第4話  君って 綾波?

 

 「お待たせしました。」

 「よぉ。」

ここは、ネルフの食堂 幸い客はシンジと加持以外はいない

 シンジは、自動販売機で買ったスポーツドリンクを手に持っていた。

 「加持さんにも何か買ってきましょうか?」

 「いや いい。それで用件を聞こうか・・・。」

 「実は・・・。」

シンジの言葉が止まる さすが 話しにくい・・・。

 「おいおい、君が呼んだんだろ?話しにくいのか?」

加持は、呆れるも シンジの次の言葉を待っていた。

 「・・・・その・・・・アスカの事なんですけど。」

 「おい なんだい 急に?」

 「アスカの過去を教えてください。直接聞いてもアスカは話してくれないだろうから

 加持さんに聞けって言われたから。」

 「へぇー シンジ君、アスカにお熱なのかい?」

その回答はシンジの顔がこれ以上ないほど赤くなったことで代わりとなった。

 「はは そうか 若いって事はいいねぇ。ところで 言われたっていったが誰にだい。葛城か?」

 「いや その・・・・・エヴァ初号機に。」

シンジは躊躇いがちにその名を告げる

 「初号機・・・・。」

加持は一度はき出した言葉を もう一度飲み込み咀嚼する

 「初号機に意志があるというのか?」

導き出した結論を加持は口にする

  「はい なんかそうみたいです。ちょっと 面食らちゃいましたけど。」

シンジは、加持の自身に対する自問を シンジに対する質問と受け取ってそう答えた。

 「ふーん で 初号機とコンタクトしたのは今日が初めてか?」

 「はい なんか急に声が聞こえてきて・・・。って言っても言語は使用していないって言ったました。」

 「・・・・・。」

 「加持さんにメールしたのも僕じゃなくって初号機です。あ それともう1通メールするそうです。」

 「もう1通?」

 「はい 報酬の先払いだって。」

 「報酬?でも 初号機にそんなこと出来るのか?」

 「さあ MAGIでも経由したんでしょうか?」

 「MAGIを経由?・・・・」

加持の思考は深みに沈んでゆく

 「・・・加持さん 加持さん・・・。」

加持の思考は、シンジの呼びかけにより 表面化に浮かび上がる。

 「・・・ああ シンジ君なんだい?」

加持の返事を聞きシンジは、眉をひそめる

 「あの 加持さん?僕の話覚えてます?」

 「あ ああ アスカの事だったね。」

加持はここへ呼ばれた当初の理由を思い出す。

 「シンジ君 アスカはね・・・・。」

加持は、アスカの過去について語る

 エヴァ弐号機のテスト事故の後 母親が自殺したこと、父親は他の女の所に走り

現在は行方不明であること、小さい頃から養父母に育てられたこと・・・

そして彼が把握しているアスカについても語る

 母を亡くして一人で強く生きていこうとしていること 自分が必要とされ 認めて貰いたい

最初は母にであったが 今は周りの人間にそうして貰いたがっていること そのためには

常に高い能力を示すことが必要だと考えていること そして今はそれがエヴァに乗ることに繋がっていること

 シンジは、加持の話を無言で聞いていた、加持が会話を切ったところ シンジは呟く

 「なんか アスカの過去って・・・・。」

 「そう 君によく似ているな。」

 「でも 僕は自分の殻に閉じこもっているばかりでした。認めて貰うために力を外に向けたアスカは偉いや。

 僕とは違いますよ。」

同じ様な境遇にいながら ここに来るまで無機質の時を過ごしていた自分 数々の戦闘スキルを身につけ

その上大学まで卒業したアスカ あまりの違いにシンジは自分が情けなくなった。

 「果たして そうかな シンジ君は人や自分を傷つけなくないから 自分の殻に隠った アスカは、自分の感情をぶつけ

 相手を傷つけ そして 自分も傷ついている アスカ自身が解っていないかもしれないがね。アスカが、外に向け自分

 を示す為に必要となっているのがプライド そのプライドを持つための能力なりエヴァなのさ。」

 「・・・・。」

 「まあ 態度が 内に向くか外に向くかの違いはあれ 君らはよく似ている。」

加持はここで過去のことを思い出す 同じように心の傷を持ち 恋に落ちた女性のことを

過去に縛られ踏み出せない自分達も・・・。

 「シンジ君 俺たちの轍を踏むな。」

 「はい?」

言葉の意味を理解し得ず 間の抜けた声を上げるシンジ

 「いや 何でもない。アスカを頼む。たとえ エヴァのパイロットじゃなくて 優秀じゃなくても

 アスカを必要としている人がいることをわからせてあげて欲しい。 君がアスカを好きなのは

 同じパイロットで 天才で美貌の持ち主だからじゃない。一人の女の子惣流・アスカ・ラングレーなんだろ?

 そうじゃなければ、たとえ 君が想いを伝えても アスカは受け取ってくれないだろう。」

 「そのつもりです加持さん。」

 「そうか?それで どうするつもりだ?」

 「とりあえず。いろんな人とぶつかってみようと思います。周りや自分の事にとらわれず相手の事を心を

 確かめたいです。そしてそれを僕がどう思うかを・・・。

 まずは 作業員や保安諜報部の人たちと話をして見ようかと思っています。

 それが出来なけりゃ。アスカのことも解ってあげられないと思います。」

 「そうか がんばれよ。」

 「はい じゃ 僕は、もうこれで帰ります。アスカも怒っていることだと思いますし やっぱ怖いですから。」

 「大変だな、シンジ君も!じゃな。」

 「仕方ありませんよ。惚れた弱みですから・・・。はは こんな事言って恥ずかしいなぁ。」

シンジは、頬を染め笑いながら加持と別れる。

 『君は偉いよ。シンジ君!』

シンジを見送りながら加持は心で言葉を投げる。シンジは手探りながら未来へ向け歩いていこうとしている

それに比べ自分はどうか・・・。加持の脳裏に 死んだ弟や仲間達の姿が浮かびそれが重くのしかかる・・・。

加持には今のシンジが眩しかった。

 『シンジ君に偉そうに説教なんか出来ないな俺って。』

 

 加持の部屋

 「さーてと シンジ君の言っていたメールは・・・。」

加持が自分の端末を起動させると 初号機からのメールは届いていた。

 それを開いたとき 加持の表情は凍り付く

そして 全てを読み終えた後に 加持は呟く

 「・・・復讐の為じゃなくか・・・フッ・・・。」

その夜を境に加持の姿はネルフ本部から消えた・・・。

 

 第3新東京市立第壱中学校

 昨晩 帰宅が遅かったシンジは、先に帰ったアスカにさんざん文句を言われた

それで、許して貰う条件は 弁当の唐揚げ5割り増しと登校時の鞄持ちとなった。

 今のシンジにとってそれは苦痛でなかったが・・・。

 「もう ここいらでいいわよ。」

アスカは、校門を入ったところでシンジから鞄を取り返すべく手を差し出した。

 「あ うん。」

シンジは名残惜しそうにそれを渡す。

 ふたりに、流れる無言の時・・・。

教室までたどり着いたとき中からトウジの大きな声が響く

 「これで 勝負はわからんようになったねぇ。」

シンジ達が教室にはいるとトウジとケンスケが雑誌を見ながら話している。

もっともケンスケはさほど興味はないらしく 相づちを打つ程度であったが。

 「トウジ何話しているの?」

シンジは、興奮しているトウジに興味を覚えた。

 「あ センセか、いやな来年の世界武闘王者大会のことやがな。」

 「何それ?」

 「なんや センセ知らんのかいな。」

トウジは嘆かわしげに顔に手を当てる。

 「いや 格闘技なんて興味なかったから はは。」

少し引きが入るシンジ

 「あーもう 説明したる。世界武闘王者大会っていうのはな 別名 天下一武闘会ちゅうて

 世界中の武術の達人達がその覇を競う大会で銃器以外の武器の使用も認められているんや。」

 「はあ。」

 「これは2000年に第1回大会が開かれ その優勝者は、ホンコン出身のマスターアジアや

 そして2004年の大会はセカンドインパクトの余波で中止 2008年と2012年の大会を連覇したのが

 マスターアジアの弟子ドモン・カッシュだ。」

 「それ どこの人だよ?。」

 「なんでも ドイツとの日本のハーフちゅう話やで、あーシンジ話の腰を折らんでか。」

 「ゴメン」

トウジの語調は勢いが増す

 「それでやな。その2012年の大会は別名「紋章の戦い」ちゅうてな。」

 「???」

 「そう シャッフルの紋章を持つ武闘家5人がぶつかったわけや!」

 「シャッフルの紋章?」

 「そう 古の武闘家たちの魂を受け継いだ証と言われておるもんや。戦いの最中

 意識が高揚したとき右手の甲に紋章が浮かびあがるそうや。で 他の4名をことごとく

 打ち倒したのが キング・オブ・ハートの紋章を持つドモン・カッシュや優勝戦のモスクワ出身の

 アルゴ・ガルスキーとの戦いの時は 岩をも砕く鉄球を正面から受け止めて 急所への

 一撃で勝利したんや。」

 「ふーん」

相づちを打つシンジ トウジの話はヒートアップして止まらない

 「そうや ワシの最も尊敬する武闘家やでドモンは、勝負に出るときの決め台詞があるんや!ええか

    俺のこの手が真っ赤に燃える 勝利を掴めと轟き叫ぶ  ばーくねつ

    ゴッド・フィンガーーーーー   ヒーーーート エンド!!

 ちゅう具合やな。なんでもこの技を受けたもんは、身体中の血が沸騰しそうになり 立ち上がれなんだ

 そうや。で 他の紋章の武闘家もそれ以降は紋章は出て来なんだそうやわ。今の紋章の武闘家は

 ドモン様一人っちゅうわけや!まあ ワシが目指そうとしているお人なんやわ!」

トウジはジェスチャー入りでドモン・カッシュの説明をする。

 「ふーん 格好はともかく声はそっくりじゃない。」

横からアスカが口を挟む

 「なんや 惣流?ドモン様の声は記録にないはずだぞ?インタビューなんて拒否していたしサインもあらへん

 決め台詞だって、雑誌に載っていた対戦者の語録から・・・・。」

 「だって あたし ドモンと面識あるもん!」

 「なんやて?」

トウジは大声を出す

 「ドモンのお父さんのカッシュ博士はドイツのネルフにいたし、あたしの格闘術の教官のシュバルツ・ブルーダーが

 ドモンと知り合いだったから その 練習試合というかレクチャーして貰ったわ。」

 「で どうだったんや?」

 「勝てるわけないじゃない。確か さっき言っていた大会の後で・・・。あたしもエヴァのパイロットだから無茶はされな

 かったけど・・・。」

 「かー 羨ましい。で どんな人やった 怖かったか?」

 「ううん。ぶっきらぼうだけど優しそうな人だった。そういえば勝利のお守りにって そのバンダナくれたな。」

アスカは、トウジの持っていた雑誌に載っていた大会優勝時の写真のドモンがしているバンダナを指す

 「でも 確かその後・・・・失踪したんやな。そやから 今度の大会は本命が不在って言うとったんや。」

 「そう お父さんのカッシュ博士と恋人のレイン・ミカムラが実験中の事故で死んでから・・・」

 「ところで 惣流 おまえ くれたバンダナ 持っとるんか?」

 「・・・・・・。」

沈黙する アスカ

 「どないしたんや?」

 「どこにあるかわからない。」

 「なな なんやて アホか おまえは。」

 「うるさいわね ジャージバカに言われる筋合いはないわ。ふん。」

売り言葉に買い言葉というが いつもの言い争いが起きる その最中

 「碇君、相田君、洞木さん おはよう。」

シンジ達が振り返るとレイがそこに立っていた

 「「「おはよう」」」

3人が唖然として挨拶を返す。

 3人とも驚いたのだ レイが自分から挨拶をしたことに

そんな3人を尻目に レイは言い争いをするアスカとトウジの横に立つ

 「鈴原君 アスカ うるさい!」

 「「なんですって(やて)!!」」

おー 君らもユニゾン出来るじゃないの

 「喧嘩なら外でして 夫婦喧嘩とは言わないけど・・・・機微がないから。

 そう ガキの口げんかね。」

レイは、事もなげに言い放つ

 「「もう一度言ってみなさいよ(言うてみい)」」

激怒する二人 おい いいユニゾンだな ホントに

 「クスクス あなた達の耳は飾り?何度も言う事じゃないわ。

 キーキーとまるで猿ね黒毛と赤毛の・・・。」

 「「キーッ」」

身を乗り出しレイに詰め寄る アスカとトウジ

 「はいはい。もう予鈴よ、席に着いて・・・。洞木さん あなたからも、注意して!」

当然レイに話題を振られたヒカリは、どう反応すべきか しばし戸惑うも自分に課せられた

任務を思い出す。

 「鈴原!アスカ!はい、席について・・・。」

ヒカリに促され二人は不承不承 席に着く。

 『綾波?どうしたんだ?』

 『ファースト覚えてなさい!』

 『なんや 綾波のやつ?』

それぞれの想いは交錯する・・・。

 

 昼休みの教室

 席を立ったレイをアスカは呼び止めた。

 「ちょっと ファースト!!」

しかし レイは、相手にするでなく そのまま立ち去ろうとする

 「待てって言ってるでしょう。」

今度はレイの行く手に立ち塞がったアスカ

 「何か用?アスカ?私 これから ネルフでテストなんだけど・・・。」

煩わしそうにいうレイ

 「ファースト!今朝の態度は何?あたしに対する挑戦かしら!」

胸を張りレイに詰め寄るアスカ目には炎が浮かぶ 当然シンジもこの場にかり出され

二人の様子をおどおどして見ている。

 『どうなるんだろう 綾波〜 アスカ〜。』

 「ファーストって呼ぶのは止めて、昨日も言ったわ ネルフでの職務中はあまんじて その名を受けるけど

 ここは学校、本人が希望もしない呼称で呼ばれるのは不愉快だわ。」

 「な  な なんですって。」

 「あなたも 碇君以外の同級生の男から断りもなしにアスカって呼ばれたら不快じゃない?」

 「ぐ ぐ ぐ」

 「おや ビンゴね。ふっ 無様な人 いーい レイかあるいは綾波ってよんで敬称は別にいいわ。」

 「そんなこと。」

 「どうしても 学校や私生活でファーストって 呼びたければ 衆人が納得できる論理的理由を

 提示して欲しいわ。あなた 大学まで出ているんでしょう。あ 日本語が難しければドイツ語でも

 英語でも構わないわ あたしが訳して上げるから。」

レイは目を細めで氷の眼差しを向ける

 「・・・・。」

拳の震えるアスカ その怒りがシンジに伝わってくる

 『わー どうしよう。しかし どうしたんだ綾波?』

そんなアスカの怒りをレイは知らずか あるいはそのふりをしたか

 「意見は、ないようね。じゃ あたし早引けするから。碇君 さようなら。

 アスカ Auf  Wiedersehen.」

そう レイは言い放つと踵を返し立ち去る。

 後には無言のまま俯いたアスカと唖然としたシンジ

 そして レイの変わり様について 驚くクラスメイトが残された。

 突然 アスカは駆けだした。呼び止めるシンジの声も届かずに・・・。

 『ちくしょう ちくしょう ファーストに 言い負かされた。あの人形に・・・。悔しい。』 

アスカの目からはいつの間にか悔し涙が流れていた。

 いつの間にか たどり着いた屋上 手すりに寄りかかるアスカ

 「ここに居たんだ?探したよ。」

後ろから 彼女の同居人が声を掛ける。

 「どうしたの 急に?・・・アスカ ひょっとして・・・。」

無神経な声が感に触る

 「うるさい 泣いていないわよ。」

 「そうだね・・・。」

シンジがすぐ後ろに立っているのがわかる アスカは顔を合わせないように振り向き

シンジの肩に顔を伏せる・・・そして 拳でシンジの胸を叩く

 「うるさい うるさい うるさい・・・・・。」

何度か叩くうちに シンジの制服のボタンが全て取れてしまう

 しかし シンジは、なされるままにしていた、だんだんアスカの手の力は弱まりついにそれを止めてしまう。

 「昼休み 終わっちゃうね。」

 「・・・・」

 「せっかく アスカの為にお弁当張り切ったけど・・・。」

 「・・・・」

 「夜にでも食べようか?」

 「・・・・」

 「帰るでしょ?」

 「・・・・」

アスカは頷く

 「みんなと顔を合わせたくないなら 授業が始まってから

  帰るといいよ。鞄は僕が持って帰るよ。先生には呼び出しだって言っておく。」

再び頷くアスカ

 「どうして そんなに気が利くの」

 「なんとなくね。気にしなくていいよ 昨日のお詫びの一環かと思ってくれれば。」

 「・・・・」

 「じゃ 僕は行くよ。」

シンジは、なるべく顔を見ないようにしながら その場を離れた。

それでも アスカの泣き顔が目に入る。 

たぶん アスカはそんな顔を誰にも見られたくないだそうから・・・。

でも いつかは、自分にはそんな顔も見せて欲しいと思う

 また 今日は自分に感情をぶつけてくれたことを嬉しく思うシンジであった。

 しかし 今日のレイはシンジにとって合点がいかない

 『綾波 どうしたんだい?でも・・・・。』

シンジにとっては、さっきのレイの態度は好ましくあった、とても人間らしかったから

冷淡だったが アスカに感情の呈示をしていたと感じられた。

 『一度 綾波とも話をしてみよう。』

そう 想いながら階段を下りるシンジ 彼に昼食をとる時間は残されていない・・・

 

その夜 ネルフ道場

 「はあ はあ。」

シンジは、大息をついていた。

 シンジは、学校から帰宅後 昼間のお弁当にプラスした夕食を作り葛城家を後にしていた。

アスカは、ずーと部屋に引きこもっていた。

 シンジは、ネルフ保安諜報部の訓練に参加している。

 訓練に参加することは戦闘力の向上に繋がるのでミサトの許可はすぐ降りた。

 「サード、君は格闘術もいいが 基本体力の養成が必要だな。組み手は、まだ早い

 体力を作り、拳の出し方とか木刀や棍のふるい方だとか基本をマスターすべきだ。」

保安諜報部の若手のリーダー鳥海は、シンジの力をみてそう判断した。

 「はあ はあ どうもそうみたいです。」

 「エヴァは、君の身体能力に反映するんだろ、武器の振るい方 身体の使い方を覚えれば

 格段に進歩すると思う。特に君はずぶの素人だから・・・。」

 「はあ 鳥海さんわかりました。」

鳥海は名前を呼ばれたことに面食らう

 「サード いや シンジ君 私の名前を覚えてくれているのかね?」

 「はい 勿論です。これって 鳥海さんの本来の職務以外の事ですよね。

 名前を覚えなきゃ 失礼ですよ。それと仕事でもいつもお世話になっているわけだし・・。」

 「ほう。」

鳥海はこのひ弱な少年を見直した。チルドレンは全てエリート意識の固まりだと彼自身考えていた。

が 実際 話をして 一緒に汗を流してみれば ちょっと変わってはいるが何処にでもいる少年だった。

 「こんな 子供に命がけの戦いを強いているのか・・・・。」

 鳥海は、頭では解ったいたが 今まではチルドレンは自分らの仕事の対象だけであり特別の感情は

持っていなかった。

 ふと彼は、セカンドインパクトで死んだ弟を思い出す。

 『生きていればシンジ君より少し上だな・・・。』

感慨にふける鳥海

 「どうしたんです?」

そんな鳥海が気になったシンジ

 「いや なんでもない。シンジ君 これで上がろう。」

 「はい、ありがとうごいざいました。」

シンジは鳥海に頭を下げ道場を後にする。

 それを鳥海は無言で見送る。心の中で死んだ弟の名前を呟きながら。

 

ネルフ 自動販売機コーナー

 「あ 悪くなってないや」

シンジは、昼間食べ損ねた弁当に手をつけていた。

 ふと気配がしたので 視線を自動販売機に移すとレイが飲み物を買っている。

 レイもシンジの姿を認めたのか ジュースを手に持ち笑顔でやってくる

 『あれ 綾波 笑っている?』

 「碇君 どうしたの?今日はテストもなかったのに?」

不思議そうな顔をするレイ

 「いや 保安部の人たちと訓練をすることにしたんだ。今日から・・・。」

 「そう。」

レイは理由は聞かなかった。

 「ところで 碇君!」

 「なに?」

 「あたしたち知り合って 結構仲良くなったって思わない。」

 「そうだね。」

 「何時までも堅苦しい名前の呼び方嫌なんだ。」

 「・・・。」

 「シンちゃんって呼んでいい?」

 「え?」

 「いいでしょ。あたしのことはレイって呼んでよ。」

 「そんなぁ」

 「レイちゃんでもいいわよ。」

 「でも。」

 「呼ぶの!」

そう言って 目を細め氷の視線を送るレイ シンジに対抗する術はない

 「はい。」

有無を言わさず約束される そんなシンジに、当然の様な疑問がわき

躊躇うことなく口からでる。

 「ねぇ」

 「何?」

 「君って 本当に 綾波?」

その質問にレイは一瞬細めた目を大きく見開いたがすぐに半眼に戻し

 「レイって呼んでって居ているでしょう・・・。あたしは、紛れもない綾波レイ

 それ以上でも それ以下でもないわ どうして そんなこと聞くの?」

 「何かちょっと 雰囲気違うし 昼間のことだって・・・。」

 「あー あ れ ね。」

途端 またレイの表情は一変する 意地悪そうな表情に おまけに頬杖までついて

 「でー シンちゃん アスカをちゃーんと送って帰った?」

 「いや 一人で帰したけど・・・。」

 「ダメじゃない そこで送って帰るぐらいの甲斐性がなくっちゃ。

 アスカ 泣いていたでしょ?」

 「うん よくわかるね。」

 「あー せっかく あたしが嫌われるような事まで言ってお膳立てしたのに

 シンちゃんて 奥手ね。はあー そこで一緒に帰れれば 一挙に急接近だったのに・・・。」

嘆かわしそうに頭に手を当てるレイ さらにレイの言葉は続く

 「そうなれば 今頃 二人は、抱き合って 熱いベーゼを・・・。」

 「あのレイ?」

 「そして

     アスカ 君の事が好きだよ・・・

     あたしもよシンジ

     大切にするよ

     うん ずーと一緒にいようね

 なんて 言って。キャー。」

自らの手で自分の身体を抱きしめ

  イヤン イヤン

と身もだえるレイ 人のことで、そんなに盛り上げれるな

 「あのレイさん もしもし・・・。」

シンジは 他の世界にトリップしたレイを呼び戻そうとする

 ハッ

我に返るレイ

 「いやー お見苦しい所をお見せしたわ。」

レイは自分の頭を小突き 舌を出す。

 「ねえ レイ やっぱ 変だよ。リツコさんに見て貰おう。」

 「嫌よ。金髪ババアは!」

 「へ!?」

 「中途半端な、マッドは嫌なの。」

 「でも 変だよ。昨日までと性格全く違っているじゃないか。」

 「あたしのオリジナルはこんなものよ。それをあの髭眼鏡が・・・。」

 「それ 父さんのこと?」

 「あ そうね。シンちゃんの父さんだったわね。」

 「どうしたの 信頼しているって言っていたじゃないか?父さんのこと。」

 「あれは マインドコントロール。」

 「なに それ。」

 「詳しい答えは保留よ。あ 唐揚げ貰い!!」

レイはシンジの弁当箱から鳥の唐揚げをひったくり 自分の口に放り込む

 「綾・・・レイ 肉 嫌いじゃ。」

 「好物よ。」

 「体質まで変わったの?やっぱり変だよ。」

 「答えはもう少ししてから・・・教えるわ。」

 「何だよ。」

ここでシンジは少し前に同じようなやりとりをしたことを思い出す。

 『あれ これって。』

 「さあ ご飯食べたら帰ろう」

そんなシンジの考えを見透こした様にレイが声を掛ける。

 「あ うん レイはどうするの。」

 「シンちゃんは?」

 「いや ミサトさんと一緒に帰ろうかと・・・。」

 「よし あたしもそれに便乗!!」

 「帰る方向が違うじゃないか。」

 「あたしも同じチルドレン それぐらいは融通を利かせる!」

 「えー そんな強引な。」

かくして レイはその言葉通りの約束をミサトに取り付けた。

 ミサトにしてもレイの氷の視線には耐える術を持っていなかった。

 

コンフォート マンション 駐車場

 「さーてと シンジ君は先に帰っていて あたしはレイを送ってくるから!」

 「わかりました。」

レイもシンジに続いて車を降りた。

 「レイ!?」

呼び止めるミサト

 「あたし トイレ。」

 「もう 早く済ませてね。」

ミサトは仕方ないとばかり車を降り二人の後に続く

 

 葛城宅

先頭に立ったシンジが錠をはずし 部屋に入った後に続こうとした

ミサトの首根っこは力強く引っ張られた。

 ガタン 重々しく閉まる玄関ドア

 「ちょっと。」

ミサトが振り返ると そこにはレイが真剣な表情でたっていた。

 「なによ。」

非難の声をあげたミサトが見た物は 絶対零度の視線

 ヒッ

思わずミサトは怯んだ。 ネルフの作戦部長たる彼女が

レイは黙って人差し指を口に当て 玄関ドアに視線を移す

そして ドアに耳を当てる。

 ミサトも拒否を許されないように同じ行為を行う。

 レイの瞳が赤く輝く。

 


 レイのあまりの変わり様に 戸惑うシンジ。

 そんなシンジの帰宅を待っていたアスカ。

 今 二人の歴史が動き出す。アスカは、また負の感情をぶつけてしまうのか?

 そんな二人を見つめるレイは・・・・。

 次回「バカカップル誕生」

さーて 次はサービス出来るかな?


マナ:なんか、綾波さん、雰囲気違うくない?

アスカ:ムカッ! ムカツクーーーーーっ!!!(ーー#

マナ:そんなに目を吊り上げないでも・・。

アスカ:なんでこのアタシが、言い負かされてるわけぇぇっ!?

マナ:口がよく回るのダケが、アスカの取り得だもんね。

アスカ:コロスわよっ!

マナ:でさぁ、綾波さん。葛城さんまでたじたじになってるし、やっぱりなんか変よ。

アスカ:どっかで、頭ぶつけたのよ。きっと。

マナ:頭をぶつけた綾波さんにすら、アスカは言い負かされる程度なのね。

アスカ:ムキーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!
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