第12話 新たなる旅立ち

 

 ネルフ司令室

学校が終わりシンジ達チルドレンに招集が掛けられた。

現在制服姿のチルドレン4名とミサトしかここには居ない 

彼らは、ゲンドウ いや ユイの来るのを待っていた。

 プシュー

ドアが開き ゲンドウを先頭にユイ、キョウコ、リツコ、最後に冬月が入ってきた。

 みんな 思い思いの席に座る もちろん先にいた5名は立ったままである。

 「しゃてー 今後の作戦つーか あんた達にやって貰いたい事を伝えるわん。」

ユイが一同を見回して唇を開いた。

 「えーと まず トンちゃん!」

 「へい なんですか ユイちゃん?」

 「あら いい返事ねぇ。あなたには、エヴァの基礎訓練をみっちりやって貰います。

 起動指数は出せたんだから シンクロ率 ハーモニクスの向上 格闘術 銃器の射撃

 装備の熟練等ね。しばらくは、まともに学校いけないかも・・・・。いーい。」

 「しかたありません。ワシも、パイロットを承諾した時点で覚悟は出来てます。」

トウジはしっかりと返事をする。目の奥には炎が見えそうである。

 「シンクロ関係はリッちゃん、格闘術はあたし、射撃はキョウコ、後のことはレイがレクチャーするわ。」

 「え キョウコさん 射撃なんか出来るんですか?」

ネルフの主要メンバーで一番親しく話しやすいことからトウジがキョウコに訓練について問う。

 「ええ ちょっとね。父さんに習ったんですが・・・・。」

 「へえ。」

 「でも セカンドインパクトで亡くなりました。 私に装飾銃を形見に残して・・・。

 惣流・トレイン・ハートネットって名前です。アスカのおじいちゃんですね。」

 「そうでっか。なんか やっぱ キョウコさんのお父さんも 外人さんですか?」

 「はい 私は、ハーフなの母親が日本人でサクヤっていう名前 父さんは惣流家に婿入りしました。」

 「サクヤさんっていうんですか 惣流のおばあさん。」

 「そう サクヤ、キョウコ、アスカってな具合ですわ。アスカの子はミライかな?」

 「あの キョウコさんの一家って 遊んでません?」

 「ふふふ ネーミングなんてセンスでしょ?それはそうと 訓練は厳しいですよ 私 トウジさん いーい」

 「お手柔らかに キョウコさん!」

トウジとキョウコの会話は弾む

 「これこれ そこ 仲がいいのは結構だけど勝手に話し込まない!」

ユイが叱責する。

 「「ごめんなさい」」

二人は真っ赤になり素直に謝る

 「じゃ レイ あんたは、リッちゃんと新しい作戦システムの形成プロジェクトに参加して 骨子は引いてあるから

 後は、それに沿って進めてちょうだい。それと トンちゃんのお世話もお願い。」

 「はい 了解よ ユイ!」

レイは問題ないとばかりに返事も軽い。

 「レイよろしくね!」

リツコもレイに微笑む 任せといてとばかり 親指を立てるレイ ユイも満足そうに頷く

 「で シンジとアスカちゃんだけど・・・・。とりあえず ここを離れて修行して貰うわ。」

 「「そんな 大丈夫ですか??」」

ユニゾン疑問の二人

 『大丈夫かな 僕らが居なくて?』

心配する シンジ

 『やった シンジと二人で修行よ。これを機に二人は更に深く結びつくのよ!!』

勝手に妄想するアスカ

 「あー 大丈夫よ。シンジ。あんたには仙台に行って貰うから ジェットでほんの1時間

 VTOLを常に待機させておくからね。」

ユイは、事も無げにウインクする。

 「なんで 修行が必要なのさ?」

シンジはユイに問う

 「うん えーとね エヴァの中からあたしやキョウコが居なくなって あなたとアスカちゃんのシンクロ率が落ちたわね。

 そのうえ あたし達が居ないからあたし達のATフィールドを使う力をプラス出来ない。勿論 あなた方の本来の力は

 あたし達より上なのよ。アストラルパターンを調査した結果がそれ。だから それを引き出して貰う。

 参号機のコアにはパターンだけでトンちゃんのお母さんが取り込まれていないけど トンちゃんは

 結構反応させてるわ 今の時点じゃ シンジより トンちゃんが上ね。」

 「そのための修行なの 母さん?」

 「そうよ シンジ。勿論 まだ力不足のトンちゃんにも修行はして貰う ここで あたしとキョウコ、レイの3人がかりでね。」

 「うーん 仕方ないね。」

不承不承ながらも納得するシンジ

 「とりあえず シンジ この刀がちゃんと使えるようになって帰って来て。」

ユイは、そう言って部屋の隅にあった 長刀というべき白木の鞘に収まった日本刀を持って来てさらりと抜く。

 「あ ユイ君それは・・・・。」

冬月がそれを見て声を上げる

 「そうよ 冬月先生 あいつが、先生との勝負に勝って取り上げた刀よ。」

 「なぜ ユイ君が持っているのかね。」

 「それはね あたしの結婚祝いにくれたのよ。」

恥ずかしそうに話し刀を鞘に収めるユイ

 「ほう」

 「相手の男が気に入らなかったら ぶった切れ なんてね。」

 「彼らしいな。幸いにも使うことはなかったわけだ。」

冬月は、表情が固まっているゲンドウを見やる

 「あら 先生 あたしが、ゲンドウさんを切れるわけないじゃないですか。」

ユイが顔を赤らめ頬に手をあてて身体をくねらせる

 「そうかね。君にかかればひとたまりもないだろうが。」

 「あら 先生 浮気でもしない限り・・・・・・・・・・・・・・。確か・・・・・・。」

ユイは、ゲンドウにとって思い出して貰いたくない事実 それについて忘失していたことに気が付いた。

 「ユ ユイ すまん 二度とせん だから ねっ。」

冷や汗を掻いて許しをこうゲンドウ ユイの目つきはこれ以上にないほど冷たくなる

 「・・・・・ホントに次はないわよ!!次はこうだからね!!」

ユイは、部屋に置いてあった ゲンドウお気に入りの鋼鉄のオブジェに近づき 刀の柄に手を掛ける

 チンッ

次の瞬間 その場の皆が感じた物は、長刀の煌めきと鞘に収まる音 オブジェに変化はない

 フッ

ユイが息を吹きかけると鋼鉄のオブジェは真っ二つになり大理石の台から落ちて床に転がる

 この時 部屋に居合わせた何人かは(とくにリツコ)ユイを怒らせるのを止めようと心に誓った

 「ちぇ 失敗か・・・。あたしって才能ないわ。」

ユイがポツリと呟く

 「うん ユイ君 また つまらない物を切ってしまったな。」

冬月も首を縦に振る

 「どこが ダメなの?」

シンジは見事にオブジェが切れたため 理解しがたそうに問う

 「これよ。」

ドン

 ユイは、思いっきり床に足踏みする

ビキビキビキ

 天井と床、壁に切れ目が走り 大理石の台が割れる

 「あたしは、剣術で加減って物が出来ないのよ。」

沈黙する一同 キョウコとレイだけは解っていたのか素っ気ない視線をあさってを向けていた

 「へへへ まあ シンジ あんたに この”桔梗仙 冬月”をあげるわ。」

ユイはシンジに長刀を両手で差し出す

 「え これって・・・。」

シンジは、刀の銘を聞いて冬月の顔を見る

 「我が家に代々伝わった刀だ。大事にしてくれたまえ。」

 「あ はい。」

冬月の言葉を受け 恭しくユイから刀を受け取るシンジ

 「じゃ ユイ君 シンジ君の修業先は、あの男の所か?」

冬月が確認するようにユイに訊く

 「ええ セイちゃんに頼みますわ。」

 「ちゃん付けで呼ばれて、あの男が怒らないのは君だけだよ。あの男は今何をしている。」

 「神社の神主になるって聞いてましたが。」

 「そうか・・・・・。懐かしいな会ってみたいものだ。」

冬月は昔のことを思い出す。

 「じゃ シンジ 仙台に、いって鍛えて貰って!」

ユイは、シンジに期待を込めた眼差しを与える。

 「シンジ 仙台ってどんなところかな?」

シンジと一緒に修業を行えると信じて疑わないアスカはシンジ問う

 「え 僕は、解らないよ。」

 「えー ちゃんとしなさいよ。」

 「ゴメン。」

シンジはいつものように反射的に謝る

 「はあ まあいいわ あたしが調べるから・・・。」

アスカは、そうシンジに言った。

 何せ これから 一緒に修業をする地である 調査が必要なのは アスカにとって当然のことであった 

そこへユイの無情の声

 「さて アスカちゃんには、中国は江西省に行って貰うわ!」

 「え!?!?!?」

思わぬユイの言葉に反論をあげるのも忘れるアスカ

 「だって 決まっているでしょ!軍事訓練等を何年もこなしてきたアスカちゃんとシンジじゃ レベルの差があるもの!」

ユイは当然と言ったように決めつける。

 「シンジと一緒じゃなけりゃ 嫌よ!!」

我に返ったアスカは断然と抗議をする

 「でも アスカちゃん。」

 「嫌 嫌ったら 嫌!!」

 「あん そんなこと 言ったって・・・・・・。ちょっと キョウコ手伝って・・・・。」

ユイは、キョウコに助けを求めた。キョウコはやれやれといった感じでソファーから立ってアスカに歩み寄る

 「アスカちゃん なに 駄々をこねているの?」

 「だって シンジと離ればなれになるなんて・・・・。」

アスカは少し拗ねたようにキョウコに答える

 「ユイだって鬼じゃないの・・・将来の義娘に嫌われるような事はしないわ。これは あなたに必要だからよ。

 そうしなければ あなたは、シンちゃんの足手まといになるだけ そうなると 死んでしまうかもシンちゃん!」

キョウコは心底辛そうな顔をする。 

 「う・・・・・でも・・・・・わかった。」

さすがにアスカも自分が言っていることが我が儘だということは理解しており 渋々ながら首を縦に振る。

 この様子を見てユイがほっとしたように息を漏らす。

 「まあ よろしくね。いいところだから 昔 あたしも3年間いたのよ。大きな滝があってね それで・・・」

 「おば様 ちょっと 聞きたいんだけど あたしのインストラクターは 誰?」

アスカが、ユイの独り言を遮った。

 「え ああ 先生ね。えっと あたしの兄弟子にあたる人で・・・シ・・・いや 今は違う名前を名乗っていたか

 まあ 会ったらわかるわ 優しい人だから。」

 「ふーん まあ いいわ どれくらい修業すればいいの?」

 「わからない。」

 「えー そんな無責任な!!」

アスカは口を尖らせる

 「あの人が いいって言えば 帰ってきていいわよ。」

 「ふん 3日で終わらせるわ!シンジの居ない所なんて不快なだけだわ!」

アスカはそう宣言した。

 『そうかしら・・・修業が終わる頃は 結構いごごちの良いところになっているわよ きっと。』

ユイは、心の中で語りかける。

 「では シンジ達の出発は、明後日! 以上ここまで 解散!」

ユイが用は済んだとばかり宣言する。

 「ちょっと 待て!」

それを ゲンドウが鋭い声で制する。

 「これを 持っていけ シンジ アスカ君!!」

ゲンドウは、シンジに2枚のパスを渡す

 「何 シンジ・・・・これって 第三新東京ディスティニーランドの無期限パスポートじゃない!!

 あー あたしとシンジの名義になっている!!」

横から覗き込んだアスカが大声をあげる。

 「いや その シンジとアスカ君に辛い思いをさせる せめてもの罪滅ぼしだ。」

ゲンドウが恥ずかしそうに顔を赤くする

 「ありがとう 司・・おじさま いや 未来のお義父様かな。」

 「も 問題ない。」

ゲンドウはますます赤くなり小さくなってしまう。

 「はん ゲンちゃん 随分アスカちゃんに媚びるわね!」

ユイの目が細まる

 「ユイ いいだろう。じゃないと 孫を抱かせてくれないから・・・

 「まあ いいわ。でも あんた レイにもあげてよね。」

ユイは養女と思っているレイにも気を遣う

 「これのこと?」

レイはユイの言葉を聞いて 自分の財布の中から パスを出す。

 「あんた 持ってるの?」

アスカの眉が潜まる

 「お父さんがくれたもの・・・・」

 「「「「「「「「お父さん???」」」」」」」」」

レイとゲンドウを除いたその場のみんなが驚きの声を上げる

 「ユイ レイは正式に私の養女として入籍した。ここにいるのは綾波でなく 碇レイだ。」

 「あんた・・・・・どういう心境の変化?」

 「・・・・・」

 「レイも よくそんな話を受けたわね?」

ユイはレイの思惑が解らず視線を向ける

 「もう いいじゃない?父さんが、したことは全てユイの事を思うから・・・そう考えたら 別にあたしにしたことは

 腹も立たなかった。ユイ ううん もう 母さんって呼ぶべきかしら・・・父さんは、これからあたしを母さんの分身

 そう娘として愛してくれることを誓ってくれた。この半端な人間でしかない あたしを・・・ それは、父さんの本心

 リリスであるあたしには解る!でも でも でも 父さんはもう あたしをリリスじゃない 碇レイと思ってくれている。

 あたしは、それで十分 たとえ 他の誰がわかってくれなくても・・・ねぇ 父さん。」

レイは、ゲンドウに抱きつく

 「あんた・・・・・。」

ユイの言葉がとぎれる

 「母さん 無理しないで・・・・あたしは母さんが何を思っているか一番わかるのよ!」

レイがユイを見つめる

 「ま 参った。あーあ レイまで味方に付けられたんじゃ。敵わないわ。わかった ゲンちゃん レイも一緒でいいなら

 この戦いが終わったら 同居してあげるわ。」

ユイは降参とばかりに、レイとゲンドウを見返す。

 「まーだ 無理してるんじゃない??」

レイは意地悪そうに細目になる。

 「う・・・・・」

ユイは反論できない。

 「まあ いいわ。良かったわね 父さん。」

 「ふ シナリオ通りだ。」

ゲンドウは、不適な笑みを漏らす。

 「ぐぐ。」

何か言いたいが、自分の希望であるので否定したくないユイ

 「じゃ シンちゃん アスカ 今後ともよろしく。」

 「あ ああ(え ええ)」

戸惑いながらも 新しい事実を受け止めるシンジとアスカであった。

 「では シンジ 明日は学校を休んでいいから 遊んでくるといい。しばらく アスカ君と会えなくなるだろうから・・・。」

ゲンドウは、シンジに告げる。

 「でも 父さん そんなこと。」

どんでもないと言いたげなシンジ

 「これは、司令としての命令だ!サードチルドレン 碇シンジ セカンドチルドレン 惣流・アスカ・ラングレーとともに明日

 第三新東京ディスティニーランドで行動することを命ずる。」

 「そんな・・・・」

 「了解 謹んで拝命します。」

何か言おうとするシンジを遮り アスカが命令を受領する。

 「いい返事だ。アスカ君 期待しているぞ。」

 「はい 期待に添えるよう全力を尽くします。」

 『なにするんだよ まったく・・・・』

シンジの心の嘆きは聞こえない

 「では それぞれ 本日のスケジュールに復帰してくれたまえ。」

ゲンドウは今度こそ話を打ち切ることを皆に告げる。

 「「「「「了解」」」」

一部不満の声があるも皆それにしたがう

 「さて シンジ君 トウジ君 アスカ ハーモニクステスト よろしくね。」

リツコがレイを除く3人のチルドレンに用件を伝える。

 「あ は はい」「ええですとも」「しかたないわね」

三人三様の答えが返り揃って部屋を出る。

 「副司令 新システムの予算の件でお話が・・・。」

レイが、冬月を誘う

 「ああ わかった レイ君」

なにやら 話しながら二人が退出する。

 「さーって 私は、ナツキちゃんの治療に行こうっと」

キョウコが、独り言を言いながら立ち去る。

 そんな みんなを見送るゲンドウとユイ

 「あんた・・・・ありがとね。」

 「レイのことか?」

 「うん」

 「私が、しなくてはならないことをしたまでだ。問題ない。」

 「シンジとアスカちゃんのこともね。」

 「ああ それも 同じだ。私が不甲斐ないために シンジ達に迷惑を掛けている。」

 「もう それは あたしも同じよ ゲンドウさん。」

 「ユイ」

ユイは、両手で長身のゲンドウの首に抱きつき目を閉じ顔をゲンドウに向ける

重なる唇 絡み合う舌 ゲンドウの手がユイの腰に回る

 「あ のーぅ お取り込み中の所 すごーく もうしわけないんですが。」

 「「!!」」

突然の声に 思わず 主を捜すゲンドウとユイ 二人の視線の先には

顔を赤らめたミサトが立っていた。

 「「あ あ あ 居たのか(の)?葛城君(ミーちゃん)」」

シクシク

 「最初から居ますってば。」

自分に対するあまりの処遇に涙を流すミサト

そう ミサトは最初から入室していた。しかし 彼女には、会議にも参加できなかったし 命令も付されてなかった

あまつさえ 会話の中にさえ登場できない。なんの為にいたのであろうか?

 「あの 私は何をすれば・・・・・。」

 「え??え・・・・。」

使徒が来ない限り 作戦部長のミサトの出番は皆無である そして ユイにしても 彼女が立ち上げたプロジェクトをがさつなミサトに

任せる気はさらさらなかった。しかし ミサトの辛そうな顔がユイの心を苛む

 「むぅぅぅー あそうだ!」

すぐ 何事かをひらめくユイ

 「えーっと まずは、この部屋の片づけをお願い。」

ユイは、真っ二つのオブジェと大理石の台そして天井壁を指さす。

 「えー 私が??」

ミサトは、あからさまに不満の顔をする。

 「そして・・・・ちょっち 耳を貸して。」

ボソボソ

 「えー そんな 嫌ですよ!!」

 「あんた・・・・。」

ユイは、二人の内緒話に聞き耳を立てていたゲンドウに目配せする

 「葛城三佐 命令だ。」

ゲンドウは重々しく口を開く

 「えー そんな。」

 「まあまあ ミーちゃん ボソボソ・・・を付けるから ね!」

 「え・・・・まあ それじゃ・・・葛城三佐 了解しました。」

よほど ユイの出した条件が魅力的だったのか ミサトは二人に了承の敬礼をした。

 「じゃ 頼むわね。いこ ゲンちゃん!!」

ゲンドウとユイは仲良く手を組んで司令室から出て行った。

 後に一人残されるミサト

 「・・・・は いいけど どうするの これ?」

ミサトは床に転がる100kgはありそうなオブジェとその倍はある大理石 そして 壁を見て途方に暮れる。

しかし 本当に困るのは 彼女ではなく 眼鏡をかけた彼女の部下であるのだが・・・・

 

 第三新東京ディスティニーランド エントランス ステーション

タッタッタッタッ

 軽やかな足取りで駆けるアスカ シンジとの待ち合わせ時間には十分なのに はやる気持ちを抑えきれない

同居しているのだから一緒に出かればいいものであるが、待ち合わせというシュチュエーションに憧れたアスカが

申し出たことだ。勿論 シンジに拒否権はない。

 第三新東京ディスティニーランドに行くのはアスカにとって2回目のことであった。前回はヒカリに頼まれたデートで嫌々ながら

行ったものだった。今日は、嬉しくて嬉しくて 昨晩は眠れなかった。

 今日のデートを新鮮にするため昨晩は習慣となっているシンジとの同衾をしていない。

 「へへ今日は、目一杯楽しむのよー。」

アスカは高らかに腕を突き上げ宣言する。

 ドシン

そんなことに気をとられたせいであろうか、アスカは何かにぶつかってしまう

 あっ

思わず叫び声を揚げたが長年の軍事訓練の賜か綺麗に受け身をとるアスカ

 パタン

少し服に埃がついたものの怪我一つなく立ち上がるアスカ 手で埃を払う

 「ううう」

傍らから呻き声がする ふと アスカが目にした物は 古くさいスーツを身にまとい 手に何故か砂時計を持った老人であった。

 「あ あんた 危ないわよ。」

自分がよそ見をしていたため老人にぶつかってしまったことを彼女なりに気遣うアスカ

 「ワシと当たったのか?」

その老人は虚ろな目でアスカを睨む

 「そ そうよ。悪か・・・ごめんなさい。あたしが余所見していました。」

以前のアスカなら 自分の悪いのを棚に上げ怒鳴り散らしていただろう しかし 今のアスカは・・・

 「大丈夫 あ ちょっと待ってて」

近くで水道を見つけたアスカは、ハンカチを水で湿らせて来る

 「ちょっと 見せなさいよ!!」

口調はきついが 言葉には優しさがある

幸い老人は、手の甲を少し擦り剥いただけであった。

 「ワシが怪我をしたのか?」

 「だから 悪かったって言ってるでしょ。」

アスカは、ハンカチで老人の手を拭き ポシェットから絆創膏を取り出し 貼り付ける

それをじっと見つめる老人

 「これで 大丈夫!」

 「・・・・・礼を言わねばならぬかのぅ?」

 「いいわ あたしが原因だもの。」

 「ワシも不注意であった。」

 「じゃ お互い様ね。」

 「ああ・・・。」

 「じゃ あたしは行くわ。」

 「ではな・・・」

アスカは、時計を見ると一目散に走り出した。

 すぐに 老人の姿は見えなくなる。

 こんな 何気ない事にもアスカの進歩は見られた。もっとも 本来の彼女は優しい人間であったのだろう

シンジと解り合えるまでは、それを無理に押さえ込んでいたに過ぎない。

 

 第三新東京ディスティニーランドのゲートで腕時計を確認するシンジ もうすぐ待ち合わせの時間である

 「シンジ〜。」

シンジは、遠くから自分の姿に気付き掛けてくるアスカに気が付いた。

 「お待たせー。」

息を切らした アスカがシンジの正面に立った。

 ピンクのサマージャンパー 黄色のシャツ 緑のショートパンツ そして トレードカラーの赤のポシェット

そして 髪止めは茶色いリボン この頃 アスカは必要時以外はヘッドセットは付けない。

 「アクティブだね。アスカ!!」

シンジは素直にアスカを褒める

 「あんたは 相変わらずね。」

TシャツにGパン姿のシンジにアスカは感想を述べる。

 「あ ゴメン」

 「あんたらしくて いいけどさ。」

 「そう・・・・。」

お互いに見つめあう二人 自宅やネルフ、学校では、飽きるほど会っているのに 新しい場所だと妙に緊張していまう。

 「ねえ アスカ!」

 「なに シンジ、」

 「僕らってさ。アスカの買い物以外でデートするって 初めてじゃないかな?」

 「そうかしらね??」

当然 頭脳明晰なアスカにはわかっていた。

 「まあ 僕は アスカと違って アスカ以外とはデートなんてしたことないけど・・・・。」

シンジは、少し自嘲げに語る

 「う あ・・・・・・」

黙りこくる アスカ 確かにヒカリの紹介でデートしたことはあるし 加持とも ドイツと日本でアスカから誘ってデートをしていた。

 「あ ゴメン そんなつもりじゃ。・・・少し焼き餅妬いちゃった。」

シンジは、沈んだアスカを見て少し後悔した。

 「・・・・・もう あんた以外とデート何かしない。あんただって 他の女とそういうことさせない・・・わかった。」

 「うん わかった。」

 「じゃ 行こう。」

アスカは、満面の笑みを浮かべる。アスカの機嫌が直った事を喜ぶシンジであった。

 「じゃ どこ行こうか。えーっと ファンタジーかアスレチック そうだ アニマルランドもいいね。」

シンジはアスカに訪ねた。彼の希望としては絶叫マシーンは遠慮したかった。

 「何 言ってるのシンジ!スリルランドに決まってんじゃない!!」

 「え やっぱり・・・・・。そうだよね」

げんなりするシンジ 当然 何度も言うが 拒否権はない。

 「さあ 行くのよ。今日は徹底的に乗り倒すわ!!」

シンジの手を引き歩き出すアスカ もう 暗さは微塵もない。

 トホホホ

嘆くシンジ その日は平日であるため 幸か不幸か 人出は少ないため 乗り物を思いっきり楽しめた二人であった?

 

 はひー

ベンチに腰を下ろした シンジはため息を漏らす。

昼食に、ハンバーガーを食べた時間以外は、落下 回転 滑走と各種の乗り物に乗り続けた。

もうシンジは、メロメロである。

 「シンジ 大丈夫。」

アスカが、買ってきた缶ジュースをシンジの頬に当てる

 「あ ああ なんとかね。」

それを受け取りながらシンジは元気なく微笑む

 「シンジね!いつもエヴァに乗ってる時は こんなGじゃないでしょう?」

不思議そうなアスカ 当然彼女はピンピンしている。

 「エヴァと 乗り物は違うよ。」

シンジは、ベンチの背もたれに身体を預け ふと 目の前のアトラクション広場を見る

 戦隊物のアトラクションが催されていた。平日なので見物人は少ない

 「アスカ ちょっと あれ見ようよ。」

 「何 あんなのが いいわけ?」

 「いや お客が少なくて気の毒かなって?」

 「あたしらが増えたところで、焼け石に焼き芋は旨いでしょ。」

 「なんだよそれ?」

 「あら 日本のことわざで 効果が上がらないって意味じゃ。」

 『それを言うなら焼け石に水だよ』

シンジ心の叫び

 「まあ いいわ つきあってあげる。」

アスカはそう言うとシンジと並んでアトラクション広場に近づいていった。

 「シンジ あれなんて 読むの?」

 「えーっと”福音戦隊エヴァレンジャー対西瓜仮面”だよ」

 「??ふくいん すいか エヴァ 何それ?」

アスカがシンジに問う

 「ちょっとまってよ 説明を読んでみるよ。悪の結社 レッドベアーに対して戦いを挑む5人の戦士 エヴァレンジャー

 ファーストホワイト・セカンドレッド・サードブルー・フォースグリーン・フィフスブラック・・・・・」

黙るシンジ

 「なに 続けなさいよ。」

 「なんか 遊んでいる気がしないんだけどファーストホワイト・セカンドレッドって まあいいか えっと 対するは

 ファーマー軍団の西瓜仮面 あ すいかじゃなく にしうり って読むらしいよ。」

シンジの説明が終わりアトラクションが始まる

 げ 出てきたエヴァレンジャーは、身体こそ人間のシルエットであるが マスクはエヴァンゲリオンそっくり

シンジは、もう一度説明に目を向ける。そこには

 後援 第三新東京ディスティニーランド代表取締役 G・六分儀 監修 ネルフ日本本部 作戦部 

の文字が記されていた。

 『『なに 考えてるんだよ(のよ)』』

力が抜け落ちるシンジとアスカ

 其処へ怪人 西瓜仮面の登場 巨大な西瓜のかぶり物をし 何故か後頭部にお下げ髪をもつ頭部 どこかで見たような顔つき

胸には「西」 額中央には「優 JA箱根」のエンブレム そのうえ 怪しげなマントまで羽織っている

 その怪人西瓜仮面を見た時二人は心に何か引っかかりがあるのを感じていた。

 「シードシャワー アンド 葉っぱカッター」

西瓜仮面がエヴァレンジャーに向かいスイカの種と葉をとばす 当然 会場の客席にも飛ぶ

 ブーブー

少ない観客ながらも当然わき起こる ブーイング

 「蔓の鞭」

うなりをあげて客席をおそうスイカの蔓

 バカヤロー

今度は罵声に変わる会場

 エヴァレンジャーはソニックグレイブ擬き スマッシュホーク擬きを持って 西瓜仮面を取り囲み攻勢に出る

 「ウォーターメロン・ボンバー」

生のスイカが宙を舞う

 ドカドカ

幾つかが観客を直撃する

 もう 我慢ができん

何人かの観客が舞台に上がり エヴァレンジャーとともに西瓜仮面をたこ殴る

 チュドーン

派手な爆発音と共に西瓜仮面は砕け散り スイカの種や汁 実 皮をまき散らせる

舞台には スイカにまみれたエヴァレンジャーと観客の姿

 だれだ こんな演出しやがったのは

観客からでる文句

 「あ 済みません」

其処へ 登場したのが先ほどの西瓜仮面に酷似した怪人

 「私 西瓜婦人です。ご迷惑をおかけした皆様には、ジオフロント内で育成した。スイカをお土産にしております。

 どうぞ お受け取りを・・・。」

その西瓜婦人と名乗ったのは マントの代わりに白衣を着込み 額のエンブレムが「秀」に変わった怪人

左目元のほくろが印象的だ。しかし 誰も受け取らずドブドブ捨てぜりふを残して帰っていく観客たち。

 「・・・・シンジ」

 「もう 考えるのはよそう アスカ。」

休憩のつもりが思い切り疲労のたまった二人 なぜなら彼らは演出の所にミサトの名前を見つけていたからである。

とぼとぼと あてなく歩き出す二人 その時シンジの携帯にメールの着信音

 ’碇シンジ様 お食事 と ロイヤルスィートルームのご予約を碇ゲンドウ様より伺っております。

                                        第三新東京 ディスティニーホテル’

そのメッセージを見たシンジは

 「へえ 父さん よっぽど僕らに気を遣っているみたいだね。ここの隣だね確か じゃ 行こうか アスカ!」

少し元気が出たシンジはアスカにメールを見せる

 「あのね シンジ  あそこのレストランって正装でなけりゃ入れてくれないわよ。持ってるの?」

 「え そんなの持っているわけないじゃないか。」

 「あたしも、ドイツでは持っていたけど・・・・。置いてきたし あーあ 司令も片手落ちだわ。」

アスカは残念そうに空を見上げる。

 「ふふふ 君たち そんなに嘆くことはない!!」

二人の背後から 声がかかる 振り返ると其処には・・・・

 「「西瓜仮面!!」」

ユニゾンで確認したのは 先ほどの西瓜仮面

 「君たちの欲しい物はこれだろ?」

西瓜仮面は、大きめのスイカをシンジとアスカに渡す

 「違います!!」

シンジが反論する

 「いいか その蔓を引っ張ってみろ」

西瓜仮面はスイカの蔓を指し示す

 ボン

スイカから煙が上がり 中から 蔓に吊された タキシードとドレスが現れ  靴とアクセサリーの入った箱が地面に落ちる。

 「「これは」」

 「それを着ればいいだろ?」

西瓜仮面は、得意そうに告げる。

 「あ ありがとう ございます。加持さん。」

シンジは、確信を持って西瓜仮面に礼を言う

 「へ 加持さん??」

狐につままれたようなアスカ

 「おいおい ばれていたのかい?」

西瓜仮面がかぶり物をとって現れたのは、そう 加持リョウジであった。

 「西瓜婦人はリツコさんですよね?」

 「よくわかるな。シンジ君」

 「ええ 演出にミサトさんの名前を見たから!」

 「はは ははあはあ?加持さん?」

目が点になるアスカ

 「いやー 葛城に、頼まれたのだが なかなか楽しかったぞ西瓜仮面 みんなに受けていたみたいだし」

自慢する加持

 『あれでですか?』

心でつっこみを入れるシンジ

 「いやー これでなんか新しい自分に目覚めた気がするよ。ハハハ・・・」

高笑いする加持 其処にはかつて シンジが憧れ アスカが慕った 加持リョウジの姿は微塵も存在しなかった。

 

 その夜 第三新東京ディスティニーホテル ロイヤルスィートルーム

 「アスカ 疲れたかい?」

食事も終わり ロイヤルスィートルームに引きこもった二人はソファーで向かい合う

黒のタキシードを着たシンジ 白のイブニングドレスのアスカ

 「シンジこそ、疲れたでしょ。?」

 「いや なんていうか・・・・。」

 「しかし 加持さんにはびっくりしたわ!!」

ため息をつくアスカ

 「幻滅したかい?」

 「ちょっとね?あたしが好きだった加持さんは何処行ったんだろうって。シンジだって 加持さんを見習おうと

 思っていたんじゃない?」

 「そうだね・・・・でも 僕は、今日の加持さん好きだよ?」

シンジは、ポツリと漏らす

 「え?!」

 「だって 楽しそうに笑っていたもの。前の加持さんは寂しく笑うか皮肉めいた笑いしかしなかった!」

 「・・・・。」

 「今日だって あんなバカしながら 僕たちをガードしたくれていたんだ!」

 「シンジ!!」

アスカがシンジを見つめる シンジは少し照れたように

 「ねえ アスカ ベランダに出てみよう。」

アスカを外に誘う

 「うん」

アスカはそれに従い二人は窓の外に出る

 夜の風が吹き抜ける 見下ろせばディスティニーランドがライトアップされており幻想的な雰囲気を醸し出している

虹色に変わる照明 時折響く鐘の音

 「いや 綺麗ねぇー」

アスカが思わず感嘆する

 「うん でも ここ高いんだろうなー部屋代?さっきの食事だって・・・」

 「こら 現実的なことを言わない!!」

アスカはシンジの鼻を摘む

 「いて て わかったよ。」

ヒュー ドン ドン

その時花火が打ち上げる

 「えー 何かイベントあるの?」

シンジが不思議そうな顔をする

 

 「行けー 撃て撃て!!」

 「いいのか 葛城?」

すっかり上気した ミサトをなだめる加持

 「いいのよ。司令とユイさんのお墨付きですもの・・・その上・・・・ムフフフ」

ほくそ笑む ミサト 回りには打上花火が並んでおり 次々と打ち上げられる

 「私が、何故花火をあげなきゃならないの??」

リツコがふて腐れる 昼間は西瓜婦人にされ 夜はこれだから不満も出よう

 「いいのよ リツコ この花火と打ち上げ装置 あんたの手製でしょ。」

 「まあね。だから 変に扱わなければ事故などないのよ。」

リツコは、自作の打ち上げ機を自慢する。

 ドン ドン

 「そうそう 私はエビチュを飲んでれば全てが終わるっと・・・行けー」

ミサトは、景気づけにエビチュの空き缶を投げる・・・そして 不幸なことに それが 花火の筒にホールインワン

 「「あ!!」」

リツコと加持の絶望の声 出口を遮られた打ち上げ花火はどうなるか・・・そして 回りには 多数の打ち上げていない花火

 チュドーーーーーーン パラパラ ドカーン  

大音響と共に一斉に爆発する花火

 「あは???」

髪の毛がチリチリになり まだ何が起こったのかわからないミサト

 「私 もう 絶対ミサトとは 組んで仕事しない!」

すすでこける金髪を撫でるリツコ 

 「俺もだ リッちゃん」

顔を真っ黒にして同意する加持 

 「ミサト」「葛城」

 「「悪魔か おまえはーーー」」

リツコと加持の絶叫は夜空を渡る。

 

 「花火って 地上でする物なの??」

アスカがシンジに訊く

 「さあ 新しいアトラクションかな??」

シンジも自信がない

 花火の事故のお陰で照明は全て落ちてしまった。

今二人を照らすのは満天の銀河 星明かりでお互いを見つめるシンジとアスカ

そっと身体を寄せ合うと直にその存在がわかる 互いに感じる相手の香りが

ビロードのように心地よい そんな二人を包むように風が吹く

 「寒いかい アスカ」

 「いいえ シンジが居るから・・・」

アスカの言葉がとぎれる

 「どうしたの?」

 「明日から離ればなれね!!」

 「・・・・少しの間さ。早くアスカに会えるように僕も頑張るから。」

 「あたしもよ。シンジ!」

 「今日はたくさんアスカを感じたいよ。忘れることがないように!!」

 「バカ エッチ!!」

しかし 言葉とは裏腹に 全然いやがらないアスカ 若い二人の夜は更けゆく

 

 翌日 第三新東京国際空港 ネルフ専用 ウィング

 「じゃ ちょい ちょい と行ってくるわ。」

特別機といっても軍用機だが待機するゲート前で アスカは見送りの みんなに強がって見せる

それが 傍目にも痛々しいほどわかる。

 「惣流!!」

トウジがアスカを呼ぶ

 「何よ」「はい」

アスカとキョウコが答える

 「いや キョウコさんを呼んだんではないんやけど・・・。」

トウジは少し困った顔をする。

 「あー ママだって惣流なんだから、紛らわしいのよ。いいわ あんたも あたしのこと名前で呼んでいいわよ!」

 「ほうか じゃワシのことは?」

 「あんたは鈴原 あたしが名前で呼ぶ男はシンジだけ まあ 将来シンジと結婚して男の子でも出来れば 名前で呼ぶけどね。」

 『おまえな ようもそんなこと ぬけぬけと・・・』

 「そうか?わかったわ・・・・で惣 じゃない アスカ ワシはおまえに謝らないかん。おまえのこと 嫌な女やと

 思うとった。おまえのこと何も知らんと・・・ アスカ ワシを一発殴ったってくれ!!」

トウジは、アスカに近づく

 「そんなのいいわよ。確かに嫌な女だったでしょうから・・・。それより あたしの留守の間 頼むわよ!!」

 「それは、あたり前や!!でも やっぱり殴ってくれ それでワシの気がすむんや!!」

 「はい はい じゃ 帰ってからね!」

 「待っとるで!」

 「覚悟してなさい!」

そう言ってアスカはトウジの手を握る そして キョウコと目を合わせる

 『鈴原と仲良くできるように わざとボケをかましてくれたのね ママ!!』

アスカは母の思いやりに感謝する。

  「アスカ変な物食べてお腹壊すんじゃないわよ!」

レイが、アスカの顔を覗き込む

 「レーイ あんたは この期に及んで そんな事言うか この口か この!!」

アスカはレイのホッペタを掴んで引き延ばす

 「ひゃひゃ はしゅきゃ ひたひ。」

涙目のレイ アスカが手を離すと

 「アスカ!ここは あたしがトウジ君となんとかするから 気兼ねなくね〜。」

 「トウジ君だぁ?」

アスカがオウム返しのように疑問の声を上げる

 「あんたもさ 鈴原君じゃなくって トウジ君っていうならいいでしょ。呼んでみなさいよ。」

レイが、ジト目で睨む

 「え・・・・・・?」

 「ほーら 言ってみなさい。トウジ君!!」

 「えーっと と と とーっと うー じ 君。」

 「なによそれ。」

 「だって・・・・・。」

 「努力なさい。」

 「はーい」

うなだれるアスカ

 『案外 アスカって 可愛いやっちゃな』

トウジは、アスカとレイのやり取りを見てそう感じた。そんな彼女をわかってやれなかった自分・・・

 『ワシもまだまだ未熟ちゅうこっちゃな』

トウジは笑みを漏らす。

 アスカはここで見送りの中にシンジが居ない事に気付く

 「シンジは、もう仙台に行ったの?」

アスカはユイに答えを求める。それに答えたのは

 「あー 間に合った アスカー。」

間の抜けたシンジの声 向こうから駆けてくるシンジの姿を見つけたアスカは腰に手を当てる

 「あんたねぇ。可愛い恋人の見送りに遅れてどうすんの。」

 「ゴメン」

 「また・・・・でも あんたらしくて安心したわ。」

シンジは、ここで極上の笑みをアスカに送る

 『あ バカ いつもそれで あたしは騙されるのよ!』

アスカは、シンジの笑みを呪う

 「アスカこれ」

シンジは、アスカに銀のロケットを差し出す

 「何よこれ。」

不機嫌そうに答えた アスカが中を開けると 自分とシンジの写真

 「僕も同じ物を持っているから・・」

シンジは首元を開き それを見せる。

 『あん シンジ ありがとう』

アスカは込み上げてくる物があり思わず抱きつきたくなった。

 「シンジ 貰っておくわ。」

しかし 素直になれず引ったくるようにそれを受け取る。

 しかし回りのみんなでアスカの心情を理解しない者は居ない

 「じゃ あたしは行くわ。」

踵を返し搭乗口に向かうアスカ

 「「「アスカ!!」」」

チルドレン達のアスカを呼ぶ声 アスカは振り返ることなく 右手を高々と上げVサインを示しゲートに消えた。

 「あー 行っちゃちゃった。」

ミサトがアスカが出て行ったゲートを見送る。

 「葛城三佐!!」

ゲンドウがミサトに声を掛ける

 「はい 司令!!」

 「これが報酬だ。」

ゲンドウは、約束通りディスティニーホテルのディナー券を渡す。

 「へへ 私の責任に於いて実行した結果です。」

ミサトは得意がる。

 「そうか 君一人の手柄というわけだな?」

 「もちろんです。司令!」

ミサトは、加持とリツコに詫びながら 自分をアピールする。

 「では これも君一人に渡そう!」

ゲンドウはミサトに封筒を手渡す。

 「何ですか?これ?」

ミサトは不審な顔

 「ああ 西瓜仮面の被害にあった観客のクリーニング代 花火の暴発による施設の修理代 停電による被害の弁償金の

 請求書だ。」

 「はい??」

 「君個人の重大な過失による被害だ。ネルフが立て替えるが、君に全額請求する!!いいな!!」

 「しょんなあ!!」

涙目のミサト

 「が 私も鬼じゃない。何よりもシンジとアスカ君が世話になっている君だ。手当が付く仕事を回してあげよう。」

 「感謝します。司令!」

 「では さっそく アスカ君を送って行ってくれたまえ。ちなみに 飛行機に乗り遅れると手当はでないし罰金も貰う。」

 「え?」

顔色が変わるミサト慌ててゲートに向けて駆け出す。

 「あーん その飛行機待ってよー!!」

やっぱりミサト おまえに幸せは遠いなー 自業自得か?


 仙台に 修業に来たシンジ そこで出会った。黒髪の年上の美少女 そして 母ユイの旧知の友 セイジュウロウ

シンジは修業に耐えうるのか 次回 シンジ杜の都に来たる

 さて 西瓜仮面ですが 元ネタは警告参号機暴走中からです。あー あれは笑えたなぁ


アスカ:初めてのデートらしいデートよぉっ!(^O^v

マナ:絶叫系マシーンばっかりに乗せちゃ、シンジが可愛そうじゃない。

アスカ:楽しいもん。

マナ:シンジは楽しんでなーい。シンジはもっとのんびりするのがいいのよ。

アスカ:西瓜仮面のショーとか?

マナ:あ、あれは・・・うーん。(^^;

アスカ:加持さん、なんかキャラ性変わってない?

マナ:昔から西瓜を愛する人だったし、一緒だと思うけど?

アスカ:そうじゃなくて・・・うーん。
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