薔薇のさだめ

 

 

 やっぱり、行ってしまうのかい?
背中をみせたまま、振り向こうとしないアスカに、そうシンジは声をかける。

 

 

 

 

 返事はない。いや、その沈黙こそ、シンジへの返答。

 

 

 

 

 

 

 決して振り向くことのない背中。

 

 

      それは彼女の生き方そのもの。

 

 

 

 

 シンジが、アスカと共に歩いていけたのは・・、共にエヴァに乗っていた14歳の、あの僅かな期間。

 

 

 

 

 

 そう、それから、いつも彼女は、シンジを置き去りにして、前へ前へと走っていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  思えば、もう何回、シンジは彼女にプロポーズしたことだろう。

 

 

 

 

 

     しかし彼女は、

 

 

               ある時は、そっけなく。

 

                         また、ある時は、涙ながらに。

 

                                   そして、またある時は、黙って・・

 

 

 

 

 

                     そんなふうにして、いつもアスカは、シンジの前からいなくなる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  だから、今日もシンジのプロポーズは空回り。

 

 

 

 

 

 

 

 

 常に華やかに、いつも華麗に、そして誰よりも気高く・・まるで薔薇のように彼女は生きる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 彼女の手が、名も知れぬ花に伸びた。

 

 

 

 

 

 

     かわいい花ね・・

 

            そんなことを言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

   健気で、可憐で、ひたむきに咲いて・・

 

 

 

                まるで、山岸さんみたいね・・

 

 

 

 

                              その言葉に嫌みな響きなどまったくない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 こんな風に咲いて、こんな風に生きるのが、本当の幸せを得る道なのね。

 

 

                                                 でもねシンジ、それは私の生き方ではないの・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 誰よりも激しく、誰よりも気高く生きる。それが彼女の生き方なのだから。

 

 

 

 

 

 だからこそ彼女は誰よりも輝くのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   それを良く知るのは、アスカと、唯一人の愛しい理解者だけ・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 バカシンジ、いままでずっとありがとう。でもあなたは、山岸さんみたいな人と結婚して、幸せになって。

 

 

 

 

                                  私は、こんな生き方しかできないから。

 

 

 

 

 

 

 私と一緒なら、あなたはきっと不幸になる。
だって私の生き方は、平凡な幸せを手に入れられるものではないのだから。

 

 

 

 

 

 

 輝きの影の不幸・・、それを好きな人に負わせてしまうのは、あまりに切ないの・・

 

   だから、もう、さよならするわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アスカは立ち上がり、ゆっくりと黙ってシンジの側から去ってゆく。

 

 

 

 

 

                      一陣の風。

 

 

 

 

 

 

 ただ風にあおられ、吹き散らされる・・野の花たち。

 

 

 

 

 

 

 そんな風の中、微塵も揺るぐこともなく、ただ前を見据え、アスカは進む。

 

 

 孤高に咲く一輪の薔薇のように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アスカの姿が見えなくなっても、見送り続けるシンジは、心のなかで、彼女に語る。

 

 

 

 

 

 

 

          アスカ・・

 

 

                       君が光ならば、僕は影。

 

 

 

 

 

 

               君が誰よりも輝くためならば、

 

 

 

                                 僕はいつでも・・・影になる。

 

 

 

 

(了)

皆様、始めまして、O.Lと申します。こちらには初見参となります。

通常は、もっと鬱陶しい作品を書いてますが、こちらの皆様のセンスに

追いつける様に、できうる限り、すっきりと仕上げてみました。

元ネタは、アレです。有名すぎてネタが、かぶってる危険性もあるかも

しれない・・(笑)

未熟者ですので、皆様のご指導等をお待ちしております。

これからも、よろしくお願いいたします。


マナ:O.Lさん、投稿ありがとうございました。良い雰囲気の作品ですね。

アスカ:「常に華やかに、いつも華麗に、そして誰よりも気高く」! まさにアタシの為にある様な言葉ねっ!

マナ:O.Lさんが持ち上げるから、さっきからもう舞い上がっちゃって・・・。

アスカ:やっぱり見てる人はちゃーんと見てるのねぇ。これは最高の作品ねっ!

マナ:はいはい・・・はぁ〜。それはそうと、シンジのプロポーズは断るのね?

アスカ:誰が?

マナ:だって、そう言ってたじゃない。なら、わたしが貰っちゃうからね。後で文句言わないでよ。

アスカ:だから、誰が断ったってのよっ!?

マナ:え? だって不幸になるからって・・・。

アスカ:バッカねぇ。シンジはそれでもいいって言ってくれたのよ。あぁ〜最初から最後までなんていい話なのかしら〜。

マナ:えっ!? だって・・・、それじゃ・・・。

アスカ:アタシは可憐だし、シンジはアタシの為なら影になるって言っるし。くぅぅぅぅ・・・もう最高ねっ!

マナ:こーんな好き勝手に解釈していいの!? うぅぅ、なんだか腹立つ〜ぅ!

アスカ:へっへーん。そうでしょうそうでしょう。なんたって、薔薇といえばアタシにぴったりじゃないっ! すばらしいわっ!

マナ:でも、花の散るのは早いっていうわよーだっ! シンジだってそのうち、気付いてくれるわよーだっ!

アスカ:はいはい、言ってなさい。言ってなさい。せいぜいアンタは、そんな抵抗でもしてしてなさい。ハハハハハ!

マナ:くぅぅぅぅぅぅ〜、悔しいっ!!(ハンカチ噛み噛み)
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