これもまたEVA?

第弐十参話 降格

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第14使徒襲撃の際に負った被害は、全て復旧・強化され、発令所では一人を除いて朗らかな雰囲気に包まれていた。

その一人とは、言わずと知れたミサトである。

一ヶ月の謹慎処分が終わり、復職したのは良いが、給料が全く振り込まれていなかった。 そして、未だ手付かずであった

四馬鹿カルテットの給料を又着服したのである。 四馬鹿カルテットがこの事に気が付くのに暫くの時間が掛かった。

その理由は、ミライに馬鹿にされながら行っていた農作業である。 最も、ミライが馬鹿にしていたのは、四馬鹿カルテット

の滑稽な格好や行動であり、農作業その物には強い興味を持っていた。 尚加持の畑に行く時は、ユイとキョウコが必ず

同行していた。 加持がNERV本部内でナンパが上手く行かなくなった為に、幼い子供に手を出している為であった。

 

加持は、畑を滅茶苦茶にされた上にミサトに有り金を全部巻き上げられた為に、バイトをする為に第二新東京市へと

やって来た。 これは、第三新東京市だとミサトに見つかる為であった。 本音は、名前が売れていない分ナンパがし易い

と言う事である。そして、加持はホストクラブで働きだし、ソコソコの成績を上げNERVで貰う給料より稼いでいた。

加持にして見れば、ナンパは出来るしお金は貰えると良い事尽くしであった為に、NERVへの定時連絡も忘れていた。

最も、NERVでも加持の存在を忘れていたが・・・

 

そして耕し手の居なくなった加持の畑は、拡張されミライの畑と化していた。

ミライの畑になってからは、手の空いた職員が進んで畑仕事に汗を流していた。 ミライは、力仕事が出来ない為に、

雑草を抜いて水をあげるのが仕事であった。 それでも、世界最高峰の技術集団であるNERVのバックアップを受けて

いるだけあって、簡単に四馬鹿の畑で採れる作物を質・量共上回るモノを収穫していた。

収穫された作物の一部は、シンジとアスカが調理して、皆と一緒に食していた。大半は、職員に平等に分けていた。

家族の居る職員には、とても喜ばれていた。また、休みの日には、家族揃って農作業をしている姿も見られ家族サービス

にも一役買っていた。 

深夜に四馬鹿カルテットが、作物を盗みに入ったがMAGIと連動した警備システムに見つかり、各種迎撃装置により

撃退していた。

 

ホストクラブで名が売れて来た加持は、派手な女遊びをしていた。

そして、その噂が第三新東京市に流れて来て、ミサトの耳に入ったのは言うまでも無い。

だが、ミサトは溜まっている書類を片付けていた為に、直ぐに動けなかった。

当初、書類を日向に押し付けようとしたが、運悪くアスカに見付かり逆に説教を喰らった。

そして、罰として本部内の廊下掃除を言いつけられていた。

そのミサトの姿を見て、作戦本部の者は皆”自業自得”と思っていた為に、誰も手を貸そうとしなかった。

既に、彼らの中ではシンジとアスカが上司と成っていたからである。 ミサトは既に、部外者同然の扱いであった。

 

そして、ミサトが珍しく発令所へ顔を出すと、皆写真集に夢中になっていた。

「一寸、日向君。 写真集に夢中になっていないで仕事をしなさい!! 司令や副司令に怒られるわよ!!」

発令所に居た全員がミサトを見たが、また写真集に目を落とした。

「・・・日向君!!!」

ミサトが叫んだが

「五月蝿い!! 

 ミサト、一寸静かにしなさい!!!」

叫んだのは、リツコであった。

リツコも又写真集を見ていたのである。

ミサトは唖然としたが、ふと備品のちゃぶ台を見たら、ユイ・キョウコ・シンジ・アスカ・ミライが座って写真集を見ていた。

「・・・皆、如何したのよ。 写真集を見て? たかが写真集でしょ??」

ミサトの言い分も最もだが、言い方が不味かった。

「ミサト! たかが写真集ってどう言う事よ!!!」(アスカ)

「そうですよ、ミサトさん!!!」(シンジ)

「ミサト、貴女味覚だけでなく、美的感覚迄おかしいの?」(リツコ)

「ミサトちゃん、今度ミスをしたら二階級降格ね!!」(ユイ)

「更に、減棒ね!!」(キョウコ)

「・・・ぶざまね」(ミライ)

ミサトは、訳が判らずうろたえて居た。

「・・・何なの? その写真集は??」

アスカが、しょうがないと言う顔で

「良い事、ミサト。 この写真集は、ミライのファンクラブ総本部(ゼーレ)が作った、ミライのファースト写真集よ!!」

ミサトは呆れた顔をした。

「ミサト、頭の悪い貴女にも判る様に言うけど、ミライちゃんの公式写真集は今の所これ一冊だけなのよ!!

 生まれてから今迄のミライちゃんの全てが納まってとても貴重な写真集なのよ!! それを、貴女は”たかが

 写真集”って・・・恥じを知りなさい!!恥を!!!」

リツコは、真剣な顔をしてミサトに詰め寄っていた。

「全く、良い物を良いと理解出来ない上に、仕事は出来

 ない、料理も出来ない、掃除も出来な

 い、ガサツだしズボラだし売れ残りだ

 し・・・だから、無能の嫁き遅れって言われる

 のよ!!」

アスカは、ミサトを指差し言い切った。

「写真集の事と料理や売れ残りは関係ないでしょ!!! 私には、加持が居るのよ!!!」

ミサトの一言に、皆顔を見合わせた。そして、アスカが

「ミサト、アンタ加持さんの噂知らないの?」

「加持の噂?」

「そう、第二新東京市の・・・」

「知ってるわよ、ホストクラブで有名に成ったんでしょ。」

再び、皆は顔を見合わせた。

「知らないって罪な事ね・・・」

「全く・・・」

皆、哀れみの目でミサトを見ていた。

「何なのよ!? 加持が如何したって言うのよ???」

シンジが恐る恐る言った。

「ミサトさん、加持さんは・・・女性問題で捕まったって話知らないんですか?」

「へ? 加持が捕まった?? 女性問題??? 何よそれ!!」

ミサトは、間抜けな顔をして叫んだ。

「やっぱ、知らなかったか・・・」

「本当、無様ね・・・」

ミサトはシンジの襟元を掴み上げて迫った。

「シンジ君、加持が何で捕まったのよ!!」

シンジは、答え様とも首を締められ答えられなかった。 そして、徐々に顔から血の気が引いていった。

その事に真っ先に気が付いたアスカは、ミサトの脳天に踵落としを放ち、シンジを助けた。

「・・・・有難う、アスカ。 危うく、死ぬトコだったよ・・・」

アスカは、涙目でシンジを抱き締め

「シンジ、アタシを置いて行かないでね・・・」

そして、気絶しているミサトにミライが蹴りを入れていた。

この時の写真が、Second写真集に載って反響を呼んだのは後日の話・・・

 

1時間後、ミサトは目を覚ました。 と言っても、医務室では無く発令所の床で・・・

誰にも介抱されずに、気を失った時のまま放置されていたのである。 時折、ミライが蹴りを入れていたが・・・

ミサトは、混乱する記憶を辿り、今度は静かにシンジに尋ねた。

「シンジ君、加持のした罪って何なのよ?」

それを聞いたアスカが

「最初っからそう質問すれば、気絶しないで済んだのに・・・」

と呟いていた。

「結婚詐欺ですよ。」

「へ? 結婚詐欺?? 何でよ!? 私と言う彼女が居ながら・・・」

「その彼女が、ミサト貴女だからよ。」

リツコは冷たく言い放った。

「何で、私だからなのよ!!!」

一同は、溜息を付きながら項垂れた。

「ミサト、アンタこの間加持さんと四馬鹿に手伝って貰って、部屋の掃除をしたわよね?」

「ええ、皆一生懸命掃除をしてくれたわ。」

「加持さんが、部屋掃除をする人出を集めるのに、色々な所に頭を下げていたの知っているの?」

「へ? あの人出って私の人望で集まってくれたんでしょ?」

「「「「「違う!!!」」」」」

「ハッキリ言うわ、四馬鹿は加持さんの畑で採れる西瓜目当てよ!!」

「彼らは、ミサトさんに給料を使い込まれているから、生きる為に仕方が無くしていたんです。」

「それに、売ったアルミ缶のお金で皆に食事をご馳走する筈だったんでしょ?」

「でも、酒屋のツケの支払いに全部取られたと・・・」

「何で其処まで知っているのよ!! ・・・シンちゃん、スーパーえびちゅを分けて♪ あれ楽しみにしていたのよ」

黙って事の成行きを聞いていたユイとキョウコが口を開いた。

「ミサトちゃん、あのスーパーえびちゅは私達のモノです。」

「そうよ! お風呂上りにシンジ君の美味しいオツマミで飲む

 のが楽しみなんだから!!」

二人に拒絶されたミサト。

「私も、シンちゃんの美味しいオツマミで飲みたい・・・」

ミサトはイジケていた。

シンジは、そんなミサトを尻目にアスカに話し掛けた。

「ねえ、アスカ。 ミサトさんは加持さんの事はもうドウでも良いのかな?」

「良いんじゃないの? あんな酔っ払いの事はドウでも良いから、今夜の献立でも考えましょ♪」

「そうだね。 昨日はハンバーグだったから・・・」

「シンジ君、今日は和食にしてね♪ で、明日は、唐揚げね。」

聞き耳を立てていたキョウコが口を挟んで来た。

「一寸、ママ。 勝手に決めないでよ!!」

「あら、勝手じゃ無いわよ。 本当なら、今日唐揚げが良かったんだけど、下ごしらえに時間が掛かるから

 明日にしたのよ。 今日の和食も、偶にはサッパリした物が食べたかったからよ。 何か問題ある?」

「・・・・・・・無い」

「なら、決定ね♪」

「シンジ君の唐揚げか・・・明日、私もお呼ばれしても良いかしら?」(リツコ)

「シンジ君、私も」(マヤ)

「僕も良いかな?」(日向)

「良いですよ。 今日の帰りにでも畑から野菜を持って帰らないと・・・」

シンジの頭の中には既に今日明日で使う食材が弾き出されていた。

 

そう和んでいると、警報が鳴り響いた。

「何? 如何したの??」

情報を分析していた日向が叫んだ。

「成層圏に使徒出現!!」

「モニターに出して!!」

モニターには、成層圏を我が物顔で行く第15使徒アラエルが映っていた。

ユイとキョウコは、一瞬で気を引き締めると。

「ミサトちゃん、最後のチャンスです。 この使徒をミサトちゃんの指揮の下に殲滅しなさい!!

 出来なかった場合は、二階級降格を覚悟して置いて下さい。」

「上手く倒せたら、特別ボーナスを支給してあげる。」

「シンジ君とアスカは、この場で使徒の分析を!!」

ミサトは、身も心も引き締め背水の陣で指揮に望んだ。

「私の直属部隊に出撃命令を! 今度こそ、私の指揮の下で使徒を倒してやる!!

 そして、ボーナスをこの手に!!!」

畑で野良仕事をしていた四馬鹿カルテットは、保安部の面々に拉致されエントリープラグへと押し込まれた。

「良い事、貴方達! 私達で使徒を倒せば特別ボーナスが出るのよ!! そうしたら、皆でフランス料理を

 食べに行きましょう!!」

『『『『了解!!』』』』

「ミサト特別攻撃隊 発進!!」

情け無い名前が付けられた四馬鹿カルテットは、地表へと射出された。

そう、手ぶらで・・・

「ミサト、有難う」

「ミサトさん、有難う御座います。」

「ミサト、ご馳走様。」

「私達もお呼ばれしましょうかね。キョウコ」

「そうね、ユイ」

「僕達も呼ばれようか、マヤちゃん」

「そうね、日向さん。」

その声を聞いたミサトは慌てた。

「何で貴方達に奢らないとイケないのよ!!」

「だって、ミサトさん”皆で”って言ったじゃないですか!!」

「そうよ! 皆に迷惑を掛けているんだから必ず奢りなさいよ!!」

「そうよね。 キョウコ 直ぐに店を探さないと!」

「そうね、ユイ。 高級なトコを探さないとね。」

「マヤ! MAGIを使って店を探しなさい!! 最優先事項よ!!!」

「了解です、先輩」

そう言って、使徒の事などお構いなしで店探しが始まった。

ミサトはその光景を唖然として見ていた・・・だが、使徒はそんな事はお構いなしに攻撃を仕掛けて来た。

『何や、この光は?』

『威力の無い光線だな・・・』

『そんな事より、ドウ攻撃するのよ!?』

『葛城一尉、攻撃手段を教えて下さい。』

だが、ミサトからの返事は無かった・・・その時

『『きゃ〜〜〜〜〜〜』』

『『ぎゃ〜〜〜〜〜〜〜』』

その悲鳴で、発令所の面々は使徒が攻めて来ている事を思い出した。

そしてモニターを見ると、使徒の攻撃を受けているEVA四機が映し出されていた。

「マヤ、あの攻撃は何?」

マヤは、嫌な顔をしながら分析を開始した.

「・・・・エネルギー・熱量0・・・・・・・これは、精神攻撃です。」

「精神攻撃?」

皆は、モニターに食い入る様に見ていた。

『堪忍や!! ワイから食いモンを

 取り上げんといてーな!!』

『俺様のカメラを壊すな!!! それ

 に、俺様は変態で彼女無しじゃ

 ない!!』

『私はマナ板じゃない!! 

 遺伝子操作なんかされていない

 わよ!!!』

『・・・肉嫌い・・・』

発令所の面々は呆気に取られていた。

「何か面白いわね・・・」

「そうだね、どんな精神汚染を受けているか一目瞭然だね。」

「面白いから、暫く放置しとこうかしら・・・」

「先輩、放○プレーですかぁ?」

ゴン!!

「マヤ、何て事を言うの!!」

リツコは、マヤの頭を叩きながら言った。

その音でミサトが再起動した。

「リツコ、ポジトロンスナイパーライフルを出して!!」

「無理よ! ATフィールドを破る威力は無いわよ。」

リツコは即答した。

「でも、四発を同時に当てれば・・・」

「無理よ、あの状態で撃てると思うの?それに、ユニゾンなんか出来る訳ないでしょ!!!」

リツコはモニターを指差しながら言い切った。

「じゃあ、見殺しにするって言うの!! あんなに有能な私の直属部隊を!!!」

「何処が有能なのよ!? 農作業が少し出来る程度じゃないの!!」

「勉強とか・・・・色々よ!!」

「四馬鹿カルテットに勉強なんか出来る訳ないでしょ!! 身の程を知りなさいよ!!」

「・・・・・・・・・・・・」

「アスカ、ミサトさん苛めも程々にして、使徒を倒す事を考えないと。」

「そうね。 アタシ達の未来の為にも・・・」

「リツコさん、頼んでおいたアレは完成しています?」

「アレね。 出来てるわよシンジ君。」

「なら、簡単ですね。」

「そうね。 一応、弾頭はTSMC弾にして置くわ」

「ねえ、シンジ。 アレって何よ?」

「アレとは、レールガンだよ。大口径の。 以前、空から落ちて来る使徒がいたでしょ。その時に

 大口径のレールガンがあれば、落ちて来る前に始末出来たんじゃないかなって思って、リツコさん

 に作っておいて貰ったんだ。」

「流石、シンジね。 ミサトの有能な直属部隊とは違うわね。」

そう言いながら、ミサトを睨み付けた。

「でも、大口径ってEVAで撃てるの?」

「それは、無理だよ。 戦艦の主砲みたいな砲台だよ。 但し、真上にも撃てるけど。

 でも今回は距離があり過ぎるから、電力不足だね。僕が初号機のS2機関を全開にして、その電力で

 撃つ羽目になるね。」

「そう言う事よ、アスカ」

「ふ〜ん」

「シンジ、早くケリを付けてミサトに奢って貰いましょう!!」

「了解!!」

そう言って、シンジはゲージへと走っていった。

「ねえリツコ、シンジが電力供給だとすると、照準は誰がするの?」

「それはMAGIに一任よ。 安心して見ていなさい。」

そうして、数分後いとも簡単に使徒は殲滅した。

ミサトは2階級降格で3尉となった上、皆にフランス料理をご馳走して、余計に借金がかさんだ。

そして、シンジが新しい作戦本部長に就任し、アスカがその補佐となった。 只、四馬鹿カルテットは

ミサト直属部隊のままであった。

尚、四馬鹿カルテットは、大事を取って入院していた為にフランス料理にはあり付けなかった。

 

数日後、第二新東京市で加持と密会しているミサトの姿が度々目撃されていた。

その後、MAGIから何かしらのデーターを抜き取って居た・・・

 

続く

 

後書き

みゃぎです。

次は、アルミサエル編です。 誰が家出をすのでしょうか? 

多分、皆判ってると思いますけど・・・

では、次回!!


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