inserted by FC2 system 新生ネルフ誕生

第8話 新生ネルフ誕生

 ここはネルフ司令室 ユイの帰還後

この部屋の主ゲンドウは司令のままだが 部屋自体は大幅な改造が為されていた。

暗かったイメージも廃され 現在は明るくそしてユイの希望により MAGIの端末

並びに各種オーディオ類 落ち着いた調度品も見受けられる

その中でユイが座っている端末でキーボードを打つ音は騒音にかき消されている

なにせ 周りでDVDは周り放し 各種放送はが流れ あたかも 量販電気店の様相だ

 部屋の主のゲンドウは今は隅っこでそんなユイの為 甲斐甲斐しくお茶を入れたり ディスクやチャンネルを変えたり

している。 おい おまえ 本当にまだネルフの司令か?

 「母さん入るよ。」

シンジが、にこやかな顔つきで司令室に入って来た。

少し前なら 彼自身 こんな気持ちで司令室を訪ねる事を予想し得たであろうか?

 「あ ひんぢぃ ふがふが・・・」

ユイは自分の視界の隅に息子を確認した。しかし そのとき彼女は好物の和菓子を口いっぱいに頬張っていたため

まともな応対は出来ようはずもなかったが・・・。

 「母さん。」

母親ユイが初号機から帰ってきて数日が経過していたが シンジは、まだこの実の母親の実体を掴みえてなかった。

ユイは、帰還後の最初の夜こそゲンドウと過ごしたが 次の日から コンフォートマンションの

ミサトの隣の部屋にレイと一緒に移り住んで来ている。 

 シンジとアスカが引越祝いをかねて訪問した時 母ユイは、自宅に引き込んだ端末の前に座りっぱなしで

引っ越しの後かたづけはレイがひとりでやっており、かの端末の画面には訳の解らない文字が羅列していた

アスカ曰く10カ国以上の言語が表示されていたらしい。

 そして 昨晩に至っては、母が得意技と宣った四川風中華料理を作ってくれた。 それは素人と思えないほど美味であり

シンジが手ほどきを請うたところ

 「アスカちゃんがそのうち食べさせてくれるわ!!」

と意味深長な言葉を賜った。話を振られたアスカは、顔が引きつっていたが・・・・

 シンジが見たところアスカにあっても、彼の母親と言うこともあろうか、ユイになついており 

レイも加わって あれやこれやと女同士の会話を楽しんでるようであった。

 勿論 その状況はシンジにとって不快であろうはずもない。

 シンジは母ユイに対して不満があったわけではなかったが、どうも理解の域を超えている

 シンジは、アスカやリツコを頭脳明晰な天才と感じていたが どうやら 母親ユイは、その二人をも超えているらしい

意地っ張りのアスカもユイの意見には素直に従っていたし リツコに至っては師事するような態度も見受けられる。

 母親ユイは

    「アスカちゃんの才能を伸ばさなければ人類の損失よ!」

とアスカの才能をかっていたが・・・。

 そんなシンジが 今日 司令室に来た理由が一つあった。

 自宅では 聞きにくい理由が・・・・。

 「母さん!!」

 「何 シンジ?」

ユイは、頬張った和菓子をお茶で流し込んでシンジに答えた。

 「あのさ ちょっと聞きたいことがあるんだけど?」

 「何よ?」

ユイは、ディスプレイから目を離して 不安そうにしている息子を見つめた。

 「えーっと アスカのお母さんのことだけど・・・。」

 「キョウコのこと?」

ユイにしてみれば そろそろ アスカか彼女を思いやったシンジが訪ねてくることは予想していた。

 「うん 母さんは、アスカのお母さん キョウコさんを呼び戻すって言っていたけど どうなっているのかと思って」

 「おや アスカちゃんがあんたに何か言ったの シンジ??」

ユイは、シンジの気持ちを判ってはいたがそれを無視した

 「そんじゃないんだ。僕は 母さんが帰った来たけど アスカは・・・。」

 「ストーップ、ちゃんと考えてるわよん。」

ユイは手でシンジの言葉を制した。

 「キョウコはね。あたしと違って 精神だけ取り込まれたわけだから 器が必要なのよ それで・・・。」

シンジの疑問にユイが答えようとしたところ 端末に新しいメールの着信音

 「ほい」

ユイは端末のモニター見た後 シンジに告げる

 「噂をすればよ シンジ!・・・・っと 培養に2日 構成に3日 プログラム形成は平行させて・・・。

 シンジ キョウコのサルベージは一週間後に実施するわ。アスカちゃんに伝えといて! それから

 それまで弐号機は凍結!その間に使徒が出現したら・・・。レイを初号機で出動させるわ。ゲンちゃん

 それを各所属に通達して。」

ユイは、シンジと傍らのゲンドウに指示を出す

 「わかった。」

ゲンドウはユイに従い電話を持ち連絡を取りだした。

 「なんで レイ一人なんだよ?」

シンジはユイの指示に異を唱える。

 「なんでって 今のあんたが初号機に乗っても今までの半分も力が出せないわ。」

 「そんな 何でなのさ?」

シンジから素朴な疑問が湧き起こる

 「何でなのさと 聞かれれば 答えてあげるが世の情けってね。」

 「いいから 教えてよ。」

 「世界のは・・・」

 「それはレイがやったらしいから二番煎じだよ。」

 「うぅー シンジの意地悪!!」

ユイは、悪戯を咎められた子供のように拗ねる。

 『あー まただ 母さんって・・・』

母親に対する疑問点がまた沸いて出てくるシンジ

 「しかたない 教えてあげるわよ。」

気を取り直したユイが話し出した。

 「シンジ エヴァはリリスのコピーだって事は知ってるわね?」

 「うん」

 「で エヴァを制御しているのはコアなの 今まではあの部分にあたしがいた。」

 「それも判る」

 「だからよ 素人同然のあなたでも戦闘が出来たのは 今はいない もっとも

 あんたがコアを反応させる資質があるのは確かだけどね」

 「資質?」

シンジは新しい事実に戸惑う

 「そう アストラルサイドに干渉する力 そして、そこから物質界に力を具現させる能力のことよ。」

 「ATフィールドのことだったかな?」

 「そう ATフィールドはその力の一形態 熟練すればいろんな形態で出せるようになるわ。

  それ以外に、アストラルサイドからエヴァの物理的行動を制御する力も資質に含まれる。」

 「いろんな形?」

 「そう まあ あんたにも出せるように努力して貰うわ。そもそも あのコアっていうのはかなり昔から

 あった物なの そう 20世紀の初めくらいかな あれの本来の名前は霊子水晶っていうのよ。」

 「霊子水晶??」

初めて聞く名前をシンジは反芻した。

 「昔はね。その水晶をコアにして蒸気機関で動く霊子甲冑なんて物があったらしいけど・・・・。

 で今のエヴァの駆動は・・・・」

 「もう いいよ。母さんの話は長くなるから・・・。」

シンジは意識してユイの話の腰を折る 母親の蘊蓄好きは相当な物で昨日もシンジがこの間のレリエルなる

使徒について質問したら クライン空間から始まり ディラックの海の存在の有無の可能性 負のエネルギーだの 量子力学だの

の説明を延々講釈しだして 果てはミサトの父 葛城博士のスーパーソレノイド理論とその実用性まで話し出したものであった。

シンジにしてみれば 半分も理解し得なかったが アスカだけは専攻で論理物理学を選択していただけに

ふんふんと興味深く聞いていた。その姿を見たシンジは、母親の蘊蓄にはアスカを専属で対処させようと決心していた。

 「うー シンジのいぢわりゅー・・・。」

好物を取り上げられた子供のようにユイの目に涙がにじむ。

 「だいたい 母さんの専門は生物工学だろ?エヴァを作ったのだから?」

 「それは、冬月先生のところで勉強しただけよ。初めは論理物理学と理工学で大学を出たの 勿論 日本じゃないわよ。

 キョウコとはそのころからの腐れ縁!13歳で卒業後、あたしは、3年間の放浪の旅にでたわ。」

 「なんだよ。この間言っていた武道の修行か?」

 「そうねぇ 初めは旅行するつもりだけだった・・。でもね 中国の奥地で 神秘を見つけて それで3年よ。」

 「なんだよ 神秘って?」

シンジの答えにユイはどことなく遠くを見るような視線を走らせた。

 「うん さっきから言っているアストラル界からの力の具現よ。」

 「それって・・・・。」

 「そう それを体得し 論理付けするため生物学的に見直そうと思って勉強をしている所にゲルヒンからの誘い

 渡りに船だったわ。キョウコもいたしね。それから あんたの父さんに出会って プロポーズされ結婚したの

 あとは知っての通りよ。」

 「ふーん」

シンジは頷いてから 部屋の隅にいるゲンドウに視線を移す

 プププ

父の顔を見て笑いが込みあげるのをシンジは必死の努力で耐えた。

 母と再会後、ゲンドウは髭を剃りサングラスも外してしまった。

翌日 出勤してきたゲンドウを見てネルフ自体が大パニックになったのは記憶に新しい

 ほとんど大半の者はシンジが今したのと同じ反応であったが 中には抱腹絶倒ししばらく使い物にならない職員もいた。

 父親ゲンドウの顔をまともに見たミサトやアスカなどは幽体離脱まで起こしかねない様子だった

 ユイと言うとゲンドウを見て笑いを堪える職員達にあからさま不快のこもった表情をし

 「こんなに ハンサムなのに何故みんな笑うの?」

などど憤慨したものであるが

 『やっぱり 母さんって変?そんな血を受け継ぐ僕って?』

とシンジは将来に不安を覚えたが それを口に出したら

 「あんたには あたしがついているからいいの!」

とアスカに一喝されてしまったことを思い出した。

 「話が逸れちゃったわねシンジ。キョウコのことは心配しないで良いとアスカちゃんに伝えてよ。」

 「うん 解った。」

 「ところで あんた」

ユイはゲンドウに会話を振る

 「なんだ ユイ?」

 「参号機と四号機、それとS2機関の接収の件だけど・・。進んでる?」

この問いかけにゲンドウは渋い顔をする

 「あちらさんが、拒否の姿勢を崩さん。」

 「そんなこと言っていると・・・・。えーい あんた、私が作成したレポートをあんたの名前で

 公表しなさい。国連と各国 特にアメリカ政府にS2機関の危険性を知らしめるのよ。」

 「そうするのか?」

 「そう 危険性の説明 あそこの4流学者じゃ暴走するのが落ちだわ。」

 「そうか。」

 「まあ したらしたでそれは運命 あたしは、そうさせないように努力はしたんだから・・・。

 で もしそうなって エヴァを引き取ってくれなんて泣きついてきたら かの政府から

 思い切り予算をふんだくるのよ。セカンドインパクトの余波で国民が、苦しんでいるのに

 軍備拡張なんて ほざいていたあの国からね。いーい あんた そん時は、あたしが

 ハッキングした、あのファイルを公表して 政治家 軍事企業を社会的に葬り去るのよ!」

 「あいかわらず ユイは厳しいな!」

ゲンドウは、微笑みを浮かべる ユイに引きづり回されながらも彼女が側にいるということを実感できたからであろう。

 「じゃ 僕は行くよ!」

シンジは良い雰囲気の両親に別れの言葉を告げ司令室を後にした。

 この後 ゲンドウが資料を公表し関わらずアメリカからエヴァ2体とS2機関の提出は拒否され続けた。

そして 最悪のニュースがネルフ本部にもたらされる。

 

コンフォートマンション ユイの部屋

 「アメリカ第2支部が消滅?」

台所でタマネギの皮を剥いていたユイが レイから情報をもたらされた時 ユイは顔色を失っていた。

 「畜生!!」

ドン

ユイの拳がテーブルの上に散らばったタマネギの皮に叩きつけられる

 この時 ユイにお願い いや半ば命令され夕食造りを手伝っていたアスカは肩をすくめ

ジャガイモの皮むきを中断して ユイの顔を覗き見た。

 そして アスカは、初めてユイの怖いほど真剣な表情を目の当たりにする。

これまで ユイが帰還してから アスカは彼女の 優しい表情や笑った顔 お茶目な顔 そして 時折見せる意地悪な視線

しか 見ていない だから アスカにしても少しおちゃらけたひょうきんな性格の持ち主とユイを判断していた。

 が 今の彼女をみて新しい一面を垣間見た気がした。

 「あの おば様?」

アスカが恐る恐る呼びかけると ふと気付いたように ユイはいつもの表情を取り戻した。

アスカは最初は『お義母様』と呼ぶようにユイに強要されていたが さすがにアスカにしてみても

恥ずかしいのか今のように『おば様』と呼んでいた ユイも顔をしかめたものの あきらめたのか

以後は言われるままにしていた。

 「あ アスカちゃん ゴメンゴメン 怖い顔しちゃった ちょっち 腹が立ったから。」

 「腹が立ったって アメリカ政府?」

アスカには事前にある程度の説明が為されていたため ユイの怒りの矛先を確認した。

 「いいえ 自分によ。」

 「自分に?だって おば様は、回避すべく努力をしたんじゃ?」

ユイは、アスカの言葉を聞いて自嘲気味に微笑む

 「そうね。でも もっと 脅迫まがいの手を使っていれば、なんて 思うのよ。まだ あたしは甘かったのかな?」

 「そんな・・・。」

 「あたしはね、自分がやりたいと思ったことに集中しちゃうと歯止めがきかないの!だから 今回は自重してしまった。

 キョウコ アスカちゃんのママがいたら あたしは好きなことが出来て 今回の事故も防げた。ううん 馬鹿なことで

 仲違いしてなければ エヴァの事故なんてなかった。あたしもキョウコも取り込まれなかった・・・・・。」

ユイの言葉が詰まる アスカはユイになんと言って良いかわからなかった。

 アスカにしてみればここ数日のユイを見る限り あのゲンドウを尻に敷く存在感 複数のプロジェクトをテキパキこなす

実行力 そして幅広く奥深い知識  格闘訓練で飛び入り参加して保安部員を全て熨した力 あらゆる面で優秀な能力を

遺憾なく発揮していた。その上で、炊事、洗濯等の家事の能力をも一般以上に保有していた。

 まあ 性格にしては前述の通りであるが・・・・。

 よって アスカも母キョウコがユイに対した評価は的を射ていたと感じていた。

 「悪かったわ! 将来の義娘を前に 情けなかったわ! さあ さっさとキョウコに帰ってきて貰わなけりゃ 

 あたしが あたしらしくなくなるわ!ははは さあ 料理 料理。」

そこまで言うとユイは再び タマネギと格闘を始める。

 『あの おば様が頼る ママか?』

アスカは自問していた。自分の幼い記憶の中の母親は とてもではないが ユイを支えるなんて出来そうもない

実際 アスカの記憶の中の母親はあまり褒められた者ではないとアスカ自身思う、そしてそんな母親と再会出来るのを

嬉しいと思う反面 不安な部分があるのも否定できない事実であった。しかし ユイは、心底キョウコの復活を待ちこがれている

ような面が見受けられる そう アスカの知らない キョウコの本質を知っているが故・・・

 『あたしの 知らない ママ』

 その母親は、目の前のユイが頼りにするほどの人間らしい アスカは、キョウコに親子の再会という以外に

会うのが楽しみになっていた。

 

数日後 

 ここは弐号機のゲージ キョウコのサルベージ作業が今行われようとしていた。

LCLを満たした空のエントリープラグが弐号機に挿入される。

 「シンジ 大丈夫かな。」

アスカが不安な目つきで作業を見守る

 「大丈夫さ。」

シンジはアスカの横に立ち その手を軽く握る

 キュウッ

アスカは、不安を押さえ切れず その返す手に力を込める

 『アスカ!!』

 「あーら キョウコが見たらびっくりするわよん!」

そんな 二人を後ろから 冷やかす声がする 二人が振り返ると

オレンジを基調としたプラグスーツを着たユイがゲンドウと冬月を従え立っていた。

 「母さん(おば様)??」

 「どう似合う?」

ユイは両手を広げくるりと回る

 「なにするんだよ母さん?」

シンジは脳天気な母親を咎める

 「なにって キョウコのサルベージに決まってるじゃない。」

 「なんで 母さんがプラグスーツを着るのさ?」

 「何故かって 聞かれたら 答えてあげ・・・。」

返ってくる いつものフレーズ 

 「もう 母さんと口聞かない!!」

シンジはプイッとばかりに横を向く

 「あーん シンジー。」

ユイが嫌々をして身体をくねらせる

 「ちゃんと 説明してくれる?」

 「・・・はい」

ユイは仕方なく首を縦に振る

 「何故 プラグスーツを着ているのさ?」

 「アクセスプラグに入るからよ。」

 「「アクセスプラグ?」」

シンジとアスカはユニゾンで声を上げる

 「そうよ ユイちゃん謹製アクセスプラグ あ ちゃんと答えるんだから 質問は手を挙げてからね。」

 『母さん・・・・まあ これくらいは引いてあげるよ。』

シンジは心の中で母親に返事をしていた。

 「はい 母さん」

シンジは、渋々手を挙げる

 「はい 質問をどうぞ シンジ!」

 「アクセスプラグってなんなのさ?」

 「はい それはね。このサルベージ作業にはMAGI以外にもう一基の生体コンピュータを使用するわ。」

 「何時作ったのさ で どこにあるの?」

 「ここ!」

 「だから どこさ?」

 「あんたの目の前!」

 「母さんしか居ないじゃないか!!」

 「ピィンポーン おーあたりー。」

 「??」

ユイは肘を曲げ人差し指を立てる

 「そう あたしこそ 今回MAGIをリードする。生体コンピュータ 碇ユイちゃんでーす。」

 「なに なんなの?」

シンジには真相が見えない

 「だから あたしが、MAGIにサポートさせ 今回のサルベージを執り行う。そしてアクセスプラグはMAGIへのエントリープラグ

 そう キーボード代わり ううん 言語の介入さえ無視して 思考を入力するシステム うーん 我ながら すばらしー。」

ユイは自画自賛するなり 一緒にゲージに来たゲンドウと冬月に目配せする

 ゲンドウ 「やるのか?」

 冬月   「私は気がすすまんのだが!!」

ユイに何かを命じられたらしい ゲンドウと冬月はモジモジしている

 「やりなさい!!」

ユイの視線が鋭さを増す

 「「・・・・はい・・・・」」

どうやら覚悟が出来たらしい

 「じゃ いくわよ!我ながら すばらしー!!」

ユイが声も高らかに自画自賛する

 「「ユイちゃん偉い!!」」

ビシビシ

ゲンドウと冬月はユイの左右に位置し どこからか取り出した日の丸扇を両手に持ち それを斜め上に持ち上げる

 「「ユイちゃん天才!!」」

ビシビシ

 今度はそれをユイの方に指し示す

 「「ユイちゃん世界一ぃぃぃーーーっ!!」」

パタパタパタ

最後は 片膝をつき 両手の扇をユイに向かい仰ぎ出す

 ぴしっ

ユイはそれを制して 拳を突き上げガッツポーズをする。

 現場にいた者 シンジとアスカに限らず みんな声を失い凍り付く

 ネルフの司令と副司令って??

 「ちょっと あんた達 まだ 照れが残ってるわよ。ゲンドウさん 一人とばさないで 冬月先生にあわせて!!」

ユイはゲンドウと冬月のユニゾンの感想を述べる

 「私たちの威厳は、どうなる。」

 「あきらめろ 碇 おまえも私もユイ君には逆らえん。」

 「うぅぅ・・・。私には失望した。」

 「恥をかかせおって・・・。とほほ」

二人の呟きがゲージに流れる・・・・・哀愁。

 「あ あの おば様。」

場の空気を断ち切るべくアスカが怖ず怖ず手を挙げる

 「はい アスカちゃん。」

ユイはアスカを指名する

 「あの 確かシンジの話では、ママが帰ってくるためには器が必要だと聞きましたが。」

ポン

ユイはその質問を聞き 掌を拳で叩く

 「いー 質問ねアスカちゃん 流石は未来の家の嫁!!」

ユイはアスカを褒める

 テヘヘヘ

褒められて 顔を赤らめるアスカ 自然に頭を掻く

 「でぇわ。器を作るためには 何が必要か。一番簡単なのは、キョウコの抜け殻 つまり魂のない身体

 があればいいんだけど。それは 死体として荼毘に付されているから ない!!」

 「・・・・」

母の葬式を思い出し少し暗くなるアスカ

 「アスカちゃん 暗くならない!!キョウコは、すぐ帰ってくるんだから!さて ではどうするべきか

 ドイツ支部に答えはあった。そう キョウコの胚の存在!!」

 「「!!」

息を飲むシンジとアスカ

 「それを ゲットしてきたのがこの人 リョウちゃん!!」

ユイは、ゲージの入り口の方を指し示す

 「いよっ!」

行方不明になっていた加持が姿を現す。

 「「加持さん!!」」

加持の姿を認めたシンジとアスカから嬉しそうな声が生まれる

 そう シンジにとっては兄の様な人 アスカにとってはかつての憧れの人

 「あたしは、リョウちゃんに、セカンドインパクトの真実を教えた。リョウちゃんはその報酬として

 キョウコの胚を取ってきてくれた。」

ユイの説明が続く

 「で リョウちゃん 決心はついた??」

ユイは加持の瞳を見据える

 「は ユイさんにはかないませんよ。あなたの忠告どおり ゼーレと戦自からは手を引きます。

 もう 知りたいことは、わかったし・・・。後は自分の良心に従って生きますよ。」

加持はそう返事をして ユイの顔を見つめる

 「そうね 自分の良心にか・・・。ある意味それが生き方の真実かもね。OK リョウちゃん それでいいわ。

 たとえ あなたの生き方が あたしの生き方と違って袂を分かつとしても・・・。」

ユイは微笑む

 「そうならないことを願いますよ。ユイさん あなたを敵にしたくない。それは 恐ろしいことだから・・・。」

 「そう?あたしは、優しい女よ?」

 「えー あなたの味方に居るうちはね。ユイさん!」

 「ユイちゃんって呼ぶの!!!」

ユイは加持の呼びかけを咎める 肩をすくめる加持

 「おば様 で?それから どうなるんです?」

話が横道に逸れそうになったのをアスカが修正しようと口を挟む。

 「あ そうそう キョウコの胚からだったわね。で それを このユイちゃん特製培養液『ふえーるくん』に入れて増殖

 これは 細胞の分裂を促進させ 劣化減退を防ぐ為の培養液で・・・。」

ユイは試験管に入った ぶくぶくと怪しげな気泡が発生する赤い液体を指し示す

 「これを 高濃度のLCLにいれ キョウコ出汁のLCLを作り レイの力を使って エヴァを起動 キョウコの魂が

 拒否しないなら簡単な事よ。で 高シンクロ率を保ちながら あたしがサポートして身体を構成し精神の移築を

 行うのが 今回のプランよん。」

ユイは胸を張りゲンドウと冬月を見やる。

 「やるのか?」

 「とほほ・・・。」

 「「ユイちゃん偉い!!」」

先ほどと同じ行動をする ゲンドウと冬月・・・・再び哀愁。

 「馬鹿やってないで さっさとやるわよユイ。アスカが待ってるでしょ!!」

ポーズを取ろうとしたユイを制止するように いつの間にかやってきたレイが言い放つ。

 「うぅぅ レイのいぢわりゅ!」

もっと蘊蓄を垂れたいユイは不満を露わにする。

 「キョウコさんが帰った来たら怖いわよ。」

レイは続けて窘める。

 「ぐぐぐ 解ったわよ。さあ サルベージ開始よん!」

ユイは名残惜しそうに アクセスプラグのある部屋に歩き出す

 「おば様 お願い!」

そんなユイをアスカが呼び止める

 「任せなさい。あたしは、天才 碇ユイよ!」

ユイは親指を立てらせる。

 『『マッドじゃないよね?』』

心の中でユニゾンするシンジとアスカであった。

 

 プシューウ

弐号機からエントリープラグがイジェクトされる。

 「ママ!!」

アスカが毛布片手にプラグに駆け寄る

 「生命反応1つ!!」

ゲージにアナウンスが響き渡る

LCLがハッチから溢れ出す。

カチャ

中から プラチナブロンド 蒼い瞳のビーナスと見間違うような女性がうつろな表情で現れる

 「ママ? ママなの??」

戸惑うアスカ。アスカには幼いころのも母の思い出はある しかし 目の前の女性は・・・。

 「キャハハハ!!! 見なさい 大成功!!ユイちゃん大天才!!」

騒がしい声を響かせながらユイがゲージに入ってくる

 「どうしたの アスカちゃん ママよ?」

キョウコは、固まっている娘に声を掛ける

 「だって だって・・・・・ママ?・・・・・若すぎる!」

 「え!?」

キョウコはアスカの思いもよらない言葉に思考が止まる。

 「ちょ ちゅおっと アスカちゃん 鏡貸して!」

母親の頼みに私服で来ていたアスカは、バックから手鏡を取り出しキョウコに渡す。

慌ててのぞき込んだキョウコの肩が震え出す。

 「ちょっと ユイ!!」

 「なによ あたしとあんたの間じゃない お礼なんかいらないわよ。」

ユイは、にこやかに笑う

 「まあ お礼は言うけど ユイ あなた 私の身体を構成する時 いくつの私をイメージしたの?」

 「決まってるじゃない。18歳・・・・。」

賢明なユイは早くも間違いに気付いたようだ。もっとも 本当に賢明ならこんな間違いは犯さないが・・・。

 「ごめーん キョウコ、アスカちゃん でも でも アスカちゃん 間違いなくキョウコなのよ。外見はともかく!」

ユイは、アスカに叫ぶ。その ユイの声にアスカは反応していた。

 「ママ ママなのね?」

キョウコは黙ってアスカを優しく抱きしめる

 「ママ ママ うぇーん。」

アスカは、胸一杯になった感情を抑えきれなかった。

 長い時を経て抱き合う親子 響くアスカの嗚咽の声

 ゲージからは一人二人と気を利かした作業員達、ゲンドウと冬月、加持が立ち去っていく。

 「さあ 行こうシンちゃん!」

レイがシンジに呼びかけた。

 「う うん。」

シンジは抱き合う惣流親子に感動していた。

 「行こうか レイ。あれ 母さん?」

シンジは、抱き合う二人を見つめるユイに気がつく

 「ちょっとアスカちゃん いーい!」

ユイの視線に気付いたキョウコは泣いているアスカに声を掛ける

 「!?」

不思議そうなアスカ

 「ユイ! いらっしゃい!」

キョウコはユイを呼ぶ

 「えーん キョウコー!!」

ユイは、泣きじゃくりながらキョウコの背中にすがりつく

 「○△□☆%$??」

思考が停止し意味不明の言葉を漏らすシンジ

そんなシンジを尻目に

 「ユイ 相変わらず 甘えん坊さんねぇ。もう 一児の母親でしょ?」

 「だって だって 寂しかったんだよー。」

 「ゲンドウさんが居るでしょ?」

 「だって あの人はあたしに甘えるばかりで・・・。」

 「もう ユイ あなたにはしなきゃいけないことがあるでしょ。」

 「うん 解ってるって でも 今は いいでしょ?」

 「はいはい 背中くらいは貸してあげるわ。」

 「ありがと!おかえり キョウコ!!」

 「ただいま そしてありがとう ユイ!!」

アスカは二人の会話をキョウコに抱かれながら聞いて 母親の背中にすがりつくのが

あのユイであることを確認していた。

 あの バイタリティの固まり 優秀 天才という言葉の権化のようなユイ そのユイが無条件で

頼り切ってしまう女性が自分の母親であることをアスカは誇りに思った。

 

 「・・・・・。」

シンジは有無をも言わさずレイによってゲージの外に引き吊り出されていた。

 「どうしたの?シンちゃん。」

 「いや 母さんの新しい面をまた見たかなって?」

 「ユイは、結構寂しがりやなの!」

 「そうなんだ。」

 「司令は、あの人に甘えるばかりだし・・・。」

 「あれで?」

シンジは、尻にひかれているゲンドウをイメージする。

 「そう。シンちゃんには、まだ甘えられないし・・・。」

 「でも あれでいいの。キョウコさんが側に居るユイはおそらく能力全開よ。

 権謀術数 たくさんの発明 そして 言語を越えた思考能力!

 暴走しそうな時はちゃんとキョウコさんがブレーキを掛けてくれる。」

 「そうなんだ。」

 「水魚の交わりっていうのかしら?」

 「なにそれ?」

 「劉備と諸葛亮よ ちょっとは 勉強しなさい!シンちゃん。」

レイは呆れたのか先に立って すたすた歩き出す

 「待ってよレイ!」

シンジはレイの横に並ぶ ふとシンジに疑問がわく

 「あのさ?母さんとキョウコさん喧嘩したって言っていたけど・・・。」

 「理由知りたい?」

 「知ってるの レイ?」

 「だって あたしと ユイは記憶を共にしたのよ!」

レイは諭すようにシンジに言う

 「じゃ 何故なんだよ。」

レイは、しばしの沈黙の後

 「赤○よ!」

レイは、伊勢地方の銘菓の名前を口にする

 「●福??」

 「そう ユイが、キョウコさん楽しみにとっておいた それを、食べちゃったの!」

 「そ そ そんなことで??」

シンジはにわかに信じがたかった。

 『そんなことで 間接的だとはいえ エヴァに取り込まれる原因になったのか?』

そんな シンジの考えが解ったのかレイは

 「天才って人たちは解らないわね。あたしの研究課題だわ?」

悪びれずさらりと告げる。

 『うーん 母さんとキョウコさんて?』

実の母と将来おそらく義理の母になる女性について考え不安になるシンジであった。


 ついに キョウコも帰ってきた。勇気百倍あたらなる作戦に頭を巡らせるユイ。

 そんな中 アメリカが参号機の所有を放棄 多大な補償とともに それを接収したネルフ本部

ユイとキョウコは、新しいエヴァンゲリオンのパイロットにとトウジをスカウトすべく第壱中学に赴く

 そして 露わになる キョウコの実体 惣流・キョウコも やっぱり変人か?

 そして シンジとアスカには、あたらなる試練が訪れる。

 次回 「四番目の適格者!そして 新なる旅立ち」

で ユイのキャラクター構成で参考にしたのは、かの「○地無用」の白○鷲○です。

マッド・サイエンティストいえば彼女でしょう。 え そのままだって??


アスカ:やっとママに会えたわっ!(^^)

マナ:まったく・・・このマザコン娘。

アスカ:ママって、ユイさんとも仲がいいみたいね。

マナ:このユイさんといい、2人が揃うとなんか怖いわ。

アスカ:赤福くらいで大騒ぎ起こす2人だものねぇ。

マナ:シンジじゃなくても、不安になるわよ。

アスカ:赤福・・・おいし。(*^^*)

マナ:あーーーっ! わたしの赤福ぅぅぅっ!(ジャッキーーン!)(ーー#

アスカ:赤福くらいで、大騒ぎしないのっ!

マナ:やかましぃっ! 燃えろーーーっ!(ゴーーーーーーーーーーーーっ!)

アスカ:いやーーーーーーーーーーーーっ!(TOT)
作者"もん"様へのメール/小説の感想はこちら。
nishimon@mail.netwave.or.jp

感想は新たな作品を作り出す原動力です。1行の感想でも結構
ですので、ぜひとも作者の方に感想メールを送って下さい。

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