『緊急警報をお知らせします』





暑い・・・・上を向けば青く澄み切った空が此処を見下ろしている。
気温はハッキリとはわからないけど、すくなくとも赤の世界よりは暑い。






『本日12時30分東海地方を中心とした関東中部全域に
特別非常事態宣言が発令されました』

『住民の方々は速やかに指定のシェルターへ避難してください。』

『繰り返しお伝えします――――』






碇シンジは、そこにいた・・・。









(戻って・・・来れたんだ)





I wish  that I could  turn  back  time

〜二度目の世界〜













シンジは嬉しさを思いっきり身体全体で表現したかったが、
周りには誰も居らず、一人でそんなことをやることがバカバカしくて
やめたという理由が半分。もう半分はこれから起こる戦いのことで
いっぱいいっぱいな気持ちがあるからだ。



ヒュン!ヒュンヒュン!!



その時、あたりの空気が乱れ、突風と共に巡航ミサイルがシンジの上を飛んでいった。




「うわぁっっ!!」




ドンッ!!ドドーンッ!!!!!




巡航ミサイルが何かにぶつかって爆発したようだ。
爆発の煙の中から巨大な影がその姿を覗かせた。


(あれは!!サキエル!!!)


そして、またミサイルが打ち出される。
しかし先ほどの攻撃はむなしくも効いていない様子である。


(むだだ!そんなんじゃ・・・ATフィールドは破れない)


案の定、使徒には無意味になった攻撃。
使徒はVOLTを掴むと思いっきり地面に投げつけた。
運が悪いのか狙ったのか、それはシンジに向かって一直線に向かってきた。



パキィィン!!!



飛んできた残骸がぶつかる瞬間、シンジは手を残骸に向けて伸ばしていた。
砂煙が去って行った。
するとシンジの目の前には赤・・・というよりは朱色に染まった八角形のものが現れていた。
それは人々がATフィールドと呼ぶもの。

それを使えるのは人類の敵、使徒と人型汎用決戦兵器である
人造人間エヴァンゲリオンだけと言われている。

シンジはリリスの力を持っているためATフィールドが使えるのだ。
もちろんシンジはそのおかげで無傷で済んだ。



キキーーッッ!!



「お待たせ!!!碇シンジ君ね?乗って!早く!」


青のルノーに乗って颯爽と現れたのは、写真に写っていた女性。
前の世界ではシンジの保護者役をかってでた人である。
その無能さは天下一品とも思える人だった。


「ありがとうございます。葛城さん」


葛城と呼ばれた女性は運転に集中しているのでシンシの方を見ずに返事をした。


「いいのよ〜。こっちこそごめんね。遅れちゃって・・・」

「いえ、いいんですよ。いろいろ考え事したかったし」

「よっと・・・・・。しっかりつかまっててね!!!!!」


葛城はアクセルをおもいっきり踏んだ。


そう・・・シンジは考えていたのだ。これからどうするのか。エヴァに乗るしかないのか・
・・・・・いや・・・そのために戻ってきたのだと・・・。



「国連軍の湾岸戦車隊も全滅したわ・・・・・・。軍のミサイルじゃ
何発撃ったってあいつにダメージを与えられない」

「・・・・・・・そうですか」

「・・・気になったりしないの?アレがなんなのか・・とかさ」

「いえ。特には・・・」

「・・・状況のわりには落ち着いてるのね」



もう今更気になったりはしない。この世界で彼ほど敵の詳細を知っているものは居ないのだから。



「ところで、さっきから戦闘機がどんどん離れていってますよ」

「えっ!!マジ!?やばい、伏せて!!!」


















発令所
「わははははははは!!!!」


嫌味の混じった笑い声が響いていた。




「見たかね!!?これが我々のNN地雷の威力だよ!!」

「これで君の新兵器の出番はもう二度とないというわけだ!!!」



「電波障害のため、目標確認まで今しばらくおまちください!」


なにやらキーを叩いているオペレーターの一人が声を上げる。


「あの爆発だケリはついている!!」


大きな画面に町の図が映し出される。
その一箇所だけが大きく跳ね上がった。


「!!爆心地に高エネルギー反応!!」

「「「!!!!」」」

「何だとっ!!」


その時別のオペレーターの顔が驚きに変わった。


「!!一瞬だけですが、反応が二つ現れました!!!」







「!!!!!」






「しかも消えたほうのエネルギー体は
現在進行中の使徒の比ではありません!!!」




その報告を聞いていた人、全員が驚きの顔になり声のするほうを見る。


そして発令所は静まり返ってしまった。














地上
葛城はシンジをかばう様にして覆い被さっていた。
しかしいくら時間が経っても衝撃が来ないので葛城は顔を上げて外を覗いた。


「あ、あれ?なんかここまで来なかったみたいね・・・。あは、あはははは・・・」



(結構便利だなやっぱり・・・ATフィールドは)



シンシは咄嗟にATフィールドを張っていたのだ。
そのおかげでここまで爆風は来ずにかすり傷すらない。
ルノーもピカピカのままそこにあった。



「さぁて、行きましょうか」

「はい。葛城さん」

「あ〜・・・ん゛〜・・・。なんか堅苦しいわね。
“葛城さん”だなんて・・・。ミサト・・・でいいわよ♪」

「それじゃあミサトさん」

「よぉ〜し!それじゃ、レッツゴー!!」



ミサトはそう言ってローン33回のルノーのアクセルを思いっきり踏んだ。


「!!どわっっっっ!!!!!!!!!」


そんなことをいきなりされたら衝撃でシートに押し付けられるのは必然である。















本部
カッ、カッ、カッ、カッ、カッ
       
 てく、てく、てく、てく

ヴィーン    プシュー 
 
   ガーーー




「・・・・・・。おっかしいなぁ〜」


ミサトが手に持っている地図を見ながらぼやく。


「ミサトさん」

「ん?なーに?」

「さっきもここ通りましたよ」

「・・・・う゛ぅ・・。・・・でも大丈夫!システムは利用するためにあるのよ♪」

「迷ったんですね。早い話・・・・」





シンジとミサトは此処ネルフ本部に到着してミサトにエヴァのところまで
連れて行ってもらおうとしていたのだが、
あろうことかミサトの方向オンチさで道に迷ってしまったのである。

同じ道を何回も通りいいかげん飽き飽きしてきていたシンジは、親切心でミサトに教えてあげた。


「はぁ〜・・・・。ミサトさん、こっちですよ、こっち」

「え?あ、あぁ〜そうそう!此処だわ〜」


目的のエレベーターを発見し乗り込もうとしたその時・・・。

カシュ!


「う゛・・・。あ、あらリツコ・・」

「何をしてたのかしら、葛城一尉。時間も人手もないのよ」

「ごめーん!まだ不慣れでさっ!」


顔の前で手を合わせる。


「ふぅ〜・・・・・。で、このコが例のサードチルドレン?」

「ええ。マルドゥックの報告書による第三の適格者よ」

「そう。よろしく碇シンジくん。私は
ネルフ技術一課E計画担当博士・・・赤木リツコよ。リツコでいいわ」

「よろしくおねがいします。リツコさん」

「いらっしゃいシンジ君。お父さんに会わせる前に、
見せたいものがあるの」


リツコは自慢?の金髪をなびかせてエレベーターに入っていった。
それに続いてミサト、シンジも入っていった。












発令所
使徒進行中であってかかなり重苦しい雰囲気に包まれていた。


「司令!!使徒前進!強羅最終防衛線を
突破!!」

「進行ベクトル5度修正。なおも進行中!」

「予測目的地、第三新東京市!!」


そこまで聞くと司令は全員に向かって命令をくだす。


「よし!総員第一種戦闘配置だ!」

「「「「「「はっ!!!」」」」」」


司令はきびすをかわすと一人の初老の男に話しかけた。


「冬月・・・・・・・・・後を頼む・・・」

「ああ」


司令は手元のボタンを操作すると下に下りていった。





(3年ぶりの息子との対面か・・・・・・)
















ケージ
エレベーターが止まり、暗闇の中を歩いて行く・・・・。
その間に第一種戦闘配置も発令され、緊迫の渦にある発令所。
以前はこれから起こることもまったくわからず、のほほんとしていた
シンジだが、彼はこれから起こることのすべてを知っている。世界の終結までの道を・・・・・。
シンジは目を真剣なそれに変えていた。運命の始まりを思って。


「気をつけて此処は暗いから・・・」

(母さん・・・・・)


パッ!!

明かりが一気についた。彼の目に飛び込んできたのは、
最後の戦いでサードインパクトの原因となったそれ。
自分の母の魂が入った器。これから自分が乗る物。そして、
未来の運命を担っているエヴァというもの・・・。


(また、会えたね)

「これが父さんの仕事ですね」


確信めいたセリフ。疑問など微塵も感じられない。


「そうだ」


声の主はエヴァよりも上からする。そりゃあスピーカーからだもんな。


「父さん・・・・」

「久しぶりだな、シンジ・・・・」


(僕は・・父さんを許す気は無い。でも僕は“みんな”を救うんだ!戦自以外だけど)


「・・・出撃」

「出撃!?そんな、零号機は凍結中でしょ!?・・・・まさか初号機!?」

「他に道は無いのよ」

「レイは今入院中でしょ!?パイロットがいないわよ!!」

「さっき届いたわ」

「・・・・・・・マジなの?」

「ええ」

「あの綾波レイでさえシンクロするのに七ヶ月も
かかったんでしょ!?それを今来たば――――」


その続きをシンジは制した。


「ミサトさん。僕は乗りますよ・・・エヴァに。僕はそのために此処に居るのだから」


その言葉を聞いた人々は驚きを隠せなかった。
父も、リツコも、ミサトも・・・。ありえないのだ。
今来たばかり、見せられたばかりなのにこの少年は此処のために
戦おうとしている。恐怖で乗らないと言うのが普通なのだ。


「よく言ったわシンジくん。では説明をします」

「はい」

「ではまずエントリープラグに入ってちょうだい」


シンジは一歩ずつ、思いを膨らませて、一歩・・
・また一歩・・確実に踏みしめて歩いて行く・・・。


(僕は・・・・もう負けない、逃げない・・・・)


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