8月11日

 

今日アスカが入院した。

以前も何度かあったが、またあの時の後遺症らしい。

先生は『面会謝絶といってもまあほとんど検査入院ですし、2週間程度で退院できるでしょう』なんて言ってたけど。

 

アスカの左目の視力は回復しなかった。

それでも右手は懸命のリハビリの甲斐もあって、いまでは日常生活に問題無い程度まで回復している。

まあ当時の怪我の状況を知っていれば、生きていただけでも奇跡と言えるだろう。

 

そんな事で今日から2週間、レイと二人っきりだ。

アスカに心配かけないためにも、がんばらなくっちゃ。

 

 

2030年の夏休み

 

 

 

8月12日

 

今日の朝はレイに起こされた。

「おとーさん、ラジオ体操行って来るね」

そう言うと元気よく飛び出していった。

きのうママと離れるときはあんなに泣きそうだったのに子供は元気なものだ。

そういえば今日は着替えも全部自分でしていったな。

感心、感心。

 

レイも今年小学校に入った。

わが娘ながら明るく育ってくれてうれしい。

以前アスカにそう言ったら『あんたの娘以前にあたしの娘だもの!』などと言われてしまったが。

 

…今考えるとあれは僕が暗いって事を言いたかったんだろうか?

まあいいや、レイが帰ってくる前に朝食の準備をすることにしよう。

 

 

8月13日

 

今日から僕も夏休みだ。

日向さんや青葉さんが『困ったときはお互い様』と言ってくれたので甘える事にして、アスカが退院するまで夏休みを取ることにした。

まだレイも小さいし、一人にしておくわけにもいかないしね。

 

そういえば僕は今、人類総合研究所というところに勤めている。

まあはっきり言ってしまえばネルフが名前を変えただけなんだけれど。

元チルドレンをやとう会社なんてほとんど無いし、前所長の冬月さんからの強い誘いもあったので、大学を卒業してからお世話になっている。

アスカも少しの間勤めていたけど、なんて言うか…まあはっきりいえばレイが出来ちゃったんで退職、今は専業主婦をやっている。

まあもう少しレイが大きくなったら復職するつもりみたいだけど。

 

 

そういえば明日はあそこに行かなくちゃ…

 

 

8月14日

 

「おとーさん、ここどこなの?」

レイが僕の手をギュッと握りながらそうたずねてくる。

まあこんな何にも無いところにつれられてきたら不安になるのも仕方ないかな。

 

僕は今、湖のほとりに立っている。

そう、あの場所だ。

 

「ここにね、お父さんのお姉ちゃんのお墓があるんだよ」

「おとーさん、おねーちゃんがいたの?」

レイが不思議そうに僕を見つめる。

「うん、ミサトさんっていってね、ママのお姉ちゃんでもあるんだよ」

「ふ〜ん、じゃあママとおとーさんはきょうだいなの?」

うっ、なんて答えたら良いんだろう?

『そうだよ』なんて答えたら今後問題があるような気もするし…

まあレイは『きょーだい、きょーだい』なんていってはしゃいでるので、笑ってごまかすことにした。

 

 

ここには毎年お盆には欠かさず来るようにしている。

いろいろあったけど、僕やアスカが今生きているのはミサトさんのおかげだと思うし、短い間だったけど、家族だったと思うから…

 

花束を供えて、手を合わせる。

どうやらレイも隣で僕のまねをしているようだ。

まあ意味はわかっていないだろうけど。

 

それが終わると、もう一つ持ってきた花束を湖に投げる。

「おとーさん、どうしたの?」

レイもなぜ湖に花を投げるか不思議なのだろう。

 

「…この湖にはね、レイの名前をもらった人が眠ってるんだ…」

「ふ〜ん」

返事を返したけどレイにはきっと意味がわかってないだろうな。

思わず苦笑してしまう。

 

母さん?

妹?

友達?

いまでも僕にとって綾波がなんだったのかはわからない。

でも大切な人だったって事だけはわかる。

 

 

そういえばこの子の名前をレイにしたいって言ったとき、アスカは僕の事一回睨んだだけですぐ納得したな。

あんなに仲悪かったからもっと反対されると思っていたのに。

アスカも何か思う事があったんだろうか?

 

 

8月15日

 

今日からトウジ達夫婦が泊りがけで遊びに来た。

相手は…まあ言わなくてもわかるよね。

いまでは夫婦そろって親戚以上の付き合いがある。

 

トウジの子供のツバサくんとアサヒちゃんはレイの大の仲良しだ。

おかげでレイも楽しそうだ。

 

ちなみにトウジはいま京都で教師をやっている。

…学生時代は想像も出来なかったけどね。

 

そういえば以前子供の名前の由来を聞いたら『洞木家の家訓や』なんて言ってたけどどういう意味なのかな?

 

 

8月16日

 

今日はみんなで海へ行った。

レイはアスカに似たのか泳ぐのは得意なようだ。

…なぜか少し悔しい。

 

 

8月17日

 

今日はデパートへ買い物。

レイに水色のワンピースを買う。

「これ着てママを迎えに行こうね」

レイ、あんまりお父さんを泣かせるようなことはいわないでくれ。

あ、トウジがこっちを未てニヤニヤしてる。

 

 

8月18日

 

今日トウジ達は帰っていった。

委員長はアスカに会えなかったのが残念そうだったけど、来年また会えるからねと言っていた。

駅まで見送りにいったけど、電車が行ってしまってからのレイはなんだか寂しそうだった。

やっぱり子供心にも別れはつらいものなんだろう。

 

仕方ないので帰りにチョコパフェを食べに行く。

うう、やっぱり僕ってアスカの言うとおり親バカなのかなあ?

 

 

8月19日

 

レイは本を読んでやるとすぐに寝入ってしまった。

今日はプールに行ったので疲れていたのだろう。

布団をかけてやると、不意にレイの目から涙がこぼれる。

 

「…ママ…」

 

昔のアスカと同じ…

…そうか、明るく振舞っていたけど、やっぱりママがいなくて寂しいんだな。

今ごろになって気付くなんて父親失格かな?

 

 

8月20日

 

今日は庭先でレイと二人で花火をする。

最初は楽しそうにしていたレイも、最後の線香花火の時には寂しそうな顔をしている。

やっぱりママと離れて10日もたてば寂しくなるのだろう。

 

「…レイ」

「なに、おとーさん?」

「泣きたければ泣いても良いんだよ」

レイがはっとしたようにこっちを見つめる。

 

「…ママも昔、泣きたいのを我慢して壊れたときがあったんだ…」

こんな話レイにわからないだろうけど…

「だから…」

 

「ううん、私は泣かないの」

レイが瞳いっぱいに涙をためてそう答える。

「どうして?」

「だって私が泣いたらおとーさん泣いちゃいそうだから…」

 

その瞬間僕は理解した。

レイは僕のために泣きたいのをこらえていたんだと…

 

「レイ…」

僕は泣きながらレイを抱きしめていた。

「おとーさん、ないちゃだめだよ」

「…いいんだよ、お父さんもう泣いちゃったから、お前が我慢する事はないんだよ」

そういうと、レイは堰が切れたように泣き始めた。

「ママ、ママ、ママ〜」 

 

…そうだよ、レイ。悲しいときは泣いてもいいんだ。

…いっぱい泣いて…その分ママを迎えに行くときは笑顔で行こうね。

 

 

8月23日

 

「えへへ、おとーさん似合う?」

「ああ、似合ってるよ」

レイは買ったばかりの水色のワンピースを着ている。

今日は少し早まったけどアスカの退院日。

幸い病状もたいした事はなかったようだ。

 

「じゃあ行こうか、レイ」

「うん」

そう言って僕達は歩き出す。

最高の笑顔で。

 

 

おわり

 

あとがき

 

どうも、作者です。

 

The Epistlesさん100万ヒット…これは記念に何か投稿せねば!

という勢いだけでつくったこの作品。

だから内容は大目に見てね(^^;;

 

ではでは。


アスカ:こんなつまらないWWW Siteの為に、100万ヒット記念書いてくれるなんて、天使の様な人ね。

レイ:おっちーさん、ありがとう。

アスカ:あら? マナは?

レイ:風邪。

アスカ:ふーん。それはいいけど、なんでアンタが出てくんのよっ?

レイ:あなたは、私のママだから。

アスカ:レイはレイでも、アンタのことじゃないわよっ!

レイ:どうして、そういうこと言うの?

アスカ:どうしてもなにも、同名ってだけでアンタのことじゃないでしょーがっ! ちゃんと読んだのっ!?

レイ:わからない・・・。

アスカ:キーーーーッ! これだから、アンタと話すんのイヤなのよっ!

レイ:ママ・・・怒っては駄目。

アスカ:やめなさいって言ってるでしょっ! 同じ歳の娘に、ママなんていわれたくないわよっ!!

レイ:どうして、そういうこと言うの?

アスカ:コ、コイツは〜っ! あー、熱が出そうだわ・・・。

レイ:はっ!

アスカ:どうしたのよっ!

レイ:まだ、病気なのね。

アスカ:アンタと話してるからよっ!
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