新世紀エヴァンゲリオン 蒼い瞳のツインズ


第1部 アサトの1週間


第3話 月曜日−その3−


 今日の授業は何事も無く過ぎていった。俺はいつものように,休み時間はショウ,アサ
ミ,サキ,シノブと過ごし,お昼もおなじみの5人で盛り上がって食べる。そうして,6
時限目の授業が終わり,ホームルームが終わったら,アサミと一緒に帰るんだ。

そう,帰りも小学校に寄って,妹達を連れて4人で家に帰るんだ。いつも俺は小学校の外
で待ち,アサミが妹達を迎えに行く。えっ,何故かって。実は,ミカコの友達が,皆俺の
ファンだからだ。俺が行くと,皆まとわりついてきて,うざったいったらありゃしない。
だから,アサミに迎えに行かせるんだ。

「アサト!」

おっと,ちょっと油断していたら,ミライが俺に抱きついてきた。ミカコも姿を現す。

「はん,ミライったら,お子ちゃまね。」

ミカコがあきれたような顔をする。

「ふん,いいでしょ。アタシはアサトが好きなんだから。アサトもアタシのことが好きで
しょ,ねっ。なんたって,アタシが一番母さんに似ているんだから。」

そう言われると,俺としては断れなくなる。確かに,外見だけが似ているアサミや性格だ
けが似ているミカコよりも母さんに似ていると言えるだろうが。

「はいはい,俺はミライが好きだよ。大事な妹だもんな。」

「ぶううっ。女の子として好きになって欲しいんだけどな。」

うっ,ミライって,なんておませな奴なんだ。

「はははっ。お前じゃまだ早いよ。母さん位,色気が出たらな。」

「ふうん,じゃあ,アサミもまだ早いんだ。」

「まあ,そうだな。」

「うん,分かった。じゃあ,もう少しだけ待ってあげる。」

「あのなあ。」

そんなことを言い合いながら,俺達兄妹は帰っていく。アサミは無口だが,俺達が言い合
うのを見て,ニコニコしている。いつもの風景だ。

***

 家に帰ると真っ先に宿題を片付ける。自分の分が終わると,妹達の手伝いをすることも
あるが,大抵の場合,その必要はない。妹達は簡単に宿題を片付けてしまうからだ。俺や
アサミに聞くこともあまり無い。たまに聞いて来ることは,自分よりも上の学年で習うよ
うなことばかりだ。

宿題が終わると,妹達は友達の家に遊びに行く。といっても,同じマンションの中にいる
友達が多いから,心配する必要は無い。

残る俺とアサミは,朝の続きだ。朝の訓練の時間は短いし,妹達の相手もしなければなら
ないから,この月曜日の午後の訓練の時間は貴重なんだ。

ミカコが中学生になったら,一緒に訓練するかもしれない。でも,ミカコは基本的に朝し
か訓練をしていないから,結構弱い。だが,訓練する時間が同じになったら,この俺より
も強くなってしまうかもしれない。

そんなことになったら嫌だから,俺は一所懸命頑張ることにしている。しかも,末っ子の
ミライは,ミカコよりも強いんだ。これには,さすがの俺も恐怖を感じる。母さんの遺伝
子を色濃く受け継いでいるからだと思うが,こいつが一番要注意だ。

とは言っても,当面のライバルはアサミだ。こいつは,半端じゃなく強い。この俺は実戦
−要はケンカだが−を経験しているが,アサミは争いごとが嫌いな性格だから,実戦経験
は無い。もしアサミに実戦経験があったなら,こいつの方が強くなっていたかもしれない。

だから訓練には気合が入る。目一杯体を動かして,大量の汗を流すから,訓練が終わった
後は,物凄く疲れるんだ。

***

「あら,アサト良い所に来たわ。ちょっと手伝いなさい。」

「うん,分かったよ,母さん。」

そう言って,俺は微笑む。訓練が終わって,ダイニングに行ったら母さんが食事の用意を
している所だった。いつもは,ばあちゃんが夕食を作っているが,今週は旅行に行ってる
から,母さんが早めに帰って来て食事の用意をするらしい。

今日は母さんが早く帰って来ているため,母さんと食事が出来る。平日の夕食時は,母さ
んが居ないことが多いから,俺は嬉しくなった。

「今日はなあに?」

「アサトの好きな肉料理よ。今日はすき焼きで,明後日は焼き肉よ。どう,嬉しい?」

「うん,嬉しいよ。ありがとう。」

本当は,準備が楽だからそうしたのが分かっているんだけれど,そんなことを言うと母さ
んが怒るから,思っていても口には出さない。だって,母さんは仕事で疲れているのに,
無理して料理をしているのが分かっているから。

「じゃあ,野菜なんかを切れば良い?」

「うん,お願いね。」

俺は包丁とまな板を取り出して,野菜や豆腐なんかを包丁で切って,大皿の上に乗せる。
その間,母さんは鍋に火をかけて肉を何枚か焼いてから,すき焼きの素を入れる。そうし
たら,野菜スープを作りにかかる。

ちなみに,我が家では味噌汁はあまり出て来ない。母さんがあまり好きでは無いからだ。
コーンスープやクラムチャウダーが基本なんだけど,今日みたいにすき焼きの時は合わな
いから,野菜スープになることも多いんだ。

こうして30分後には,すき焼きと野菜スープが出来上がる。そうしたら,コンロをテー
ブルの上に設置し鍋を乗せ,その脇に大皿を二つ置く。片方は肉,もう片方は肉以外だ。
ご飯もよそい,野菜スープと並べて各自の席に置く。

「あっ,もう用意が出来たの。」

準備が終わった頃に,アサミ達がやって来た。

まったく,こいつらは全然準備をしやしない。心の中で少しむくれたが,こんなことで喧
嘩をすると,母さんから怒られるから,俺は我慢した。それに,こいつらが手伝ったら,
母さんと二人切りの楽しい時間が失われてしまうから,まあいいか。

「ああ,出来たぞ。もう席に着けよ。」

「は〜い。」

そう言いながら,妹達は席に着く。俺と母さんも続いて席に着いた。

「今日はアサトが手伝ってくれたのよ。皆アサトにお礼を言って。」

「アサト,ありがとう。」
「は〜い,アサト,ありがとう。」
「アサト,ありがとね。」

3人揃って礼を言う。

「じゃあ,皆一緒に言うぞ。」

俺は妹達に目配せした。

「「「「母さん,今日も一日ご苦労さま。これからも頑張って下さい。では,いただきま
す。」」」」

「はい,いただきます。」

それを合図に,箸が飛び交う。育ち盛りの子供が4人もいるんだ。もちろん,肉の取り合
いになる。えっ,あんまり肉が無いのかって?そうじゃないけど,皆腹が減っているから,
早く食べたいのさ。

俺は,ミカコとミライの動きを読んで,一番大きな肉を真っ先に頂く。一瞬の後,肉のあ
った場所でミカコとミライの箸がぶつかる。ふっふっふ,今日も俺の勝利だ。この時に,
日頃の特訓の成果が現れるのだ。って,何の特訓なんだ?

「あっ,アサトったら,アタシのお肉横取りしたあ。」

ミカコはすかさず文句を言う。

「うるさい,俺が目を付けていたんだ。」

ふん,愚か者め。そんなことを言っていると,ミライに他の肉を取られるぞ。

「あっ,ミライもずっる〜い。」

ほら,言わんこっちゃない。

「うっさいわね。早いもん勝ちなのよ。」

ミライは,姉に勝った優越感に浸り,ニコニコしている。

こうして,俺とミカコとミライの3人でぎゃあぎゃあ言いながら,我が家の夕食時間は過
ぎていく。そんな様子を,母さんは目を細めながら,アサミは呆れながら見ている。こう
して,俺の月曜日は過ぎていく。


つづく

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written by red-x


マナ:お肉の横取りはよくないわ。

アスカ:死に値する罪ね。

レイ:・・・・・・肉、嫌いだもの。

マナ:食べ物の恨みは怖いのよ。

アスカ:アサト、明日になったら殺されてるわね。

レイ:・・・・・・肉、嫌いだもの。

マナ:家族が多いと、弱肉強食になるのね。

アスカ:よりによって、お肉だもんねぇ。

レイ:・・・・・・肉、嫌いだもの。

マナ&アスカ:やかましいぃっ!!!(ーー#

レイ:だって・・・嫌いだもの。(・;)

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