はぁはぁはぁ・・・
   一人の少年が白い廊下を走っている。
   廊下の壁には「廊下を走らないでください」と張り紙があるが、少年はそんなものが張ってあるわけがないかのように急いでいる。
   いつも少年がこういう決まりごとを破るわけではない。
   どちらかと言うと少年は守る方だ。
   その少年の服装は白い半そでのシャツに黒い長ズボンを履いている。どうやらまだ学生のようだ。
   顔は中性的で身長はそれほど高くはないが少年の今の表情を見れば誰でも一瞬は心を動かされるはずだ。
   現に先ほどすれ違った看護婦は未だに顔が赤い。
   そんな笑顔が似合う少年だった。
   少年は息を切らしながらも目的地である303号室に着いた。
   扉を開け、そして叫んだ。
   一番大事な人の名前を。
   「アスカ!」 





      「好き






   見知らぬ白い天井、白いカーテンから漏れる日光、どうやら外はいい天気のようだ。
   少女は目覚めた。
   少女の特徴は赤みがかった金髪、蒼い目、白い肌、長い間目覚めず眠っていたため少々やせているが美の女神であるヴィーナスの寵愛を受 
   けたかのように美しかった。
   少女は眠っている間夢を見ていた。
   夢の中では白い空間のなか登場人物は二人。
   一人は言うまでもなく本人。
   二人目は蒼い髪、赤い目、夢を見ている本人よりも白い肌、学生服着ていた。
   その少女の名前は綾波レイ。
   同じようにエヴァのパイロットで憎んでいた少女だった。
   レイは夢の中で自分の正体、サードインパクトの真実を語った。
   初めは聞く耳を持たなかったが、自分とレイしかいないためレイの話しを聞くしかなかった。
   それを聞いていくうちにレイがいかにシンジのことを好きだったかを知り、同時に自分の本当の気持ちを知った。
   初めはレイが話し少女が聞いていたが、時間がたつにつれて少女が自分の事を話すようになり、少女はもう一人の親友を手に入れた。
   少女は目覚める事を決心すると、蒼い髪の親友は薄れていき最後に「アスカが望めば私はいつでもそばにいる。」っと。
   親友が消えた後、少女はもう1つの決心を心に決めた。
   いつのまにか涙を流していたがこれが最後の涙と自分に言い聞かせながら涙をぬぐった。
   その時、病室の扉が開き、自分が一番望んでいた人とその声を聞いた。
   「アスカ!」
   少年は息を切らせながらもいつもの微笑を浮かべていた。
   「あんた誰。」
       ・・・アタシにはアンタに好きって言う資格がないから。






   「記憶喪失ですね。」
   医者は無情にもそう告げた。
   「どうしてアスカが?」
   医者に掴みがかる勢いで医者に聞いた。
   「彼女は過去自分の殻に篭ったことがあり、今回もその可能性が強かったと思われます。しかし今回は違った。」
   「だったら・・・。」
   ばたーーーん。
   突然、扉が開いたと思うとミサトがまさに鬼の形相で入ってきた。
   「先生、アスカが記憶喪失って本当ですか?」
   医者はミサトの勢いで椅子から転げ落ちていた。
   「コホン。」
   医者は咳払いをした後、説明をし始めた。
   「先ほどシンジ君にも説明しましたが、彼女の体は完全に回復しています。なのに今まで目覚めなかったのは自分の殻に閉じこもったと我々は
   考えていました。だからシンジ君に期待をしてたのですが、どうやら我々の予想は半分当たって、半分外れたようですね。」
   話しを聞いていくうちにシンジは顔が真っ赤になり、ミサトは頭の上に?がありそうな顔をしている。
   「半分当たって、半分はずれですか。」
   シンジはなんとか顔色をいつもどおりにしてたずねた。
   「そうだよ。半分当たった言うのは、彼女が目覚めた事だよ。半分はずれは我々の予想より彼女の心の傷が重く生きていくには忘れるしかない
   と彼女の本能が記憶喪失と言う形であらわれたんじゃないでしょうか。」
   シンジは顔を青くして下を向きながら質問した。
   「だったらアスカの記憶は戻らないんですか。」
   すると医者は明るい顔をしてシンジの肩にてを置いた。
   「シンジ君顔を上げなさい。彼女を目覚ましたのは間違いなく君だよ。だから自分を信じてがんばりなさい。」
   「そうよ、シンジ君。がんばりなさい。」
   「わかりました。僕あすかの病室に行ってきます。」
   そう言うと、シンジは頭を下げて出て行った。
   ミサトはやさしい顔でシンジを見送ったが、シンジが出て行くと真剣な顔になって医者に質問した。
   「先生、シンジ君にはがんばれと言いましたが、アスカの記憶が戻る確立はどれくらいですか?」
   医者も真剣な顔になり答えた。
   「よくて五分五分です。今回はどちらかと言うと分が悪いです。なにせ一度心を壊し、回復したかと思うと今度は大怪我をしてさらに又心が壊れ
   ていた状態ですから。」
   「そうですか。」
   ミサトの顔は見えないが、自分がいかに子供達を見てなかったのかを実感するかのように震えていた。






   シンジはアスカの病室に行くと、先ほど医者に言われた事を自分に言い聞かせるようにアスカに話していた。
   「アスカ、大丈夫だよ。前のようにミサトさんと一緒に住めば記憶も元に戻るよ。」
   アスカの方はというと何を言ってるの、というような顔をしてシンジを見ていた。
   「碇君、アタシは前はミサトさんって言う人と一緒に住んでいたの?」
   アスカは目覚めてからというものシンジのことを「碇君」、ミサトの事を「ミサトさん」言うようになった。
   それを聞いたミサトはまず、後ずさりその後熱をがないか調べた。
   シンジは少し寂しそうな顔をして話した。
   「そうだよ。前はミサトさんのマンションにミサトさんと僕とアスカの三人で住んでたんだよ。後、僕の事はシンジでいいよ。」
   「そう。でもいいわ、今の言い方じゃダメなの。」
   アスカは下左斜め45度からすがるような目をしながら言った。
   シンジは真っ赤になりながら頭を横に振っていた。
   「そ、そんなことはないよ。アスカの好きなように呼んでよ。」
   ・・・アスカそれは反則だよ。
   「じゃあ今までどうり碇君でいいのね。」
   アスカは何か考えるそぶりを見せ、シンジにこれからの事を聞いた。
   「退院したらアタシは碇君と一緒に住むの?」
   「僕は今、ミサトさんと住んでないんだ。今は父さんたちと住んでるんだ。一緒なのはいいんだけど母さんアツアツだからね。あ、母さんって言う
   のはリツコさんのことなんだ。」
   アスカは考えるように目を瞑っていた。
   アスカが考え込んでるのを見て自分が言った事に責任を感じた。
   「ごめんね、アスカ。リツコさんは科学者でアスカも知ってる人なんだよ。ちょっと怪しい実験をしているけど。」
   シンジは今や自分の母であるリツコの説明をしているとあることを思いついた。
   「そうだ母さんに見てもらえば記憶が戻るかも知れないよ。」
   シンジは早くアスカが記憶を取り戻してほしくてそう提案した。
   「え。」
   アスカはこの時あきらかにいやな顔をしたが、シンジは自分の考えがいいことだと思いアスカの顔を見忘れてた。
   その時、ミサトが病室に入ってきた。
   「どうしたのシンジ君。」
   ミサトが入ってきたことに気づくとシンジは自分の考えを話した。
   「ミサトさん、アスカを母さんに見せたらもしかしたらなんとかしてくれるかもしれないんですけど、どう思いますか。」
   シンジの考えを聞くとなんとも言えないあいまいな表情を見せた。
   「シンジ君確かにいい考えだと思うけど、ちょっと怖くない。アスカはどう思ってるの。」
   ミサトはアスカに決断をゆだねた。
   「碇君、リツコさんの話しを聞くとちょっとマッドの毛が見えるんだけど。」
   そう言うとアスカは又もや下左斜め45度からすがるような目をした。
   「え、それは・・・。」
   シンジは助けを求めるようにミサトを見た。
   「シンちゃんそんな顔をしないでよ。自慢じゃないけどリツコがマッドじゃないなんていえないわよ。シンちゃん考えてみてよ。」
   シンジは冷静になって考えてみると怖くなってきて汗が浮かび上がり、アスカはやっぱりと言う風な顔でシンジを見た。                                  
   「ははは・・・、やっぱりやめとこうか。」
   シンジが肩を落としてるのを見て、ミサトはシンジが喜ぶ情報を思い出した。
   「そうそう思い出したわ。アスカ、今日で退院していいだって。」
   「ホントですか。」
   シンジは顔を輝かせながらミサトに聞いた。
   「ええ。ホントよ、しばらくは通院しなくちゃいけないけど。」
   「やったね。アスカ。」
   「ありがとう。」
   アスカは笑顔でシンジに応えた。
   「後ね、アスカはしばらくシンちゃんの家で住む事になるから。」
   「「え。」」
   二人はユニゾンして応えた。
   「あたりまえでしょ。なんせ私の部屋に病み上がりのアスカを入れてもいいと思ってるの。」
   「それはそうですけど。」
   シンジは困ったように声を出した。
   「大丈夫よ。指令とリツコには了解を取ってるから。それとも霧島さんにばれるのが怖いのかしら。」
   「そ、そんなんじゃないですよ。」
   シンジは大声で否定するのを見てミサトがさらにからかおうとすると、アスカが返事をした。
   「それでいいです。前も碇君と一緒に住んでいたみたいだから。」
   ミサトはにんまりしてシンジに言った。
   「決まりね。アスカもいいって言ってることだしね。シンちゃんもアスカの世話がしたいだろうし。」
   「それはそうですけど・・・、分かりました。」
   シンジもしぶしぶと言った感じで了解したのでアスカはシンジの家で住ごすことになった。






                                                                             後編につづく。




   あとがき
   どーも味噌屋です。m(_ _)mふかぶか
   最初は読みきりで終わる予定だったのですが、まとめるのが下手なため前後編なってしまいま
した。
   アスカは何を考えてるのかは皆さんなら分かるだろうと思います。
   べたべたな展開ですが。
   次回の投稿は後編か、真説の続きになると思います。
   がんばりますので応援よろしくお願いします。


マナ:アスカが記憶喪失ぅ?

アスカ:うーん、困ったことになったわねぇ。

マナ:これは、ピンチだわ。

アスカ:どうしてよ。ピンチなのは、アタシでしょ?

マナ:ウルサイ,ナマイキ,ワガママのアスカの欠点がなくなってるじゃない。

アスカ:なんか、ムカつくわねぇ。

マナ:そうだ。記憶を失っている隙に、アスカに適当なことを吹き込んで、シンジから離れさせればっ!

アスカ:それは、無理じゃないかなぁ?(^^v

マナ:なんでよ。今なら素直だからっ!

アスカ:まだまだ、甘いわね。(ニヤリ)
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