第10話 女の、戦い

 

 ネルフ司令室 土曜の昼下がり 

相変わらず ユイは端末の前に座ってキーを叩いている。

部屋の中にはゲンドウと冬月が応接セットに座っており ゲンドウがユイの為にケーキを切り分けている

コーヒーの芳ばしい香りが部屋中に漂う

 「ユイ 切りのいいところで一服しないか?」

ゲンドウが仕事に熱中しているユイをコーヒーブレイクに誘う

 「うん わかったわゲンちゃん あ 今日はイチゴケーキか?OK一段落したし

 今後のことについてもお話しましょう。あ キョウコも呼んだ方が良いかな?」

ユイは作業の手を休めゲンドウ達に向き直り安らいだように返事をする

 「ああ そうすればいい。話し合いはケーキの後にしよう。」

 「でも キョウコ 先に食べたら怒るわよ!」

ユイは意地悪そうな視線をゲンドウに向ける

 「む そ そ それは では 残しておけばよい」

ゲンドウもキョウコが怖いのかしかめっ面になる。

 「そうね そうすればいいか。じゃ!」 はーと

納得をしたユイが舌なめずりをしながらソファーに近づいていった その時

 「葛城三佐 入ります。」

入り口の自動ドアが開き お供にジャージ姿のトウジを伴って 制服を着たミサトが現れる 

 「あ ミーちゃん トンちゃん いらっしゃい!!」

ユイが、ミサトとトウジに気付き歓迎の意を表す

 「あ ユイさ ・・・ちゃん こんにちは。」

トウジは、躊躇いがちにユイの名を呼ぶ

 「どう 施設はあらかた回って 着任の挨拶もすんだ?」

 「はい ミサトさんに連れられて 行ってきましたわ。」

トウジは並んで立つミサトに視線を横目ではわせる

 「そう ミーちゃん ご苦労様」

ユイはミサトの労をねぎらい 傍らのゲンドウに目配せする ゲンドウは無言でコーヒーカップと

切り分けたケーキをミサトとトウジの為に用意する

 「あ なんか 恐縮です・・・。」

ミサトが困った顔をする、司令であるゲンドウに小間使いをさせるのだから当然であろう

 『いや 司令って ああ見えても 結構こまめな人なんだ シンちゃんと同じねぇ・・・。』

そんな ミサトの思惑とは別にゲンドウが声を掛ける

 「葛城君はブラックでいいな。・・・・ジャージ君はどうする?」

ゲンドウはトウジの姿を見てそう呼んだ。

 「あ ワシもブラックでええですわ。小使いさん。」

ゲッ

 ミサトの顔色がさっと変わったのにトウジは気付かない

 『司令を小使いだなんて 鈴原くーん 頼むわー』

タラッー まずい展開を予想して流れ出る冷や汗

 「そうか。では 座れ ケーキもあるぞ。」

 「ほな 遠慮なく どなんしたんですかミサトさん?」

ミサトがまさか目の前の妙に目つきが鋭い小使いさんに対して気を遣っているとは思いもよらないトウジ 

 「あ いや はは」

ミサトは引きつったような笑いを浮かべたが、ゲンドウが別に気を悪くした素振りを見せないので

これ以上事態が悪くならないように そそくさと席に着く。

 「さて トンちゃん 挨拶はここが最後ね。あたしは、知ってのとおり 司令部付き 碇ユイ そしてこちらが

 冬月副司令。冬月先生 フォースチルドレン鈴原トウジです。」

 「ああ 鈴原君 期待しているぞ。」

 「よろしう 副司令はん ワシはここへ来た時 あんたさんが司令と思いましたわ」

トウジは頭を下げ思ったことを素直に口にする ユイは更にゲンドウを指し示し

 「トンちゃん そして この人が碇ゲンドウ ここのネルフの司令 そして あたしのダーリンよ。」

ユイが、ゲンドウを紹介する

 「げ あんたが・・・・すんません。」

トウジは小使いと勘違いしたことを謝る

 「いい 別に気にしていない。それに私はユイの小使いであることは事実だ。シンジがアスカ君の小使いなようにな。

 鈴原君 いつもシンジ達が世話になっているな。そして 今回 参号機のパイロットを引き受けたことを感謝する。」

ゲンドウはその場で深々と頭を下げる 慌てて同じ行動を取るトウジ

 「さて トンちゃん。引っ越しは終わった?」

 「おかげさまで たいした荷物もないさかい。」

 「そう・・・」

トウジはフォースチルドレンを引き受けてから、警護の必要上 コンフォートマンションのシンジ達と同じ階に引っ越しを

させられていた。もともと妹ナツキと二人暮らしである たいした荷物はなかった。トウジの両親は数年前に他界しており

現在は第三新東京市の庇護の元 二人暮らしの生活を送っていた。セカンドインパクト以降保護者不在の場合は地方の行政体が

保護者代行業務を行うケースが増え トウジもその影響下に置かれいた。もちろんそれを可能にしたのは彼らの両親が

十分な物を子供達に残したせいもあるが・・・

 「妹さんも うちの医局に移ってくれたわね?」

ユイは確認の意味でトウジの妹の所在を聞いた。

 「へい おかげさまで。」

エヴァのパイロットを受けた以上トウジはネルフの職員であり その家族も 福利厚生上 先進医療の旗手たるネルフ

の施設を利用可能であった。

 「うーん 確か 神経の損傷による右手と両足の麻痺だったわね。」

 「ええ なんでも その筋の名医が今度こちらに来られたそうで・・・。」

このトウジの発言にユイは首をうんうんと縦に振る

 「そうね なかなかの腕よ あの人。えっとナツキちゃん あ ナッちゃんでいいわね? ナッちゃんの担当になってもらったから。」

 「ありがとうございます。ユイちゃん・・・・・。 ところで あの ちょっと聞きたいんやけど。」

トウジは ユイ達に質問を投げかげた。

 「なあに トンちゃん??」

 「いや ユイさん達 ワシをスカウトに来た時 ナツキのこと条件に出しとったら ワシ絶対に断らなんだのに

 なんで せなんだんかなって思うとったんや?」

その問いかけにユイは 微笑みながら しっかりと回答する

 「あなたには自分の意志でに乗って欲しかったから。」

 「はあ?」

 「それにね。たとえ断っても妹さんにはこちらに来て貰うつもりだった。」

 「え なんで ですか?」

意味がわからぬトウジ

 「お礼の一部よ!」

ユイは照れくさそうに頭を掻く

 「お礼?」

 「そう あたしとキョウコ ううん この人やシンジ、アスカちゃん いやレイだって あなたと相田君、洞木さんに感謝

 しているわ。」

 「ケンスケと委員長?どういうことですか?」

ユイはここでコーヒーを少し啜り ポツポツとトウジへの答えを紡ぎ出す

 「あんたね。シンジに、アスカちゃんへの恋心を自覚させたくれたでしょ。まあ あんたたちにとっては

 シンジをからかうつもりだったかもしれないけど・・・。」

トウジはケンスケとアスカのことでシンジをおもしろ半分に冷やかした事を思い出した。

 「あんたたちと洞木さんのアドバイスでシンジは自分の中のアスカちゃんへの想いを知った。

 そして それでアスカちゃんを・・・・人を知ろうとした。その結果 あたしはエヴァの中から目覚めた。」

 「エヴァの中?」

 「そう あたしとキョウコは あたしは初号機 キョウコは弐号機の中に10年以上も取り込まれていた。

 実験中の事故によってね。そのため 年齢より若いの!」

トウジは、今までユイ達が子供と同居できなかった理由がわかった。

 「そう あたしが目覚め レイを覚醒させ シンジやアスカちゃんの心のケアをさせた。」

ユイは今までの事をトウジに教える 使徒について エヴァの実体 レイの正体 ゼーレの事 人類補完計画

 「あたしたちは、トンちゃんが覚悟した以上に きついことを強いるかもしれない。そう 人類 ううん あたし達の

 愛する者を 生活を守るため!」

全てをトウジに話し終えユイはトウジを見つめる トウジの拳に力がこもる

 『ワシが感じとった以上に 世の中は大変なんやなぁ』

トウジは改めて今までのシンジ達の苦労を思いやった。

 そして 妹やヒカリ ケンスケ クラスメート 今は同僚となったシンジ達の顔が目に浮かぶ

 「ユイさん 改めて これからの事 お願いします。皆さんに頼まれたからやない。ワシは 自分の意志で

 エヴァに乗る ワシの力が少しでもみんなの役にたつんやったら それがワシの存在理由の一つかもしれん。」

決意を口にするトウジ

 「ありがとうね。死なないように 頑張ろう!トンちゃん ううん 鈴原トウジ君ネルフへようこそ!」

 「よろしゆう お願いします。」

 「「「こちらこそ!!」」」

ユイ以外のゲンドウ達がトウジを歓迎する。

 「で トンちゃん あんたと妹さんの保護者だけど・・・あたしじゃダメかな?」

ユイは、トウジに提案を指し示す。

ユイとキョウコの戸籍であるが当然 死亡したとして抹消されていたが 現在再取得中である ネルフの権限を

もってすれば いとも簡単なことではあるが それは ユイ達の存在を公にすることであり ゼーレに対する

宣戦布告も含まれていた。 それ故 ユイはフォースチルドレン獲得までそれを実行しなかった。

 「え でも そんなこと・・・・・。」

 「あたしじゃ嫌?なんなら キョウコに頼もうか?」

 「いや 嫌じゃないですけど 迷惑ちゃうやろか?シンジもおるし。」

 「あら 別に構わないわ。子供が一人二人増えたところで・・・。まあ シンジの弟や妹は事が一段落するまで

 無理だろうから・・・・。その時は大丈夫よね ゲンちゃん!」

ユイは 悪戯っぽく ゲンドウに目を移す

 「も 問題ない!!」

ゲンドウの顔がこれ以上ないくらい赤くなり狼狽える 髭のなくなった今 それが手に取るように伺える。

 『キャハ キャハ キャハ』

ミサトは心の中で狂いそうなほど笑っていた

 『司令のあの顔・・・・。もうダメ』

プププ

 思わず漏れるミサトの笑い

ギロリ

ゲンドウが鋭い視線でミサトを睨む 慌てて 姿勢を正しケーキを口に運ぶミサト ユイはそんな二人に構わず

 「まあ トンちゃん考えといてよ。さあもう医局の方に行っても良いわよ。妹さん待っているし 担当の医師も居ると思うから

 今後の治療について説明を受けたらいいわ。ミーちゃん 案内をお願い!」

ユイはトウジに入院している妹を見舞うことを勧め 口いっぱいにケーキを頬張るミサトに同伴を命じた

 「へえ そうさせて貰います。」

トウジは勢いよく立ち上がり ミサトは慌ててコーヒーでケーキを流し込む

 「待ちたまえ!」

ゲンドウの鋭い声が飛ぶ 思わず身をすくめるミサトと怪訝な顔のトウジ

 「妹さんに ケーキをお土産にすればよい!」

そういうと ゲンドウは 部屋の隅にある戸棚から 小さい箱を取り出し切り分けたケーキ2切れを詰めこんで

トウジに手渡した。

 「あ どうも 気ぃつかわしてすんません。」

素直に礼を述べ嬉しそうにそれを受け取るトウジ 

 『え え 何 何?』

ミサトは、ユイ帰還以前のゲンドウからは思いもつかない行動に当惑していた。

 「行きましょか!ミサトさん!」

トウジに声を掛けられるまでミサトの思考は停止しており それが再起動した。

 「え ええ 行きましょ 鈴原君!!」

後も見ず挨拶もそこそこに立ち去るミサト 司令室を出て改めて可笑しさがこみ上げる。

 くくく

 『女の力って偉大ねぇ』

今更ながらにユイの存在の偉大さを認識したミサトであった。

 

 ネルフ医局 503号 鈴原ナツキの病室

 「お ここやな ミサトさん?」

 ドアの前でトウジはミサトに確認した。

 「そうねぇ。ここだわ。」

ミサトは答えてドアをノックして中に入った。

 ドアが開くと 中から 笑い声が聞こえてくる。

 「あははは お姉ちゃん 可笑しいよ!」

 「もう ナツキちゃんたら お兄さんのこと笑ったらだめでしょ!」

病室に入った トウジの見た物は、病院の寝間着で楽しそうに笑う妹とサラサラのプラチナブロンドの白衣の女性

 「あれ キョウコさん どなんしたんです。」

トウジはその女性の名前を呼んだ。

 「お兄ちゃん キョウコお姉さんがね。お兄ちゃんの学校での話をしてくれていたの

 ねえねえ お兄ちゃん キョウコお姉さんとデートするんだって?」

トウジの呼びかけに答えたのはナツキであった。

 「え へ デート??」

トウジは戸惑った返事をする。少し キョウコの眉がつり上げる

 「え トウジさん 約束したじゃないですか!今度の日曜って 明日ですよ。忘れていたんですか。」

 「いや そんなことは・・・。」

 「忘れていたんですね!!」

 「・・・・。はい 引っ越しとかいろんな事ありまして・・・。」

 「ひどいなあ。私との約束って そんな物だったんですか・・。」

キョウコが寂しそうに目を伏せる

 「お にー い ちゃん!!!」

ナツキから 大声が上がる

 「なんや ナツキ 大声出してからに・・・。」

トウジは首をすくめる

 「お兄ちゃん キョウコお姉さんに謝りなさい!!デートの約束忘れるなんて 最低!!」

 「そんなこと 言うてもな ナツキ。」

 「問答無用!!」

 「わかったわ。キョウコさん すんません。」

トウジはキョウコに頭を下げた。

 「じゃ 明日いいですね!!」

 「へえ お供します」

 「よかった!!」

キョウコは後ろ手でナツキにVサインを送る、嬉しそうに微笑むナツキ

 「しーかし お兄ちゃん角におけないな。てっきり ヒカリお姉ちゃんが本命かと思っていたのに

 こんな綺麗な年上のお姉さんと知り合っていたなんて・・・。」

ナツキが茶化すように頭の後ろで手を組む右手が上手く動かないのか少しぎこちない

 「あ あんなあ そんなこと 言うったって キョウコさんは惣流のお母さんやで・・・!」

 「え!?」

ナツキは、一度ヒカリと一緒にお見舞いに来てくれた 兄の同級生である金髪碧眼の美少女を思い出す

そう言われてみれば・・・・雰囲気がとても似ている

 「あ ナツキちゃんには、本名を言ってなかったわね。私は、惣流・キョウコ・ツェッペリン お兄さんが言うとおり

 アスカの母親です。ある実験の副作用でこんな姿になっています。ナツキちゃん こんなおばさん

 お兄ちゃんとデートしたら嫌?」

ナツキはしばらくあっけにとられていたが

 「ううん 別に ちょっと びっくりしたけど 別に気にしないわ。お兄ちゃんさえよければ・・。

 お兄ちゃんが決めたのならそれでいい エヴァのパイロットになったのも あたしの為だけじゃなく

 お兄ちゃんの意志だと思うから それなら 私は何も言えない!」

 「そう ありがとう。」

 「お兄ちゃん しっかりね。この機会逃したら こんな美人とデート出来ないかもしれないんだから。」

 「あほ なんちゅうこというんじゃい。」

トウジは顔を真っ赤にし 妹をしかる

 「やーい 図星ー。」

 「もう ええわ。」

トウジはそっぽを向いてしまった。

 クスクス

互いに見合って笑うキョウコとナツキ その姿にトウジもつられて笑い出す

 フフフ

 『ナツキが楽しそうに笑うなんて いつからやろな?』

少し感慨にふけるトウジ

 「あのー ちょっちいいかしらん。」

これまでのやり取りを 部屋の片隅で見ていたミサトが躊躇いがちに声を掛ける

 「なにかしら ミサトさん?」

キョウコがミサトに顔を向ける

 「なんで キョウコさんが ここにいるのかななんて 思ったりして。」

 「ああ それは・・・。」

キョウコがミサトの問いかけに答えようとした時

 コンコン

新たなノックの音

 「どうぞ。」

ナツキが返事をすると花束を抱えたヒカリが姿を現した

 ムッ

にこやかな表情で入ってきたヒカリも キョウコの姿を見るや険しさが顔に宿る

 『あちゃー 修羅場かな?』

ミサトはキョウコとヒカリを見て感じた。

 ミサトはトウジに対してキョウコが凄く肩入れしていることを知っていた。先に行われたトウジの待遇を決める時

公にはされていないが今や副司令待遇のキョウコが熱心にトウジ初めチルドレンの待遇改善を申し出ていた。

 その剣幕に、待遇改善を反対する総務部長もタジタジであり結局その全てが受け入れられていた。

 『あー 見たい気もするし この場にいたくない気も・・・。』

ミサトは実際のところ キョウコに頭が上がらない 仕事の面ではキョウコは、ユイの出す一見無茶なプランも

サクサクこなすし リツコの手伝いをし出して このところミサトはリツコの残業する姿など見たことがない その上、プライベートな面での

炊事洗濯掃除なども キョウコはシンジやユイと共にやってくれていた。

 そして 一方 ヒカリにしても 何度か面識があり 優しい几帳面な女の子で トウジに好意を寄せていることを知っていた。

 「あんた なんでここにいるの??」

ヒカリが、キョウコに詰め寄る

 「洞木さん!なんか アスカに物言いが似てきたわよ。」

キョウコはさらりと受け流す 

 「な な なんてこと。あんたバカァ?」

 「ほーら どうせなら アスカがあなたに似てくれたら良かったんだけど・・・。」

 「ぐっ・・・。」

 「おい 委員長!おまえ ほんまに惣流に似てきたで なんか乱暴やし。」

横から口を挟むトウジ その発言にキョウコは少し顔をしかめる

 「あの トウジさん いちおう 乱暴者で性格悪くてその上 口まで悪くて ひねくれ者でも私の娘なんですけど!」

 「わあ すんませんって そこまで 言うとりませんがな キョウコさん!!」

少し呆れた顔をするトウジ

 「まあ 言い過ぎたけど。仲良くしてやってね!」

 「もちろんですがな。惣流とは仲良うします。」

 「あら 私も惣流なんだけど・・・。」

 「キョウコさんは 言うまでもありまへんがな!!」

 「そう ありがとう。」

ここでキョウコはエンジェルスマイル

 『へへ 敵わんな キョウコさんには・・・。』

トウジは顔を赤らめた。

 「ちょっとちょっとちょっと さっきから聞いていれば べたな会話して・・・。私のこと忘れていない?」

ヒカリが不満を露わにする。

 「あ ゴメンなさい。なぜ 私がここにいるかという事ね。実は、私は・・ナツキちゃんの担当医師なのでした。」

 「「「「え」」」」

トウジとヒカリ、ナツキ そしてミサトの声が重なる

 「あんたが なぜよ。」

ヒカリが疑問を唱える

 「え なぜって 私 医学の博士号持ってるもの!16歳で医学部卒業して18歳で博士号とったのよ。もっとも

 ドイツでの話だけどね。ナツキちゃんが現在置かれている症状の治療法で博士号をとったの結構この分野じゃ

 有名だったのよ ドクター惣流の名前!」

 「そうなんでっか じゃ ほんまは 惣流先生って呼ばなあかんですな?」

トウジがキョウコを尊敬の目で見つめる

 「なんか トウジさんにそう言われると くすぐったいわ。キョウコでいいわよ。」

 「そうでっか・・・。」

 「ちょっと 雰囲気出してるんじゃないわよ!」

ヒカリは目を離すとすぐ二人の会話になる キョウコとトウジに苛立ちを覚えた。

 「はいはい ごめんなさい 洞木さん。じゃ 私は退散するわ。ミサトさん行きましょう!」

キョウコはヒカリを気にして別れを告げた。

 「へ はい」

これに応じるミサト

 「じゃ ナツキちゃん 月曜からの治療頑張ろうね。そうだ トウジさんとあなたの家 私と同じマンションになったから

 退院したら 私の手料理ご馳走するわ!!では トウジさん 明日 待ってるわね!」はーと

キョウコはそう言って トウジにウインクをくれナツキの病室を立ち去った。

 

 『はあ なんでこうなるのかな?』

キョウコが立ち去った後 ヒカリは、キョウコにきつく当たったことで少し落ち込んでいた。

ヒカリにしても 彼女のトウジに対する好意は痛いほどわかり それで 彼女に当たるの理不尽な事であるのは承知していた。

 「ねえ 鈴原?」

思い悩んだヒカリはまだキョウコの立ち去った方を見ているトウジに声を掛ける

 「なんや 委員長?」

ヒカリに視線を移すトウジ

 「キョウコさんって素敵だよね?」

 「ああ そんなだけやない。ワシな、中学でたら 働こうと思うとった。親父達の残してくれた金もそろそろ

 そこがつきそうやしな、でもな キョウコさんやユイさんがネルフに誘うてくれて 金はネルフが出すから 

もっと勉強しなさいといわれたんや ワシ今のところは なにがしたいというわけやない。

 でも キョウコさんは、上の学校に行けば選択肢が広がるから是非行けと言ってくれた。

 その上ナツキのことや あの人にどれだけ世話なっとるか・・・・ 

 それと ネルフの機密に関わることで委員長には ちょっと言えんけど ワシの別の目標も出来たんや!」

 「鈴原がネルフに?」

 「ああ 委員長やケンスケにはいわんかったけど ワシ エヴァ参号機のパイロットになるんや。」

ヒカリに告げられる衝撃の事実

 「そ そんな・・・。そんな 危ないこと 鈴原がしなくてもいいじゃない。」

 「ちょっと待てや!じゃ シンジや惣流、綾波なら危ないことしてもええんか?」

シンジらのことを思いやらないヒカリの発言に知らずのうちに声が荒くなるトウジ

 「そんな・・・・。」

ヒカリはもうすっかり アスカ類似モードから通常モードに移っていた。

 「大声出して悪かった、でもな これは ワシ自身が考えて決めたんや。勿論 シンジ達に相談はしたがな。」

 「何て言ったの? 碇君やアスカ」

 「止めとけて言われたわ。でもな 最後には 決めるのは自分って言われた。」

 「そう・・・・。」

 「確かに 怖いわ でもな ワシに出来ることが これなんやないかと思うた。シンジかてやっとるし

 女の惣流や綾波やって それで ワシは承知したんや。そして 今のネルフについて実情を聞いた。

 ワシは 自分の選択は間違っておらんと思う。」

 「鈴原・・・・・。ナツキちゃんのことがあったから?」

ヒカリは思ったことを口にした。

 「キョウコさん達はそんな人やない。ワシがOKするまでナツキのことは口にもださなんだ。

 そして これも 理由は言えんけど ワシが断ってもナツキを面倒見てくれるつもりだったそうや。」

 「そうなんだ。」

ヒカリは、黙ってしまった。そして さっきのキョウコに対する態度を反省する。

キョウコに比べて自分の態度はあまりに子供っぽい、自分の未熟さをヒカリは感じていた。

 「私 キョウコさんに敵わないね。」

ヒカリはポツンと想いを漏らす

 「へ そんなこと あらへんわ。委員長は 委員長でええとこあるがな。キョウコさんはキョウコさんや

 比べられへんで。」

トウジはそう言ってヒカリの目を見つめる

 「うん でも あした キョウコさんとデートだよね?」

ここでトウジは困ったような表情になる

 「そうや ワシ デートなんて初めてやし どなんしようか?」

トウジは腕組みする

 「あのね お兄ちゃん?お兄ちゃんの考えなんてろくな物ないんだから キョウコお姉さんに任せておけば

 いいのよ。お兄ちゃんと違って大人なんだから!!」

ここで、いままでのトウジとヒカリの会話に参入できずにいたナツキが口を出す。

 「そうか そやな。」

 「そう そう!!」

ナツキが嬉しそうにトウジに念を押す

 「そうか。なんか楽になったわ。そや シンジの父ちゃんから ナツキにってケーキもろうたんや!

 2つあるから委員長も食べたらええわ。ワシはさっきよばれたから!」

 「じゃ お兄ちゃん ジュース買ってきて」

 「おう ええで 何か リクエストあるか?」

 「あたしは、なんでもいいわ。ヒカリお姉ちゃんは?」

 「私も・・・何でもいい。」

 「そうか ほな。なんでもええがい一番困るんやが・・・」

トウジは、文句を言いながらもさっさと部屋を後にする。

 取り残されたヒカリにナツキは目を細め視線を投げかける 口元はチェシャ猫のように

 「ねえ ヒカリお姉ちゃん 心配なの?」

 「なんで 鈴原がキョウコさんとデートしたって。」

 「あたし そんなこと言ってない。」

 「あ。」

ボンッ

真っ赤になり自ら墓穴を掘るヒカリ

 「キョウコお姉さん 美人だからね!」

ナツキは、分かり切った事実を言い放つ

 「う わかっているわよ。」

ヒカリにとってそれは理解しきった事実

 「でも 負けちゃダメだよ。」

ヒカリに発破を掛けるナツキ

 「味方してくれる?」

ヒカリは懇願するような眼差しを向けた

 「・・・・・ダメ。」

ナツキは目をそらせる

 「そんなぁ。」

思わず非難の声を上げるヒカリ

 「だって キョウコお姉さん 素敵なんだもん。だから 中立 あたしは。」

ナツキにしてみればキョウコから、何年か前に死んだ母親に似た感触を感じていた。それは とても気持ちいいものだった。

故に、彼女の心にキョウコに側にいて欲しいという願望が芽生えていた。しかし ナツキも、ヒカリの兄トウジに対する恋慕は

認識しており それを 応援したい気持ちはあったし ヒカリのような姉が欲しい気持ちも存在していた。

この 中立という立場はナツキなりに苦渋の選択といえよう。 

 「えー。」

 「ヒカリお姉ちゃんだって お兄ちゃんにはもったいないと思うよ。なんで あんなのに・・・。って実の兄なのにね」

そういうとナツキは笑ってしまった。

 『なんとかしなくては』

ナツキからの援助が得られないとわかったヒカリは 明日に迫ったトウジとキョウコのデートへの対応策に

頭を巡らせていた。

 

 

その夜 葛城家

 ♪チュリラチュルリラ〜チュリュリラチュリュリラ♪〜

自室に引っ込んで明日の日曜はシンジとデートしようとデートスポットの雑誌をめくっていた、アスカの携帯電話がけたたましくなる。

 「はい 惣流です。あ ヒカリ 何か用?」

アスカは電話の相手がヒカリであることを認めた。

 「アスカ 何かじゃないわよ。えーと 回り誰か居ない?」

 「うん シンジが台所で後かたづけをしてるけど・・・あたしだけだわ。」

この会話は誰にでも 特にキョウコには聞かれたくないとヒカリは案じていた。

 「アスカ 明日のことだけど?」

 「明日 何かあったかな?」

 「もう アスカ 忘れたの 明日 鈴原とアスカのママがデートするんじゃない。」

 「あー そうか。そうだったっけって あれって マジな話だったわけ?」

アスカは少し驚いた。あれは 母親の軽いジョークだと決めつけていたから

 「何言ってるのよ。キョウコさん 今日の昼 鈴原に約束取り付けていたわよ!!」

 「あ そうなんだ?」

アスカにしてみれば キョウコが、気分転換に外出するのは、願ってもないことであったが

相手がトウジと言うことに若干問題があった。

しかしアスカは母親を信頼しておりトウジと外出してもさほど重要な事とは感じていなかった。

 「まあ ヒカリ ママは大人だから 心配いならいと・・・。」

アスカは自分の意見を述べる

 「甘い!!」

 「へ!?」

 「相手は、あのジャージバカよ。キョウコさん いや アスカのママの失礼なことするのは目に見えてるわ!!」

 「そうかな?」

 「そうなの!!!!」

 『ヒカリ ただ単に鈴原が気になるんじゃないの?素直になった方が・・・・。』

アスカは心の中で自分の意見を主張するが口には出来なかった。

 「いーい アスカ!!明日は5時にあなたの所に行くわよ。」

 「え 5時って夕方じゃないわね それじゃ あたし 寝てるわよ!!」

 「いいわ モーニングコールするから!!いーい 後悔してからでは遅いのよアスカ!!」

 『何が 後悔なのよ?なんか ヒカリ変よ!』

 「アスカ 聞いてる?」

 「あ はい わかりました。」

タジタジ

 「じゃ 切るわ。」

プチ

いつもと立場が逆のヒカリとアスカ 果たしてどうなることやら

 

翌日 早朝 葛城家

 「シンちゃん おはよー」

レイが機嫌良く 玄関から 入ってくる

 「あ レイ おはよう。」

シンジは朝食を作っていた手を休める

 「ねぇ シンちゃん 朝早くから お客さん?」

 「え? 知らないよ僕は。」

 「だって 玄関に 女物の靴があるよ。」

 「え アスカかミサトさんのじゃないの?」

 「ミサトにしてはサイズが小さいし アスカがあんな地味なの履かないよ。」

レイは、先程来から考えた結果をシンジに告げる

 「ふーん ひょっとしたら アスカにお客さんかな?そういや 昨日は珍しく

 一人で寝るなんて 言っていたし ちょっと寂しかったけどなに言わせるんだよ!」

 『勝手に暴走しないでよ。親子共々 暴走は癖ね』

ユイとシンジを思い浮かべ レイは苦笑した。

 「あたし 見てくるわ。」

レイはアホらしくなり アスカの部屋に行くことにした。

 「頼むよ。あ レイ 朝ご飯 どうする。」

シンジは、立ち去り際のレイを呼び止める

 「もう 食べたわ。キョウコが作ってくれたもの。今日は鈴原君とデートだって

 早起きしていたから」

 「そうなんだって トウジとキョウコさんがデートって?」

 「アスカとシンちゃんの昔みたいな物じゃない?」

 「それって 荷物持ち?」

 「たぶん 自信はないけど・・・。」

 「そうか 僕も母さんの荷物持ちにかり出されるのかな?」

 「ううん あなたは大丈夫よ!」

 「なんで?」

 「だって 司令がいるもの。」

 「あ そう。」

シンジはユイに山ほど荷物を持たされたゲンドウの姿が目に浮かんだ

 『あは でも それは それで いいかもね。』

シンジはアスカの買い物にかり出された自分をだぶらせた、その時は文句を言ったが

結構 幸せな時間だったかもしれない。

 「じゃ シンちゃんちょっと見てくるね。」

 レイは、シンジから離れた。シンジはもう一度レイに声を掛ける。

 「じゃ 誰か居たら朝ご飯誘ってみてよ。」

レイは了解の意味で片手を軽くあげアスカの部屋に向かった。

 

 「で どうするのよ。ヒカリ?」

アスカは、ヒカリの意見を待つべく彼女の顔を見つめた。

アスカの部屋で向かい合いになり二人は今日の計画を練っていた。

 「もちろん 尾行するの!そして いい雰囲気 もとい 鈴原が不埒なことをしそうになったら

 即殲滅 これでいいんじゃないかしら。」

ヒカリは拳を突き上げる

 「殲滅?」

 「そう アスカ。スマッシュ・ホークかソニック・グレイヴ いや プログレッシブ・ナイフでもいいから

 用意できないかな?」

真顔のヒカリ

 「いや あのね ヒカリ 鈴原は使徒と違うんだから・・・。」『よく エヴァの武器知ってるわね でも どうやって持つのよ』

 「甘い 甘い 甘いわよアスカ 体力だけは使徒並みよ鈴原は・・・。」

ヒカリが顔の前で掌を左右に振る

 「無理よ。武器なんて それに尾行ったってすぐばれるわよ!」

アスカは、あきれ顔でヒカリを諫める

 「何 悪巧みしているの?」

突然 レイが部屋に入り口から顔をのぞかせる

 「レイ(綾波さん) 何の用よ?」

 「シンちゃんがお客さんが居るなら朝ご飯どうかなんて・・・。」

レイは部屋に入り 来た理由を告げた

 「え ありがとうって 今の話聞いたのレイ。」

アスカがレイを睨む

 「うーん 殲滅だとか武器だとか 尾行だとか 鈴原君は使徒並みだとか・・・」

レイは顎に指を当て会話を思い出す

 「ほとんど 聞いているのね。これは内緒よ いーい シンジにも言ってはダメ。もちろんママやおば様にもよ」

 「わかったわ。・・・・・で さっきの話だけど なんとかできると思うけど・・。」

レイは、さらりと曰う

 「「え!?」」

 「だから 尾行するのを簡単にすればいいのね それと 武器は無理だけど 麻酔銃くらい用意できるわ。」

 「そんなこと 出来るの?」

 「ええ 問題ないわ。用意してあげるから あなた達は朝ご飯食べていなさい。」

そう言うとレイはすくっと立ち上がりアスカの部屋を出て行った。

 「・・・?」

最近 アスカはレイの行動がつかめない いや 以前からつかみ所のない奴と思っていたが

近頃は、特に変わってきた。訓練でもシンクロ率は常に100%超だし 零号機だろうが初号機だろうが

お構いなしでシンクロし エントリープラグなしで 一度に2機のエヴァを起動した。まあ 彼女の正体からすれば

当たり前のことであるとアスカは理解していたが・・・。また 日常生活においては家事全般を見事にこなす

学校でのテストもこのところ100点以外は取ったことがない その上 アスカが難しい日本語に戸惑っていたら

横に来て ドイツ語に訳して説明してくれる。

 『おば様の知識と性格をコピーしたっていうからね。』

しかし ユイとは どこか違う もちろん ユイがもう一人いたら たぶんネルフは崩壊するだろうとアスカは思った。

 クーッツ

首を傾げるアスカのお腹が空腹で鳴る

 「ね ねぇ ヒカリ レイに任せて朝ご飯にしようか?」

アスカがヒカリに提案する

 「そ そ そうね 腹が減っては戦が出来ぬっていうから。」

 「戦なの?」

 「女の戦いよ!」

 「!?」

 「なんでもいいわ 行きましょう。」

ヒカリが先立って ダイニングに進む

 「あん 待ってよ ヒカリ!!」

アスカは すぐ後を追った。

 

 「おいしいわね〜」

 「でしょう。」

 「アスカはいつもこんな朝ご飯食べているのね。」

 「へへへ。」

ダイニングで 朝食にありついたアスカとヒカリ

 「委員長 たくさん 食べてね。」

シンジは、ヒカリにいつもの微笑みを向ける

ドキッ

思わず赤くなるヒカリ

 「なにしてんの ヒカリ?」

それに気付いたアスカが不快のジト目で睨む

 「あ いや 愛する旦那様と毎朝向かい合ってご飯を食べるのっていいな なんて。」

ヒカリはアスカが機嫌を損ねないように気をつかう

 「もう〜嫌だ〜ヒカリ!! まだ 旦那様じゃないわよ もう。」はあと

アスカの機嫌は著しく上昇した

 『ケッ やってられるか まだ だってー ええ加減にせい!!』

ヒカリの毒づきは聞こえない。

 ドン

その時玄関の戸が開き 黒いボストンバックをもったレイが入ってきた。

 「アスカ、洞木さん 用意できた?」

レイは怪しげな笑みを浮かべ 二人を誘った。

 「「い 今行く」」

アスカとヒカリは、そそくさとレイに続いて アスカの部屋に引っ込む

 「?? どうしたのかな みんな??」

不思議な顔をするシンジのみダイニングに残された。

 

 「で レイ なんなのその鞄は??」

アスカが、レイのもってきた鞄を疑わしげな目つきで見つめる

 「へへ これは・・・・レイちゃん謹製 変装セット 別名 名探偵 灰原哀用 秘密グッズ。」

 「なな なによー それ??」

 「アスカ あなたが使うのだから 遠山和葉用 秘密グッズでもいいわよ。」

 「レイ うちは あんたが何をゆうてんのかわからへんわ?」

 「ふふふ アスカ あんたもつき合いいいわねぇ。」

レイは、会話を打ち切り ボストンバックの中から 怪しげなアイテムを取り出した。

 「じゃーん これはアスカ用の変装セット!! まずは 男装コルセット!!」

レイは、長袖のシャツを取り出しアスカに着るように命じる

 「えっと ブラも外すのね・・・・・う なんか きついわね。」

 「太ったのアスカ??」

 「五月蠅いわねぇ・・・。着たわよ。」

 「じゃ 手首のボタン押して プラグスーツみたいにね。」

 「あ これね。」

プシュウーッ

 コルセットが締まり アスカの年の割には豊かな胸が締め付けられる

そして 肩や腕が盛り上がる 胸の部分はなだらかになり このままシャツを着ればすこしがっちりした男性で通るだろう

 「ぐぐ ちょっときついわよレイ。」

 「文句言わない。次はこれを着る。」

レイはいつの間にか シンジの部屋に行って 盗ってきた 取ってきた 長袖シャツとサマースーツ一式を渡す

 「え シンジのを」 ポッ

思わず上気するアスカの顔 どこか嬉しそうに服を着込んでいく

 「で次は これ!」

レイは、鞄の中から プラチナブランドの鬘を取り出しそれを渡す

 「どうせなら ブロンドでない方がいいんじゃない?」

アスカはレイに自分の意見を告げる

 「これで いいの!アスカの地毛がどうしてもはみ出るだろうから あまり違和感ない方がいいわ。」

 「ふーん」

クシクシ ピトッ

頭の形は少し歪だが ショートカットのアスカが出来上がる。

 「最後はこれ。」

レイは、レイバンのサングラスを渡す

 「掛けたわよ。」

アスカがサングラスを掛けてレイとヒカリの前に立つ

 「いいわ そして・・・・。」

レイはネクタイの結び目に小型のマイクを押し込む

 「小声でしゃべってみて?」

 「え?っと レイもマッドの仲間入りねぇ 」

 「あれ 何て言ったの 聞こえない。」

 「悪口なんか言ってないわ」

レイから目をそらせるアスカ

 「・・・・・ちょっと あ スイッチが入ってない アスカ ONにしなきゃ?ダメねー!!」

レイがアスカに近づきネクタイを締め上げて スイッチを入れる

 ゴホ

 『自分が忘れといて 人の首を絞めるんじゃないわよ。あんたのミスじゃない』

アスカは心でレイに反抗する。

 「さあ これでOK 何か言ってみて。」

レイは、相変わらずのマイペースである

 「認めたくないものだな・・・ 自分自身の、若さ故の過ちというものを。」

アスカの声とは違う 少し野太い男性の声が響く

 「こここれは(こここれは)

アスカの声と男の声が同時に響く

 「あん 大声出しちゃダメよ。それはボイスチェンジャー。小声でいいからね!で 何さっきの台詞?」

 「同じ赤い搭乗機に乗っている人の台詞よ。」

少し照れて答え ネクタイに手を当てスイッチを切るアスカ。

アスカはこのところ前世紀末のロボットアニメで『赤い彗星』と呼ばれたパイロットに心酔していた。

 「ふーん さて この腕時計を着けて」

レイは、少し厚めの時計をアスカに手渡す。

 「ださー」

アスカはデザインの不細工さを非難する

 「うるさい これは、腕時計型麻酔銃 オリジナルは1発だったけど これは6連装 文字盤を開いて

 目標をセンターにいれスイッチで飛び出すわ!!」

 「オリジナルって何よ?ふーん どれどれ。」

アスカは早速装備して文字盤の照準を開き あちらこちらに それを合わせてみる

 「よーし 照準セーット 対ショック 対閃光防御!!」

 レイとヒカリは、そんな無邪気なアスカをみて微笑む

 「みんな 何やっているの?」

ちょうどその時 犠牲となる哀れな獲物が ドアの隙間から顔をのぞかせ 照準のセンターに飛び込む

 ポチッとな

反射的にアスカの放った弾丸は見事にシンジの胸に命中

 「痛 何するんだよ!アスカ?アッ・・・・。」

台詞途中でその場にへたり込み 眠ってしまうシンジ

 「シンジ、(碇君)!!」

アスカとヒカリの悲鳴が上がり アスカが シンジに飛びつく

 「シンジー 大丈夫!!」

アスカが泣きそうな顔でシンジの身体を揺するが全く反応がない

 「どうして そんなことするの?」

レイは、呆れたようにアスカを見つめる

 「ちょっと 目標がセンターに入ったから 癖でねぇ つい ははは。」

 『この へっぽこが!!』

レイは、心の中でアスカを非難しながら

 「シンちゃん 3時間は起きないわよ。」

事実を述べる

 「ははっは ゴメン。」

シンジ張りに謝るアスカ 誰に謝るんだ??

 「まあ いいわ。次は洞木さんだけど・・・・。あなたは、いたって簡単よ!」

レイは、追求するのを止めヒカリを次の獲物に定めた。

 「まずわ。これ。」

レイは、ヒカリの頭から髪留めを外し 鞄から出したスプレーをいきなり振りかけた。

 見る間にうす茶色に染まるヒカリの髪の毛

 「ちょっと どうするのこれ!!」

ヒカリは突然のレイの行動に慌てる いくら何でも髪を染めるなんて 彼女にしてみれば

許されざる行為であった。

 「大丈夫、熱めのお湯でシャンプーすればすぐとれるわ。」

 「そう?」

少し安心するヒカリ

 『それなら問題ないか いいよね 今日くらい・・・。』

 「あとは・・・・。アスカ 普通にメイクさせて あなた 出来るでしょ?ほら 何時までもシンちゃん抱いてないで!」

ここで、シンジの頭を抱きかかえて 膝の上にのせて事を見守っていたアスカは 我に返る

 「あ ああ わかったわ レイ。」

レイはアスカに鞄の中から化粧道具を取りだしアスカ差し出した。

アスカは、それを受け取りヒカリの正面に座る

 「さて シンちゃんは、部屋に運んでおくか・・。」

レイは横たわるシンジを軽々抱きかかえるや 向かいの部屋に運んでゆく

 『レイって 力あるわね?』

アスカはそんなレイの行動を見て違和感を感じていたが気を取り直し与えられた仕事に戻る。

 「さあ 出来たわ。」

アスカは、ヒカリに鏡を差し出す。

 「え これが私??」

ヒカリは鏡の向こうからこちらを見つめる少女が毎朝自分が鏡で見るのと違う姿であることに困惑する

 ファンデーションのお陰でトレードマークのソバカスが消え アイライナーやペンシルで 目元や眉が整えられている

薄く引かれたルージュも少し色っぽく 頬も桜色に染まっている。

 「どれどれ・・・・。ふーん いいじゃない 洞木さん。」

シンジを置いて帰ってきたレイがヒカリの顔をのぞき込んで感心の言葉を漏らす。

 「へへ ヒカリ 綺麗だよ。」

アスカも、思わず頷く ヒカリにしてみれば 佳人とか麗人という言葉の代名詞の二人に褒められるのが

少しくすぐったかったが 嫌であろうはずがない。

 「ありがとう アスカ 綾波さん!!」

ヒカリの頬に紅が差す

 「さーて 次は、アスカの服を貸してあげて アスカ あんたのセンスでコーオディネートしてあげて!!」

 「Ich verstehen!」

アスカはクローゼットをごそごそかぎ回り 赤を基調とした花柄のワンピースと鍔の大きい帽子を差し出した。

 「ちょっと 派手じゃないかな?」

 「そんなことないって ヒカリ 靴もかしてあげるから・・・・たしか 同じでしょ 足のサイズ?」

 「え 悪いわ アスカ?」

 「いいって!!」

そんな二人を見ていたレイは

 「さあ お二人さん 立ってみて?」

 「「え?うん」」

アスカとヒカリは言われたとおり 並んで立つ

 「うーん いいわねぇ。美男美女のカップルみたい!!」

 「もう レイったら!!」

アスカは、馬鹿なことを言わないでとばかりに レイを叩くふりをする

しかし ヒカリは

 『アスカが男なら・・・・・・悪くないかも・・・・ポッ』

怪しい方向にトリップしようとしていた。

 「そろそろ 鈴原君が来る頃ね!!」

レイは、隣の自分の部屋(ユイとキョウコの家)の方向に視線を移す

 「うん わかっているわ。行くわよアスカ!!」

 「Gehen wir!!」

ヒカリとアスカはコンタクトを取り部屋を後にする

 「行ったわね!」

後に残されたレイは、一人ほくそ笑む

 「これで 良かったかしら キョウコ?後は、あなた次第よ・・・。」

レイは、彼方のキョウコに言葉を贈った。

 ここで、レイは新たなる興味の対象を思いついたのか、隣の部屋に眠るシンジを思って口元がにやりと笑った。


 あれれ 短くまとめるつもりが 長くなりそうです。

さて デートに出かけるトウジとキョウコ 後を付けるヒカリとアスカ 

その結末は・・・・?

 次回 トウジ、初デート


ヒカリ:アースーカー!!(ーー#

アスカ:ひっ・・・。(@@)

ヒカリ:どういうことよっ! これはっ!(ーー#

アスカ:ア、アタシは知らないわよ。ママが・・・。(@@;

ヒカリ:あなたのお母さんでしょっ!(ーー#

アスカ:そ、そんなぁ。(TOT)

ヒカリ:しっかり、尾行の強力して貰うわよっ!(ーー#

アスカ:だからって。男装させられるなんて・・・。なんでアタシが男役?

ヒカリ:美男って感じで、素敵だからいいじゃない。

アスカ:フッ。惚れるんじゃないわよ。(^ー^v

ヒカリ:うっ。あんまり、調子に乗らせないようにしなくちゃ・・・。
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