・・・。でも、でも!」
「アスカ・・・・。」
「もう。そんな夢見なくていいんだよね?」
「うん。」
「もう消えたりしないよね?」
「うん。」
「もうどこにも行ったりしないんだよね。」
「うん。アスカが良ければ。」
「良いに決まってるわよ!シンジ!」
「アスカ!」
・
・
・
・
・
「ねえシンジ。」
「なに?」
「どうしてシンジはちゃんと年をとってるの?」
「う〜ん。僕にも詳しいことはわからないんだけど、母さんが言うには思ってる人の違いなんだっ
て。」
「どういうこと?」
「母さんもキョウコさんも自分の子供を思う心が強かった。だから子供たちが知ってる姿で帰ってき
た。僕はアスカの望む姿で、アスカと同い年の姿で帰りたかった。そういうことらしいんだ。」
「そうなんだ。やっぱりシンジは私の側にいたんだ。」
「うん。アスカの不安は知ってるよ。だから僕もアスカと同い年の姿で帰ってこれて嬉しいんだ。こ
れから僕と一緒に・・・・。」
「えっ?」
「そ、その〜。帰ってきていきなりなんだけど、ぼ、僕と結婚してほしいんだ!」
「はぁ〜っ?」
「はぁ〜って・・そりゃないよ。いくらなんでも・・・」
「馬鹿ね!今更って言ってるの!」
「えっ?」
「シンジから言ってくれたのは嬉しいけど、正直期待してなかったし。私はもうシンジと離れるつも
りなんて無いってこと!私から言うつもりだったからとっさに反応できなかっただけ!」
「じ、じゃあ・・・」
「うん。もう離れてっていってもずっと一緒にいるから。」
「僕だって。」


「「これからは、ずっと一緒に・・・・。」」


Fin

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後書き

ころすけです。

幸せ完結を目指す私が、何を思ったか前回は幸せな結末じゃなかったんですな。
これは納得いかん(自分で書いときながら・・・)と今回の作品になりました。
まあ、さすがに前回の作品の最後のマナの言葉通りにみんなでお祭りというわけにはいかなかったん
ですが・・・
(書こうとしたんですけどね・・・私の力ではまだ無理でした・・・ハハハ・・・はぁ〜)


マナ:シンジも同じように歳をとって帰ってきたんだ。

アスカ:よかった。アタシだけ歳とったら、どうしようかと思ったわ。

マナ:アスカだけ、どんどんおばさんになっていくのも面白かったかもね。

アスカ:おば・・・面白くなーいっ!

マナ:でも、15年くらい経っても、まだ20代だからいいじゃん。

アスカ:そんな歳になったらおしまいよ。29だなんて。

ミサト:なーにか言ったぁーかーしらぁー?(ーー;

アスカ:(@@) い、いえ、なにも。

ミサト:29が、どーかしーたーかしーらぁー?

アスカ:えーん。ミ、ミサトが、すっごく恐いのぉ・・・。(TT)

マナ:後は任せたわね。さよなら。(ピュッ!)

アスカ:アッ! ずるっ!!

ミサト:なーにーがー、おしまいだってぇぇっ?

アスカ:いや、その・・・あはははは。(ーー;;;;;;
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