最近、シンジの様子がおかしい。

なんだか四六時中、そわそわしている。

そしてなぜか、私との接触を極力、避けようとしている。

たまにまともに話したかと思えば、なんだか、声が上ずっているし、目の焦点も定っていない様子。

そして大抵、適当に話をはぐらかしては、そそくさとどこかへと行ってしまう。

そのくせ、日常の何でもない時に、やけに私のほうを凝視している。

シンジは、私がそのことに気づいていないとでも思っているのかもしれないが、

はっきり言ってバレバレである。

ちらっと、私もシンジのほうに目をやってみると、視線が合った瞬間、シンジは目をそらし、その場を立ち去る。



・・・・・こんな調子が、かれこれ一ヶ月近く続いている。

そこで私は、ある仮説を立ててみた。








シンジは、私のことが好きなんじゃないだろうか、と。







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Do you love me?     

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一度、そういう仮説を立ててしまった以上、確認せずにはいられなくなってきた。

一旦気になったことは、徹底的に突き詰めて考えたくなってしまうのが、生まれ持った私の性分なので、

こればっかりはどうしようもない。


でも、どうやって確かめたらいいんだろう?

答えはカンタンだ。

本人に直接、聞けばいい。

果たしてシンジが正直に答えるかは微妙だが・・・まあやってみなければわからない。


「ただいまー」


そんなことを考えているうちに、シンジが買い物から帰ってきた。


「チャ〜ンス」

私はニヤリと笑みを浮かべ、玄関に足を運ぶ。

「シンジぃ。お帰りなさい。」

少し甘えた声で言ってみる。これももちろん、シンジの反応を探るためだ。

「う・・うん。」

シンジは一瞬私の顔を見て、すぐに俯いた。上々の反応。

さらに私はシンジの方へ詰め寄った。

「ねぇシンジぃ、ちょおっと聞きたいコトがあるんだけどぉ・・」

またも甘めの声を出しつつ、自分の顔をシンジの顔に近づける。

「えっ・・・ちょっ・・ちょと・・」

焦るシンジに構わず、あとちょっとで鼻と鼻が触れそうなとこまで近づけてみた。


さて、シンジの様子は・・・

顔・・・著しく紅潮。

目・・・大きく見開かれ、ぱちくりしている。

口・・・半開きで、ぱくぱく動いている。


どうやらこれらも、私の仮説を裏付ける根拠となりそうだ・・・

って、いきなり女の子に顔近づけられたら、どんな男の子でもそうなるかも・・まあ、それは置いといて。


「ねえ?聞いてもいいでしょ?」

少し上目遣いで尋ねてみた。

「な・・なに・・を・・・?」

かろうじて声を絞り出してるみたい・・・ちょっと可哀想になってきたが、ここで退いては女が廃る。

私は直球勝負に出た。


「アンタ、アタシのこと、好き?」


「なっ!!???」

シンジの体がびくっと揺れた。

と同時に、顔が茹でダコのように真っ赤になった。

更に追いうちをかける私。

「ねえ・・・・答えて?」

懇願するように言ってみた。

「ななな・・なんできゅきゅ急にそそ・・そそんなことを・・・」

ろれつが回っておらず、汗まで流しているシンジ。

「・・・知りたいから。」

シンジの目を見据えて言う。

「・・・そ・・そんな・・」

「お願い・・・・ねっ、シンジ?」


・・・・・・約三十秒ほど、無言のまま、私達は見つめ合った。・・・超至近距離で。

そして。

「わ・・・わかったよ・・・」

シンジが折れた。

「本当?」

「う・・うん・・言うよ・・言うから・・・顔、離して・・」

それは決死の嘆願だった。

私は顔をシンジから離すと、シンジの答えを待った。

シンジは胸に手を当て、はあはあ息をしている。

相当動揺させてしまったらしい。

やがてシンジは、少し落ち着いたらしく、口を開いた。

「・・・・言わなきゃ・・・ダメ?」

「ダメ。」

「どうしても?」

「どうしても。」

「うう・・・」

もはや半泣きのシンジ。しかしここまで来ては、もう引き返せない。

「早く言わないと、もっかい顔近づけるわよ。」

そう言って私はニヤリと笑った。ちょっとずるいかな・・・

「わ・わかったよ・・」

どうやらシンジも諦めたようだ。


・・・若干の、沈黙の後。


「・・・こんな形で言うことになるなんて・・思わなかったけど・・・

・・・・・・・好きだよ、アスカのこと・・・」


「・・・・・・ホントに?」

コクリ、と頷くシンジ。


やっぱり・・・・私の仮説は正しかった・・。

・・って、アレ?なんか・・・私・・


・・なんか急に・・ドキドキ・・してきたんだけど・・・


「ねえ・・・・アスカは・・どうなの?」

下を向いていたシンジが、震えそうな声で言った。

「へっ!?・・な・・なにが?」

思わず、動転する私。

「だから・・ア、アスカは・・その・・僕のこと・・どう・・思ってるの?」

「えっ・・・・」

私は絶句した。

頭の中が真っ白になってきた。

あれ?

あれ?

なんでだろ?


“アンタはただの同居人よっ”

あれ?

“それ以上でも、それ以下でもないわっ”

あれ?

・・・言うことは、もう決まっているはずなのに・・・なんでだろ、言葉が口から出てこない・・・


「ねえ・・僕もちゃんと言ったんだ、だからアスカも・・・」

急かすシンジ。さっきとは立場が正反対になってしまった。

「え・・・えと・・」

おかしい。

胸が苦しい。

なんで・・・・

ひょっとして、私――――――・・・・


暫く沈黙した後、私は言った。

「・・・・・・・・・・・秘密っ!!」

「ひ・・秘密?!?」

唖然とするシンジ。

「それじゃアタシ、着替えるからっ」

そう言って、私は自分の部屋に駆け込んだ。

「ちょ・・ちょっと!ずるいよそんなのっ!!アスカっ!!」

シンジの声にも耳を貸さず、私はドアを閉め、ベッドに倒れ込んだ。

がばっと、枕で頭を覆い、耳を塞いだ。

「・・・・・・・!」

シンジが何か言いながら、私の部屋のドアをノックしている。


私は何も答えず、ただただぎゅっと、枕で耳を塞いでいた。


・・・・まもなく、声も、ノックの音もしなくなった。

シンジが諦めたのだろう。


私は、ゆっくり上体を起こした。

・・・・どうしたんだろ、私・・・

まだ高鳴っている心臓。


・・・・そもそも、なんで私・・・あんなにシンジの気持ちが気になったんだろう?


それは・・自分の立てた仮説を確かめるため・・・


本当に?


一度気になったことは、突き詰めて考えないと気がすまない性格だから・・・


本当に?



・・・・・・・ひょっとして、私は・・・・







・・・・・どうやら私は、また一つ、仮説を立てなければならないらしい。














私は、シンジのことが好きなんじゃないだろうか、と。














fin.



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<あとがき>

こんにちは。紅氣です。
いやはや、何ヶ月ぶりかわからないくらい、久しぶりの投稿です。
実に、変な話でしたねえ(笑
終わり方も中途半端だし・・・
この話の続編は、ありそうですが、ありません。
もうこの後の話は、書くまでもない・・・ということで。

ではでは、こんな拙作を最後まで読んで下さった素晴らしい読者様に、心より感謝の意を申し上げます。


本当に、どうもありがとうございました!!


マナ:なに、変な仮説たててるのよっ!

アスカ:アタシの説は正しかったじゃないっ。

マナ:これは、色仕掛けよっ! 絶対、シンジは色仕掛けで落ちたのよっ!

アスカ:色仕掛けじゃないでしょうがっ! ま、アンタだと色仕掛けすらできないでしょうけど。

マナ:な、な、なんですってーーーーーーーっ!

アスカ:しかーも、アタシの天才さは証明されたわっ!

マナ:どこが天才なのよっ!

アスカ:だって、2つ目の仮説も正しかったのよーーーっ!\(^O^)/

マナ:それって、ただ鈍感だっただけなんじゃ・・・。(ーー;
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