第3話 君は誰?

 

ネルフ 女子更衣室

 「むぅぅぅ。」

プラグスーツから制服に着替えながら アスカは唸る

どうも最近シンジの様子がおかしい

 自分がストレス解消の為に嫌がらせをしようが 怒鳴ろうが

怒り返す出なく ニコニコしている 

それでいて 自分がテレビを見ていると さりげなく傍らに飲み物まで置かれていること

しばしである。

 そればかりか、自分が用事を言いつけると、たいていは二つ返事でOKである

 その反面、ボーとして話を聞いていないことが多く 授業中に 立たされることもあった。

そのくせ 自分と視線が合うと慌てて目を逸らしたりする。

 『何やっているんだ あいつ。バカシンジ!』

 「あなた 碇君に 何したの?」

 「うわぁ!」

突然 抑揚のない声を後ろから掛けられ アスカは思わず仰け反る

 「ファーストー!」

その声の主を捜し 名を呼ぶ

 「あなた 碇君に何をしたの?碇君このごろあなたしか見ていない。」

 「????。」

 「それでいて どこか嬉しそう・・・。」

 「ハン。どうせあたしを見て 嫌らしいことでも考えているんでしょう。」

相手がレイということもあり アスカは冷たく言い放つ

 「そう・・・。それでも 碇君は、あなたを理解しようとしている・・・。」

 「あの バカシンジが??なぜ?」

 「わからない。」

アスカは要領の得ないレイの相手をする気はなかったが、レイがシンジと自分の事に

口を出した行為を不快に思う

 「へん ファースト。あんた あたしの事をシンジが見ているから妬いてんの?」

口調は知らずに意地悪そうになる

 「妬く。嫉妬 それは何。」

 「羨ましいかってことよ。あんた シンジとどうなりたいの?」

 「ひとつになりたい。」

レイは顔を赤らめる

 「ぶっ あ あんた・・・!」

アスカは思わず吹き出す 

 イラッ

アスカの心にストレスが沸く

 「別に性的関係を持ちたいというのじゃないわ。もっと 心を触れあいたい理解したい

 そう 碇君の全てを知りたいと思うの。」

 「はぁ?どうしてシンジなんか?」

 「あの人以外で初めて心を開いてくれた人だから 私のために泣いてくれた人だから・・。」

アスカに、募る苛立ち

 「はん 仲がおよろしいことで 好きにすれば あたしは関係ないわよ。ファースト!」

アスカは、これ以上の会話は無駄と突き放す

 「ファーストと呼ぶのはやめて。綾波レイという名前があるわ。」

レイは抑揚のない声でアスカをとがめる

 「なに ファーストだからファーストと呼ぶの いいじゃない。」

 「じゃ 私もあなたをセカンドと呼ぶわ。同じチルドレンだからあなたは碇君の

 こともサードって呼ばなくてはダメね。碇君もあなたをセカンドと・・。」

 「ぐっ・・・。」

これにはさすがのアスカもすぐには返事が出来なかった。

 『シンジにセカンドと呼ばれたら・・・。』

確かに来日する前は他のチルドレンのことをそう呼ぼうと決めていた。

実際レイの事はそう呼んでいるが・・・。シンジについて今更・・・。

思わず 背中に冷水を浴びせられたような感じになる 

 「って あたしとシンジのことはあんたに関係ない!!」

アスカは人差し指をレイに突きつけそう叫んだ。

 「そう。あなたは、碇君の事をどう思っているの?」

 「ふっ ただの下僕よ。」

 「下僕。奴隷のこと 主人にとって人ではないもの。」

 「そ そ そうよ。あんたにとやかく言われることはないわ。」

 『これ以上ファーストと話すのは気分悪い』

アスカは、もうレイとの話合いは済んだとばかり更衣室を出ようとした

その背中に レイの言葉の矢が突き刺さる

 「あなたはいつか碇君を深く傷つける。壊してしまうかもしれない。」

 ビクッ 

突き刺さった矢は、アスカの心臓を貫く が 

 『あんたに なにがわかるの』

アスカは、それに返事をせず更衣室を後にした。

 

ネルフ発令所

 「シンジくん 今日は、訓練などしないから 初号機とのシンクロテスト

 このごろテストプラグでのシンクロ率がいいから・・・。今日は、初号機でテストするわ。」

リツコは、エントリープラグ内のシンジにテストの趣旨を告げる

 「わかりました。」

シンジは軽やかに答える

 「LCL注水」 

 「回路接続」

 「パルス、ハーモニクス異常なし。」

 「シンクロ率・・・・・・・・。」

マヤの声が止まる

 「どうしたの?」

リツコは先を促す

 「100%」

マヤの驚愕の呟き

 「え??」

リツコの声が止まる

 

初号機エントリープラグ内

 「あーあ 早く帰って明日の弁当の用意しなくちゃ。アスカ怒っているだろうな・・・。」

シンジは今日の夕食を用意しなかった事へのアスカの怒りを懸念した。

 「はー。どうしようかなー。明日は、お弁当に唐揚げ少し多めに入れようかなぁ・・・。」

シンジは、アスカの怒りを収める方策を練っていた。

テストだというのに・・・。

 「へぇー かわいい娘じゃない。」

唐突にシンジに語りかける声がした

 「だ 誰??」

シンジは、あたりを見回すも声の主を発見できない。

当然 誰もいない エントリープラグの中だから 当たり前

 「クスクス あたしは、ここよ。あなたの外側 シンジ。」

 「どこ??」

 「だからん エントリープラグの外側よん。」

声は当たり前の様に答える。

 「え・・・・??ひょっとして?エヴァ初号機??」

 「ピンポン ピンポン ピンポン おーあたりー。」

 「・・・・・・・。」

 「何 黙ってるのよシンジ?」

 「君って そんな 性格なの??」

 「あら 変かしらん??」

 「君って女の子なの?」

 「うーん その答えは保留よ。どうしたのん?」

 「いや なんていうか 以外だから。」

 シンジは、自分がこのトロールしていた以外

つまり 暴走していた時が初号機の本性と思っていた。

 あれは、ダミープラグの性質であったのだが・・・。

 「ひっどーい。あたしは、あんな粗暴じゃないわよ。」

 「僕何にもいってないよ!」

そこで相手は諭すように

 「いーい シンジ あなたは、あたしとシンクロ率100%でリンクしているの!

 言語なんて物は不要なの 考えたり 感じたことがダイレクトでわかるの!」

 「え そんなのずるいよ。」

 「まあ あたしの場合は、壁を使えるから あなたに伝える事は制限できるけど・・。」

 「ホントずるい 壁ってなにさ?」

 「あら あなたも知ってるじゃない。ATフィールドよ。」

 「え えいてぃー ふぃーるどー?どういうこと。」

 「まあ 詳しくは後々教えてあげるわ。でも とりあえずは この

 金髪で青い目の女の子の事よ。そう アスカちゃんいうの?」

 「ひどいよ。僕の心をのぞかないでよ。」

シンジは拒否の叫びをあげる

 「シンジ!確かにあたしは、あなたの心を見ている。人には他人に心を知られたくないため

 の壁がある。でも シンジ あなたは心を他人に知られるのが嫌なの?

 それとも自分で知るのが怖いの?嫌ならプラグをイジェクトすればいい。」

実際 シンジの手は強制イジェクトボタンに伸びていた。が 押せない

この感じ ずーっと昔 自分がここに存在していたような・・・不思議な感じを受けていた。

 『なんだろう この感じ?』

 「今は教えてあげられないわよ!」

 「あ また 勝手に・・・。」

 「仕方ないわよ 壁がないんだから。もし壁を作り 意思伝達のために

 言語を使ったら この会話 葛城さんや赤木さんに聞かれるわよ。」

 「そ それは 困る。」

 「よろしい さーて アスカちゃんの事だけど・・・。」

ポッ シンジの顔が赤くなる

 「あーら そうとう お熱ね!で・・・あら アスカちゃんとちゃんとキスしたいとか

 あれれ ピィーッ したいだとか。ピィーッをピィーに・・・ はは シンジも男だねぇ」

 「なんだよ そのピィーッは?」

 「自主規制よ・・・。RやXは面倒なの。」

 「なんだよ。それ?」

 「で シンジとしてはアスカちゃんとどうなりたいの 恋人になりたい?」

 「そんなんじゃ ないんだ。僕はただアスカの側に・・。」

 「嘘ね!シンジ あんたの心は、彼女に自分だけを見つめて欲しいと思っている

 他の男と一緒に居て欲しくない。彼女の全てを欲しい。自分の全てを捧げたいと思っている。

 違う?」 

 「そんなこと。」

 「考えてないと思うなら、それはシンジが自分の心をわかっていないから・・・。まあ 難しいんだけどね

 これが・・・。あ これじゃ 重みないか。」

 「・・・・・。」

 「あきれないでよ!まあ シンジは、まず自分を見つめる事ね理解するために。」

 「・・・自分を・・・。」

 「そして 他の人の心もわかってあげて欲しい。自分の心を見せて・・・。」

 「え 心を見せる。」

 「絶対的な心の領域まで見せろとは言わないし 無理ね。だから たとえば シンジ

 あんた このエヴァを動かしているにも オペレーターのみんなや 整備してくれてる人が

 いるわけよ。また チルドレンであるあなたを常にガードしてくれている保安諜報部の人もいるわけ

 そんな人たちとも話してみれば?きっと あなたの世界がひろがるわ!」

 「うーん どうすれば」

 「そうね まあ 整備係の人たちは、とにかく話してみる事ね。それと 保安諜報部の人たちは・・・。

 そうだ ネルフ内にある道場でちょっと鍛えて貰えば?拳で語り合うことでわかる人もいるから。」

 「え なんか 乱暴だな。」

 「やるの!」

 「はい」

押しの強い初号機に気圧されるシンジ

 「あ それと アスカちゃんの事だけど シンジ あなたは彼女を強い子だと思っているけど・・。

 それは 上辺だけ。心には深い傷があるの それを才能とプライドで支えているの でも一度

 それが崩れると・・・・。」

 「崩れると?」

 「あなた 彼女を失うことになるかもよ!」

 「なんで そんなことわかるんだよ。」

 「そりゃ キョ・・・ いや 弐号機パイロットだから はは。」

 「なんか 隠しているんじゃ?」

 「はは 今は秘密 そのうち教えてあげるわ。」

 「なんだよ。」

シンジはふて腐れる。

 「まあ 彼女の事知りたいなら加持君に聞けばいいわ。メールで食堂に呼んでおいたから

 教えてくれると思うわ。ちなみに差出人はあなたにしておいたわ。」

 「ええーえ。」

 「あ それとあたしに事は加持君以外は秘密にしてね。彼には話してもいいわ。あ それと

 彼への伝言 エヴァ初号機が差出人のメールを見てってね。彼の知りたいことがわかると思うわ

 依頼報酬の先払いって伝えといて。」

 「わかった。」

 「じゃ シンジ Gute Nacht!Bis Morgen!」

 「なんだよ それ?」

 「今日寝る前にアスカちゃんに言ってみれば?」

 「アスカに?」

 「そう シンジ おやすみ また明日。」

 

ネルフ発令所

 「シンクロ率低下! 68%」

 「パルスおよびハーモニクス依然安定。」

 『なんなの この変化?』

シンジのシンクログラフをみて不審に思うリツコ。

その横には脳天気にシンジの高シンクロ率に喜ぶミサトが居た。

 『やった 今日はエビチュがうまいわよん!』

あんた シリアスにはなれんのか?


 もんです。第3作目ですが シンジのお話の相手はもちろんユイなのですが・・・。

少し後で登場です。

 ミサトは、あたしのとこでも・・・・爆裂キャラ扱いです。


マナ:ユイさんって、こんな性格だったのね。(^^;

アスカ:さすがユイさん、負けそう。

マナ:なんだか、シンジが精神的に成長してるんじゃない?

アスカ:まさか、あの2バカの一言がここまで波及するとは思わなかったわ。

マナ:ユイさんの話を聞いて、シンジはどう実行するのかしら?

アスカ:早くアタシんとこ来なさいよ。出番が少ないじゃない。

マナ:あったじゃない。前半に。

アスカ:ファーストとの会話は、イライラするからヤなの。

マナ:相変わらず、我侭ねぇ。わたしなんか、出番も無いのに・・・。(ーー;
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