時に西暦2016年 人類はいまだ地球という揺篭から未だ……巣だってはいなかった…… 全ての使徒の殲滅の後に治安維持部隊としての国家的な組織になったネルフ そのネルフに所属する二人の美しきエージェント・・その名は 惣流・アスカ・ラングレー そして綾波 レイ この二人の上司でもある、碇シンジ 時代は彼等に何を求めているのか!? 今日もまた、シンジは精神安定剤を齧りながら、新たな司令を出す為に二人を呼び出そうとしていた。 Destroyed by ・・・外伝 Episode ?? -ペンギンはサイバー空間に巣を作る?- PRRRR シンジのオフィスにコール音が鳴り響いた。 「はい、碇です」 「シンジか……頼まれていた人員の補強なんだが」 「今度の任務に間に合うんですか?」 「ああ……今そちらに向かわせている……資料を今送っておいた……」 プチ 「いきなり電話切る癖止めてくれよな……」シンジはゲンドウから送られて来たデータを見た。 「嘘! そんな……」 背後のドアが開き、シンジは振り向いた。 数分後 「前回の仕事が終わってまだ一週間も経ってないのに、また仕事なの?」 「私は別に構わない……いやなら私だけで行くわ」 「予定外の任務だから仕方無いんだよ」 「何よ、その予定外の任務って」アスカがシンジの机に詰め寄った。 「今年に入ってから、アスカとレイが任務遂行上での破壊行為で、ネルフの予算の何割が費やされたか知ってる?」 「う……せいぜい1割でしょ」 「とんでも無い・・年間予算の2年分だよ……このままじゃ他の職員に払う給料も無いんだ……当然君達も例外じゃないよ」 「えーーなんですって?」アスカが血相を変えてシンジの胸座を掴んだ。 「お金無いと……ラーメン食べられない……」 「だから、その為の任務なんだ……説明するから離してよ」 「解ったわよ……で、次の任務は?」 「ちょっと待ってね」シンジがコンソールを操作すると、暗かった画面が輝いた。 「なに?海中油田?」 画面には海の上に建設された原油採掘基地が写されていた。 「ここは、台湾沖にある、国連管轄の採掘基地なんだ……」 「海しかないさびしいところね……」 「この男が、ここの所長である、楊文里特務官だ」 「むさ苦しい男ねぇ……」 「年間2億5千万ガロンの原油が算出されてるんだけど…… アナリストの計算と現地調査員の報告では年間3億2千5百ガロンは取れてるらしいんだ」 「7千五百ガロン 数字が合わない訳ね……」 「彼が赴任してから10年経つそうなんだけど・・確かに以前は2億5千万ガロンしか取れなかったんだけど、 新技術を応用してからは、3億ガロンを越す筈だったんだけど……」 「年間7千五百ガロン・・10年間で7億5千ガロンの原油・・どこに消えたのかしら」レイが資料を見ながら呟いた。 「恐らく、横流しだと思う……それだけの量の原油を、捨て値で横流ししても、ネルフの予算の三年分は蓄えられてる計算なんだ」 「なるほど……どこかに隠している金を差し押さえる訳ね」 「御名答……楊文里の秘書のユリアン・ミンツ秘書官が、サイバー空間を利用して、取り引きをしてるようなんだ…… なんでも楊文里はワープロも叩けないそうだからね……金庫に隠し金を入れている訳はないし……」 「え?けど私達、基本的なコンピュータの操作方法なら解るけど……サイバー空間への移行は無理よ」 「ああ わかってるよ……そこで今回の君たちの作戦行動に同行して、サポートしてくれる仲間を紹介するよ」 「仲間ぁ?」 シンジが手招きすると、一羽?の一見イワトビペンギンがとてとてと歩いてアスカとレイの前に立った。 「クエッ」ミサト邸にいるペンペンであった。 「なによこいつに何が出来るってんの!動物じゃないの」アスカはペンペンを指差した。 「違うわ・・ペンギン目ペンギン科の動物よ」レイが呟いた。 「そんな事いわれなくてもわかってるわよ こいつがなぜ私達に同行するのよ」 「時代はトリ!トリ!トリなんだよっ この俺様に任せておけばいいんだよっ」 「ペンペンがしゃべった?いや頭の中に語り掛けて来たの? 「他にも電撃を放ったり、コンピューターに侵入して破壊行動なんかも出来るんだ・・ 君達が情報収集でコンピュータに接して、壊した事はあっても、必要なデータを持ちかえったこと無いだろ? 「うっ・・それはレイがATフィールドで・・」 「私のせいじゃないわ……あなたが制御しきれなくて暴走させたんでしょ?私は後始末をしただけよ……」 「レイ……頼むからATフィールドを使って証拠隠滅するのはやめてよ……」シンジが頭をかかえた。 「そこで、潜入方法なんだが、レイが査察員として表から接触 アスカはペンペンと共に特殊潜航艇で、採掘基地に侵入…… レイが隙を見て、コンピュータを衛星回線経由で特殊潜航艇に接続……そして、ユリアン・ミンツを拘束し、 その間にペンペンが証拠を押収し、隠し金の口座を調べてもらう……口座さえ判明したら後は別のエージェントが凍結してくれるから」 「私の出番少ないじゃないのよ……」 「アスカ……これは遊びじゃ無いんだ……それでは、指令伝達を終わります」 アスカは、シンジから受けた指令を思い出しながら、特殊潜航艇の窓に写る太平洋の荒波を見ていた。 「はぁ……レイは今ごろ機内食でも食べてるのかしら……」アスカは持ち込んだお菓子を食べながら呟いた。 「アスカ!餌くれ餌!」 「うるさいわねぇ 自分で取って来なさいよ……」 「俺はコクピットから離れられないんだ……」 そう、ペンペンは特殊潜航艇の操縦までしているのであった。 「わかったわよ……いわしでいいわね」 「クエッ」 「そんな時だけトリの真似事するんじゃないわよ(黙ってれば可愛いのに)」 アスカはいわしの油浸けの缶詰を開けて、ペンペンの口に放り込んでいった。 そして翌日 「始めまして 私が所長の楊文里特務官です お美しい査察員ですな それでは、案内致します」 レイは国連の女性高級職員用の服を身に付け、軽く化粧をほどこし、唇にはピンクの唇をさしていた。 レイは、楊文里特務官に連れられて施設の各所を案内されていた。 「ところで、10年前に実用段階になったと言う新技術……失敗だったの?」 レイは手のひらに書いたカンニングペーパーを見ながら質問した。 「良くご存知ですな……10年前の実験で失敗致しまして……そのまま実験を続けるとそれまでの算出量より少なくなる危険がありまして」 「その実験データを拝見させてもらえますでしょうか?」 「ええ、宜しいですよ」 執務室にレイは案内された。 「ユリアン・ミンツです 所長に変わりまして、ご説明致します」 「あいにく私はコンピュータが苦手でして……」 「所長!ちょっと来てもらえますか?」紺色の制服を着た所員が室内に現れた。 「ユリアン・ミンツ秘書官がいれば大丈夫かな……それではちょっと失礼致します」 楊文里特務官は紺色の服を着た男と共に、部屋を飛び出していった。 その頃 特殊潜航艇”セラ・エンジェル”では…… 「ペンペン!その横の給油パイプにも傷を付けちゃえ!」 「OKボス!」 何の娯楽もない船内だったせいか、二人は意気投合していた。 特殊潜航艇に内臓されたマジックハンドに附属しているレーザーカッターで、 ペンペンは採掘した原油を精製機に送るパイプに傷を付けていった。 「んーそろそろ気付かれる頃ね……急速潜航 ダウントリム30!」 「OK!」 特殊潜航艇は海面から姿を消した。 少しして、所長と警備員と技術員が、パイプのあった場所まで走って来た。 「原油が漏れてる疑いがあるのは、どのパイプだ?」 「二番だと思います」 「破壊工作の疑いは?」 「レーダーで探索できる周囲5キロに不審な陰はありません」 「むぅ……査察官の来てる時に……」楊文里特務官は首を傾げた。 「パイプの傷を発見しました。」技術員がパイプの裂け目を指差した。 「こ……これは人為的な事故……まさか!?」楊文里特務官は慌てて元の道を引き返していった。 その頃、執務室では…… 「痛っ……」レイは指に手を当てて唸った。 「ど、どうかなされたんですか?」レイと同年代に見えるユリアン・ミンツ秘書官が心配そうにレイを見た。 「指がむくんで……指輪がきついの……外してくださる?」レイは、昨日何十回となく復習した台詞を口にした。 「取れないんですか……石鹸があれば取れるかな……」ユリアン・ミンツ秘書官が指輪に顔を近づけたその時! ぷしゅっ 指輪から無色無臭のガスがユリアン・ミンツ秘書官の顔に吹き出された。 「んっ こ、これは」ユリアン・ミンツはもがき苦しみ、気絶した。 「作戦……第一段階成功」中和剤を含ませたハンカチで鼻と口をふさいだレイが呟いた。 「これを入れればいいのね……」レイは持参していたディスクを挿入してキーを叩いた。 「外部ポート、オープン 衛星回線接続クリアー 接続先 特殊潜航艇セラ・エンジェル クリアー 接続開始……」 その頃 セラ・エンジェルでは 「コンパイルOK コンパイルOK ペンペンが昔のTVを見て憶えた口調で回線が接続された事をアスカに伝えた」 「レイもうまくやったみたいね……それじゃ隠し口座を探すのよっ 私達のお給料がかかってるんだからねっ」 執務室 「接続問題……現状態を維持……」 その時、廊下から銃を手にした楊文里特務官が執務室に入って来た。 「早かったわね……」 「これは何の真似だっ」楊文里特務官はレイの足元で失神しているユリアン・ミンツを見て叫んだ。 「見ての通りよ……」 「なにっ 外部接続……まさかっ」 「そう……あなたが原油を横長しして儲けたお金の隠し場所を探してるのよ……」 「そこまでばれてるんなら仕方無いな……死んで貰おう」楊文里特務官は銃口をレイの顔に合わせようとした時、 レイの身体から発散されたATフィールドに、楊文里は壁に押し付けられた。 「もうすぐ終わるから静かにしてて……」 「くっ……我が野望も潰えたのか……」 「あきらめるのね……」レイはATフィールドを展開したまま、画面を見つめていた。 セラ・エンジェル 「どう?ペンペン」 「証拠はもう押さえた!後は口座だけだ」 「しかし、あんたがそんな事出来たなんて……」 「俺も好きでこんな身体になったんじゃない……この背中のバックパックは脳に直結されてるんだ…… これを外される時……つまり俺が用無しになった時は、俺の死を意味してるんだ…… 「ペンペン……そんな事はさせない……私がそんな事許さないから」 「ありがとう……アスカ」 「お礼として、シンジのプライバシーの調査お願いね……」 「…………」 「なんでそこで黙るのよ」 「いや、攻性防壁が作動した……」 「えっ」 話は三分ほど前の執務室に溯る。 「問題無いようね……」レイは安堵の為かため息を一つ吐いた。 その時、レイは足を引き摺られて転倒した。 失神していたユリアン・ミンツが目を覚ましていたのであった。 だが、レイは楊文里特務官へのATフィールドは解いていなかったが、 そのすでにATフィールドを張っている範囲内にいるユリアンをATフィールドで攻撃する事は出来ないのであった。 「ユリアン!そいつは放っておいて、攻性防壁を起動するんだ!」 「させない……」レイは一旦ATフィールドを解除した。 壁に押さえつけられていた楊文里特務官は前向きに倒れた。 そして、もういちど・・今度はユリアン・ミンツと楊文里特務官の二人を対象範囲に入れてATフィールドを発生させた。 だが、一瞬フィールドを張るのが遅れた為、ユリアンが手を伸ばし、攻性防壁のスイッチを入れるのを止める事が出来なかった。 「だめ……解除できない……」レイはユリアンと楊文里特務官をATフィールドで壁に押さえつけたままコンピュータを操作していた。 「ふはは……この攻性防壁は、一度スイッチを入れると、私とユリアンの網膜パターンの入力が無いと、停止は出来ないのだ」 楊文里特務官は壁に押し付けられながら笑った。 セラ・エンジェル 「で、どうすればいいの?」 「攻性防壁が前にも後ろにもあるから……進む事も逃げる事も……」 「レイに連絡してみるわ」アスカはコンソールを操作してレイを呼び出した。 「何?呼んだ?」至って冷静なレイの声がスピーカーから流れた。 「呼んだわよ……どうなってるの?防壁とかが現れて、進退に困ってるのよ!」 「解除は出来ないらしいの……」 「絶対他に方法はあるはずよ……退路は塞がれてるから回線切って逃げようとしたらペンペンの脳が焼かれるのよ」 「わかった……調べてみる」 レイはATフィールドの圧力を高めた。 「防壁の解除方法は?」 「知ってても、教えると思ってるのか?」 「そう……じゃ死ねば?」レイは圧力を高めた。 「もう、あなたの悪事の証拠は掴んでるのよ……」 「わかった……解ったからユリアンを痛めつけるのは止めてくれ」 「教えてくれたら開放するわ……」 「海底にある非常用の第三発電機から攻性防壁装置に電力を供給してるんだ……それを止めるしかないが……まぁ無理だろうな」 「聞いた?」 「解ったわ!海底の第三発電機ね……資料で発見したわ…いますぐいくから、それまで持ちこたえてね」 「ペンペンは……接続中か……私が操縦するしかないか……」アスカは操縦管を握って、特殊潜航艇セラ・エンジェルを潜航させた。 「はやく……」レイは肩で息をしながらATフィールドを張りつづけていた。 「深度 500・・600・・700・・800・・あった……あれね」 「くっ……」レイは膝を突いた。ATフィールドが一瞬弱くなったその時、銃声が響いた。 セラ・エンジェル これまでレイの耳のイヤリング型マイクから執務室の音を拾っていたスピーカーの音がしなくなった。 「レイ!レイ!どうしたの?……取りあえず発電機を止めなきゃ」 アスカは急速に潜航した為、不快感を感じ始めていたものの、海底の第三発電所に一心不乱に向かっていった。 執務室 楊文里特務官の手にした銃から放たれた銃弾はレイの顔をかすめ、レイの耳のイヤリングを破壊して壁に食い込んだ。 レイはATフィールドを強化しようとしたが、すでに限界以上の体力を消耗している為にそれ以上の強化は出来なかった。 「ふ……次は外さんぞ」楊文里特務官の銃口は正確にレイの頭を狙っていた。 セラ・エンジェル 「目標発見……えーと武器武器……なぁんだ魚雷があるじゃない……全弾発射!」アスカはスイッチを押した。 「水中衝撃波が来る前に浮上しなくちゃ メインタンクブロー!」タンクの中から錘を捨ててセラ・エンジェルは海面に浮上していった。 「深度700・・600・・500・・400・・300・・200・・100・・浮上!」 セラ・エンジェルが浮上した次の瞬間、海底の第三”原子力”発電所は4発の魚雷を受けて爆発した。 執務室 攻性防壁機がスパークを上げて煙を吐いた。 レイは機を逃さず、ATフィールドを解除し、前につんのめった楊文里特務官にかけより、肘で楊文里特務官の顔を殴打した。 「やったぜ!防壁が解除された! 第三深度まで侵入……パスワード11桁 解除 10桁解除 9桁解除 8桁解除 7〜1桁まで解除!」 「隠し口座を確認 凍結措置開始! 任務完了!」 「よくやったわね ペンペン!」 「アスカ……船外のモニターが海底での異常な反応を示してるんだけど……」 「まぁいいわ レイを回収して帰りましょう!」 その時、画面にレイの顔が映し出された。 「アスカ……何をしたの?」 「え?第三発電所を破壊して、電力供給を止めさせたんだけど……」 「拘束した楊文里特務官が言うには 原子力発電だったって言ってるんだけど……海底ではものすごい爆発が起きてるようよ……あっ 原油のパイプも爆発に巻き込まれたみたい……脱出するから、X−24地点で回収して!」 「わ……わかったわ……ペンペンっ急いでっ」 「やれやれ鳥使いの荒い人間だ……」ペンペンはレイとの合流地点に急いだ。 3日後・・NERV本部 「アスカ……レイ……隠し口座の発見……証拠の発見……それらは問題無いんだけど…… 海底の原子力発電所の爆発に巻き込まれて、4本ある送油管の3本は損傷……海上の施設に蓄えられていた原油の流出…… 放射能もれにより、 今世紀中の同施設からの原油供給は、見込めない……7千5百ガロンの調査の為に・・ 今世紀中に供給される筈の約280万ガロンをむざむざ捨てる事になったんだけど……なにか言い残す事はない?」 「私は、発電所を壊して無い……壊したのはアスカよ……私は任務を遂行したわ」 「何言うのよ!あんたがドジ踏むから防壁作動させられたんじゃない!」 「クエッ?」 「ペンペン・・鳥の真似しても駄目だよ……」シンジは机の引き出しから精神安定剤の瓶を取り出し、口を開けて瓶の中身を口一杯頬張った。 「取りあえず、罪は楊文里特務官にすべてかぶせたけど……休暇などもっての他! ボーナスなんか出ないと思っておいた方がいいよ」 シンジは精神安定剤をかみ砕きながら言った。 「そんなぁ〜 なんとかしてよシンジ!」 「私達……一生懸命やったわ」 「僕だって、同じ扱いうけてるんだよぉっ」シンジの久しぶりにブチ切れた声が響いていた。 −END−
感想は新たな作品を作り出す原動力です。1行の感想でも結構 ですので、ぜひとも作者の方に感想メールを送って下さい。 |