I`ll fall in love.

                           by 釘人



「なんでアンタがここにいるの?」

それが、彼女の放った最初の言葉だった。


第十五使徒との交戦で自我崩壊を起こしたアスカは
戦闘終了後の医師らによる懸命な処置を施されたが、
アスカが意識を戻す事は無かった。

医師によれば、長期の治療によって回復する可能性は十分にあるが、
それは、彼女が最も必要とする人間でなければ駄目だった。

過去からの経緯からA10神経接続時のログなどから導き出された人物、
それは彼女が忌み、また屈辱を受けた碇シンジであった。

シンジが治療を引き受けてから数ヶ月が過ぎていた。

その間彼は毎日彼女のもとへ足を運び、話し掛けた。


「アスカ、今日はとってもきれいな青空だよ。」

「アスカ、花買ってきたから飾るね。」

「アスカ、早く元気になってね。」

「アスカ・・・」

「アスカ・・・」

「アスカ・・・」


無言の相手に対して話し掛けるというのはとても辛い事だったが、
彼はあきらめなかった。
自分を必要としていると聞かされた事が、励みになったのかも知れない。


そんなある日、アスカは突然ベッドから起き上がった。

いつものように見舞いに来ていたシンジは驚くと同時に喜んだ。


「アスカ、気がついたんだね・・・、良かった。」

「・・・・・・・・・・・。」

「アスカ?」

「なんでアンタがここにいるの?」

「え?アスカ?」 「なんで、アンタがここにいるのよ。」 「ア、アスカが早く元気になってもらえるように毎日きてたんだよ。」 「・・・出てって。」 「え?」 「出てけって言ってのよ、さっさと私の前から消えなさい!!」 シンジは最も恐れていたことが現実になってしまったことに失神寸前だった。 誰からも必要とされなくなる。 シンジの最も恐れていた事が、現実になった。 うつむきながら病室を出るシンジ。 その姿を恨みのこもった眼差しで睨みつけるアスカ。 (これは、わかっていた事じゃないか・・・。  アスカが僕を必要とするハズは無い。  たとえ恨まれることはあっても好かれることはない、  僕は・・・何を期待していたんだろう) (シンジに助けられた、また、あのバカシンジに助けられた。  私の醜い姿をまたあいつの前に晒した・・・。  哀れだという理由で、また屈辱を受けた・・・。) その夜、シンジはなかなか寝つけなかった。 (誰にも必要とされなくなった・・・。  いつかは来ると思ってたけど、こんなに早く来るなんて  思わなかったな・・・。  僕が、あんなに心配して、毎日看病したのも  誰かに必要とされたくてやっていたのかも知れない・・・。  それならアスカが僕を恨むのも無理は無いか。  でも、表面だけでも感謝の言葉ぐらい欲しかったな。  アスカは、いつもそうだった。  僕が、どんなに一生懸命やったことでもアスカは無駄にした。  僕が、どんなにアスカを思ってもアスカは無視していた・・・。    ・・・ああ、そうだったのか。  僕がアスカを好きだって思っていたのは、  結局誰かに必要とされてれば良かったからなのか。  最低だな・・・。    明日、またアスカのところへ行こう。  怒鳴られるかもしれないけど、話を聞いてもらって・・・謝ろう。  もう、僕は必要とされなくったって大丈夫かもしれないから。  でも、もしも・・・アスカが答えてくれたら、  その時は・・・本当に、) 同じ頃、アスカもまた眠れずにいた。 (また、同情された・・・。  また、屈辱を受けた・・・。    自分を壊そうとしてたのにまたシンジに助けられるなんて  私も馬鹿ね。  シンジは・・・嫌い。  ミサトもファーストもヒカリもリツコも加持さんもパパもママも・・・  みんな嫌い。  どんなにあいつに優しくされても、それはきっと本当の優しさ  じゃない。  結局シンジも私が可哀相だから。    いつからか、私があいつの事を意識してて、  好きだって気づいた時もあいつは気づいてくれなかった。    私が使徒に汚されてた時も、シンジは助けてくれなかった。    ・・・ああ、そうだったのね。  私がシンジの事を好きって思ってたのは、  結局誰かに必要とされてれば良かったからなのね。  最低ね・・・。  明日、シンジがまた来てくれたら、  怒るかもしれないけど、話を聞いてもらって・・・謝ろう。  もう、私は必要とされなくっても大丈夫かもしれないから。  でも、もしも・・・シンジが理解してくれたら、  その時は・・・本当に、)      ((好きになれるかもしれない。))                          fin. -------------------------------------------------------- あとがき えー、これは、巷で噂の「未LAS」というやつです。 LASまであと一歩、というか続きがあるならそこからラブラブ   という代物です。 --------------------------------------------------------


マナ:この作品は、未LASね。続編では、非LASになるのね。

アスカ:ならないわよっ!

マナ:この後、再開した2人は喧嘩しちゃうのよねぇ。そこにマナちゃん登場っ!

アスカ:喧嘩なんかしないわよっ!

マナ:言い切れる?

アスカ:だってシンジもアタシも自分の気持ちに気付いてるじゃないのよっ!

マナ:あっまいわねぇぇぇ。

アスカ:どうしてよっ!

マナ:統計的に、シンジはともかくアスカは、思ってることと口に出すことが違うのよねぇ。

アスカ:うっ・・・。

マナ:アスカに傷つけられたシンジを、わたしが慰めてあげて、間髪入れずゴーールインっ!

アスカ:勝手なこと言わないでよっ。ぜったい喧嘩なんかするもんですかっ!

マナ:無理無理。(^O^

アスカ:しないって言ってるでしょうがっ!

マナ:はいはい。(^O^

アスカ:むぅぅぅぅ・・・。(ーー
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