想いは永久に…

第四話:日の当たる場所

by.夢幻の戦士


優しい日差しが僕の頬を撫でる。

そうか、今日から学校なんだっけ・・・




〜学校〜

「ねぇねぇリツコ、聞いた聞いた?」

少女は鼓動が早くなるのを、何とか押さえながら目の前の少女に言った。

言われた少女は、次の授業に出すレポートをまとめている。

素知らぬ貌で返した。

「ミサト、わたし今忙しいの。悪いけど後にして」

「そんなこと言わないで聞いてよー…」

こうなっては、例え総理大臣でも彼女を黙らすことは出来ない。

観念して話を聞く。

「つまらない話だったら承知しないからね」

「わーってるわよ。さっきね、職員室の前を通り過ぎたんだけどね、そこに何と! 転校生が居たのよ!」

「へぇー、珍しいわね」

この事に、少なからず興味を持った。

今の時期、転入生も珍しければ、戦闘が行われている街へ好き好んでやって来るわけもない。

「で、美形…?」

話の焦点はやはりここです。

「そっりゃもーー、すっごい美形! さながら生ける宝石よ宝石!」

「ふーーーん、それは楽しみね」

無関心さを装っていても、その話題に心躍らされているようだ。

その証拠に、レポートの文字がいつの間にか関係のないものになっていた。

もちろんそのレポートは再提出になった。




「えーーー、皆さん静かに。転校生を紹介します」

先生の一言によって、生徒が色めき立つ。

「冬月せんせぇー、女子ですか?」

「いいや男子だ。残念だったな」

クラス中から笑いが起こる。

それが収まり、廊下にいる転校生を冬月が呼んだ。

シンジが入ってきた途端、騒いでいた全員が水を打たれたように静かになった。

整った顔立ち、吸い込まれるような瞳、白磁器を思わせるような肌、それと相反するような黒い髪。

際立って美しいとは言えないが、惹きつけられるような魅力を彼は持っている。

黒板には控えめな字で名前が書かれる。

「碇 シンジです。特技は…チェロです、あんまり上手くはないけど。仲良くして下さい」

反応はない。

男子も女子も、いきなり現れた天使に心を奪われていた。

「質問はないようだ。席は…赤木の隣が空いていたな。そこに座ってくれ」

「初めまして赤木さん。宜しくお願いします」

「え、は、はい。こちらこそ…」

握手を求められたリツコの顔は耳まで紅くなる。

初々しいですねー。

「ではホームルームを終了する」

終わると同時に、チャイムが鳴る。














同時刻 ネルフ本部

「どういう事なの? これ」

ここはネルフ技術部。

レイは今、シンジのシンクロ率の報告書を見て愕然としていた。

テキパキ働いている職員たは別に、レイの時間は停止していた。

「気付いてのは戦闘が終わった後です。私も驚きました、こんな数値が現実に起きるなんて‥‥」

洞木ヒカリは、自分が出した報告書を自分で疑っていた。

そこに書かれていた数値は『測定不能』。

シンジがはじき出した最終シンクロ率である。

「や、やはり計器の故障でしょうか…?」

「‥‥‥いえ。これは多分、シンジ君と初号機とを隔てる壁が無くなったのよ」

「え? それってどういう…」

「つまりね、シンジ君と初号機はほぼ一体化したのよ」

理論的には可能かも知れない数値。

しかしそれを現実にすることは、それこそゼロに近い。

「これならエヴァを思うとおり動かせる。もしかしたらエヴァの知覚も再現されているかも知れない。エヴァが感じている風の動きとか暑さとかも」

「す、凄いじゃないですか!? それって!」

ヒカリは声を荒立てる。

しかし返ってきたレイの言葉は冷徹なものだった。

「確かに『測定不能』という領域なら、どんな鋭敏な動きでも可能なはずよ。でもね、よく考えてみて…もしエヴァ本体に、広範囲に及ぶ様な外傷を負ったらどうなるか。‥言わなくても解るわね…?」

レイの声に真冬の冷たさが宿る。

考えたくもないビジョン。

しかし確実に起こりうるリアル。

青ざめるヒカリに対して、レイは天使の微笑みで励ました。

「大丈夫よ。そうならないように私達が居る、そうでしょ?」

「は、はい!」

「取り敢えず応急処置としてエヴァのシンクロレベルを、基準より23上げておきましょう。
彼なら多分大丈夫なはずだから」










三時限目の中頃

シンジのパソコンに一通のメールが届いた。

【碇君があの巨大ロボットのパイロットだって、ホント? Y/N】

暫し考える。

そして出した結論が…

無視‥であった。

(いつか判るにしても、今は時期じゃないし…それに、あの時みたいに騒ぎ立てるから)

その事に関して、特に誰か何か言う者はいなかった。

この日は午後はなく、午前で終わりだった。

流石に昨日の今日で、午後からは壊された学校の修復だそうだ。

その帰り道、シンジはある場所に立ち寄っていた。

両手に抱えきれぬ花束を持って


















病院

(確か彼女の病室は521号室だったよね)

シンジは昨夜見た、あの少女が入院している病院へとやってきた。

そして今、521と書かれたプレートが表記されている病室の前にシンジは立っている。

コンコン(ノック音)

「はい、どうぞ…」

開かれた扉の向こうには、白いベットとそこに眠る少女が居た。

「あ、あなたは昨日会った‥」

「碇 シンジです。具合は如何ですか?」

シンジの満面の笑みに、思わず俯いてしまう。

「大丈夫? 霧島さん」

「だ、大丈夫です。ご心配なさらずなるとかなりまふから」

途中で舌を噛んだらしく、呂律が回っていない。

お構いなしに話を続けるシンジ。

「花…花瓶に挿したいんだけど、花瓶どこ?」

「え、は、は、はい! 花瓶ですか!? 花瓶はそっちに‥きゃ!」

その時、体勢を崩したマナがベットから落ちる。

落ちるマナをシンジが素早く抱き留めた。

放りだした花束が、音もなく床に落ちてゆく。

まるでスローモーション映像を見ているかのようにゆっくりと。

「「・・・・・・・・・・・・・・・」」

二人とも顔を真っ赤にしたまま固る。

トクントクン

シンジの胸に顔を埋めるような格好で抱き留められているマナに、シンジの心臓の鼓動が
優しく響いていた。

マナの髪が、ちょうどシンジの鼻の辺りにきていたので髪の好い匂いが鼻一杯に広がって消えていった。

実際は1分しか過ぎていないのだろうが、二人にはそれが永遠にも思われるほど長く感じ
られた。

シンジとマナの顔が接近する。

ごく自然に、まるで磁石で吸い寄せられるかのように。

後少しで唇が触れる。

その時

「霧島さぁん。検診のお時間……あらあら、お邪魔しちゃったみたいね」

看護婦に言われて、二人は慌てて離れた。

急いで花瓶に花を入れる。

「そ、それじゃあ僕はこれで…」

「う、うん。またね」

明るい、その笑顔は今のシンジにとって、眩しすぎるものだった。

軽い足取りでホテルへと向かうシンジの顔は、あの頃のように輝いていた。

少女はこの時、自分があの少年に抱いた気持ちに気付いていない。

しかし少年は確信した。

あの少女は、何があっても守らなければいけない存在だ云うことに。

















リリリーーーン

暗い部屋で電話が鳴る。

今時珍しい黒い有線電話だ。

「はい、もしもし…。そうですか、はい解りました。はい、はい。そのまま碇 シンジの警護、及びサポートを続行して下さい。はい、はい、それでは」

「何かトラブルか?」

「そういう事じゃないですよ」

「人手が足りていないのですか?」

「いいえ。定時連絡です」

「随分早い連絡でしたね〜」

「むこうとこっちでは、時間の流れに差がありますから…」

「ふーーん、そっか」

「いま言えることは、もう少しゆっくりしてられる。って事でしょ?」

「そうなって欲しいですけどね…」

そう言いながら先程まで読んでいた本を読み直す。

膨大な量の書物に囲まれた部屋で、数人の男女が静かに本を読んでいた。

彼ら(彼女)らが出てくるのはまだ少し先

















後書きもどき

マナさん。

なんとか、ご希望にそうように努力しました。

今はこれが限界です。最初からいちゃつかせたくもないので。

時として突発的な行動が、絆を言葉よりも深く繋げることが出来ますし。

一応、ミサトとリツコはこの回で出しました。シンジ君と同じく14歳です。

ああ、他のキャラ達は何処で出そうか・・・

ちなみに、最後に出てきた謎の集団は、彩音が言っていた仲間です。つまりは私のオリキャラーズです。

彼ら(彼女)らは話が進むに連れ、出てくる予定です。







次回予告

第二使徒襲来。

出撃するシンジと初号機。

しかし、第二使徒の攻撃は第一使徒のそれを、遙かに凌駕していた。

奔走されるシンジ、ダメージを負うエヴァ。

さらにあの時と同じように人が。


次回  苦戦



誤字脱字などが有りましたら、私の方にお知らせ下さい。
以後、気を付けますので。


マナ:いい感じなんじゃなーい?

アスカ:な、なんで、マナにこんな美味しいシーンあるわけぇっ!?

マナ:これが切っ掛けで、わたしとシンジはっ。(ぽっ)

アスカ:ちょっと待ってよっ! アタシはどーなってんのよっ!

マナ:ちゃーんと、ネルフで働いてるんじゃない?

アスカ:これじゃー、なんか脇役みたいじゃないっ!

マナ:ご名答ぉっ!(^O^)/

アスカ:アンタバカーーーーーっ!!!?

マナ:ってことでぇ。わたしとシンジがどう進展するか楽しみよねぇ。

アスカ:このままアタシの出番が少なかったら、ただじゃ済まさないわよっ!○=(ーー#
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